2020年10月11日、アラブ首長国連邦・アブダビの「UFCファイトアイランド」にて、「UFC Fight Night: Moraes vs. Sandhagen」が無観客&ライブ配信で行われた。
▼バンタム級 5分5R○コリー・サンドヘイゲン(米国)[2R 1分03秒 TKO] ※右後ろ廻し蹴り×マルロン・モラエス(ブラジル)
メインイベントでは、群雄割拠のバンタム級で1位のモラエスと、4位のサンドヘイゲンが対戦。
2019年12月の前戦でジョゼ・アルドにスプリット判定で勝利しているモラエスだが、2020年7月「UFC 251」のバンタム級王座決定戦でピョートル・ヤンと対戦したのはランキング6位のアルド。そのアルドを5R TKOに下してベルトを巻いた王者ヤンに挑戦するためには落とせない1戦だ。
32歳のモラエスは、ブラジルから米国に移り、名将ヒカルド・アルメイダ&マーク・ヘンリーに師事。WSOFから2017年6月にUFC入りし、初戦こそハファエル・アスンサオにスプリット判定で敗れたものの、アスンサオにギロチンチョークでリヴェンジを果たすなど4連勝。
2019年6月の「UFC 238」のバンタム級王座決定戦では、フライ級王者のヘンリー・セフードに3R TKO負けで王座獲得に失敗しているが、その後アルドに判定勝ち。28歳のサンドヘイゲンの追い上げを断ち切り、再び王座挑戦にたどり着きたいところだ。
対するサンドヘイゲンは、キックボクシングでWKA世界王座を獲得後、MMA(総合格闘技)に転向。レスリング&柔術の受けも強く、2018年1月にLFAからUFC入り。オースティン・アーネット、ユーリ・アルカンタラ、マリオ・バウティスタ、ジョン・リネカー、ハファエル・アスンソン相手に5連勝も、2020年6月の前戦ではアルジャメイン・スターリングにバックを取られ、1R 88秒リアネイキドチョークで一本負け。UFC初黒星を喫した。長いリーチのボディ打ち、長いコンパスから繰り出される蹴りなど、打撃を最大の武器とする。
1R、向かい合うと168cmのモラエスに対し、180cmの長身が際立つサンドヘイゲン。タッチグローブは無し。
どっしり構えるオーソドックスのモラエスに対し、サウスポー構えからオーソドックス構えにスイッチするサンドヘイゲンは右ローをヒット。左オーバーハンドを見せたモラエスをかわす。左ジャブを当てるサンドヘイゲンにモラエスの右ローは空振り。距離はサンドヘイゲンか。右ローを走り込んで当てる。
モラエスの右ローがかすると、すぐに左インローを蹴り返すサンドヘイゲン。さらに高い前蹴りで牽制。モラエスの右オーバーハンドをかわすと、右フック。これはモラエスも避けると、サンドヘイゲンはすぐさま右ロー。サウスポースタンスになったところをモラエスも右ローを当てる。
オーソドックス構えにスイッチし右ローを当てるサンドヘイゲン。前足重心のモラエスはチェックせず。圧力をかけて速い戻しの右ローを当て返す。左ボディ打ちで入るサンドヘイゲンに右フックを返すモラエス。さらに右オーバーハンド。今度はブロックするサンドヘイゲンが右ローを返す。
左ジャブから右で入るサンドヘイゲンを右で迎撃するモラエス。右の蹴りの蹴り合いから前手のジャブで距離を測るサンドヘイゲンは、サウスポー構えからそのまま歩いてオーソになって近づき左ボディ! モラエスの右の返しにはすっと離れる。
右ローを当て、右の跳びヒザを見せたサンドヘイゲン! さらに遠間からの飛び込む左フックとリズム良く攻撃。サウスポー構えから右ジャブをこつこつと突き、今度はオーソからワンツー&ローまで繋ぐ。的が絞りにくいモラエス。サンドヘイゲンの右の後ろ蹴りはかわすと遠間から右のスピニングバックフィスト! バックステップも被弾したサンドヘイゲン。ジャブの刺し合いから鋭い右アッパーを突く。
