(c)
2021年1月23日(日本時間24日)、『UFC 257』がアラブ首長国連邦・アブダビの「UFC Fight Island」にて開催される。
メインイベントは、UFC最大のスーパースターにして“最強問題児”と呼ばれるコナー・マクレガー(アイルランド)が、ライト級ランキング2位のダスティン・ポイエー(米国)と対戦する。
この一戦の見どころを、WOWOW『UFC -究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”高阪剛に語ってもらった。
――『UFC257』のメインイベントは、コナー・マクレガーが約1年ぶりに復帰して、ダスティン・ポイエーと対戦します。
「これは“引退”からの復帰戦ということになるんですかね?」
――2020年6月にSNS上で引退宣言をしましたから、その復帰戦ということになります。マクレガーの引退宣言はこれで3度目なので、あまり信用していた人はいなかったと思います(笑)。
「そうですよね(笑)。でも、前言を翻して今回試合をするわけですけど、マクレガーがどんなモチベーションでオクタゴンに戻ってきたのか、というのがこの試合の第1のポイントでもあると思うんですよ。気持ち的には半分リタイヤしていて、たまに試合をしようとしているのか。それとも再びタイトル奪回まで考えてのことなのか。これが後者であるならば、ダスティン・ポイエー戦というのは、すごく面白いマッチアップだと思いますね」
――『暫定王座決定戦』とは銘打たれていませんが、ライト級王者のハビブ・ヌルマゴメドフが引退状態にある今、事実上のライト級頂上対決の一つでもあります。
「マクレガー、ポイエー、それからジャスティン・ゲイジーに、前回『UFC256』でトニー・ファーガソンを下したシャーウス・オリヴェイラあたりは、みんな世界チャンピオンと呼んでもいい実力の持ち主ですからね」
――そしてポイエーとマクレガーは2014年9月にも対戦していて、その時は、マクレガーがわずか1ラウンド1分46秒でTKO勝ち。今回は6年半ぶりの再戦になりますが、高阪さんはどう見ていますか?
「前回のマクレガーとポイエーの試合を自分もあらためて観てみたんですけど、正直、ポイエーの威圧負けというか。マクレガーのプレッシャーに下がっちゃってたんですよね。それで左フックをもらってダウンしてしまったんで」
――早々にケージ際に追い込まれてしまいました。
「その後、ポイエーの試合を見ると、アグレッシブに手数を出してKOの山を築いているじゃないですか。それを見る限り、“もしあそこで下がらず、まともにやりあっていれば、もっといい試合になっていたんじゃないか”と思うところはありましたよね」
――逆に言えば、マクレガー戦の反省から、しっかり自分からガンガン攻めていって、勝ち切るようになったのかもしれません。
「そうですね。マクレガー戦がひとつの転機になったのかもしれない。ポイエーの打撃の特徴としては、とにかく手数が多いっていうことが挙げられると思うんですよ。普通、前手のジャブを出しながら徐々に距離をつかんで、そこから畳みかけていく選手が多いですけど、ポイエーは自分からどんどん手数を出していく。しかも、手数を出して自分のペースを握るときと、倒し切るときの打撃の強弱がつけられる。だからこそ、あれだけ手数を出しながら、5ラウンドをフルに戦ったりもできるんだと思うんですよね」
――マクレガーは同じサウスポーのストライカーですが、タイプとしてはちょっと対照的でもあります。
「マクレガーはどっちかというと、手数を出すより一撃で仕留めるタイプですよね。そして、ふたりに共通しているのは、カウンターやリターンは、おおよそ左ストレートか、左フックなんですよ。そうなると、左を打ってきたときに左を返すという展開になった場合、マクレガーの方がパンチは伸びるので、ポイエーが手を出しにくくなるかもしれない。」
――前回の試合でポイエーが引いてしまったのも、そういうのがあったんでしょうか?
