2020年9月5日(日本時間6日)ドイツ・デュッセルドルフのUFDジムにて、「Elite MMA Championship 5」が開催された。
メインの「初代EMCヘビー級王座決定戦」では、石井慧(日本/クロアチア/110.8kg)が、英国のスチュアート・オースチン(111.7kg)と対戦。5分5R判定の末、オースチンが勝利し、初代ヘビー級王者となった。
191cmの長身を誇る32歳のオースチンは、石井にテイクダウンを許しながらもケージを背に立ち上がり、石井のアタックに対し、背中に細かい鉄槌を打ち続け、際どい判定をものにした。オースチンは2連勝でMMA15勝6敗に。
判定負けを喫した石井は、2019年2月から9試合(5勝4敗)と精力的に戦ってきたが、戴冠ならず。MMA23勝12敗1分けとなった。
▼EMCヘビー級王座決定戦 5分5R○スチュアート・オースチン(英国)[判定3-0] ※48-47×3×石井 慧(クロアチア/日本)
クロアチアのロックダウン期間中も、ミルコ・クロコップのジムでトレーニングを続けてきた石井。ロックダウン後に古傷の手術も行い、今回が復帰戦となった。ATTでの出稽古では、8月30日のUFCでアンソニー・スミスを下したライトヘビー級5位のアレクサンダル・ラキッチとも練習を積んだ様子を明らかにしている。
クロコップチームのTシャツとクロアチアの国旗をバックに入場する石井。小人数の観客によるジム内での試合。小さめのケージとなる。
1R、サウスポー構えの石井とオーソドックス構えのオースチン。左ジャブで牽制するオースチン。それを掻い潜り、前足の右足にシングルレッグ(片足タックル)に入る石井。金網まで押し込み左足に変えて、引き出すが、オースチンは金網背に右で小手に巻き倒れず。
左で差す石井は右手で作戦通り、ダーティーボクシングを腹に突く。さらに左右のヒザを突き、左を差し上げながら大外刈で崩すも、耐えるオースチンが突き放すが、石井はすぐにダブルレッグ(両足タックル)からシングルレッグへ。
ここも差し上げるオースチンは、長身を活かし首相撲に切り替え右ヒザ蹴りを2発。押し込む石井は至近距離から細かいアッパーを突き、離れて左フックを当ててから組んですぐにシングルレッグでテイクダウン。ヒザをマットに着いたオースチンのスタンドバックに付き、後方から崩しを狙う。金網際で正対するオースチン。石井はヒザ蹴り。オースチンが突き放し、ブザー。右を当ててテイクダウンした石井のラウンドに。
2R、喧嘩四つで前手を突き合う両者。右から左を見せながら、再びシングルレッグは石井。金網まで押し込むが、頭が下がると、オースチンは上から鉄槌連打。石井は片足を持ちながら引き出して崩すとスタンドバックを狙うが、正対するオースチン。石井は頭が下がると鉄槌を受けるため、すぐに上体を上げて左で差してダブルレッグに切り替え。
さらに左で差して左足を中に入れ、大内刈で引き出し中央でテイクダウン! 背中を着きながらもガードの中に入れるオースチンは金網まで這い、下から石井の頭にコツコツと打撃を入れる。中腰になり、相手の腰を殺す石井。オースチンが腰骨に当てた足も外し、片足をまたぐと、オースチンの立ち際にバックに。
クラッチを剥がしながら正対するオースチン。なおも押し込む石井は、右をオーバーフックし、左で差して支釣込腰で前にテイクダウン! しかしすぐに立つオースチンに左を当てて押し込み右ヒザを突く石井。さらに左を差し上げて崩し、右でヒザ蹴りを突く。ダブルレッグに切り替え、再び大内刈を狙う石井。ここは避けたオースチンが突き放す
オースチンの右ローに左オーバーハンドを合わせる石井。作戦通り頭を振って的を絞らせず中に入ると、みたび押し込みダブルレッグで尻下でついにクラッチ。持ち上げて中央でテイクダウンを奪うと、すぐにパスガード。サイドから左でパウンド。オースチンは腰を切りハーフに戻すが石井は細かいパウンド。石井のラウンドに。
