「Krush.116」2020年8月29日(土)東京・後楽園ホール
▼メインイベント(第8試合)第7代Krushウェルター級王座決定トーナメント決勝戦 3分3R・延長1R×近藤魁成(大成会館)TKO 1R 3分00秒 ※レフェリーストップ〇山際和希(谷山ジム/Bigbangウェルター級王者)※山際が第7代王座に就く。
「第7代Krushウェルター級王座決定トーナメント決勝戦」は、準決勝で一吉を初回KOに破った山際と、海斗を2RでKOした近藤で争われることになった。ほぼノーダメージで勝ち上がった山際だが、近藤は海斗戦でかなり消耗した様子を見せており、それがどう影響するか。
両者は今年3月に対戦し、その時は近藤がダウンを奪って勝利を収めている。決勝戦で早くも再戦となった。 1R、軽快にコーナーを飛び出した近藤に山際はガードを固めながらの右ロー。ならばと近藤は左ボディを打つ。山際も負けじと右ボディストレートから左ボディ。しかし、近藤が左フックをクリーンヒットさせて山際をグラつかせる。すぐに体勢を立て直した山際は前蹴り、パンチでボディを攻めていき、近藤は山際がパンチを出せば蹴り、蹴りを出せばパンチを合わせに行く。
一進一退の攻防が続く中、近藤は左テンカオ、山際がワンツーを放って近藤が回り込みながらの右フックを打ったところで、近藤がしゃがみ込む。苦痛に顔を歪める近藤。ローブローかと思われたが、レフェリーが近藤本人に状況を確認したところ「右手首を負傷した」とのことで試合続行不可能と判断したレフェリーはストップを要請。
(写真)この右フックを打った直後、近藤は倒れ込んだ 近藤はレフェリーに何かを叫んでいたが、試合終了のゴングが鳴らされ、山際のTKO勝ちとなった。
ベルトを巻いた山際はマイクを持つと「今回チャンピオンになりましたが、実力だとは思いません。ラッキーだと思っています。でも3月に負けてから腐らずにずっとやって来たので、降ってきたチャンスかなとも思っています。去年の夏くらいからいい試合ができていなくて結果もついてこなくて。でも、その中でスポンサーさんや応援団に応援してもらえて腐らずにここまでやってこらたのだと思います。パンチでもっと倒せるようにこれからも努力したいと思います」と、これからベルトが似合う男になっていきたいと語った。■山際和希のコメント「まずは試合を組んでいただいた関係者のみなさま、ずっと僕を応援してくださった方たちにも感謝したいです。(試合を振り返って)準決勝は僕が思っていたよりもグチャグチャした試合になったかな、と。一吉選手の試合を見たりして、もっときれいに戦って蹴りにつないでくると思ったんですけど、僕の蹴りの距離にしない作戦なのか、距離を詰めてきてびっくりしました。ただ僕も3月の試合が終わって、ずっとボクシングの練習をやって接近戦の練習をしていたので、結果的に倒せてよかったです。決勝はすべて自分の実力で勝ったとは思っていません。ただ3月に近藤選手に負けて『こうすれば勝てるんじゃないか?』という手応えを感じて、ずっとそういう練習をしてきました。その練習がすべて出せたわけではないですが、5~6割はできたと思うし、それでこういう結果になってよかったです。(近藤との3度目の対戦もあると思うが?)もちろん全然やる気です。今回、すべて実力で勝ったとは思っていないので、3度目の決着もありだなと思います。僕は強くなりたいという気持ちが一番で、どんどん強い相手と戦いたいので。ただ…ダイレクトリマッチじゃなくて……他の選手ともやってみたい気持ちもあります。(ベルトを巻いた心境は?)こんな勝ち方で実感がないんですけど、応援団の方がものすごく喜んでくれたので、それがよかったです。これから家に帰ってネットやSNSを見て、だんだんベルトを巻いた実感がわいてくるかなと思います。(ファイトスタイルが変わった?)僕の持論ですがトップ選手は苦手な分野があっちゃいけないな、と。僕もボクシングの練習をしていますが、パンチで攻めていくのではなくて、パンチも蹴りもできて、そのうえで戦略を練るのがトップ選手だと思っています。僕の場合、明らかにパンチの技術が足りなかったので練習してきました。(今後の展望は?)近藤選手はもちろんですが、過去に負けている松岡力選手や木村“フィリップ”ミノル選手にもリベンジしたいですし、ウェルター級だったら野杁正明選手、階級を上げると宣言している安保瑠輝也選手…とにかく強い選手とやりたいです。(ファンのみなさんへのメッセージは?)これから結果だけでなく、内容も伴った倒せるチャンピオンを目指しますので応援よろしくお願いします」
