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インタビュー

【UFC】ミオシッチvs.コーミエーの王座戦は1勝1敗の決着戦! 高阪剛「ヘビー級の迫力はもちろん、細かい技術の攻防にも注目」=8.15『UFC252』

2020/08/13 04:08
 2020年8月15日(日本時間16日・日曜日)、米国ネバダ州ラスベガスのUFC APEXにて『UFC252』が無観客試合として開催される。  メインイベントは、スティーペ・ミオシッチ(米国)vs.ダニエル・コーミエー(米国)のヘビー級タイトルマッチ。両者はこれまで2度タイトルを賭けて戦い1勝1敗、今回が決着戦となる。この注目の一戦の見どころを、WOWOW『UFC -究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”高阪剛に語ってもらった。 ──王者ミオシッチvs.挑戦者コーミエーのヘビー級タイトル戦は、1年ぶりの再戦となります。ミオシッチにとっては、3試合連続でコーミエー戦です。 「これはやりにくいでしょうね。お互いに手の内がわかった上で、勝つための戦略を練らなければならないわけですから。今回、あらためてミオシッチvs.コーミエーの1試合目と2試合目を観てみましたが、この2試合は“未知の部分”があったからこその展開になっている。例えば1試合目の時、コーミエーは序盤、ミオシッチの打撃を過剰に警戒していたように見えたんです」 ──ミオシッチはそれまで、マーク・ハント、ファブリシオ・ヴェウドゥム、アリスター・オーフレイム、ジュニオール・ドス・サントスといった、そうそうたるヘビー級の猛者をKOしています。 「だからコーミエーは“打撃を食らうのは嫌だ”という意識が先行して、体を横に向けて顔を背けるようなシーンが何回かあったんです。でも、何度かクリーンヒットではないパンチを受けてから、“そこまで恐れるほどじゃない”と感じたんじゃないかと思うんです。これは超一流であるコーミエーレベルでの話ですが」 ──これまで戦ってきた相手と比べて、飛び抜けてパンチが強いわけじゃないぞ、と。 「それをコーミエーが感じて、思い切って前に出てクリンチが組めてからアッパーを入れたら、ミオシッチが少し嫌がったので。そこからペースを握りだしたんです。そもそもコーミエーって顔面が打たれ強いので、ミオシッチの方からすると、“これだけ打撃でプレッシャーをかけているのに、なんでこいつは怯まないんだ?”という感じだったと思うんです。そしてクリンチを対処しているとき、至近距離の右フックをもらってしまいKOされてしまった」 ──コーミエーが王座奪取したのが1試合目でした。 「そして再戦となる2試合目は、コーミエーが最初から打撃を恐れずミオシッチの顔面を狙いにいって。チャンスがあったらテイクダウンを狙いにいくという展開で正直、余裕がありましたよね。ところが3ラウンドに1回、ミオシッチの前蹴りが入ってコーミエーの動きが一瞬止まったんです。そこから今度はミオシッチの方が、“コーミエーは顔面は怖がらないけど、腹に穴があるんじゃないか?”と、悟ったんじゃないかな。そこからボディを執拗に攻撃して、4ラウンド目はほぼボディ狙いで。そこから打撃で畳み掛けましたね」 ──逆転TKO勝ちで王座奪回しました。 「なので2試合を並べてみると、どちらも最初に劣勢だったほうが、試合中に活路を見出して逆転勝ちしているんです。これなんか、手の内が完全にわかっていないからこその試合展開だったと思うんです」 ──今回は、お互い手の内がしっかりとわかった上での3試合目になると。 「だからこの3試合目はお互いやりづらいと思うんです。コーミエーからしたらボディブローのディフェンスはしっかりと準備してくるでしょうけど、ミオシッチもそれを見越しているから、そのままボディ狙いでくるとは考えにくい。また、相手の攻撃に対処するというやり方だと、どうしても後手後手に回ることになりますから」 ──となると、先の先を読むというか。また新たな戦略を考えなければならないわけですね。 「そういうことです。だからコーミエー側からすると、抜群のレスリング力を持っていながら、1回目も2回目もそこまでタックルを混ぜてくることはなかったし、グラウンドコントロールに徹することはやっていないので。前半は寝かせたり、ケージレスリングで体力を削っておいて、後半、打撃勝負を仕掛けるということも考えられます」 ──コーミエー自身も「今回はテイクダウン地獄を味わわせる」と言っています。 「テイクダウンまでいかなくても、ケージに押し付けてのコントロールも容易でしょうからね。ケージに押さえつけられているだけでも体力は奪われているので、そこもミオシッチは気をつけながら試合をしなきゃいけない。だからコーミエーの攻撃にミオシッチがどう対応するか、という展開になると思うんです。