「“左を出したら合わせられるな”という感覚になっちゃうと、ポイエーは左ストレートを頻繁に打ちにいけなるなる、というのはあったかもしれないですね」
――では、相性という意味でもスタンドでは、マクレガー有利と?
「ただ、足が速く動くのはポイエーの方だと思うんですよね」
――それはフットワークという意味ですか?
「フットワークと蹴りの両方ですね。フットワークからパンチを打って、すぐに左ミドルを入れるとか。足技もパンチからのつなぎで早め早めに出す。そうなると、マクレガーが捉え難くなるんですよね。なので、足技も絡めてペースに巻き込むことがポイエーにできたら、後半ラウンドでポイエーに傾くかな、という気はするんです」
――ポイエーはスタミナも十分な選手で、グラウンドでも勝負できます。
「ポイエーは打撃を出してそのままタックルにつなげたりとか、相手が踏み込んだところで片足タックルにいったりとか、その辺が器用なので、いろんな伏線を張れるのはポイエーの方でしょうね。いろいろ“何がくるかな”と分からなくさせる攻撃を仕掛けることができる。マクレガーの場合は言ってしまえば一点豪華主義というか、一発で倒せる殺傷能力がものすごく高いので」
――では、ポイエーがいろんなことを仕掛けて、マクレガーを混乱させられれば戦況はポイエーに傾く。ただ、そうなったとしても一発逆転の一撃を持っているのがマクレガーということですね。
「だから、その辺の緊張感がある試合になるんじゃないかな。試合途中で“マクレガーが負けるんじゃないか?”と思わせながら、一発で逆転したり」
――今回、マクレガーはパワーアップして出てきそうですね。前回、1階級上のウェルター級でドナルド・セローニに圧勝していますし。
「あのままのパワーでライト級に落としてこられるのなら、破壊力がさらにさらに増しているでしょうね。そこはポイエーも、以前のマクレガーのままを想定していたら危ないかもしれない。また、それはマクレガーにも言えると思うんですよ。ポイエーはこの6年半の間、かなりの経験を積んできているじゃないですか」
――単純に試合数でいえば、この6年半でマクレガーの1.5倍です(マクレガーが8試合、ポイエーは13試合)。
「ポイエーみたいなタイプは、ひとつ経験したことを自分の中で枝分かれさせていく能力が高いんじゃないかと思うんですよね。たとえば、タックルを混ぜることによって、パンチがさらに当たるようになったり、タックルフェイントからパンチへつなぐバリエーションが増えたりとか、いろんな広がりが起こり、一個一個自分のものにしていける。そういった格闘技IQが高い選手だと思うんですよね」
――しかも、この6年半の間に数々のビッグネームを倒しているわけです。
「その経験値って、すごく大きいと思うんですよ。だから、そうやって身につけていった自分の技術を総動員して、マクレガーを混乱させることができるか、それに尽きると思いますね。ただ、それでもマクレガーは、ポイエーがいろいろやってきても、“そんなの知らねえよ”って感じで、一発で仕留める可能性もあります」
――そこがスリリングで面白いところです。
「それで最初にも言いましたけど、マクレガーがどんなつもりで試合に臨んでくるのかっていうのが、本当に重要だと思うんですよね。勝っても負けても、その後どうしていくつもりなのか。だから試合中の攻防だけじゃなく、試合前の言動から試合後のインタビューまで、全部踏まえて“マクレガーの試合”だと思いますね。すべてを見届けてもらいたいと思います」(取材/文・堀江ガンツ、写真・Getty Images)
『生中継!UFC‐究極格闘技‐
UFC257 in アブダビ コナー・マクレガー、再降臨』
1月24日(日)午後0時00分[WOWOWプライム]※生中継
(WOWOWメンバーズオンデマンドにて同時配信)
1月27日(水)午前5時50分[WOWOWライブ]※リピート
(WOWOWメンバーズオンデマンドにて同時配信)