MMA
インタビュー

【RIZIN】3つの割れた判定──ライト級・久米vs.北岡、武田vs.川名、大原vs.矢地で勝者と敗者は何を語ったか=9月27日(日)さいたま

2020/09/28 15:09
 2020年9月27日(日)さいたまスーパーアリーナにて、「Yogibo presents RIZIN.24」が開催された。  第8試合と第9試合では、ライト級相当の71.0kg契約で、国内のMMA団体から王者たちが集結。トフィック・ムサエフを頂点とするライト級戦線を占う激闘が繰り広げられた。  修斗から川名雄生(Y&K MMA ACADEMY)、PANCRASEから久米鷹介(ALIVE)、DEEPから武田光司(BRAVE)の3王者が参戦。川名が武田と対戦し、元DEEP王者の北岡悟(ロータス世田谷/パンクラスイズム横浜)が久米と対戦した。  第8試合では、序盤の北岡の右にグラつきながらも、ギロチンを凌いだ久米が、巧みなステップからの打撃、ボディロックからのテイクダウンでコントロールし、接戦をスプリット判定で制した。コーナーを巧みに使った北岡の老獪さに久米が持ち味を出し切れずとも競り勝った試合とも言える。  試合後、久米は「北岡選手、本当に強い選手でした。想像通りの強い選手でした。戦えて光栄です。いい舞台を用意していただいて強い選手も集まっていて、RIZINに来たのは強い選手と戦いたいというのがあるので、自分がチャレンジの気持ちで戦えるような相手に挑戦していきたいです」と第一声。  判定が割れたことについては、「凄く強い選手と知っていましたし、(実際)タフな相手でしたからそういう状況になったのだと思います。しんどい試合は覚悟してきたのでその中でも勝ち切れたのはよかったと思います」と、想定していたことだとし、勝因は「パンチや要所で三日月(蹴り)を当てたのと、最後にテイクダウンを取れたのが大きかったと思います」と、要所での打撃と、最終局面でのテイクダウンが決め手となったと振り返った。  一方、スプリット判定を落とした北岡は、「負けなのでまた負けてしまったな、というところでしょうか。結果を求めてやっているので。でもちゃんと自分の……うーーん、っていう話です」と、複雑な心境を吐露。  対戦相手の久米については「予想していた通りでしたね。かなりイメージしていて。その通りで想定していた範囲内ではありましたね。強い選手だと分かっていて、だからこそ強い自分を作ろうとして作ってきてリングに上がったつもり、というところです」と、想定していた通り強く、そこに対峙してきた自負をのぞかせた。  判定は割れ、1者が北岡を支持。全ラウンド通したトータルジャッジで、ダメージ、アグレッシブネス、ジェネラルシップの優先順位で評価されるRIZINでは、自身に票が入ると考えたかの問いには、「うーん、そうですね。それは本当にそう思っています。まあ、割れて勝つんじゃないかくらいに思っていましたね、正直。あの、(退場時の)マイクが拾ったのか、ネットで見かけましたが『フィニッシュに近かったのは俺だ』と思っています。でも負けだって言われて、公式記録で満天下に負けだと言われたので、まあ僕の負けだとも思っています」と、敗北を受け入れながらも、型にハメる時間があったのは自身だという思いも明かした。  iSOMSでの引き分けを挟み、RIZINでは3連敗に。今後の展望を問われた北岡は、「今後の展望、うーん……」と長考すると、「とりあえず消去法から言うとYouTuberにはなりません(笑)」と笑顔。「いや別にYouTubeやってる人を批判したいわけじゃありません。僕も実はスマホでノー編集の動画を週1回くらいには上げてるんで、YouTuberの人を否定しているわけじゃないですよ。ただ、YouTuberにはならないと思います」と、行く末について、独自の答えで和ませた。 [nextpage] 武田「泥臭くても勝つことが第一だった」、惜敗・川名は「作戦通りに出来て負けた」  一方、第9試合では、川名と武田が対戦。