2020年9月5日(日本時間6日)、米国ネヴァダ州ラスベガスの「UFC APEX」にて、「UFC Fight Night: Overeem vs. Sakai」が無観客&ライブ配信で開催された。
【メインイベント】
▼ヘビー級 5分5R○アリスター・オーフレイム(オランダ/252.5lbs/114.53kg)[5R 0分26秒 TKO]×アウグスト・サカイ(ブラジル/261.5lbs/118.61kg)
ヘビー級6位のオーフレイムと、9位のサカイの5R戦。解説席から「K-1王者」と紹介された40歳のオーフレイム。1999年のプロデビューから、PRIDE、DREAMでも活躍し、立ち技とMMAの両競技でベルトを巻いている。
近年のUFCでは、2017年12月にフランシス・ガヌー、2018年6月にカーティス・ブレイズに敗れるも、11月にセルゲイ・パブロビッチを1Rでパウンドアウトすると、4月にもアレクセイ・オレイニクを1R TKOで2連勝。12月にジャルジーニョ・ホーゼンストライクに5R 右クロスで敗れたが、2020年5月のウォルト・ハリス戦ではKO寸前まで追い込まれながら、ラッシュを凌いで逆転のKO勝ち。上位ランカーの座を保っている。
対する29歳のサカイはブラジル・クリチバ出身の日系ブラジル人。MMA15勝1敗1分けで、唯一の黒星は、2017年5月にBellatorで元UFCのシーク・コンゴにスプリット判定負けしたもの。2018年9月のUFCデビューからチェイス・シャーマン、アンドレイ・アルロフスキー、マルチン・ティブラ、ブラゴイ・イワノフを相手に4連勝中だ。
1R、ともにオーソドックス構えから。ワンツーで飛び込むオーフレイム。かわすサカイの右ストレートはオーフレイムが左に潜ってかわす。右の前蹴りを腹に突き、右を振り詰めるサカイは首相撲ヒザを狙うが、オーフレイムも逆に首相撲ヒザで切り返し。サカイは右ヒザを突き、離れ際に左ヒジを振る。
右オーバーハンドフックを当てるオーフレイム! サカイもガードの上に右ストレート。オーフレイムは左インローをヒット。詰めるサカイは左右から右の鉄槌をスタンドで振り下ろす。サカイの右フックも左にかわすオーフレイム。
2R、サウスポー構えのオーフレイム。サカイの組んでのヒザを突き放し、オーソドックス構えに戻す。サカイも両手を上下に動かしながら、ジャブ、さらに右ハイをガード上に当てる。金網に詰めての右ボディ打ち連打はサカイ。オーフレイムは左で差して体を入れ替えると、四つからヒザ蹴り。離れ際に右ヒジを狙う。
体を入れ替えたサカイはアゴ下に頭を付けて押し込むが、再び体を入れ替えたオーフレイム。しかし顔にヒジを押し付けるサカイはそのままヒジを顔面に滑らせる。サカイの左右をブロッキングするオーフレイムだが、下がる場面が増えて来た。
3R、サカイの前足に左インローを打つオーフレイム。右のサイドキックも。ガードを固めるオーフレイムにサカイも左右で顔面をはたいてからの右ローを決める。金網背にガードを固めるオーフレイム。左右フックからアッパーを突くサカイに、オーフレイムは体を入れ替え、スイッチキック。サカイも右ローからボディ打ちで押し戻すも、オーフレイムは四つに組んで小外がけでテイクダウン! パウンドを狙うオーフレイムに、サカイも下から足を効かせて蹴り上げを狙う。インサイドガードの中に入ったオーフレイムは鉄槌! サカイを出血させる。
4R、歩きながら左右の足を入れ替え詰めるオーフレイム。ここはサカイも押し返すとオーフレイムはガードを固める。そこにアッパーも突くサカイは右ヒジを振る! 出血したオーフレイムも押し返し、後ろ蹴りをボディに突くが、下腹部に入り、中断。
再開、ワンツー&ローのオーフレイムに対し、シングルレッグでテイクダウンを奪うオーフレイムは、インサイドからパウンド! さらにレッグドラッグの体勢から左フックを顔面にパウンドさせる。ハーフガードから削るオーフレイム。ヒジも受け防戦一方になるサカイはブザーにしばらく立ち上がれず。
5R、ダブルレッグからボディクラッチし、足をかけて後方に投げて早々にテイクダウンを奪うオーフレイム。背中をつけて立ち上がる動きが出来ないサカイは半身で気持ちが折れたか。顔を片手でガードするのみで身体が丸まってしまう。そこにオーフレイムは右ヒジと鉄槌を連打し、レフェリーを呼び込んだ。
スタンドの攻防から3Rからテイクダウンを決めて決定的なダメージを与えていったオーフレイム。2連勝を決めた“デモリッションマン”は再び王座戦線にからんでくるか。
