MMA
インタビュー

【UFC】無観客大会のUFC、5月連続開催の課題と成果──ゲイジー「人生は一度きりだけど、最高にクレイジーな日々を生きている」

2020/05/12 14:05
 2020年5月9日(日本時間10日)米国フロリダ州ジャクソンビルのヴィアスター・ベテランズ・メモリアル・アリーナにて「無観客大会」として行われた『UFC 249』のメインイベントとセミファイナルで勝利した王者らが試合後、会見に臨んだ。  ライト級暫定王者決定戦として、12連勝中だったトニー・ファーガソン(米国)を5RにTKOに下したジャスティン・ゲイジー(米国)は、死闘を終えた直後、オクタゴンのなかで、「(ファーガソンのレフェリーストップは)彼も死ぬ覚悟で来ているから残念だろう。僕も同じように死ぬ覚悟でここに来ている。オクタゴンにはそういう気持ちで来ているんだ。慈悲もない。でも、いい人間になるために、家族のために働き、社会奉仕もしているんだ」と、コロナ禍で厳重注意のなか、タイトルマッチを終えた感想を語っていた。  バックステージで暫定王者は、「(勝利に)浸る時間がなかったよ。とても良い夜だった。この試合を見るのが待ちきれないよ。僕は本当に僕のスキルを信じていたし、コーチと過ごした素晴らしい時間を信じていた。大きな挑戦だったから、今とても幸せだよ。家に帰って家族に会うのが待ちきれない。僕はどれほど人々をハッピーで気持ちよくさせたか知っている。オクタゴンに足を踏み入れたとき、どんな期待もしていなかった。ただ自身のベストを尽くし、良い夜になった」と、長いキャンプを経ての戴冠に、一刻もはやく家族と再会したいと安堵の表情。  続けて、「僕の動きのタイミングやコーチも信じられないほど良く、僕にとってインクレディブルな夜になった。これが僕が生まれ育った道だ。人生は一度きりだけど、最高にクレイジーな人生を生きている。勝っても負けても、僕はその挑戦を待ちきれない。100%の力を出し切って、地獄のような時間を過ごしたいと思っている」と、王座統一戦に向けての覚悟を語った。  無観客の会場でもマイクに向かって、「アメリカを代表して戦った。ロシアも強いけど、彼以外に戦う相手はいない」と正規王者ハビブ・ヌルマゴメドフとの対戦をアピールしていたゲイジー。「ファイト・オブ・ザ・ナイト」と「パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト」をダブル受賞し、7試合連続9度目のボーナスを獲得した勝者は痛めた左手のグローブを外し、「こんな手でごめんね。神と両親に感謝したい。彼らが僕に見本を示してくれた、導いてくれたから今の僕がある」と感謝の言葉を述べている。  異常なタフさを誇る難敵ファーガソンを相手に“やりすぎゲイジー”から、的確に打撃を当ててダメージを蓄積させるなどクレバーな姿を見せた暫定王者。強力なレスリングを誇る正規王者を相手に、この進化はいかに作用するか。注目だ。  大会後、正規王者ハビブ・ヌルマゴメドフは「このスポーツでは、特にこの階級では、背中に息を吹き込む空腹のライオンが常にいるだろう。リラックスしている時間はない。行く人もいれば、来る人もいて、何も驚くことはない。銃声の前に倒れたりしない。また戦おう」とのコメントを発表している。 [nextpage] 厳しいコンディションと高まる闘志。「無観客大会」の今後は──  一方、“レジェンド”ドミニク・クルーズ(米国)を挑戦者に迎え、バンタム級王座防衛を果たしたヘンリー・セフード(米国)は、試合直後、オクタゴンの中で電撃の引退を表明した。 「ダナ、UFCのみんな、本当にありがとう。自分のキャリアに満足している。ここで引退をするのが適切だと思う。自分の人生を楽しみたいんだ。いま33歳。11歳から人生を犠牲にしてこのスポーツに取り組んできた。