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【RIZIN】扇久保博正「レベルの違いを見せなきゃいけない」vs.瀧澤謙太「四天王のトップに勝てば海選手と」=11月21日・大阪城決戦

2020/10/21 10:10
 2020年11月21日(土)の『RIZIN.25』大阪城ホール大会で、扇久保博正(パラエストラ松戸)と瀧澤謙太(フリー)がバンタム級で対戦する。  国内外で強豪が揃うこの階級で、前戦で朝倉海に敗れた扇久保にとってはサバイバルマッチ、金太郎との接戦を制した瀧澤にとっては四天王の1人が用意されたステップアップのためのチャレンジマッチとなる。両者の戦いはどうなるか。それぞれの証言から見えてくる相性は? ▼バンタム級(61.0kg)5分3R ※ヒジあり扇久保博正(パラエストラ松戸)瀧澤謙太(フリー)  扇久保はRIZINで元谷友貴、石渡伸太郎に勝利し、RIZINバンタム級王座挑戦権を得るも、8月10日の横浜大会でマネル・ケイプが返上した「王座決定戦」で朝倉海に1R 4分31秒 TKO負けで王座獲得ならず。今回が再起戦となる。  対する瀧澤は、9月27日のさいたまスーパーアリーナ大会で金太郎(パンクラス大阪稲垣組)と3Rの大激闘を繰り広げ、同大会のベストバウトと呼ばれる名勝負をスプリット判定で制している。  33歳の扇久保は極真空手をベースに持ちながら強いグラップリングを誇る現修斗世界フライ級王者。2016年には世界のフライ級王者が集う「The Ultimate Fighter」フライ級トーナメントに参加し、準優勝となっている。この10年で敗れた相手は堀口恭司と朝倉海の2人のみという強豪だ。  11月に26歳になる瀧澤は、小学生の頃から新極真の木元道場で練習し、PANCRASEではバンタム級王者のハファエル・シウバにも挑戦。2019年11月のPANCRASE310では、修斗世界フライ級2位の石井逸人を跳びヒザ蹴りでTKOに下すなど、MMA11勝のうち8つがKO勝利というストライキングを誇る。  ともにフルコンタクト空手をベースに持つ両者だが、そのファイトスタイルは異なる。  本誌の問いかけに扇久保は、瀧澤の空手について、「瀧澤選手は蹴りがすごく強くて気持ちも強い選手。結構蹴ってくるなという印象ですが、パンチはそんなに上手くないなと。でも僕もずっと極真をやっていたので、蹴りの勝負でも僕の方が上だと思っています」と回答。  その言葉を聞いた瀧澤は、扇久保の扇動に乗らず、「(扇久保に)空手っぽさはそんなにないかなと思っていて、ほんとうにボクシングとレスリングの選手だなと思います」と、扇久保のMMAでのパンチとグラップリングに警戒したいと語った。  扇久保は、8月10日のタイトルマッチで朝倉海に敗戦後、自身の『おぎちゃんねる』で「終わった直後は辞めようと思いました」と吐露している。 [nextpage] 望んでいた「激闘」にならなかった理由 「今後はまだ考えられない。俺はダメだと思ったんですけど……悔しいんで。このままでは終われないんで、ここからもう一回、這い上がって、ここからベルトを獲ったら凄いなと思うんで、それを見届けてほしいです」と、再起を誓う扇久保。  MMAファイターとしてトータルの完成度が高い扇久保だが、前戦の海戦では、自身でもコントロール出来ない誤算があったという。 「海選手は1Rの最初の2分の動きがめっちゃいいのを研究していたので、最初の2分はあまり手を出さずインローを蹴って、2分過ぎてからタックルを入れよう」という作戦だったのが、「コールされる前とか待っているときに“タックルで行くのやめよう。よし今日は打撃で盛り上げよう”と勝手にもう自分で決めちゃって」、作戦とは真逆のスタンド勝負のマインドになっていたという。  開始早々、海の遠間からの左の跳びヒザをバックステップしながら受け、そのまま蹴り足を掴んでシングルレッグに入るも、海の差し上げにテイクダウンに固執することなく扇久保は足を放している。 「跳びヒザを無意識にキャッチしたとき、あの瞬間もまったく力を入れてなくて、(テイクダウンを)獲る気なかったんで放したときに、朝倉選手、めっちゃ笑っていたんで、“そんなもんか”って思われちゃったかもしれないです。