キックボクシング
インタビュー

【KNOCK OUT】「今年で引退するつもりだった」日菜太だが「やらせてもらえるなら僕もONEに上がりたい」

2020/06/04 03:06
 KNOCK OUTとREBELSで活躍する日菜太(クロスポイント吉祥寺)は、2005年6月にプロデビューし、今年6月で15周年を迎えた。K-1 WORLD MAXに出場した際には神奈川大学理学部化学科の学生ということが話題になったが、現在は33歳。  引退へのカウントダウンを本人も口にしていたが、新型コロナウイルスの影響で大会が中止となり、残り少ない時間の中で試合が行えていない状況にある。日菜太はどのような想いで“今”を過ごしているのか、そして『ONE』に世界の70kgの強豪が集結していることをどのように見ているのかを聞いてみた。 「やっとプロ練が2週前くらいに始まって、それまでの1カ月半はずっと1人で公園で走ったり、筋トレをしたりしていました。キックボクシングの練習ができたのは本当に2週間前からですね」と、ようやくキックボクシングの練習が再開できたと日菜太。 「プロ練は時間を分けて入れ替え制で1回が1時間半くらい。最大でも8人くらいでやっています。でも対人練習はまだ全然できなくて、ミットとサンドバッグが中心です。出来ないよりはマシなので、キックボクシングの練習がやれているってだけで嬉しいですね」と、限られた練習でも喜びを感じている。  現役でいられる時間が残り少ない中で、足踏み状態が続いていることに関して焦りはないのか。その質問に日菜太は「実は僕、今年で引退するつもりだったんです」と答えた。 「あと2~3試合を頑張ってやって引退の予定でした。でも今年、お客さんを呼んで試合ができるかどうか分からない状況じゃないですか。いつコロナ感染拡大の第2波が来るか分からない状況で、そうなってしまったら試合ができなくなってしまうかもしれない。そういう意味で気持ちを切り替えて“引退が延びた”なと(笑)。  キックボクシングの練習をずっとしていなかったので、最近、身体の痛いところがどんどんなくなってきたんです。いい意味で身体がリフレッシュ出来て、いい状況になってきたと思っています。今まではコンスタントに試合をしていたので、どこかしら痛めていて。いいコンディションで試合をすることが出来ていなかったので、リセットされたかなって前向きに考えています」とポジティブに捉えている。  日菜太は練習量で自信を付けるタイプであり、すぐにオーバーワークになってしまうとクロスポイント吉祥寺の山口元気代表は言う。日菜太自身もそれは自覚しているという。 「そうなんですよ。ちょっとやりすぎてしまうので(笑)。僕は年齢の割には練習するタイプだと思うんですよ。他の選手は年齢を重ねたら練習量を落とすんでしょうけれど、僕は練習しないと落ち着かないんです。怪我をするまで練習してしまう。だから今回のことは身体を休めるいいきっかけと捉えています」  ベテランとなり、キックボクシング業界全体のことを考えた発言も増えてきた。アイデアマンとして、ウイズ・コロナの時代に対応する格闘技のカタチを考えているかと聞くと、すでに考えていた。 「野外がいいんじゃないかなと思いました。この暖かくなってくる時期に外でやるのはアリかなと思います。日本の場合は秋や冬は厳しいかもしれませんが、夏は野外もありでしょう。あとコロナ以前みたいに人をいっぱい集めるのはいろいろな人がいろいろな意見を言うので出来なくなってしまう可能性が高いですが、選手ってやっぱりお客さんがいないと、いい試合が生まれないんじゃないかなって思いますね。頑張れるのって人の目だったり声援だったりがあるじゃないですか。難しいですよね、今の時代は…」  さらに、ジムや後輩のことを想い、山口代表に進言して選手たちが主体となりジム存続のプロジェクトをスタートさせた。 「こういう状況でジムも大変なので、CAMPFIREでクラウドファンディングをスタートさせました。リターンにTシャツとサイン色紙を付けるとか、選手のパーソナルトレーニングを受けられるとか。そうしないとこの状況で格闘技ジムも厳しいじゃないですか。せっかくここまで若い選手たちが育ってきている中で、格闘技を辞めようかって思ってしまう選手もいるかもしれないと思うんですよ。  こういう状況だからってジムやイベントが縮小することがないように。あとは僕の下からもいい選手がいっぱいキックボクシング業界に育ってきて欲しいので、何としてもこのクロスポイント吉祥寺を今のままの形で残したいと思っています」  国内70kg級のトップランナーとして長年走り続けてきた日菜太だが、『ONE Championship』が70kg級最強の一角であるシッティチャイ・シッソンピーノン(タイ)を獲得。ダビッド・キリア(ジョージア)、ジョネイ・リスコ(スペイン)の参戦も決まった。ONEキックボクシング世界フェザー級王者ジョルジオ・ペトロシアン(アルメニア)を頂点とする70kg戦線が充実してきたことを日菜太はどう見ているのか。 「ONE凄いですよね。ペトロシアンがいてシッティチャイがいて。世界のナンバーワンのサウスポーはその2人の内どちらかだと思うので、戦ったらがそれが分かるから僕も注目しています。最後にやらせてもらえるなら僕もONEに上がりたいです。そういう舞台でシッティチャイやペトロシアンとやれるチャンスがあるならぜひ行きたい。  ただ、ONEって計量方法が独得じゃないですか。そうなると普段の体重をもう少し落としていかないといけなくなるので、それなりに時間をかけて準備をしないといけないと思います。普段は77~78kgなので、それをナチュラル70kgにするということは普段の体重を72~73kgにしないといけない。そうなると期間が必要ですね。  でも、最後の最後はそのメンバーたちとやりたいです。最後は強いヤツらとやって引退したいって気持ちはめちゃくちゃあるので。特にシッティチャイには凄く興味があります。あの選手はグレゴリアンと4回やって3回勝ってるじゃないですか。完封している試合だったのでペトロシアンとシッティチャイどっちが強いのか興味ありますし、やってみたい選手ですね」  新型コロナウイルスの影響で引退が1年延びたことで、夢のカード実現の可能性も出てきた日菜太は「日本でONEの大会をやってくれて、有名なキックボクサーが出るならぜひ僕にもオファーして欲しいです」とアピールした。
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.335
2024年11月22日発売
年末年始の主役たちを特集。UFC世界王座に挑む朝倉海、パントージャ独占インタビュー、大晦日・鈴木千裕vs.クレベル、井上直樹、久保優太。武尊、KANA。「武の世界」でプロハースカ、石井慧も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア