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2020年12月31日(木)さいたまスーパーアリーナで開催された『Yogibo presents RIZIN.26』の第8試合(68kg契約・5分3R・ヒジ有り)で、平本蓮(THE PANDEMONIUM)を2R、マウントからのパウンドでTKOに下した萩原京平(SMOKER GYM)が、試合後のインタビューに応じた(※平本は会見を欠席)。
試合前から「平本君、今回がMMAのデビュー戦みたいなのでMMAの厳しさを教えてあげようと思うので、マウントとってヒジでボッコボコにしてやろうと思っています」という萩原に対し、「『楽しみな試合』とか言ってたけれど、ふざけんなよ。お前がボコボコにされるだけの試合だからな。勘違いするなよ。喧嘩自慢だか何だか知らないけれど、やってきた歴史が違う」と平本が切り返すなど、舌戦を試合直前まで繰り広げてきた両者。
試合は、最初の萩原の右フックからのダブルレッグ(両足タックル)はコーナーを背に首相撲で切った平本だが、ローキック、右アッパーなど打撃を織り交ぜながら前に、そこにジャブを合わせる平本に、崩れながらイマナリロールで近づき組み付く萩原は両手を胴でクラッチするボディロックに小外がけを合わせてテイクダウン。平本の立ち際にヒザ蹴りを顔面に入れるなど、立ち上がる平本に粘り強くテイクダウンをしかけ、徐々に平本の体力を削って行った。
このMMAの打撃&組みの攻防について、両者と練習の経験があるBellatorファイターのストラッサー起一が、自身のYouTubeにて、「勝負の際」を語っている。
試合前には、「お互いと練習しているし、お互いにエエやつだから好きやねん。だから複雑な気持ちだった」と中立を貫き、勝敗予想も公にしなかったストラッサーだが、スタッフには「萩原有利」を告げていた。
しかし、平本の勝機も感じていた、とストラッサーは言う。
「蓮選手をかばうわけじゃないけど、最後の1週間前の練習で、(平本の)立ち合いの間合いの取り方がメッチャ良かった。その間合いで打撃の攻防をしたら、打撃に関してはめちゃめちゃ強いから、なかなか(萩原はテイクダウンは)組まれへんだろうなと思っていた」と、平本のMMAの打撃の距離感がいい形で作れていたと証言する。
しかし、試合は蓋開けてみないと分からない。
「京平は打撃からタックルをどんどん組み合わせて行ってテイクダウンを取りにいった。蓮君も最初はテイクダウンを切って凌いだけど、京平もしつこくしつこくテイクダウンを織り交ぜて行って、最後は蓮君が下になってマウント取られた。蓮君よりもMMAの経験がある京平に組みを入れられたら実際は(蓮には)厳しい。組みが入るとめちゃくちゃスタミナが変わるから」
テイクダウンを獲りに行く側と、テイクダウンを切る側、通常はテイクダウンを切られ続けることで、テイクダウンを仕掛けた側の方が消耗する。しかし、この攻防で消耗したのは、平本の方だった、とストラッサーは指摘する。
「基本的には攻めてる方が疲れるけど、蓮君の場合はまだ慣れていないから、切るときに息止めてグッと力が入ってしまう。そうすると無呼吸・無酸素になって疲れてしまう。蓮君は相手に両足を掴まれたときに、足の運びがこういう(真っ直ぐ後ろに)下がり方をして倒されていた。これは絶対に良くなくて、左右に外す、両足を(後方に投げ出し)バービーでがぶる、相手の顔を切る(手でズラす)とかを即座にしないといけないところを、真っすぐ下がったから、京平からしたら簡単にテイクダウンを取れる。ということは体力を使わない。対する蓮君は力を使っている。そこでどんどん体力の差が出てきた」
テイクダウンの攻防で背中をマットに着かされ、身体に染み付いていないエビを繰り返し、足を戻そうとする平本。さらに亀からの立ち上がりにも体力を使う平本は、2度目の立ち上がりにも小外がけでテイクダウンを奪われると、あっさりとマウント&パウンドを許している。
「試合が決まったときからそういうパターンでKOするというのは決めていたんで、記者会見の時からどういう攻撃するかは平本くんに教えてあげとったんですけど、やっぱりこっちの準備してきたものの方がデカかった、強かったってこと」と振り返った萩原。