まあ、いま言ってもただの言い訳ですけどね」と、扇久保は苦笑する。  海は扇久保に「蹴りも打ってくるんだ」と意識させるなかで、巧みにパンチを効かせた。それは扇久保が近距離でブロッキングをする際に「下を向く癖があったからアッパーとヒザは狙っていた」(海)という海の作戦通りの動きだった。  扇久保は「フォーストコンタクトのボディがめっちゃ効きました。僕が右フックを打って、1発目のボディを合わされて、あれは効きました。そこから自分から打つのを戸惑った、打撃で入りづらくなったところはあるかもしれない。(フィニッシュに繋がるアッパーは)見えてないところから当てられて効かされたのかも」と勝負の際を振り返る。  試合後は、リング上で海と言葉をかわした。「(海の)顔を見た瞬間に堀口(恭司)選手のことが思い浮かんで、僕も勝ったら堀口選手とやらせてくれって言おうと思ってたんで、だからもう『堀口選手とやるんでしょ、勝ってね』みたいな感じで言ったと思います」。  望んでいた“激闘”は、作戦を変えて打撃戦に傾いたことでかえって遠のいた。「僕がタックルに行って、朝倉選手が切って……みたいな展開を僕がしなければいけなかった。結果的にKO負けで激闘が出来なかった。激闘というか……もっと盛り上げる試合が出来なかったのが、かなり悔しいです」 [nextpage] 格闘技が好きで、まだ諦めていない。朝倉選手にも堀口選手にもリヴェンジを(扇久保)  海戦の敗戦を経て、RIZINが用意したのは、金太郎を下して勢いにのる瀧澤謙太だった。勝者同士あるいは敗者同士を戦わせるのではなく、敗者と勝者を戦わせるマッチメーク。再起戦にしては厳しく、四天王としては壁になることが求められ、上を目指す者にはこれを越えられなければどのみちトップにはたどり着けないとステップボードにすることが期待されるカードといえる。  扇久保はこの“カラテキッド”について、「ヒザ蹴りが強い。ウチの佐久間健太ともやっていて(2016年11月佐久間が判定勝ち)、先にダウンを奪われながらも瀧澤選手が盛り返して、セコンドで見ていてすごい気持ちが強い選手だなと思いました。殺傷能力もあって、すごいいい選手ですね」と印象を語る。  接戦だった金太郎戦は、「瀧澤選手の勝ちかなと思って見ていました。(朝倉海と同じ)長身で同じようなタイプなのか、どうかな……、向かい合ってみてスピードがどのくらいあるのか」と、あらためて海のスピードが並外れて速かったことをうかがわせつつ、瀧澤とは対峙して体感してみないと分からない部分もあるとした。  大阪には「いい思い出しかない」という。2011年4月に修斗環太平洋フェザー級(-60kg)王座を獲得した松本輝之戦、2014年にカナ・ハヤットに一本勝ちした「VTJ 5th」、も大阪だった。  これまでRIZINでは、堀口恭司、元谷友貴、石渡伸太郎と各団体の王者同士、競い合う試合だったが、今回、初めてランカーを迎え撃つことになる。 「RIZINでは“迎え撃つ”ような試合は初めてかもしれないですね。修斗では防衛戦でそういう試合をいっぱいしてきましたけど。タイトルマッチでいろいろ気負い過ぎたので、自然体でいければと思っています」と、よそ行きファイトではなく、自身の持ち味を生かした戦いをするつもりだ。 「マジで勝ちます、今回は。申し訳ないですけど、面白い試合とか、もう今回は考えません。思う存分“扇久保博正”を出したいと思います」と語ると、“おぎちゃん”の顔に戻り、「今回はとりあえずSNSはすべて遮断して、山に籠ろうかと思っています」と笑顔を見せた。  これまで戦ってきた相手と比べれば、キャリアの差は歴然だ。それでも警戒を怠らない扇久保には、修斗王者としての自負もある。 「全然、油断はしてないですし、強い選手なのでいい試合になると思います。気持ちの勝負ですね。僕、PANCRASEの石渡選手にもDEEPの元谷選手にも勝っているんで、2人とも元バンタム級のチャンピオンですか。僕、フライ級ですけど、レベルが違うんだぞっていうのはやっぱ見せなきゃいけないかなと思っています。自信があるので、そこを見ていただければ」  前戦での後悔が、敗戦直後は「辞めよう」と思った現役に踏みとどまらせた。「やはり格闘技が好き。そしてまだ諦めていないので。