左の高い蹴りをジャブのように使うサンドヘイゲンは右ローをヒット。しかしモラエスも飛び込んでの左フックでサンドヘイゲンを後退させる。右ジャブをダブルで突き、角度をつけて入るサンドヘイゲン。モラエスは左フックを狙うが空振りでバランスを崩す。サンドヘイゲンもワンツーを打つが、モラエスは左回りでかわす。
右オーバーハンドは空を斬るモラエス。打ち返しに左を狙うがそこはサンドヘイゲンもダックでかわす。右ジャブから左のバックフィストで牽制するサンドヘイゲン。同じバックフィストを返すモラエス。
オーソから歩いて詰めて左ミドルを当てるサンドヘイゲン! ジャブの刺し合いからさらに左ミドルをボディに当てて、今度は右ローから右のヒザ蹴りのダブルのコンビネーション! その打ち終わりにモラエスも左フックを返す。
左に回るモラエスを追うサンドヘイゲンは左ミドル。それをキャッチしたモラエスはシングルレッグで尻餅を着かせるが、そのまま残り5秒をしがみつくモラエスの頭を押さえてやりすごす。的確な打撃を入れたサンドヘイゲンのラウンドに。
2R、オーソのモラエスの右ローにサンドヘイゲンは左インローを返す。喧嘩四つで前手を突き合う両者。オーソドックス構えに変えたサンドヘイゲンは左ヒャブを外からのはたきと真っ直ぐを混ぜてトリプルで打つと、右の前蹴りも。さらにサウスポー構えから左のスナップを効かせたヘッドキック。これはブロッキングしたモラエス。左に回ると、サンドヘイゲンはノーガードで追っていく。
ジャブで頭を押さえにきたサンドヘイゲンに右ボディから左フックの対角線攻撃で押し返すモラエス。バックステップするサンドヘイゲンは、オーソドックス構えから左インロー!
これをバックステップでかわしたモラエスが再び入ってきたところに、サンドヘイゲンは左の前手を目前に伸ばしておいて、背中を見せて上段の右の後ろ廻し蹴り! 踵をテンプルにかすめてもらったモラエスは後方にダウンして後転! すぐに詰めたサンドヘイゲンが右のパウンドを5発入れたところでレフェリーが間に入った。
試合後、ケージの上でコーナーマンとハグしたサンドヘイゲンは、勝者コールを受ける際にコーナーの2人とも手を繋いで両手を挙げてガッツポーズ。オクタゴンの中で、「TJ(ディラショー)かフランキー(エドガー)と戦いたい」と語った。
バックステージでの公式インタビューでサンドヘイゲンは、フィニッシュについて、「マルロンは本当に危険な相手だから、距離を取って安全に戦う必要があった。何度かボディショットも決めてダメージを与えられたと思う。ヘッドキックもかなりいい軌道で入った。相手がボディショットを受けていたのは分かっていたし、こっちのコーナーがそれについて話していたのも聞こえたはず。だから、その後で頭を狙っていったんだ」と、ボディ打ちを布石に高い後ろ廻し蹴りを狙ったことを明かした。
続けて、「ナンバー1コンテンダーの試合がしたい。(2位のアルジャメイン)スターリングがヤンと対戦すべきだと思う。彼との対戦では完全にしてやられた。TJが1月に戻ってくるし、フランキーもまだいけるらしいから、そういう選手とやりたい。ベルトはそれからだ」と、王座挑戦前に5位のエドガーかベテランのTJとの対戦を希望。
UFC7戦中5試合をフィニッシュしている決定力について、「説明するのは難しいんだけど、俺はかなり徹底的でタフなタイプだ。そうとしか言えない。説明のしようがないんだ。俺にノックアウトする力があることも分かってもらえたはずだ。そのために頑張ってきた。試合に出て、相手より多くポイントを多く取ることだけがいいとは思っていない。ノックアウトしたいし、それを実行した」と説明すると、「向こうのショットも良かったけど、ラウンドの終盤にはすでに息が上がっていたみたいだった。コーナーマンに『向こうはもうかなり息が激しい』って伝えたくらいだ。俺はまだまだいけたから、あとは時間の問題だなと思っていた。とにかくやるべきことをやり続けるだけだった。どんどん(相手の)息が荒くなっていって、最後はとっ捕まった感じかな」と、プラン通りのフィニッシュだったことを語った。
