最強最後の相手・那須川天心戦へ向けて必殺の“鬼のローキック”を磨く裕樹
2020年11月1日(日)エディオンアリーナ大阪『RISE DEAD OR ALIVE 2020 in OSAKA』にて、RISE世界フェザー級王者・那須川天心(TARGET/Cygames)と対戦するRISE三階級制覇・裕樹(ANCHOR GYM)が10月20日(火)神戸の自身が会長を務めるジムにて公開練習を行った。
裕樹はパンチのシャドーを見せた後、サンドバッグを相手に代名詞でもある左右ローキック、左フック、右ストレートを最短距離で素早く打つことを意識しているように打ち込んでいった。
身体つきや動きを見てもいい仕上がりを見せているようだったが、「仕上がりはまだ。最終調整がまだなので現段階ではこれとう感じです。よく見えているだけ。あと1週間しっかり仕上げたい。疲労も上手に、3集前にきつい練習は上がって調整に入っています。トシもトシなので」と笑う裕樹。
37歳で73戦46勝(30KO)25敗2分のキャリアを持つ大ベテラン。RISEでスーパーフェザー級、ライト級、スーパーライト級の3階級制覇を成し遂げ、今回はRISEフェザー級(-58kg)で那須川に挑む。
「体重が軽い分、動きやすくはなっていますね。僕は今まで通り何も変えずにやっていきます」と、体重は落としても今まで通りのスタイル・戦い方でやるという。自ら過酷な減量が伴う58kgを望んだのは「世間的にそう見られる(体格差がある)のが嫌だったので58kgにしました。対等に戦いたかった。体重は同じだし、体格で上回っているとは思っていません。でも5kg差があっても彼は戦い方を変えないでしょうし、勝つ時は勝つ、負ける時は負ける。僕は体格のことは考えてないです」と、体格云々ではないとした。
今回の試合に関しては「ようやく僕の番が来たなって。いろいろな人の試合を見てきてコロナ(の状況)になって、当初の6月からここまで伸びてしまったので早くしたいなって感じです」と、早く那須川と戦いたいとする。
これが引退試合となるが「(実感は)ないですね。これが引退試合って言ってるし、そうなんですけれど、相手が相手じゃないですか。引退するって感じじゃない。今が最高の全盛期を迎えているので、ここで終われるのは嬉しい。次がないのかって実感は湧かないですね。この一戦に集中しているだけ。後のことは後で考えます」と、この一戦に集中していると答えた。
ローキックで倒すことを公言している裕樹だが、那須川のスピードある動きを捉えることができるのか。それを聞くと「もちろん自信はありますが、正直難しいと思っています。その難しいものに挑戦していきたい。試合が決まる前からイメージはしていたんですが、これは蹴れないなと思っていました。そこに挑戦する、当てられるのか当てられないのか、それがポイントです。そこしかない。策はないです。策をたてても一緒だと思います。正直、根性論です。僕は昭和の人間ですから。作戦をたててやっても飛びます(笑)。彼の前では策なんて通用しない」と、“根性”で挑むつもり。
天才に昭和のスポ根で挑む。「そういうことでしょう。みんなが求めているのはそこ。作戦をたてても煮え切らないファイトで終わりますよ」と、下手に策などたてるより、思い切り那須川にぶつかっていきたいとした。
周りからもアドバイスを「ちょくちょくもらっています。自分から聞きに行くわけではないですけれどね。僕は天心選手のファンでもあるし、あれだけカッコよく動けるのは誰もが憧れる存在。スピードがあって身体能力が高くて、その上で努力している。彼の試合をずっと見ていました。それをずっと考えていた。自分だったらどうするかって。皇治選手(皇治も那須川戦前に根性しかないと答えていた)や僕と同じ考えを持った、俺ならこうするよってファイターたちから指導を受けてサポートをしていただいています。かと言って作戦はないです」と、皇治からも話を聞いたという。
「アドバイスというより、彼とは友人ですし、練習する仲なので。やられちゃったよって話をいただいて。対策もクソもない。こういう印象だよって話を聞きました。僕と考えていることが一緒だったので、そうだろうなって。その内容は言えないです。でも、3R戦ってくれたのは非常にいいデータでした。1カ月前に試合を受けてやるってことは天心選手も自信があることですし、負けるわけないと思って1カ月前に受けてるわけだから、僕からしたらありがたいデータでした。彼と3Rなかなか戦える人もいないので」と、自分との試合1カ月前に皇治と戦った3Rはいいデータになったとする。
ただし、「戦い方は全く変わらないと思います。何も変えないです。天心選手もそれは分かっていると思う。どう来るかってことくらい。ローキックしかないし。それが当たるか、当てられないかの勝負です。それを受けても立っているのか、それとも当てさせずに僕をKOするのか。それでいいじゃないですか」と、シンプルな勝負になると話した。
そう聞くと玉砕覚悟のように聞こえるが、裕樹は「玉砕するつもりはないです。当り前ですけれど“勝負”なので勝ちに行く、倒しに行く。自分は倒れるつもりはないけれど、今まで何回も倒されているし、何カ月も努力してきたことが1Rで終わったこともある。それを怖がってはいません。その覚悟を持ってリングに上がる。最初から倒しに行く。相手も分かっていると思うし、相手もそう来る。そうじゃなければ僕と戦う意味がないでしょう」と、最初から倒しに行き合う“真っ向勝負”をするし、那須川もそう来るはずと予想。
那須川のファンの中には、裕樹の足跡を知らない新しいファンも多いだろう。RISEの会場に来るファンも入れ替わっている。その中で“Mr.RISE”と呼ばれ長くRISEをけん引してきた男は何を見せたいのだろうか。
「今年で22年目。16歳の頃から始めてちょうど11月6日で38歳になります。やり始めた時からスタイルを変えていません。最初だけアンディ・フグに憧れていろいろやったけれど、それが合わないと思って。基本的にはパンチとローだけでやって来ました。それでありがたいことにここまで続けることができて。RISEという舞台でトップファイターたちと戦ってこれました。そして最後に誰もが認める強いファイターと戦う。
若い子たちからしたら、ただのおっさんなんですよ。誰だこいつって。でもなぜ僕がここまで続けてこれたかというと、僕は同じことを毎日続けてきたんです。だからここに辿り着けたと思っています。僕がいろいろなことが出来ないこともあるけれど、ひとつのことを突き詰めてきたので、小さな積み重ねをすることでここまでたどり着けた。
99%の人たちが天心選手が勝つと思っているでしょう。でも勝負は何が起こるか分からない。そこを見て欲しい。勝負とは何か。キックボクシングを見てもらいたい。男と男の勝負です。那須川天心とおやじの勝負じゃないです。若い子たちにそれを見てもらって、リングに上がる時から降りる時まで、こういうファイターがいたなってことを覚えておいてもらいたい」とメッセージを送った。