見守ってくれる彼女もいるし、そろそろ家族を作りたい。俺はこれで引退するよ。みんな、ほんとうにありがとう。三冠王はここでキャリアを最後にする」  縮小されたフライ級戦線では「バンタム級に専念するため」王座を返上。しかし、バンタム級でも中・重量級に比べファイトマネーなどでの評価の低さもあり、このコロナ禍で引退を表明した。  ベルトを保持したままオクタゴンを去ることを決めた王者は、バックステージで、「もし俺がドミニクを打ち負かすことができなかったら、ほかのやつらも倒すことはできない。勝つ自信はあったけど、もし負けても俺はやりきったし、後悔することはなかった。かなり自信があったし、結局のところトップとしてオクタゴンを後にしたかったんだ」と、現役に未練が無いことを語った。  両親がメキシコからの不法移民で、第六子としてロサンゼルスで生まれ、母子家庭で育てられたセフード。貧しく苦労が絶えないなか、兄の影響でレスリングを始め、2008年、北京五輪男子フリースタイル55kg級で金メダルを獲得。MMA転向後は、2016年に連敗を喫するも空手を取り入れレスリングとの融合を果たし、二階級王者に輝いた。 「すべてのファイターにとって夢だと思うが、誰もがこれまで実際にやったことがない(※トリプルC=金メダリストにして二階級同時制覇)。ジョルジュ・サンピエールは引退したけど、俺のようには2本のベルトを持っていなかった。伝説に敬意を表するよ。俺がスポーツで成し遂げたことを、みんなは史上最高のコンバットスポーツ・アスリートとして取り扱わなければならない。オリンピック金メダリストにしてバンタム級とフライ級の両王座で防衛した。俺は満足している、幸せだよ。君の能力に耳を傾け、君の心に耳を傾けてほしい。その心が能力に見合っていれば、それは1%の中の1%になった時だ」  セフードの引退でフライ級に続きバンタム級の王座が空位となる。6月13日には、MMA14勝1敗のピョートル・ヤン(ロシア)と、セフードに敗れジョゼ・アルドに勝利しているマルロン・モラエス(ブラジル)との対戦も予定されており、両者によるバンタム級王座決定戦の可能性も出てきた。  新型コロナウイルスの影響により「無観客」で行われた全11試合。外出自粛でジムも閉鎖されるなか、少人数による可能な形でのトレーニングで試合の準備を進めてきたファイターたちのコンディションは全員がベストとは言い難い状態だった。それでも、大会再開で世界中が注目する中、試合を望んだ選手たちの覚悟あるファイトは見ている者の心を揺さぶるものだった。  大会前の複数回にわたる新型コロナウイルス検査の結果、試合直前に、ホナウド・ジャカレ(ブラジル)およびセコンドの3名に陽性反応が検出され、試合が中止されたが、大会は決行。ジャカレとセコンド陣はホストホテルを離れ、敷地外で自主隔離に入り、試合中止になったユライア・ホールと欠場になったジャカレイにもファイトマネーが支払われることが発表されている。  消毒に加え、セコンド含むケージサイドの関係者がマスクを着用。試合開始90分前にならないと会場入りが許可されないなど、安全対策が取られた上で、必要最低限の関係者立会いのもと行われた「無観客大会」。試合に向かう選手のコンディション、そして、大会後の選手・関係者の健康の追跡確認など、課題は残るが、経済活動再開の声も高まるなか、PPV購入者が増加し、メディアからも閉塞感を打ち破る大会の開催を評価する声も少なくなかった。  フロリダ州ではMMAが「社会生活を維持するうえで必要な事業」として認められており、必要最低限の人数、ウイルス検査の実施、ソーシャルディスタンス、消毒等を徹底した上での「無観客大会」を認可。5月29日(日本時間30日)には「Titan FC」も無観客大会を開催することを発表している。  