試合後、オーフレイムはオフィシャルのインタビューに、「これは数ラウンドかかるだろうなと思ったし、結局5Rまで行った。コーチたちに心からの敬意を表したい。彼らが俺を完璧に仕上げてくれたし、キャンプも完璧だった。だからこそ、試合中の判断を正しく下すことができた」と、合流して以来、4勝1敗と調子を戻したデンバーの「Elevation Fight Team」の面々に感謝の言葉を語った。
さらに、「テイクダウンもしっかりできたし、グラウンドで相手を仕留められた。グラウンドでフィニッシュできるという感触があったんだ。向こうのバックグラウンドが打撃だったからね」と、中盤から決めたテイクダウンが有効だったと試合を振り返った。
と同時に、オクタゴンで4連勝中のサカイについて、「彼は耐久力がある。それは分かっていたつもりさ。思っていた以上に忍耐強かったと思う。新星でハングリーだし、タフでパンチもハードだ。俺が思っていたよりも少しだけハードなパンチを打ってきた。キックも危険だ」と讃えると、「後半のラウンドまで持ち込まなければいけなくなったけど、なんとかフィニッシュした。1Rでフィニッシュできたら理想的だったけどね。10秒勝利とかいいだろ。でも、これがUFCだ。みんなが勝つためにプランを立ててくるし、カーディオも戦略も練ってくる。ときには我慢も必要だ。これが俺のベスト中のベストさ」と、“壊し屋”からの成長ものぞかせた。
また、今後については「チームと一緒にこれからも成長し続ける。このチームは最高さ。これから? 少しゆっくりするつもり。キャンプの間は家族と離れていないといけなかったから、ものすごく恋しいよ。一緒に過ごしたくてたまらない。娘たちがすごく可愛く成長しているんだ」と束の間の休息を望んだが、「今後がどうなるかはそのうち分かる。12月か1月にはまた試合がしたいなと思っている。今は家族の時間だ」と、心身ともにオーバーホールを経て、年末年始に向けて再び調整することを語った。
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【セミメインイベント】
▼ライトヘビー級 5分3R○オヴィンス・サン・プルー(ハイチ/205.5lbs/93.21kg)[2R 4分07秒 KO] ※左フック×アロンゾ・メニフィールド(米国/204lbs/92.53kg)
8月23日のUFCからのスライドカード。試合当日にサンプルーに新型コロナウイルス陽性反応(無症状)が出たため、延期となっていた。
共にアメリカンフットボール出身。サンプルーは2018年10月にドミニク・レイエス、2019年4月にニキタ・クリロフに敗れたが、9月にミハル・オレクシェイチュクに得意のヴォンフルーチョークで一本勝ち。2020年5月にはヘビー級でベン・ロズウェルと対戦したが、スタミナ厳しくスプリット判定負けしている。
対するメニフィールドはBellator、LFA、DW's Contender Seriesを経て、2019年1月にUFCデビュー。ヴィニシウス・モレイラ、ポール・クレイグをいずれも1R KOで下すも、2020年6月のデビン・クラーク戦では、スタミナ切れでの判定負けでMMA初黒星を喫した。8月大会ではシャミール・ガムザトフの代役での緊急出場という状況だったため、今回の仕切り直しの一戦で再起を果たしたいところ。
1R、オーソドックス構えのメニフィールド。サウスポー構えから入るサンプルー。右の出入りから右で差して組むメニフィールド。左の差しに変えるも離れると、サンプルーが左の前蹴り。左回りにステップを踏むメニフィールドは、サンプルーの左を掻い潜りダブルレッグへ。ここは切るサンプルーは左を当てるが、メニフィールドも飛び込んでの左を返す。
2R、詰めるサンプルーにサークリングするメニフィールド。左の蹴りで追うサンプルーだが、メニフィールドも身体を上下にレベルチェンジして左右で反撃。右ボディから左フックを振って詰めてきたメニフィールドに、サンプルーは下がりながら左のショート! メニフィールドが前のめりにダウンし、サンプルーがKO勝ちを決めた。
勝利にサンプルーは、いつもの両手を広げて舌を出すポーズとともに、両手をクロスし、がんで亡くなった『ブラックパンサー』役のチャドウィック・ボーズマンが劇中で見せる「ワカンダフォーエヴァー」のポーズを見せた。