普通、挑戦者が王者への攻略法を練るものですけど、この二人に関しては、王者の方が対策に時間をかける必要がある」 ──たしかにコーミエーにとって、ミオシッチのような長身のストライカー(193cm)は、今までライトヘビー級時代も含めて何度も戦っていますが、ミオシッチにとってはコーミエーのような体の小さいトップレスラー(180cm)との対戦というのは、コーミエだけです。 「だからコーミエー相手の時だけ、練習内容も試合の組み立ても変えなきゃいけない。またパンチの使い方がコーミエーは独特なんです。基本、ジャブと右ストレートですが、微妙な距離設定なんですよ。普通、こんな身長が低い選手は、ここにパンチは届かないだろうっていうところにも届いてしまう。だから、コーミエーのパンチが届く距離を、いかに外して自分の打撃を入れることができるかが、ミオシッチとしてはひとつポイントだと思います」 ──また、コーミエーはクリンチもうまいです。 「ただ、ミオシッチも2回目の試合のとき、コーミエーが前に出て組もうとしてきたところを、サイドステップで体を入れ替えるシーンがあったんです。前からその動きをやっていたのですが、組みに来る相手に至近距離でそれが出来たというのは、ミオシッチにとっても収穫だったかもしれない。1試合目の時は、組みにきたコーミエーを前に押し返すか、後ろに下がるかしかやってなかったんですが、“横にずらすと相手がこんな簡単にいなすことができるんだ”という感覚がつかめていたら、あの『いなし』の技術は、ひとつのキモになるかもしれない」 ──そこで組ませずに、コーミエーにペースを握らせなかったら、ミオシッチがKOする可能性も高まるという。 「そうですね。組もうとしたところをいなされると、絶対に対応が遅れるんですよ。そういう時に打撃をもらったりするものなので。だからスタンドの攻防も、単純に打撃だけでなく、そういった組みも交えた探り合いという、高い次元での攻防が見られるんじゃないかと思います」 ──ヘビー級だけれども、大味ではなく細かい技術も駆使した試合になるだろうと。 「そうです。ですから、今回はヘビー級の迫力はもちろんですが、細かい技術の攻防までじっくりと観てほしいですね」(取材/文・堀江ガンツ、写真・Getty Images) UFC 252: Miocic vs. Cormier 3 2020年8月16日 UFC APEX米国ネバダ州ラスベガス  【メインカード】 ▼UFC世界ヘビー級選手権試合 5分5Rスタイプ・ミオシッチ(米国)王者ダニエル・コーミエー(米国)挑戦者 ▼バンタム級 5分3Rショーン・オマリー(米国)マルロン・ヴェラ(エクアドル)  なお、コ・メインイベントでは、ダナ・ホワイト・コンテンダー・シリーズ(DWCTS)出身で、MMA12戦無敗で現在バンタム級14位にランクされる新星ショーン・オマリー(米国)が登場。  オマリーは、2019年12月の「QUINTET Ultra」でグラップリングルールながら、五味隆典をハイエルボーのギロチンチョークで極めた選手。2020年はUFCで3月にホセ・キニョネスに、6月にエディ・ワインランドにいずれもKO・TKO勝ちしており、MMAでは無敗記録を更新中だ。  対するマーロン・“チト”・ヴェラ(エウアドル)は、中国の新鋭ソン・ヤードンに敗れるまでKOとサブミッションでUFC5戦勝中(MMA17勝6敗1分)だった10年選手。  プロ5年目のオマリーにとって、これまでのMMAキャリア中、最も厳しい試練に挑むことになる。 ▼ヘビー級 5分3Rジュニオール・ドスサントス(ブラジル)ジャイルジーニョ・ホーゼンストライク(スリナム) ▼バンタム級 5分3Rジョン・ドッドソン(米国)マラブ・デヴァリシビリ(ジョージア) ▼ライトヘビー級 5分3Rマゴメド・アンカラエフ(ロシア)イオン・クテレバ(モルドバ) 【プレリミナリー】 ▼ライト級 5分3Rジム・ミラー(米国)ヴィンス・ピッチェル(米国) ▼女子ストロー級 5分3Rリヴィナ・ヘナタ・ソウザ(ブラジル)アシュリー・ヨーダ(米国) ▼フェザー級 5分3Rエウベウ・バーンズ(ブラジル)ダニエル・ピネダ(米国) ▼女子ストロー級 5分3Rフェリス・ヘリッグ(米国)ヴィルナ・ジャンジローバ(ブラジル) ▼フェザー級 5分3RTJ・ブラウン(米国)ダニー・チャベス(米国) ▼ヘビー級 5分3Rクリストファー・ダウカウス(米国)パーカー・ポーター(米国) 【放送日程】WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送スケジュール『生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC252 in ラスベガス 最重量ヘビー級注目の一戦、ミオシッチvsコーミエー 3度目の激突!』 ◆8月16日(日)午前11時[WOWOWライブ]生中継(WOWOWメンバーズオンデマンドにて同時配信) ◆8月17日(月)夜6時[WOWOWライブ]リピート放送(WOWOWメンバーズオンデマンドにて同時配信) 【出演】解説:高阪 剛、堀江ガンツ実況:高柳謙一WOWOW番組オフシャルサイト
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