ほかメジャースポーツの再開のモデルケースにもなるかもしれないUFCの無観客大会は、5月13日(日本時間・14日)に同地にて「UFC Fight Night: Smith vs Teixeira」を続けて開催。さらに16日(日本時間・17日)にも「UFC Fight Night: Overeem vs Harris」の開催を発表。いずれも「UFC FIGHT PASS」にて世界で視聴が可能となっている。発表カードは以下の通り。 UFC Fight Night: Smith vs Teixeira 5月13日(日本時間・14日)米国フロリダ州ジャクソンビルヴィアスター・ベテランズ・メモリアル・アリーナ ▼ライトヘビー級 5分5Rアンソニー・スミス(米国)グローバー・テイシェイラ(ブラジル) ▼ヘビー級 5分3Rオヴァンス・サンプレー(ハイチ)ベン・ロズウェル(米国) ▼ライト級 5分3Rドリュー・ドバー(米国)アレキサンダー・フェルナンデス(米国) ▼バンタム級 5分3Rレイ・ボーグ(米国)リッキー・シモン(米国) ▼ミドル級 5分3Rカール・ロバーソン(米国)マーヴィン・ヴェットーリ(イタリア) ▼ヘビー級 5分3Rアンドレイ・オルロフスキー(ベラルーシ)フィリッピ・リンス(ブラジル) ▼ライト級 5分3Rマイケル・ジョンソン(米国)チアゴ・モイゼス(ブラジル) ▼女子バンタム級 5分3Rシジャラー・ユーバンクス(米国)サラ・モラス(カナダ) ▼ライト級 5分3Rガブリエル・ベニテス(メキシコ)オマー・モラレス(ベネズエラ) ▼バンタム級 5分3Rハンター・アジャー(米国)ブライアン・ケレハー(米国) ▼ヘビー級 5分3Rチェイス・シャーマン(米国)イケ・ビラヌエバ(米国) UFC Fight Night: Overeem vs Harris 5月16日(日本時間・17日)米国フロリダ州ジャクソンビルヴィアスター・ベテランズ・メモリアル・アリーナ ▼ヘビー級 5分5Rアリスター・オーフレイム(オランダ)ウォルト・ハリス(米国) ▼女子ストロー級 5分3Rクラウディア・ガデーリャ(ブラジル)アンジェラ・ヒル(米国) ▼フェザー級 5分3Rエジソン・バルボーサ(ブラジル)※フェザー級ダン・イゲ(米国) ▼ミドル級 5分3Rエリク・アンダース(米国)クリシュトフ・ヨッコ(ポーランド) ▼バンタム級 5分3Rソン・ヤードン(中国)マルロン・ヴェラ(エクアドル) ▼ウェルター級 5分3Rマット・ブラウン(米国)ミゲル・バエザ(米国) ▼ミドル級 5分3Rケヴィン・ホランド(米国)アンソニー・ヘルナンデス(米国) ▼フェザー級 5分3Rジガ・チカズ(ジョージア)マイク・デイヴィス(米国) ▼女子フライ級 5分3Rコートニー・ケイシー(米国)マラ・ロメロ・ボレッラ(イタリア) ▼フェザー級 5分3Rダレン・エルキンス(米国)ネイト・ランドヴェール(米国) ▼ヘビー級 5分3Rドンテイル・メイス(米国)ホドリゴ・ナシメント(米国) UFC 250 ※2020年6月6日(日本時間7日)を予定開催場所は「すぐに明らかにされる」(プレスリリース) ▼UFC女子世界フェザー級選手権試合 5分5Rアマンダ・ヌネス(ブラジル)フェリシア・スペンサー(カナダ) ▼バンタム級 5分3Rハファエル・アスンソン(ブラジル)コディ・ガーブラント(米国) ▼ライトヘビー級 5分3Rアロンゾ・メニフィールド(米国)デヴィン・クラーク(米国) ▼ミドル級 5分3Rイアン・ハイニッシュ(米国)ジェラルド・マーシャート(米国) ▼フライ級 5分3Rジュスエー・フォルミーガ(ブラジル)アレックス・ペレス(米国) ▼ミドル級 5分3Rチャールズ・バード(米国)マキ・ピトロ(米国)
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