▼セミファイナル(第7試合)Krushスーパー・バンタム級 3分3R延長1R〇佐々木洵樹(POWER OF DREAM/第5代Krushバンタム級王者)判定2-0 ※30-28、29-29、30-29×龍斗(K-1 GYM横浜infinity)
佐々木は元プロボクサーで、OPBF東洋太平洋フェザー級13位、日本フェザー級7位になった実績を持つ。2019年2月からKrushに参戦すると蹴り技も見せて林勇汰に判定勝ち、7月のKrushでは晃貴と第4代バンタム級王座決定戦を争った萩原秀斗にKO勝ちし、11月には晃貴を判定で破り、僅か3戦目にしてKrushバンタム級王座に就いた。今年3月には初防衛戦が決まっていたが、新型コロナウイルスの影響でサンベル・ババヤン(アルメニア)が来日不可能となり試合中止。7月22日の王座を返上して一階級上げることを発表した。
龍斗は2017年3月からK-1 JAPAN GROUPに参戦。2019年10月には小倉尚也に延長戦の末に勝利している。戦績は4勝9敗2分。前日計量で600グラム超過してしまい減点1からの試合開始。本来ならグローブハンディとなるが、それは佐々木が拒否した。
1R、サウスポーの佐々木は前蹴りと左ミドルと蹴りからの開始。龍斗が右ミドルを蹴ってくると左ストレートを伸ばしていく。佐々木は大好きだったというアンディ・フグのカカト落としも繰り出すなど蹴りが多いが、伸びる左ストレートがヒットする。龍斗は右インローで対抗するが、佐々木は左右ボディからの左ストレート。龍斗のインローには前足を流されるが、佐々木さすがのパンチの打ち分けを見せた。
2Rも蹴りを多用する佐々木は左右の前蹴り、左ミドル。龍斗も右ミドルを蹴り返す。佐々木は左ストレートを顔面とボディへ打ち、連打で龍斗にガードを固めさせる。
3R、龍斗は下がりながら右ミドルを蹴り、佐々木がジャブで追っていく。右ミドル、右ハイ、テンカオと蹴る龍斗。佐々木は前へ出て左ストレート、右フック、左ボディを繰り出すが、龍斗も反撃して攻撃がまとめられない。パンチを打ちに行くところへ逆に右ストレートをもらう場面もありつつ、前へ出て手数もヒットも多かった佐々木が判定勝ちした。■佐々木洵樹のコメント「とりあえず勝てて良かったです。でも反省点ばかりでしたね。龍斗選手は右のキックも強かったんですけど、自分の悪いところばかり出ました。(相手の体重オーバーは)気にならなかったです。試合内容がああなったということです。見ていたファンの方たちも佐々木こんなもんかと思ったと思いますし、会長が言ったことが全くできなかった試合です。(今後の目標は?)自分の先が見えたと思われていると思うので、また必死にやっていきます」
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▼第6試合 -63.5kg契約 3分3R延長1R〇東本央貴(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)KO 1R 3分2秒 ※右フック×金子大輝(K-1ジム大宮チームレオン)
金子はMMA(総合格闘技)からミャンマーの頭突きありの超過激格闘技ラウェイに転向。2017年12月にはミャンマー・ヤンゴンで開催されたAir KBZ(エアカンボーザ)チャンピオンシップに出場し、67kg級でこの大会の2017年王者となった。2019年6月、K-1への参戦を表明し、11月に初参戦して独特の動き・リズムを見せて林健太を戸惑わせたが、最後は右ストレートでKO負けを喫した。6月の堀井翼戦も反則負けに終わっている。キックボクシングの通算戦績は1勝4敗。
東本は2012年9月のKrush初参戦でHIROYAをKOしたことで注目され、Krush・K-1のトップ選手たちと拳を交えてきたベテラン選手。4連敗を喫したが2020年1月に川崎真一朗をKOして復活の雄叫び。しかし、3月のK-1では蓮實光の剛腕でマットに沈んだ。ハンバーガーショップも経営している“戦うハンバーガー屋さん”。戦績は12勝(6KO)15敗。当初、金子は堀井翼との再戦に臨むことが決まっていたが、堀井が負傷欠場。代わって東本が出場することになった。
1R、サウスポーの金子が蹴った右ローがローブローとなり試合は一時中断。悪夢の再現かと思われたがすぐに再開。すると金子が左ミドル、左右フックで突進。金子は右ジャブを上手く使い他の攻撃につなげる。
