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MMA
インタビュー

【修斗】「たゆたえども沈まず」──元修斗王者にしてプロモーター・坂本一弘の決断。5月31日(日)修斗再開

2020/05/31 08:05
 2020年5月31日(日)18時から、「プロフェッショナル修斗公式戦 Supported by ONE Championship」が、『ABEMA』テレビマッチとして行われる。  3月21日の渋谷大会から2カ月を経ての「無観客」での再開。坂本一弘サステイン代表は、その間、4月17日に「Road to ONE:2nd」に関わったことで、コロナ下での開催に手応えを得たという。  米国でも無観客を条件にフロリダ州が大会を解禁。5月10日に『UFC249』が開催されると、その後、2大会が同地で行われ、30日にはお膝元であるネヴァダ州ラスベガスにUFCはカムバックを果たしている(UFC APEXでの開催)。  そんな中、「無観客」での大会開催に舵を切った修斗プロモーターは、どんな思いを抱いていたのか。大会直前に聞いた。 ――いよいよ5月31日(日)18時から、プロ修斗公式戦が再開されます。3月21日の渋谷大会から2カ月を経ての「無観客」での再開に至った経緯を教えてください。 「いろいろな要因が重なった部分もあるので、一口にどうということではないのですが、でも、やはり“旗を振らないと”人って集まらないじゃないですか。ゼロは何をかけてもゼロですし。だから、様々なリスクや注意を払うべき点はありますが、“一歩踏み出そう”ということで開催を決めました。その一歩を踏み出すのに、ABEMAの北野(雄二)プロデューサーや、長南(亮)TRIBE代表とか、そういう同志というか、志を同じくする者たちが集まって力を合わせたからできる大会です。  ただ僕が旗を振ってても、その旗に誰もついて来なれば、開催できない。試合をやりたいという選手たちがいなければ。こういう状況で新型コロナがあるからといって、プロが練習を休んでいてもしょうがないじゃないですか。試合がなくてもどういう形であれ練習は続けなきゃ落ちて行く。コロナがあるから練習しないとか、そんな言い訳は通じないわけで。  選手はそういう気持ちでやっている人が多いのに、僕らプロモーターは何か策を考えられないのかというところだと思うんです。旗を振っていれば、“こういうアイデアがありますよ”とか、“こうした方がいい”という声が挙がります。そうやって、自分だけの力じゃなく、仲間・同志が増えてきたことが、大会開催に至った一番大きな理由でした」 ――4月7日に最初に出され、その後対象が全国に広がった「緊急事態宣言」の自粛期間の間、4月17日に「Road to ONE:2nd」が無観客で開催され、ABEMAで生中継されたことは、力になりましたか。 「もちろんそれは大きいです。ただ、自分も腹の底では腹を括っていたというのも事実なんです。このまま何の手立ても打たずただ指をくわえて自粛だけをしていればいいのかと。だから、そんな中で、『Road to ONE:2nd』を長南と北野さんと一緒にやれたことは、プロモーターとしてプラスになりました。  こういう状況なので人の選択は自由で、試合をしない・見ない権利と自由があると同時に、試合をする権利・試合を見る自由もあっていい。最大限の注意を施した上で、それを選択できるよう、自分が踏み出すことによって、自分のプロモーターとしての格闘技に対する関わり方も、これまでと違った側面を知ることが出来ました。  マイナスに考えることはいくらでもできるし、ネガティブな要素やリスクはいくらでも世の中に転がっている。それはコロナだけじゃない。確かに今の状況がいいか悪いかといったら、それは世の中的には良くないんだけど、その中でも“自分より強い相手と試合をする”ときに、“もう敵わないから試合をやらない”と言うのか、“何か勝てる方法があるんじゃないか”と、自分は考えたんです」 ――試合に置き換えて考えたんですか。 「そうですね。なんか方法はあるんじゃねえかと。生きている限り、戦う方法はゼロじゃないだろうと。