バックステージでの公式インタビューでサンプルーは、「良い勝ち方だったと思う。パワーがないと思われがちだからね。ヘビー級で最もタフな男とも対等に戦うことができた。相手の方がパワーでは勝っていると思っていた人が多いようだけど、しっかりそれを否定することができた」と、前戦でのヘビー級挑戦が活きていたといい、「相手も序盤は距離を保ちながら打撃を中心に攻めていた。いずれ前進してくるだろうとは思っていたよ。俺はむしろ前進してくるところを狙っていたと言ってもいいかもしれない」と、下がりながら狙いすまして打ち抜いたフィニッシュブローを振り返った。
「2020年は本当に大変な1年になった。正直もう忘れたいくらいだ。でも、今年中にもう1試合してもいいよ」と笑ったサンプルー。パフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを受賞したOSPの今後に注目だ。
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【メインカード】
▼ウェルター級 5分3R ○ミシェル・ペレイラ(ブラジル/170.5lbs/77.34kg)[3R 4分39秒 リアネイキドチョーク]×ゼリム・イマダエフ(ロシア/171lbs/77.56kg)
※左ジャブ、右のオープンハンド、右ストレート、右前蹴りを当てるペレイラがバックスープレックスから亀のイマダエフの背後から両足をかけずにリアネイキドチョークを極めた。
◆ミシェル・ペレイラ「ラスベガスに引っ越してこようと思っている」「今回の試合に向けて必死に頑張ってきた3このカ月のことはすべて覚えている。だから、今回みたいなパフォーマンスを発揮できたのは本当に嬉しい。あいつにはムカついているんだ。顔をひっぱたくなんてダメだろ。最強が集まる中でも自分は戦えるってことを証明したし、自分はその最強の中にいるのが相応しいと思うから、ダナ・ホワイトとショーン・シェルビー(マッチメーカー)が明日にでも連絡してくれれば、俺はいくよ。ベストな人とやりたいし、ベストな人とトレーニングしている。俺は世界王者たちと練習しているんだ。世界チャンピオンと練習すると、自分もいつか世界チャンピオンになる。隔離された状態で練習しているから、UFCからいつ声がかかってもいいように、ラスベガスに引っ越してこようと思っている」
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【プレリム】
▼ミドル級 5分3R ○アンドレ・ムニス(ブラジル/185.5lbs/84.14kg)[1R 2分42秒 腕十字]×バルトス・ファビンスキ(米国/184.5lbs/83.69kg)
※ファビンスキのダーティーボクシング、ヒザ蹴りに対し、ムニスはギロチンチョークで引き込み。首を抜いたファビンスキに下から三角絞めを仕掛け、腕十字に移行。タップを奪った。
試合後、ムニスは「UFCが俺に与えた相手なら誰であろうと戦うつもり。でもオマリ(アフメドフ)と対戦したいね。彼はクリス・ワイドマンと戦ったけど、面白い試合になると思う」とアフメドフ戦を希望した。
▼フェザー級 5分3R ○ブライアン・ケレハー(米国/146lbs/66.22kg)[1R 0分39秒 ギロチンチョーク]×レイ・ロドリゲス(米国/144.5lbs/65.54kg)
ケレハーの相手は、3人目となるロドリゲスに。当初、リッキー・シモンと対戦予定だったが、シモンが1週間前に新型コロナウイルス陽性となり欠場。ケビン・ナティブダドに白羽の矢が立てられたが、最終的にレイ・ロドリゲスに変更された。
1R、ロドリゲスのダブルレッグにカウンターのアームインギロチンチョークはケレハー。10th Planetの組み技師は、最後はクローズドガードに入れて極めた。
◆ブライアン・ケレハー「観客は最後に戦った試合でしか覚えてくれない」「未知の状況やら、いろいろあって、この試合に対する緊張はかなり強まっていた。レイが引き受けてくれて、試合するチャンスをもらった上に快勝できてとにかくうれしい。最高の気分だ。観衆は最後に戦った試合でしか覚えてくれない。常勝街道に戻ってきた。前回のコーディ戦後で気分がいい。がんばったけど、あと少しだった。今年は4戦中3勝だ。フィニッシュを決めて勝つことが大事だね。ファンは分かっていると思うよ。俺はノックアウトやサブミッションが多い。誰とでも戦うつもりだ。リッキー・サイモンやケビンと試合をしたし、試合前日に全く知らない相手と対戦することになったこともある。ランキングを上げようとしているんだ。ペドロ・ムニョスがギロチンバトルをやりたいならば、それは面白いだろうね」
