1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去4月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。60回目は2008年4月25日に東京・後楽園ホールで開催された女子総合格闘技団体『SMACKGIRL』から、藤井惠(AACC)vsハム・ソヒ(韓国)の一戦。
2000年12月にスタートした、世界的に見ても女子総合格闘技のパイオニアである『SMACKGIRL』が、4年に一度のワールドトーナメントとして開催した『SMACKGIRL WORLD ReMix TOURNAMENT 2008』。その準決勝戦が2008年4月25日に東京・後楽園ホールで開催された。
メインイベントはこの年に初めて開催されたライト級(-52kg)トーナメントの準決勝戦、藤井惠vsハム・ソヒ。藤井のセコンドにはジョシュ・バーネット、ソヒのセコンドにはキム・ドンヒョンとベ・ミョンホが就く。
藤井は柔道(全日本学生選手権52kg級3年連続ベスト8)からサンボ(世界選手権で4度銀メダル)へ転向し、ブラジリアン柔術を経て2004年8月に『SMACKGIRL』でプロデビュー。驚異的な極めの強さでデビュー以来14連勝、そのうち11勝が一本勝ち。ライト級王者・辻結花と並ぶ2大エースとして君臨していた。
対するソヒはキックボクシングと散打をバックボーンに持ち、2007年2月の『DEEP』に初来日するといきなり渡辺久江を破り注目を集める。4戦目にはSMACKGIRLライト級王者・辻結花の挑戦者に抜擢された(判定負け)。このトーナメント1回戦では期待のホープ・石岡沙織を破り、準決勝の藤井へ駒を進めた。
1R、ソヒはワンツーを中心に繰り出し、よく動いて藤井のテイクダウンを警戒。藤井はジャブでけん制し、高速タックルを仕掛けていったが、ソヒは反応よくしっかりと切って組み付かせない。サウスポー同士で、藤井が出す右ジャブをソヒは右手で叩くようにして距離をとり、長い左ストレートを繰り出す。藤井はパンチからタックルにつなげたいところだが、ソヒの距離でなかなか踏み込むことが出来ない。
意を決した藤井は一気に前へ出て距離を詰めると、ソヒの腕を取って立ったままアームロックを極めにいく。走るようにして逃げようとするソヒだったが、藤井は腕を巻き込みながら寝技へ持ち込み、今度は足関節狙い。
足を抜いて逃れようと背中を向けたソヒ。藤井はスルスルと背中を登るようにバックを奪うと、リアネイキドチョークを仕掛ける。しかし、ソヒがディフェンスすると藤井は素早く腕十字狙いに切り替え、今度は見事な一本勝ちを収めた。1R1分39秒だった。
強い打撃を持つソヒに「パンチを当てるよりもディフェンスを重視しました」と藤井。最後の技の切り替えは、「ハムはディフェンス力が高いので、展開を早めに切り替えることを考えていました」と、作戦通りだったと話した。
この勝利により、藤井はデビュー以来の連勝記録を「15」へ伸ばし、トーナメント決勝戦へ進出したが、予定されていた大会が中止。『SMACKGIRL』は活動休止となり、ついに決勝戦が行われることはなかった。
また、藤井の弟子である浜崎朱加とハム・ソヒは3度も対戦し、昨年大晦日の『RIZIN』でソヒが初勝利を収めたのは記憶に新しい。