実は、この四つからの小外がけは、柔術家の岩崎正寛との練習で繰り返してきた動き。萩原の長い手足を活かし、四つに組んで頭を置く位置と小外でかける足を構えに応じて変えて、巧みにテイクダウンを奪っていた。
そしてマウントからのヒジ打ち・鉄槌&パウンド。それを嫌った平本が背中を見せるとバックマウント。すぐさま4の字バック。両足を胴に巻き4の字で固定するディテールも岩崎との練習で事前に披露していた動きだった。
ここで平本は2回転して腰をズラし、正対から立ち上がることに成功するが、シングルレッグから引き出されて倒れた平本は、亀からの立ち上がり際にここでもマウントを許している。
サイドに回りながらヒジ&ヒザを顔面に打ち下ろす萩原。背中を見せた平本にロープを挟んでのリアネイキドチョークを狙ったところで1Rのゴングが鳴った。
2Rの出だしからテイクダウンを警戒する平本の腰は引けた形に。パンチも放つが体力を削られ軸がブレている。左ボディをヒットさせるが、腰は入らず。もっとも得意とする打撃が、組み技と打撃で削られたことで、この時点でフィニッシュする武器では無くなっていた。
ダブルレッグからコーナーまで押し込み、大内刈で崩してから再びダブルレッグで引き出してテイクダウンを奪う萩原。両足を束ねられた平本は、足を戻すことも出来ず、マウントを許すと左腕をヒザで押さえつけられてのパウンドラッシュ。打たれ続ける平本を見て、レフェリーが間に入り、試合は決した。
リング上で「フェザー級の面白い試合が後半に組まれているんですけど、いま日本で乗りに乗っているYouTuberの朝倉兄ィ、平本君に勝ったらやるって言ってたから、次は俺でしょう。来年、(朝倉未来を)倒して絶対にベルトを獲るんで、最高の年を迎えます!」とマイクアピールした萩原。
立ち技の一流選手にしてMMAデビュー戦の平本を相手に、序盤からしつこくテイクダウンを繰り返しながらも、最後までスタミナが落ちなかった萩原。そして、何度も決定的な場面を迎えながらも、自らタップすることは無かった平本。ともにこの試合に賭けた想いが見えた熱闘となった。
「意外やったことは無いですね。何回かは立たれることも想定内で練習してきているので。ホンマに岩崎さんと練習したことが全部出た、岩崎さんの作戦が全部ハマった感じです」と、萩原は組み技特訓の成果を語る。
一方でストラッサーは、互いに課題があると言う。
「蓮君は素材としてはめちゃくちゃいい。良かった点は、最初にタックルを切って倒されなかった・立ち上がったところ。その場面を切り取れば勝負できたかなと思う」と平本の取り組みの成果を認める。
続けて、「ただ、総合にデビューするまでの期間がちょっと短かったかなと思う。今回は総合格闘家として間に合わなかったという感じ。蓮君はあんだけ言ってたら、この負けでめちゃめちゃ悔しいと思うけど、この負けで絶対に強くなってほしいし、強くなって戻ってくると思う」と伸びしろに期待を寄せた。
また、勝利した萩原についても、「京平も動きの継ぎ目の部分は甘い。もう1ランク、2ランクレベルが上がってきたら返り討ちにされる。勝ったからこそ反省してほしい」と、さらなる積み上げを望んだ。
2021年には、榊原信行CEOが、RIZINでフェザー級GPの開催も示唆しているが、「2人ともまだ若いし、これからの取り組み方次第。世界で戦うという目標を掲げないと上には行かれへん。同じ階級でカイル・アグォンを極めたクレベル・コイケという、そのレベルの選手が参戦してきている。格闘技は相性もあるけど正直、レベルの差がある。そこにどんだけからめるようになるか」と、「世界」を目指してほしいと発破をかけた。
またストラッサーは自身についても、「俺は強さを軸に置いて格闘技をやっている。Bellatorと契約していて、コロナのこともあり、なかなか試合が組まれないなか、RIZINが僕の試合を組むことを最後まで検討してくれて、年末大会に向けて取り組んできたけど、オファーは無かった。試合が決まっていないなか7kg落としたけど、実力主義として僕に見合った選手が見つからなかったのが悔しい。2020年、試合が出来なかったけど、ファイターとして下向いていてもしゃあないし、世の中が変わらない状況なら、自分が変わって行動していくしかない。プロ野球が人気だけでは新庄(剛志)選手を取らなかったように、格闘技界も実力ある選手をどんどん出していってほしい。正直、僕は実力あります」と、RIZIN参戦もアピールしている。
萩原京平の試合後の一問一答全文は、以下の通り。