東本は鋭い打ち下ろすような左フックを何度も合わせに行き、ラウンド終了間際にラウェイハンマー(上から振り下ろす鉄槌)で前に出てきた金子へついに左クロスをクリーンヒットさせ、右フックをフォローしてダウンを奪う。
金子は立ち上がるも足元がフラつきレフェリーがストップ。東本のKO勝ちとなった。東本はマイクを持つと「急遽2週間前の試合だったんですが、俺が勢いでいかせてもらいました。そんな感じで呼んでもらえたら俺はいつでも行きます」と笑顔でハンバーガーショップの宣伝もした。■東本央貴のコメント「10日前くらいに試合が決まってやばいと思ったんですけど、そこから試合のことだけ考えて過ごして勝てて良かったです。金子選手はパンチが重くて、僕もクラクラです(苦笑)。強かったです。(今後の目標は?)それよりショーグンバーガーの宣伝ですね(笑)。おすすめはチーズバーガーなんで、初めて来た人はチーズバーガーを食べてください(笑)。試合の目標は俺のパンチは強いし、当たれば誰にでも勝てると思うんで、そのパンチを当てる練習を頑張っていきます」
▼第5試合 -72kg契約 3分3R延長1R×藤村大輔(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)判定0-2 ※29-30、30-30、29-30〇MIKE JOE(フィリピン/BATTLE FIELD/TEAM J.S.A/第4代Bigbangスーパー・ウェルター級王者)
藤村は2015年8月からK-1 JAPAN GROUPに参戦し、和島大海、神保克哉、山崎陽一らとスーパー・ウェルター級戦線でしのぎを削ってきた。今年3月には第3代K-1スーパー・ウェルター級王者決定トーナメントのリザーブファイトで小鉄から判定勝利している。戦績は12勝(5KO)5敗1分。
対するMIKE JOEはKrush初参戦で第4代Bigbangスーパー・ウェルター級王者。戦績は6勝(2KO)3敗4分。
1R、藤村はジャブと右ストレート、右フックと右ロー。JOEはいきなりの右ロングフックと右の蹴り上げを繰り出す。ジャブをしっかり当てる藤村。
2R、打ち下ろすような右を繰り出すJOEに藤村はワンツー。JOEの右ストレート、右フックがヒットするが、すぐに藤村も右を打ち返す。藤村も右を繰り出していく。
3R、JOEはサウスポーへのスイッチ。ワンツーの打ち合いになるが、右フックをヒットさせるのはJOEの方。疲れが見える藤村は右を思い切り振るが、JOEの左ボディ、右ストレート、テンカオをもらってしまう。JOEは独特な動きでパンチをかわし、最後に右ストレートを一発。JOEが判定2-0でKrush初陣を勝利で飾った。
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▼第4試合 -78kg契約 3分3R延長1R×OD・KEN(ReBORN経堂)延長R 判定0-3 ※9-10×3〇雄人(優弥道場)※本戦の判定は30-29、29-30、30-30。
OD・KENは2017年5月からK-1 JAPAN GROUPに参戦し、2018年9月には初代K-1クルーザー級王座決定トーナメントに出場。シナ・カリミアンと延長戦にわたる激闘を繰り広げ、敗れるもその名をあげた。Krushには2019年2月以来の参戦となる。戦績は16勝(12KO)8敗2分。
対する雄人は山本優弥を師匠に持つ新鋭で2017年2月からKrushに参戦。4戦して3敗1分とまだ勝ち星がなく、戦績は4勝(1KO)4敗2分。
1R、KENはジャブ&ローを起点に右フックと左ボディ。雄人は左右ローを返していく。ジャブの当て合い、ローの蹴り合いとなるが、手数足数はKENが優る。KENは太腿へのヒザ蹴りも見せた。
2R、雄人はサウスポーに構えての左ミドルも、KENは構わず右ローを連続して蹴る。雄人の左ミドルがローブローになり試合は一時中断。再開後も右ローを蹴っていくKENは右アッパーや細かい連打を出すがガードの上から叩く形に。雄人はガードを固めつつ、ジャブを当てに行く。
3R、ローの蹴り合いとジャブの打ち合いも、手数が目立つのはKEN。ガードを固めさせておいての右ミドル、左ボディ。雄人は前へ出てのジャブ、右ストレートを単発ながらヒットさせ、本戦は三者三様のドローに。