敵わないから試合放棄して止めますっていう前に、コロナがそこにある以上、何かそいつの強みや弱点とかを見つけて、どうやって戦っていくか──それは生活を持続させるという意味でも──戦い方を考えるわけで」 【写真】1995年5月12日、オランダのレネ・スタイターに腕十字で一本勝ちした坂本一弘。1991年の「5月31日」に坂本は第2代修斗ライト級王座に就いている。 ――100年に1度という出来事な上に、持久戦になるなら、それなりの戦い方も必要で、試合でもリスクゼロの戦い方は無い。自分で考えて、生きて行くということですね。坂本代表は、ジムで指導者としても選手を間近で見ています。様々な工夫をして、選手たちも少人数で練習したり、場合によっては家族のもとに帰らないという決断をしながら練習をしている選手もいる。そういう姿を見る中で、試合の場を与えたいという思いを抱いたのでしょうか。 「そこは“与えたい”っていうより、そういう気持ちだったら一緒に戦うよと。さっきの旗を振っても、選手に“こんなのいらないです”って言われたらどうにもならない。本当に事情があって、いま格闘技が出来ない選手もいるから、その人たちのことを悪く言うつもりはないんです。  ただ、僕らは常に現場にいて、現場で汗を流している選手を見ている。来るか来ないか分からないオファーを待っていて、それでも毎日練習をするのがプロだし、それは別に褒められることでもないと思うんです。その当然な状況がコロナによって変化している。そんなときでも、いかに考えてやるか。『対人練習が出来ないから試合が出来ない』というのはちょっと違うと思うんです。僕も現役の頃、何か一つだけしか出来ない場合にどの練習をやるか?と考えて練習していた時期もありました。  止まっているやつもいるけど、工夫しているやつもいて、“来たるべき日”の為に備えて磨いているやつもいる。一方で、YouTubeやってるやつも、様子見しているやつもいる。“来たるべき日”がいつ来るのかというのはまた別の問題なんですよ。“いつか”は来ないかもしれないし。でも、そのいつかが、僕の力とかみんなの力を集めたら作れるんじゃないか、と感じたら、やっぱり作った方がいい。それをする責任があると感じました」 ――坂本さんの会社名サステインには「持続させる」という意味のほか「元気づける」という意味もあるそうですね。この新型コロナに関しては、注意すべき点やまだ分からないことも多くあります。その前提で付き合っていかないと別の終わりが来てしまう。「Road to ONE:2nd」をモデルケースに、最大限の対策を練り、配慮して試合を行うことになりますね。 「そうですね。そこの配慮が出来ているかということでいうと、『Road to ONE:2nd』で学んだスキルは大きいし、意識も変えられました」 ――前回は、参加者の理解にも温度差があったと聞いています。大会後も体調を追って感染者が無くて初めて成功といえる、非常にナーバスに感染対策をしていたようですね。 「失敗すると、その1回の失敗が命取りになることもあるわけじゃないですか。大事なことは万全を期してやること。正解が無いなかでも、よりベターな道を常に選ばなくてはいけない。ベストの方法は難しくても、考えれば手段は無限大にある。その中でチョイスしていく。  できるだけ免疫力を高めるために水抜き禁止で王座戦以外は当日計量にし、出場選手にもし熱があればその試合はもちろん躊躇なく無くなりますし、試合以外の部分でも感染することが無いように防護服や消毒を徹底する。そして試合後、2週間は体調の確認をします。前回は、大会の最後のほうでやや安堵している感があったので、今回は最後まで緩めず緊張感を持って、なるべく何もないように全員を家族のもとに返したいなと思っています」 ――緊急事態宣言が解除に向かい、深夜営業も始めた居酒屋ではマスクも無く来店したお客さんたちが歓談している姿を見るようになりました。そんななかで、きっとやりすぎなくらいの感染防止策を続けるわけですね。 「そうですね。そこで初めて一歩踏み出せるということだと思うんです。多くの感染者がいる米国でも、UFCが再開しましたけど、無観客とはいえ(大会開催は)一般的なことではないと思いますし。僕らは前に進む。止まっている人が悪いっていうことじゃなくて。