朝倉選手にも堀口選手にもリベンジしたいと思っている」と、扇久保は改めて朝倉海と堀口恭司へのリベンジを誓っている。 [nextpage] 高校でレスリング部所属も「いまだに自分からタックルに行ったことが無い」(瀧澤)  一方の瀧澤は、9月27日に金太郎に競り勝っての2カ月間隔での連戦となる。 「前回、金太郎選手との対戦でKO出来なかったんですけど、今回しっかり皆さんの前でド派手なKOが出来るようにしっかり作り上げます。9月と連続の11月で今回、四天王のトップの扇久保選手とできることにすごく感謝してます」と、“四天王”と呼ばれる扇久保博正、元谷友貴(11.1 DEEPで米山千隼戦)、石渡伸太郎、佐々木憂流迦のなかでも、いきなりトップコンテンダーと対戦が決まったなかで“ド派手なKO”と自信も見せた。 「扇久保選手の印象はパンチと組みの選手。気持ちは僕のほうが強いと思うんで、気持ちで飲み込んで勝ちに行きたいと思っています。もちろんベルトを狙います」と、あくまで強気の瀧澤は、扇久保戦を足がかりに王座戦線に名乗りをあげるつもりだ。  金太郎戦後、空手の先輩である鈴木信達のYouTubeチャンネルに出演した瀧澤は、近年の成長について、組み技・寝技の進化が、打撃の進化もうながしているという。 「もともとは寝技に穴があったけど、いまは寝技にも自信が出来たので、誰とやっても相性が悪いと思う選手はいない。練習では寝技のトップクラスの選手とやるようになって極められないようになってきたので、これからは“より総合格闘技の戦い方”を出して行こうと思っています」  本誌で既報通り、“公園柔術家”として知られるGTFフェザー級王者・岩本健汰(IGLOO)とグラップリングの練習を積むことで、寝技の不安が解消され、さらにEXFIGHTで高谷裕之から学んだ“重心が浮かない蹴り方”で、「蹴り終わりも重心が浮いていないので、相手の組みを切ることが出来ます。ようやく空手がMMAの中で落とし込めるようになりました」という。  幼少時からフルコンタクト空手に慣れ親しんだが、高校の部活では将来的にMMAをやるためにレスリング部に所属していた。 「いまだに自分からタックルに行ったことが無いんです。足を触ったことが無い。(タックルを)切って打撃、切って打撃。でもほんとうは出来るんです。今までは寝技に自信が無かったから、レスリング力はあっても試合で寝技をやるスキルまでに到達していないと思ってタックルに行かなかった。打撃で倒せるのに、わざわざ寝技を使うリスクを取る必要は無いと考えていたんです」  MMAのなかで弱点を克服することで、これまでの軸がより生かせるようになってきたという。 「今までは“負けない戦い方”を研究してきた。テイクダウンデフェンスと寝技のデフェンス、でも今後はもっと簡単に勝てるような戦い方を勉強していて、そろそろ出したいなと思っています」  総合力で上回るのは扇久保だ。扇久保にしてみれば、前戦での反省を生かし、自身の強みである組みを交えた戦いでキャリアの差を見せつけたいところだろう。  打撃ベースで組み技も磨いてきた朝倉海の進化に近い道筋を辿っている瀧澤だが、海よりは蹴りの比重が高く、海ほどのパンチ力は見せていない。海が扇久保を攻略した動きを瀧澤は別の形で作る必要がある。  1年8カ月前にリアネイキドチョークで一本負けしたハファエル・シウバと似た強みを持つ扇久保を相手に、組みの展開でどう戦うか。レスリング解禁は瀧澤にとって新たな武器となるが、MMAのグラウンドは扇久保の庭。やはり、そのレスリング力を徹底してデフェンスに使ったときに、瀧澤の真価は発揮されるだろう。 「各団体のチャンピオンが集まっているRIZINのバンタム級のレベルは高い。ごちゃごちゃしているので、僕が四天王のトップに勝って、もし(大晦日に)海選手が負けたら、朝倉海選手とやりたいです。一番やりたいのは海選手ですね」という瀧澤。リベンジを目標に「ここでしっかり勝って来年に繋げたい」という扇久保。決戦まであと1カ月、勇猛な“雄鶏”たちはいまこの階級にいる。“黄金のバンタム”は、大晦日の朝倉海vs.堀口恭司に向け、まだまだ加熱しそうだ。
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