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▼女子フライ級 5分3R ○ヴィヴィニア・アラウジョ(ブラジル/126lbs/57.15kg)[判定3-0] ※30-27×2, 29-28×モンタナ・デ・ラ・ロサ(米国/125.5lbs/56.93kg)
2019年5月のブラジル大会でUFCデビューした、第2代ストロー級クィーン・オブ・パンクラシストのヴィヴィアニ・アラウジョ。10日前の急遽のオファーの上に2階級上のバンタム級での初陣を、3R、右フックでのKO勝ちで飾っている。
同7月の2戦目はフライ級でアレクシス・デイヴィスに判定勝ち。しかし12月のジェシカ・アイ戦では、アイが5ポンドの大幅体重超過も試合を受託。判定負けを喫している。
対するモンタナ・デ・ラ・ロサはUFC4勝1敗のレスラー。夫のマーク・デ・ラ・ロサもUFCファイター。2019年6月にアンドレア・リーに敗れたが、2020年2月にマラ・ロメロ・ボレラに判定勝ちで、再起を飾っている。
1R、ともにオーソドックス構えから。先に圧力をかけるヴィヴィニアは右ロー。さらに右オーバーハンド、右ローで踏み込むが、そこにテイクダウンを合わせたモンタナ。ヴィヴィニアはすぐに立ち上がり、逆に組みを仕掛けてパンチを入れて離れる。
モンタナの左右を距離で外すヴィヴィニア。鋭い左ジャブ、左オーバーハンドを突き刺し、モンタナに鼻血を出させる。モンタナの組みにも対応。突き放すと右ロー。モンタナも左ローを蹴り返すと、ヴィヴィアニはラウンド終了間際にダブルレッグに入る。
2R、いつものように上下に身体を揺らしステップするヴィヴィニア。右ローを当てると、モンタナはその打ち終わりを狙う。さらに右のカーフキックにモンタナの左足が流れる。右のスーパーマンパンチを見せるヴィヴィニア。さらにサウスポー構えから左足で踏み込んでの左ストレート。オーソに戻し左ジャブの刺し合いでモンタナのアゴを上げさせる。
さらにヴィヴィニアの右カーフキックにバランスを崩すモンタナ。しかしモンタナも左の上下の蹴りで反撃。ジャブの刺し合いで勝るヴィヴィニア。アゴが上がるモンタナの出血が多くなる。詰めるヴィヴィニアにモンタナは左サイドキックで距離を取る。
3R、ジャブ&ローから入るヴィヴィニア。モンタナは左フックの飛び込みから組んでダーティーボクシングで右アッパー。離れたヴィヴィニアも反撃。圧力をかけ直すと、モンタナの左をかわして右ボディストレート! さらに左ジャブをヒット。さらに左ジャブを当てると前に。右オーバーハンド。組んで押し込むモンタナに左で差し返して離れるヴィヴィニア。モンタナもワンツー&ローで押し返すもヴィヴィニアはかわす。後半が課題だったヴィヴィニアだが、息切れせずに試合を終えた。
判定は3-0(30-27×2, 29-28)でヴィヴィニアが勝利。右足を少し引きずりながらオクタゴンを降りると、バックステージインタビューでは、祖母を亡くしたことを涙ぐみ、年内にトップランカーとの次戦を希望した。
◆ビビアニ・アラウジョ「11月か12月には次の試合の準備を整えていたい」「戦略はすべてのラウンドで勝つこと。相手とスタンドで戦っていた時は最高に調子が良かった。立った状態だとすべてが思い通りに進んでいたし、グラウンドになれば勝てるのは分かっていたしね。相手がパワフルなのも自分の戦いに自信を持っているだろうことも分かっていたわ。次の試合の相手は考えていない。このまま練習に取り組んで、11月か12月には新たな対戦相手に挑戦する準備を整えていたい」
▼バンタム級 5分3R ○ハンター・アジュール(米国/135.5lbs/61.46kg)[判定3-0] ※29-28×3×コール・スミス(カナダ/135lbs/61.24kg)
◆ハンター・アジュール「試合に出れば出るほど心地よく感じる」「俺にとっては本当に重要だった。ファイトキャンプに参加する唯一の関心は勝利をあげることだ。どうやってそれを獲得するかは気にしていなかった。手を上げられることだけに集中していた。前回のときだって同じくらい良かったんだ。でも、俺が負けて去っていくことになった。戻ってきて今回の勝利を得たことは自分にとって大きな一歩だ。今後も成長し続けたい。予想した通り、相手は全てをぶつけてきた。彼は長いけど、俺の後ろには素晴らしいチームがいる。この試合のために、ものすごくしっかり準備をしてくれた。試合に出れば出るほど心地よく感じる。今日はさらに落ち着いていた。自分がそこにいるべき気がした。オクタゴンに入ってからはすべてが落ち着いてリラックスしていた。その瞬間は最高の気分だったよ」