それぞれの環境は違うのに、お上が今日からいいと言ったから道場を開けるとかっていうことでもないじゃないですか。いろいろなことを鑑みることは必要だと思います。その中で何を選ぶか。これをやるために、あるいはこれを起こさないために、どうしたらいいのかということをまず考えることが大事でした」 ――今回その中でも、ABEMAとの関係により「無観客」「ネット中継」という選択肢が可能となっている点も見逃せません。 「そうですね。あとはやっぱり、『Supported by ONE Championship』と名前が入るなかで、『Road to ONE:2nd』もそうですが、チャトリ代表がきちんと状況を把握していて、OKを出してくれていることも大きいです。その部分がパートナーシップとしてとても心強いです」 ――なるほど。いまだシンガポールはロックダウンが続き、チャトリ代表自身が自宅で指示を出しているなか、まだONE本戦は再開していないにも関わらず、各国の状況や、開催方法を吟味したうえでゴーサインを出していると。 「はい。『Road to ONE:2nd』で結果を出しているというところが大きいと思うんですよね」 ――大会では、「バンタム級暫定王者決定戦」として、岡田遼(同級1位・環太平洋王者/パラエストラ千葉)選手と、倉本一真(同級2位/修斗GYM東京)選手による初対決がメインイベントとなりました。第8代環太平洋王者・岡田選手はアメリカントップチームでの出稽古も経て、オールラウンダーぶりに磨きをかけています。対するグレコの猛者の倉本選手は、鬼のジャーマン連発で7戦無敗の快進撃によりベルトに王手をかけました。この試合を今大会の最後に持ってきたのは? 「コロナ前の段階で、バンタム級正規王者の佐藤将光がONEでビビアーノ・フェルナンデスと対戦するかもしれなくて、扇久保博正はRIZINで石渡伸太郎選手に勝ってマネル・ケイプが持つ王座に挑戦を決めていた。それもどんどん頓挫していったり、いろいろな団体の状況があるなか、コミッションのほうで『暫定王座』が制定されたのであれば形にしていきたかった。“初モノ”が好きというのもあるかもしれないです(笑)。  岡田選手にしてみれば“いつまで待ったらいいんですか”という思いもあると思います。“佐藤将光をチャンピオンにしておきたいのか”と。でも、この階級は強者が揃っているから、戦国時代の国取り合戦みたいなもので、選手にとってみれば残酷なことかもしれないですけど、僕はランキング1位の岡田選手と2位の倉本選手が戦って、勝ったほうが佐藤将光に挑戦するほうが更に盛り上がると思っています」 ――修斗GYM東京所属の倉本選手の進化をジム代表としては、どのように見ていますか。 「心技体全てが充実していて、何でもできる“リベロ”な岡田選手に対し、レスリングがバックボーンの倉本選手ですが、“レスリングだけで勝とう”としていないところが彼の良いところです。MMAの中で“レスリングを生かそう”“ボクシングを生かそう”としている。真面目で努力家ですし、吸収力がすごくいい。その動きを自分なりに咀嚼して、自分なりにアレンジするのがとても上手いんです。練習でもパッと見た瞬間にこの動きと言ったら、次の試合でもう使えていたりする。何となく無骨で荒々しく見えるかもしれませんが、自分の体形に合った技を取捨選択するセンス、更にそれを自分流にアレンジする能力に優れています。  きっと2人は今回のメインに相応しい試合をやってくれると思います。この無観客の状況で、彼らがどういうファイトをしてABEMAで見ている人たちに勇気を与えるか。格闘技だけじゃなく、何かをする人にとって一歩を踏み出す力に、その起爆剤になるような試合を期待しています。それは、世羅智茂vs岩本健汰も、延び延びになっていた女子2試合も、第1試合の木下タケアキvs.西川大和もそうです。そんなカードが8試合、並んでいると自負しています」 ――世羅智茂vs.岩本健汰は、以前の修斗がシークレットで組んできたグラップリングマッチのように感じました。『Road to ONE:2nd』での世羅vs.青木真也戦が点にならず線になった、青木選手が線にしたのも流れを感じます。 「世羅選手の発言を逃さない、青木真也の直感というかインスピレーション、プロデュース能力もすごいなと思います。