武田は得意のグレコローマンレスリングをハイクラッチのシングルレッグなどで活かして川名に尻餅まで着かせるが、抑え込むことは出来ず。テイクダウンを防ぐ川名は巧みなボクシングでコントロールも、互いに決定打を与えることは出来ず。こちらも接戦の判定は、スプリットで武田が勝利。際どい試合をモノにした。  しかし、目標を世界に据える武田は試合後、「修斗のチャンピオンで凄く強かった。対策されていましたね。僕が投げてもって行きたかったけど、出来なかった。実力不足だと思いました」と反省しきり。  北米PFLを経ての修斗王座を戴冠した川名について、「ボクシングが凄く強かったです。肩のフェイントとか、右が見えなかった」と率直に語り、「1、2Rを終えて宮田(和幸)先生と話していたのは、僕はグレコローマンなんですが、1Rが終わって、胴をクラッチしてテイクダウン出来るか? と聞かれ、いつもは『行けます』と言えるんですが、相手が予想以上に強かったので『テイクダウンが出来そうにないです』と答えたくらいで、予想外のことが多かったです」と、苦しい試合展開だったことを明かした。  それでも「泥臭くても勝つことが第一だったので、勝つことが出来たのは良かったです。もっと練習をしなくてはと思いました」と胸をなでおろした。  終始、勝者の笑顔は見せなかった武田は、「らしさが出せなかったことが一番大きい。勝てたことは良かったんですが、内容がダメダメなので喜べない。それが顔に出たんだと思います」と語ると、今後について、「今後の展望は読めないです。RIZINが僕をまた使ってくれるのか。使ってくれることを信じて毎日練習をやるだけです。僕が出来るのはそれだけです」と語りながらも、SNSで反応があった「ジョニー・ケースとはやってみたい」と前を向いた。  敗れた川名は、対戦相手の武田について、「意外とパンチが伸びたなっていうのがあります。“オッ”と思いました」と語りながらも、「作戦通りに出来て負けたので……もう武田選手の勢いが上回ったのかなと。お店(※川名は北海しゃぶしゃぶ湘南藤沢店の店長)の宣伝ができなくて悔しいですよ(苦笑)。それに尽きます。映像で研究した通りで負けました」とサバサバとした表情。  どちらに軍配が上がっておかしくない中、『作戦通りに出来た』上でのスプリット判定負けには、「こればかりはジャッジの好みなので運が悪かったかなという感じでしょうか。好みが分かれるのはしょうがないので。ジャッジに委ねた時点で、勝つ負けるは仕方がないので不服はないです」と語った。  RIZIN初参戦で実力の一端を示し、今後の参戦も期待されるが、修斗王者として「修斗は修斗、RIZINはRIZINでうまいこと寄り添って行ってもらえたらと思います」と、調整を望んだ。さらに「今さっき、ツイッターでダミアン・ブラウンが『やろうよ』って言ってきたんですが……怖いなって(笑)。これやらされるんですか? 個人的には怖いので遠慮したいんですが、オファーが来たらやるしかないので、そこはご検討お願いします」と、世界の厳しさを知る川名は、対外国人についても受けて立つとした。 [nextpage] 矢地敗戦で「また期待を裏切る結果に」、番狂わせ起こした大原は「意地で勝ちました」、PANCRASEで新暫定王者も誕生  同じライト級では、第1試合で矢地祐介(KRAZY BEE)と大原樹里(KIBAマーシャルアーツクラブ)が対戦。大原が矢地をスプリット判定で下す、アップセットを起こしている。  直近5戦で1勝4敗と低迷。「負けたら次はない」と公言して臨んだ大原戦でダウンの応酬の末、競り負けた矢地は試合後、「ちょっと言葉が出てこないっスね……ホント。何もかもに落胆していると言うか、とにかく、悔しいですね……」と絶句。  動きにも精彩を欠き、サウスポー構えの利点を活かすことが出来ず。武術を採り入れた半身気味の構えのためか、対オーソドックスに対して内側に向くことで大原の長い右ミドル・ヒザを被弾した。 