3R、右目下を腫らすオースチン。左ローを先に突く石井。最初のシングルレッグは捌かれた石井だが、2度目は足を掴むと金網まで押し込み。片足タックルで頭が下がるとオースチンは上から鉄槌を3発振り下ろす。すぐに石井は上体を上げて左で差して押し込み。なおもオースチンは長身を活かし右で鉄追を肩口に落とす。
頭を下げてテイクダウントライのたびに、1発鉄槌を落とすオースチンだが、腰を殺されているため勢いは強くない。しかし印象は良くない石井は動いてオースチンのアゴ下に頭を入れて、離れ際に右を振る。
サウスポー構えから左を振って前に出る石井、右アッパーを合わせるオースチンだが、石井は構わず詰めるとダブルレッグへ。ここも鉄槌を落とすオースチン。石井は上体を上げるがレフェリーの「アクション」の指示にダブルレッグへ。ここも金網に背中をつけたままのオースチンは4発鉄槌を落とす。首相撲ヒザのオースチンにブロックする石井。互いにダーティーボクシングから、強い左ヒジは石井! オースチンも速い右ヒジを振る。
左で差して右を首後ろに巻き、頭をアゴ下につけて固定する石井。互いにヒザの突き合いから、押し込む石井に右で鉄槌を石井の背中に連打で落とすオースチン。石井はダブルレッグにトライするが、クラッチは組めず。オースチンはそこに右の鉄槌を叩く。首相撲ヒザはオースチン。さらに右ヒジもここは石井はデフェンス。押し込んでいるのは石井だが、初めてテイクダウンは奪えず。オースチンの鉄槌をどう評価するか。オースチンのラウンドと取るジャッジがいる可能性も。
4R、オースチンの右と石井の左が交錯。詰めて先に組みに行ったのはオースチン。しかし体を入れ替えた石井は大外刈狙い。耐えるオースチンは背中に鉄槌。石井も右で太腿にパンチ。さらにダブルレッグにトライするが、頭が下がると鉄槌を受ける。再びの大外刈は上体を崩せず不発に。離れ際に石井は左フック、左ヒザを当てるが、押し込むとオースチンは右の鉄槌。シングルレッグからバックテイクを狙う石井だが、頭を上げても右手で石井の頭後ろからコツコツと突くオースチン。
レフェリーはブレークを命じ、中央で再開。右ストレート、右ヒザで前に出るオースチンだが、ステップで外す石井。金網に押し込まれ続けたオースチンの背中が真っ赤に腫れ上げる。オースチンが右ミドルを見せたところでブザー。どちらについてもおかしくない微妙なラウンドだ。試合を作っているのは石井だが……。
最終ラウンド。先にシングルレッグは石井。中央でテイクダウンに成功すると、蹴り上げから立とうとするオースチンを追い、腰を掴むと手前に引き出そうとするが、オースチンも金網まで這い立ち上がる。押し込む石井に両手を叩いて、動けと指示するレフェリーだが、動かなければならないのは押し込まれたオースチンも同様だ。石井はダブルレッグに切り替えるが、頭が下がるとオースチンは右の鉄槌を7連打。印象が良くない石井は、左で差してヒザを突き、ダブルレッグへ。ここもクラッチはさせないオースチンは右のショートアッパー。
腰を下げて力を使ってダブルレッグに入る石井だが、金網背のオースチンも倒れず。ならばと石井は右足へのシングルレッグに切り替え片足を持ち上げると、手前に引き出し、テイクダウンへ。尻持ちを着いたオースチンだがすぐに立ち上がり金網背に。さらに石井がシングルレッグに入ると、脇下からパンチを突く。
左で差す石井に右手で石井の右ヒジを掴むオースチン。石井を剥がそうとするが、石井も左で差して押し込み、右ヒザを突く。石井のダブルレッグ狙いに、右の鉄槌を5発落とすオースチン。崩してオースチンニヒザを着かせたところでブザー。石井のテイクダウンとオースチンの鉄槌はどう評価するか。最終ラウンドもコントロールしていたのは石井だが、打撃の手数ならオースチンとなる。
判定は3-0(48-47×3)でオースチンが勝利。信じられないという表情の石井。解説が「ビッグアップセット」と驚きの声をあげるなか、勝利したオースチンは、ケージのなかで大会ゲストのミルコからベルトを手渡され、腰に巻いた。
テイクダウンを評価されなかった石井は戴冠を逃し、今後のKSW参戦はどうなるか。
なお、「ELITE MMA Championship」は次回大会の「EMC 6」を10月31日に開催することを発表している。