テイクダウンを奪って上になった須藤は笑顔を浮かべる
1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去5月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。26回目は2000年5月26日、東京ドームで行われた『コロシアム2000』より、須藤元気(ビバリ-ヒルズ柔術クラブ)vsアンドレ・ペデネイラス(ブラジル)。
(写真)この頃から独特な入場パフォーマンスをしていた須藤
2000年5月26日に一度だけ東京ドームにて開催された格闘技イベント『コロシアム2000』。ヒクソン・グレイシー(ブラジル)vs船木誠勝(パンクラス)をメインイベントに、総合格闘技、キックボクシング、極真空手の試合が行われた。
その第2試合、15分1Rの総合格闘技ルールで行われたのが須藤vsペデネイラスだ。
須藤は全日本ジュニアで優勝したレスリングを経て、渡米して柔術も学び1998年6月にMMAデビュー。1999年の帰国後はパンクラスを主戦場に戦っていた。これがプロ8戦目で戦績は3勝3敗1分。
ペデネイラスはカーウソン・グレイシーに柔術を学び、黒帯の腕前。1998年10月に初来日し、当時の修斗のエース・佐藤ルミナにTKO勝ちして一躍その名を轟かせた。1999年7月にはUFCライト級王座にも挑戦。同年12月の2度目の来日では宇野薫と時間切れで引き分けていた。
前後左右へ変則的なステップを踏み、動き回る須藤は後ろ蹴り、バックハンドブローと回転系の技を繰り出す。最初は戸惑ったようは表情を見せたペデネイラスだったが、一輝に組み付くとそのままテイクダウン。須藤はクロスガードと両腕を脇に抱えてペデネイラスの動きを封じる。
ペデネイラスが一旦離れると、須藤は両足をバタバタさせてけん制し、立ち上がると逆に両足タックル。これはペデネイラスが防ぐと須藤はコーナーへ押し込んでいき、カメラに向かって余裕のVサイン。
離れると再び変則的なステップを踏み、回転系の技繰り出す須藤。ペデネイラスが距離を詰めてくるとリングを走り回り、ペデネイラスは頭をかく。その後も動き回ってカカト落とし、後ろ蹴り、横蹴りを繰り出す須藤。コミカルな動きに場内も沸くが、ペデネイラスは踏み込めない状況が続く。
須藤はジャブ、右ミドルを単発ながらヒットさせていき、ペデネイラスが再び組み付いても今度はコーナーを背にして容易にテイクダウンを許さない。須藤のコミカルかつトリッキーな動きにペデネイラスはやりにくそう。須藤は顔の前で両手を叩く猫だましまで行う。
あまりにも変則的な須藤の動きに、ペデネイラスはたびたび苦笑を浮かべる。須藤も微笑み返し、その顔が場内のモニターに映し出されると「真面目にやれ~!」とのヤジも飛ぶ。
須藤が右ミドルを蹴ったところでペデネイラスが蹴り足をキャッチ。寝技に持ち込むことに成功するが、須藤はガードから両足のカカトで連続して蹴ったり、クロスガードしながら左右フックを見舞ったりと破天荒な動きを見せる。
ペデネイラスも顔面にパンチを見舞うが、須藤は三角絞めを仕掛け、ペデネイラスが立ち上がると下から足を絡めてのヒールホールド狙い。ペデネイラスが足を抜くとすぐに須藤が立ち上がり、パンチで前へ出てきたペデネイラスから両足タックルでテイクダウンを奪う。
抑え込みながら不敵な笑みを浮かべる須藤は、立ち上がるとジャンピングフットスタンプを狙い、回転してのパスガード。ペデネイラスが立ち上がろうとするとサッカーキックからパンチの連打。さらにボディロックからスープレックスでテイクダウンと大きな見せ場を作った。
上になった須藤はパンチを見舞い、上体を起こしたところでペデネイラスに蹴り上げられるが、その足を抱えてのアキレス腱固め。ペデネイラスは痛みに仰け反ったかのように見えたが、暴れて奪取することに成功。しかし、須藤は逃さず抑え込む。
立ち上がった須藤はジャンピングフットスタンプ、ローキック、カカト落としを連発してペデネイラスをなかなか立たせず、なんとロープの反動を利用して飛び上がってのジャンピングフットスタンプも繰り出すなど大暴れ。最後も須藤がロープに飛んで、ジャンピングフットスタンプをしようとしたところでタイムアップ。
ルールにより判定はなく時間切れドローとなったが、須藤がセオリーにはないトリッキーすぎる攻防で優勢を印象付けた。