“歴史は繰り返す”と言いますけど、繰り返すだけじゃなくて、いかに歴史から学んで、うまくアレンジしていくか。僕ももう30年以上修斗をやっているので、技術一つを取っても生まれていくものもあるし、忘れちゃったものもある。プロモーターとしてもう一度、自分を見直すいい機会でした。  今一度、何のために格闘技を始めたのか。何のために大会を開いているのか。僕はやっぱり戦いたかったし、試合がないからって練習を止められるかって言ったら、そういうものじゃなかった。  こうして旗を振っていると……今日も、闘裸男の山本陽一代表(中国・四国地方の修斗プロモーター)から『僕も何かやろうと思うんですよ』って連絡があったんですよ。やっぱりそれは凄く嬉しかった。同じようにアクションを起こそうと思っている人がいる。やるんだったら、僕も前回と今回で学んだものを全部伝えますから。何とかしなきゃと思っている中で、ゼロだとみんな中々踏み出しにくいと思うんですけど、一歩踏み出す形を見せられたら、そこに足す人や引き算する人や、かける人も出てくる。そうしたら、また修斗が、格闘技が大きくなるんじゃないかなと思います。31日に戦う選手を見て、こういう形でやってるんだったら俺たちだってできるはずだよというふうに思ってもらえたら嬉しいですね。キックの選手だろうが、柔術家だろうが、グラップラーだろうが、レスラーだろうが、ボクサーだろうが、みんなが考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです」 ――考えるきっかけに。たしかにそうですね。周囲の視線に敏感になり過ぎて、自粛により自らを縛り、画一的な決定をしがちな昨今ですが、マーシャルアーツは、芸術と同じで心のみならず身体にも何らかの“傷”をつけることが本質です。社会の“外”に出るためのきっかけになる、格闘技に感染する機会が失われないのは、とても大切なことだと考えます。  ところで、2019年に修斗が30周年を迎えたとき「30年続いたから、60年やる自信がある」と坂本代表は仰いました。ところがこの1年で、100年続いたような会社が倒れる状況になっています。そんな中で、修斗をプロモーターとして再開させるんだという、強い意志を感じました。 「ここで止まっていられないというのはあります。フランスのパリ市の紋章にある標語で『たゆたえども沈まず』(Fluctuat nec mergitur)という言葉があって、風をはらんだ帆船の画とともに“どんなに強い風が吹いても、揺れるだけで沈みはしない”という意味のラテン語が記されているそうです。パリってセーヌ川があるからよく氾濫したり、街を占領されたり、無差別テロの標的にされたり、歴史の荒波を生き抜いてきた。それでもパリは沈まなかったと。修斗も同じじゃないかなと思って。団体としてもいろいろあって、競技的にも『黒船来襲』や『日本最弱』と書かれたり、レコンキスタ(失地回復)を掲げたり……いろいろあるけれども、結局沈没してねえよ、と。『たゆたえども沈まず』──どっこい、修斗は生きている。そう簡単に潰れねえし、まだまだやる。日本の総合格闘技の中でも、常にそういう位置で、そういう気持ちでいたいと思っています」 ◆坂本一弘 Sakamoto Kazuhiro1969年3月4日生まれ、大阪市出身。高校よりレスリング、空手を学ぶ。18歳で上京。修斗創始者・佐山聡に師事し、三軒茶屋のスーパータイガージムに入門。入門2カ月で第二回プリシューティング大会ライト級優勝。1989年5月、後楽園ホールでプロデビューし、腕十字で勝利。1991年スーパータイガージム横浜(シューティングジム横浜)に移籍。同年5月、田中健一を破り、第2代ライト級王座戴冠。1999年4月、サステインを設立。同年5月横浜文化体育館にて『修斗プロ化10周年大会』を主催。同年12月、NKホールでバーリ・トゥード・ジャパン‘99を開催し、『日本vsブラジル7対7』を実現。以後、数多くのプロ修斗の興行を手掛ける。2008年9月東京・五反田駅前に『修斗GYM東京』を開設。
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