延長R、ジャブを当てていく雄人。KENはまともにもらうためアゴがはねあがって見栄えが悪い。細かい連打をしていくKENにガードを固めつつテンカオを蹴って右ストレートを打つ雄人。判定は雄人が競り勝った。
▼第3試合 Krushスーパー・ウェルター級 3分3R・延長1REITO(HALEO TOP TEAM)試合中止ブハリ亜輝留(WSRフェアテックス幕張)※ブハリが計量をパスできなかったため、この試合は中止に。
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▼第2試合 第7代Krushウェルター級王座決定トーナメント準決勝 3分3R延長1R〇近藤魁成(大成会館)KO 2R 2分54秒 ※右フック×海斗(ポゴナ・クラブジム)※近藤が決勝へ進出。
近藤は幼少期より空手を学び、難病を克服して2017年に高校1年生でK-1甲子園を制覇。2018年3月にプロデビューを飾り、2018年K-1甲子園を連覇。2勝無敗1分の戦績で2019年5月、木村“フィリップ”ミノルのKrushウェルター級王座に挑戦し、KO負けで初黒星を付けられたが、ヒザ蹴りでダウンを先制してあわやの場面を作り出した。また、8月のK-1大阪大会では格上の松岡力を一撃初回KOで葬っている。11月のK-1ではKrushスーパー・ウェルター級王者ジョーダン・ピケオーの牙城に挑んだが、2R2分40秒、KOで敗れた。今年3月の再起戦では山際に判定勝ち。戦績は4勝(3KO)2敗1分。
海斗は『THE OUTSIDER』を経て2017年10月にKrushデビュー。強靭なフィジカルの強さを活かした攻撃力を誇り、戦績は8勝(6KO)3敗。前戦は3月の「第3代K-1スーパー・ウェルター級王者決定トーナメント」に出場したが、木村“フィリップ”ミノルの剛腕の前にマットに沈んだ。
1R、サウスポーの海斗はパワフルな左ミドルを放つが、近藤にプレスをかけられて後退。三日月蹴り気味の右前蹴り、右ストレートを浴び、さらに右テンカオを突き刺される。近藤はパンチでもボディを攻めるが、海斗も左ストレートで反撃。近藤の右テンカオ、刺す右前蹴りに後退する海斗。しかし、近藤の右ストレートを浴びながらも左ストレートを打ち返す。さらにラウンド終了間際には左フックのクリーンヒットで意地を見せた。
2R、海斗の左ミドルをスネでブロックする近藤。それでも左ミドルをもらうと右フックを返して左ボディ。海斗の左ミドルで動きがスローになる近藤だが、それでも右ストレート、右フックを連打。右ストレートで海斗がロープにもたれかかったところへの右フックでダウンを追加する。
そしてテンカオから右ストレート、右フック、左フック、右フックと連打を叩き込み、海斗が崩れ落ちそうになったところでレフェリーストップ。
近藤が苦しい試合をKOで制し、決勝へ進出。海斗はダメージが深く、担架で運ばれた。
▼第1試合 第7代Krushウェルター級王座決定トーナメント準決勝 3分3R延長1R×一吉(RAOU JAPAN/KOSウェルター級&スーパー・ウェルター級王者)KO 1R 1分35秒 ※右フック〇山際和希(谷山ジム/Bigbangウェルター級王者)※山際が決勝へ進出。
一吉はKOSウェルター級王座、KOSスーパー・ウェルター級王座、HIGHSPEEDウェルター級王座、Dream Gateミドル級王座、PRINCE REVOLUTION-70kg級王座と九州地区で5つのタイトルを獲得している27歳。戦績は18勝(4KO)8敗4分。今回がKrush初参戦となる。
山際は2009年に全日本学生キックボクシング連盟ウェルター級王者となり、プロデビュー後も順調に勝ち星を積み重ね、2015年6月にBigbangウェルター級王座を獲得(現在も保持)。2017年2月まで11連勝を記録した。K-1 JAPAN GROUPには2013年から参戦し、2017年9月にはK-1初代ウェルター級王座決定トーナメントにも出場した。前戦は3月のKrushで近藤魁成に判定負けを喫している。戦績は29勝(11KO)14敗4分。
1R、一吉はさっそく前へ出てパンチとロー、山際は押し戻して右ストレートをヒットさせると、これに手応えを感じたか右ストレートを連発。そして右ストレートでダウンも奪う。立ち上がった一吉に右フック、グラついた一吉に左フックを見舞い、左右フックを連打したところでレフェリーが試合をストップした。
山際が幸先のいいスタートを切り、決勝へ進出した。