「どんなに僕が上手く行かなくても、本当、皆さん懲りずに応援していただいて『次こそはみんなに喜んでもらいたい』って思いで戦ってるんですけど……そこでまた期待を裏切る結果になってしまって。すごく申し訳ない気持ちと、悔しい気持ちでいっぱいです」と意気消沈した。  RIZINでの格でいえば矢地が上だが、約10年のキャリアで47戦している“鉄人ファイター”大原の「ちょっとした判定だと勝てないと思っていたので、最後まで攻め切ろうと思っていました」という執念を上回ることが出来なかった。 「スタミナ切れというより、気持ちの部分で押されてしまった」という矢地は、最終3Rにシングルレッグに小外掛けを合わせたクリーンテイクダウンからバックマウントまで奪ったものの、前方に落とされた場面について、「きれいにテイクダウンできて、ちょっと気が抜けてしまった。当たり前だけど、相手は最後まで諦めてなくて、(自分は)最後15秒くらいで頑張れなかった」と勝敗の際を振り返った。今後については「何も考えられない」と話した矢地は、どこでどんな居場所を見つけるか。  一方、アップセットを成し遂げた大原は「夢見心地ですね。結構大舞台でやることもあったんですけど、やっと勝てた。意地で勝ちました」とRIZIN初参戦での勝利に笑顔を見せた。 「RIZINのリングは広いんだろうと思っていたけど、そんなに広さは感じなかったですね。意外と冷静だった」と振り返る大原は、矢地が「最後15秒くらいで頑張れなかった」という攻防については、「テイクダウンを取られた瞬間に、“やばい。ここ(RIZIN)のルールはサッカーボールキックと蹴り上げがある”と思って、そこだけすごく必死で、3Rはほぼ覚えていなくて……。1Rは取ったと思った。2Rは取られて、3Rは行かないと勝てないとは思っていたので無意識にパウンドを打っていた」と、必死だったといい、「少しでも引いたら勝てないと思っていた。ちょっとした判定だったら勝てないと思っていたので、最後まで攻め切ろうという気持ちだった」と、アンダードッグとして見られた矢地戦で、判定でも明確に差が出るように、最後まで気持ちを振り絞ったことを語った。  今後の海外選手の渡航状況と契約次第だが、ライト級では、トフィック・ムサエフ、ダミアン・ブラウン、ジョニー・ケースらがRIZINマットを席捲しており、国内メジャーでも、同日に新たなライト級王者が生まれている。  27日のPANCRASEでは正規王者の久米がRIZIN参戦中のため、「暫定王座戦」として雑賀ヤン坊達也(総合格闘技道場DOBUITA)と林源平(和術慧舟會Iggy Hands Gym)が対戦。雑賀が1R1分55秒、右アッパーで見事なKO勝利でベルトを巻いている。  試合後、同日のRIZINで北岡悟に判定勝利した正規王者・久米について問われた雑賀は、「“久米地獄”(ケージに押し込んでテイクダウンからグラウンドで延々ドミネートする久米得意の展開を指して)って感じですよね。でも僕もああいう試合は嫌いじゃないんで。久米選手となら熱い試合ができると思います」と王座統一戦へ意欲を見せている。久米陣営も、正規王者としてPANCRASEで「防衛戦」を行うことも出来る契約になっているといい、今後の統一戦も注目される。  70kgという、日本人にとってはすでに中量級以上ともいえる階級の世界の層は厚く、頂は高い。  UFCでは10月24日にハビブ・ヌルマゴメドフが連勝記録を28に伸ばすべく、暫定王者ジャスティン・ゲイジーと対戦することが決まっており、元Bellator王者のマイケル・チャンドラーも同大会の補欠選手として参戦。現Bellatorライト&フェザー級王者のパトリシオ・ピットブルは、11月12日に6連勝中のペドロ・カルバーリョと対戦する。RIZINライト級GP王者のトフィック・ムサエフは、その間に位置していると見られている。  RIZINで日本のライト級トップに立つのは誰なのか。そして世界と伍するのは? 今後のライト級戦線にも注目だ。
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