2020年7月31日(金)にタイ・バンコクで開催されたONE Championshipの無観客大会「ONE:NO SURRENDER」に、現ONE女子ムエタイアトム級世界王者のスタンプ・フェアテックス(タイ)が参戦。2020年1月大会以来、約半年ぶりにMMAルールでタイのスニーサ・スリセンと対戦した。
試合は、ムエタイの首相撲&ヒザ蹴りなど打撃で主導権を握ったスタンプが1R、ボディロックからのテイクダウンでスリサンをパウンドアウト。MMA戦績を5戦無敗とした。
その試合をABEMAのゲスト解説として日本から観戦し、「身体がうずうずしてくる」と放送席で語っていた平田樹(K-Clann)が大会後、オンラインでの囲み取材に応じた。
スタンプのライバルとして、対戦の声が高まっている平田は、バンコク大会での半年ぶりのスタンプのMMAの実戦に、「相手が弱すぎて参考にならなかった。早くやろうよ」と、力量差があったとしながらも、「まだ穴があるなと思いました。自分だったら投げ切れるし、レスリングも行けるので、全然、チャンスもあるし、寝技もまだ全然、出来ないのかなとは思いました」と、勝機について語った。
今後も新型コロナウイルスの影響で無観客試合が続き、日本人選手の海外への渡航、そして海外選手の日本への入国も制限されるなか、日本独自の大会による“日本人対決”も視野に入ってくる。
打撃やレスリングの強化と同時に食事管理など、普段の生活環境も改めたという平田は、次戦について「秋くらいまでには試合をしたい。日本人対決ってあんまり無いので、してみたい気もあります」と試合への意欲を語った。
いまは身体と格闘技のことを第一に考えている
──今回は、各媒体とともにZOOMでのオンラインでの囲み取材をさせていただきます。
「これがZOOMってやつですね。これでみんなオンライン飲みとかしてるんですね」
──ということはZOOM飲み会等はしていないと。
「初ZOOMです。『ゴング格闘技』の対談で、携帯で浜崎朱加さんと対談はしたことがあるんですけど」
──ZOOMで顔を見ると、5月31日(プロ修斗を観戦)のときより引き締まって見えます。
「もっと褒めてください! 皆さん、ここは絶対に記事にしてくださいね(笑)」
──小顔ローラーとかを……。
「違いますよ! 痩せたんです!“平田樹が痩せた”と書いてください(笑)」
──ダイエットではなくトレーニングで絞れているのでしょうか。
「そうですね。あと、今までは好きなときに好きなものを食べて、お菓子も“試合が無いからいいや”という感覚で食べていたんですけど、最近、考え方が変わって“これ食べたら太る”“これだけ練習したのにこんな悪いもの食べちゃいけない”とか、そういう考え方になってきていて、ほんとうに自分の身体のことや練習のこと、試合のことを第一優先に考えるようになって、そうしたらどんどん痩せてきました」
──食べ物を変えて胃腸の状態が良くなることで、練習での調子の良し悪しは感じますか。
「すごいいま今までより軽いし、食べてる物が全然変わって、『身体つきも変わった』と言われますし、パンチも早くなってパワーもついたので、全然違いますね。自分でも感じます。トレーニングも結構とり入れているので」
──肌艶がいいのは体調の良さを感じます。
「そうなんですよ。最近、身体と格闘技のことを第一に考えているので、より調子がいいので、いま試合をしたいんですよ」
【写真】スタンプの試合を振り返るときのファイター平田の表情。
──さて、2019年6月のONE Championshipでのプロデビュー戦(アンジェリー・サバナルにアメリカーナで一本勝ち。プロ以前にはアマチュアで4戦全勝)から1年が経ちました。5カ月ぶりに再開したONEのバンコク大会を日本の放送席で解説して、全体の感想からお願いします。
「このコロナの時期でも大会は開催されるので、(自分も)休んでいる暇はないな、という感想がひとつあります。それと試合を観ると自分も早く試合をしたいなと思いました」
──今後、ONEでもしばらく無観客での試合が続くと思います。バンコクでの無観客の大会を画面越しに見てどのように感じましたか。
「自分もお客さんいることでモチベーション上がるので、どうかなと思うところはあるんですけど、逆に思えば、無観客で出来るのは今しかないかなとも思うので、全然、無観客でやってみたいなという気持ちもあります」
──新しいチャレンジとしてとらえたいと。
「そうですね。今後そういうことが無いこともあるので。今しか(無観客が)出来ないと思うと全然、それはいいなと思います」
──怪我をしていて休んでいたという話も聞きます。現状はいかがですか。
「いまは全然。2~3カ月くらい怪我して治してということを繰り返していて、なかなか練習出来ていなかったんですけど、いまは練習出来ていて、いまは順調でリハビリもちゃんとしているので、いまのところは大丈夫です」
──練習での成長をどのように感じていますか。
「やっぱり一番は打撃ですかね。昨日も(自分の)試合を“一回戦”から見返したんですけど、自分の打撃のやり方も全然(今と)違うし、最後(の試合)はレスリングのタックルも入れたんで、もっともっと出来ることもたくさんあると思うので練習したいと思います」
──「一回戦から見返した」というのは?