世界のどこを見ても強豪ばかりのバンタム級。UFCでは、王者のピョートル・ヤンを頂点に、1位だったモラエスが敗れ、2位のスターリングがトップコンテンダーに。3位にアスンソンをKOしたコーディ・ガーブラント、サンドヘイゲンは4位につけている。5位がエドガー、6位がガーブラントを1R KOに下しているペドロ・ムニョスというランキングになっており、トップ10以外にもコディ・ステーマン、ショーン・オマリー、ソン・ヤードンといった強豪が控えている。
堀口恭司がベルトを返上したBellatorバンタム級では、ファン・アーチュレッタがパトリック・ミックスを下し王者に。その王座を狙うRIZINバンタム級王者の朝倉海、海に勝っているマネル・ケイプはUFCではフライ級に参戦予定だ。海の王座を狙うのは堀口ばかりではなく、DEEP王者のビクター・ヘンリーもコンテンダーの1人。ONEでもビビアーノ・フェルナンデスを筆頭に、ケビン・ベリンゴン、佐藤将光ら強豪が鎬を削るのがこの階級だ。
この日、ハイレベルな打撃戦を見せつけたサンドヘイゲンとモラエス。その上には異次元レベルの強さのヤンや、引退宣言も去就が揺れるセフードが君臨している。
果たして、日本勢は“黄金のバンタム”でどこまでやれるのか。まずは大晦日の頂上決戦「朝倉海vs.堀口恭司 2」でひとつの答えが出る。
[nextpage]
UFC Fight Night: Moraes vs. Sandhagen
2020年10月11日アラブ首長国連邦・アブダビUFCファイトアイランド
▼フェザー級 5分3R○エジソン・バルボーサ(ブラジル)[判定3-0] ※30-26, 30-27, 29-28×マクワン・アミルカーニ(フィンランド)
▼ヘビー級 5分3R○マルチン・ティブラ(ポーランド)[判定3-0] ※29-27×3×ベン・ロズウェル(米国)
▼ミドル級 5分3R○ドリカス・デュプレシー(南アフリカ)[1R 3分22秒 KO] ※左フック×マーカス・ペレス(ブラジル)
▼ヘビー級 5分3R○トム・アスピナル(英国)[1R 1分35秒 TKO] ※パウンド×アラン・ボドウ(フランス)
▼フェザー級 5分3R○イリャ・トプリア(ジョージア)[判定3-0] ※29-28×3×ユーゼフ・ザラル(米国)
▼ミドル級 5分3R○トム・ブリーズ(英国)[1R 1分42秒 TKO] ※右ジャブ→パウンドKB・ブラー(カナダ)
▼ヘビー級 5分3R○クリストファー・ダカウス(米国)[1R 0分45秒 TKO] ※パンチラッシュ×ホドリゴ・ナシメント(ブラジル)
▼ミドル級 5分3R○ホアキン・バックリー(米国)[2R 2分03秒 KO] ※右バックスピンキック×インパ・カサンガネイ(米国)
▼バンタム級 5分3Rトニー・ケリー(米国)[判定3-0] ※29-28×2, 30-27アリ・アルカイシ(ヨルダン)
▼フェザー級 5分3R○ギガ・チカズ(ジョージア)[判定3-0]※30-27×3×オマー・モラレス(ベネズエラ)
▼女子バンタム級 5分3R○トレイシー・コルテス(米国)[判定3-0] ※30-27×3×ステファニー・エッガー(スイス)
▼フライ級 5分3R○タジル・ウランベコフ(ロシア)[判定3-0] ※29-28×2, 30-27×ブルーノ・シウバ(ブラジル)