「自分のONEのデビュー戦から、昨日は見返してました。最近、暇なときに自分の試合を見ることが多くなったんで。それで昨日も見ていたんですけど、何だろう……試合が出来ない時期に、“感覚”を忘れるというか、試合感覚を思い出すのには、自分の試合を見るしかないなと思って。試合映像を見ると心臓がバクバクするんですよ。そのときのことを思い出したり。なので結構面白いです、自分の試合を見返すのは」
──さて、今日の試合に戻りますが、大会中、スタンプ選手の試合後、平田選手は「なんだよ!! わかんねーじゃん!」とツイートされていましたが、あらためてライバルと目されるスタンプ選手の試合の感想をお願いします。
「うーん、寝技をもうちょっと見たかったんですけど、(自分が)早く試合をしたいというのは変わらないんで、ほんとう、どれだけ強いかも分からないので、試合をしたいというだけです」
──放送されていない間に、今回のスタンプ選手の試合への本音も出ていたようですが、どんなことを大沢ケンジさんたちに訴えていたのでしょうか。
「秘密です(笑)。まず相手が弱すぎて(スタンプの力量が)分からなかったのもあり、あれだとスタンプ選手が強いのかという感じになっていたので。どんだけ強いのか気になるんですけど、参考にならなかったなと。早くやろうよ、という感じですね」
──想像していたスタンプ選手と、実際にライブ動画で観戦したスタンプ選手との違いはありましたか。
「いや、打撃の距離感はあんな感じなので、蹴りとかヒジのやり方なんかも。組んだらすぐに投げるとか、寝技まで持ち込めれば全然いけると思うので、そこだけ練習しておけばいいかなという感じです」
──スタンプ選手は今回の相手だからあれほど首相撲&ヒザ蹴りを多用してきたとも考えられます。対平田選手となると投げを警戒して安易には組んでこないことも想定されますが、そのあたりはどう考えましたか。
「そうですね。今日の試合、最初からちょっと余裕が見えていたので、そういう感じの試合だったんだろうなと思います。自分との(試合の)時はもっと打撃で来ると思うので、組まれたらすぐ突き放したり、首相撲もしないと思っています。そこはレスリングも練習しつつ、柔道の技もやりたいんですけど、とにかく自分の得意な寝技で仕留めるというところは変わらないです。相手のペースより自分のペースで進めていきたいです」
──今日、スタンプのMMAの試合が見れたわけですが、スタンプの立ち技の試合だったらここまで興味を持って見ることは出来ましたか。
「いや、全然見ないですね。MMA以外はそんなに見ないので。今回、結構、相手がレスリング(ベース)と言われていたんで、寝技に行くんじゃないかと期待してたんですけど、なんか、スタンプ選手の余裕が自分には見えました」
──スリセン選手は以前、スタンプ選手とフェアテックスジムで練習仲間だったようでスタンプ選手は「全然、大丈夫」という感じでした。
「(それが)伝わってきましたよね、見ていて」
──期待していた内容とは違っていても、スタンプ選手の弱点のようなものは見えましたか。
「四つに組んだときに足をかけられるかなと思ったり、やっぱりムエタイ選手を相手に下がらないことですかね。自分が下がりながらもらったら倍効きそうなので。圧かけながらもらえば、その半分くらいで(ダメージ)は済むんじゃないかなと思って。とりあえずは下がりたくはないです。今日の試合でもミドルをキャッチして、組みたい。寝技をしたいので、そこまでどう持っていくかの練習ですね」
──打撃の練習はスタンプ選手と打撃でやりあいたいということではなく……。
「そうじゃなく、全然(自分が)打撃できなかったので、(いまも)自分的には出来てると思っても周囲からしたら全然、普通くらいのレベルなので。それでもちょっと打撃が上手くなってくると、自信がつくので、寝技だけじゃなく打撃をもっと伸ばしていきたいと思っています」
──スタンプ選手の対戦相手のスリセン選手が頭を抱えてきたときに、スタンプ選手が脇を潜ってバックに回れるという有利な場面で、懸命に正対しようとしていました。それだけ正面での首相撲を好むのか、レスリングを練習していたとしてもレスリングの攻防を避けているのか。あの場面をどう見ましたか。
「ああいうところはやっぱりちょっと下手くそなんだなと、まだ穴があるなと思ったので、自分だったら投げ切れるし、レスリングも行けるので、全然、チャンスもあるし、寝技もまだ全然、出来ないのかなとは思いました」
──でも、同じ大会に出ていたブラジルのファブリジオ・アンドラージくらいに、もしスタンプも寝技も出来ると想像したら……。
「いや、大丈夫です。試合には強いんで」
──あらためてですが、なぜスタンプ選手と対戦したいのでしょう。
「MMAで5戦5勝なので、自分の方が戦績が下(3戦3勝)で(スタンプは)ムエタイのベルトも持っているので、そこで自分が勝ったら大きい。もっと注目されると思うので、やりたいというのがあります。ファンも『一番観たい』と言ってくれる試合なので、そういう試合を自分もしたいと思っています」
──次戦はいつ頃くらいまでは試合をしたいと考えていますか。
「秋くらいまでには試合をしたいと思っているんですけど……まあ、(大会が)どうなるかまだ分からないので、いつでも(試合)出来るように練習もしっかりして、体調管理も身体も全部整えてはおきたいです」
──そういった中で、現状では海外で試合をすることはONEではまだ見えてきていません。国内では4月に「Road to ONE」のような大会がありましたが、国内でもそういった大会で試合をするということも考えていますか。
「全然、あります。ほんとうに(国内大会が)あるかもしれないので、そうなったらとりあえず試合をして、いま調子がいいし、もっといろんなことを試してみたいんです。レスリングとか。いますごい練習しているのに、それを発揮出来ないのが一番、悔しいというか、楽しくない」
──秋に外国人選手がどれだけ日本に入国できるか分からないなかで、日本人対決になったとしても試合をしたいですか。
「はい。逆に日本人対決ってあんまり無いので、してみたい気もあります」
──名前を挙げることが可能なら、どんな日本人選手と戦ってみたいと考えていますか。
「それ結構聞かれるけど……分かんないですね。自分の階級はあまりいないんですよね……誰でも大丈夫です!」