2年連続サンボ世界選手権2位で注目を集めていた藤井惠が女子レスリングに初挑戦した(C)横森綾
1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去4月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。43回目は2000年4月9日に静岡・東伊豆町勤労者体育センターで開催された日本女子レスリング連盟『ジャパンクィーンズカップ2000』に、藤井惠(スポーツ会館)が挑戦した話。
(写真)1回戦はタックルをガブり、上手く横へ回り込んで抑え込みフォール勝ちの快挙
2000年4月9日、静岡県で女子レスリングの全国大会『ジャパンクィーンズカップ』が開催された。そこで2年連続サンボ世界選手権2位となり、“美人サンビスト”としても注目を集めていた藤井惠がレスリングに初挑戦。
「サンボだと試合があまりないので…」と1カ月前に急遽、出場すると決めたという藤井。時間がなく、普段練習しているスポーツ会館で男子選手を相手に練習を積んで大会に臨んだ。
藤井がエントリーした51kg級は女子レスリングの中でも比較的層が厚く、98年優勝者・篠村敦子はその年の世界1位、99年優勝者・山本聖子も世界1位になっている。つまり、国内大会でありながら世界王者を決めるレベルにあった。
1回戦、藤井は試合開始当初には固さが見られたものの、タックルをガブる動作から抑え込み、1分40秒でフォール勝ち。幸先のいいスタートを切った。
(写真)2回戦で伊調の両足タックルを切ろうとしたが、予想外の低さに戸惑う
しかし、2回戦で待ち受けていたのは前年の同大会3位で、年末の全日本女子選手権2位の伊調千春(東洋大=後の2004アテネ・2008北京五輪女子48kg級銀メダリスト)だった。
試合開始直後、手首を取っての投げを試みた藤井だったが、すっぽ抜けたようになり、後ろから倒されてパーテル(下側の選手が両手両膝をついた状態)を取られる。不慣れなうつ伏せになってのグラウンドとなり、90度以上肩を傾けられてニアフォールとなり、ポイントを失う。
そして「予想外に低い位置から来た」両足タックル、片足タックルから後ろへ回られ、うつ伏せに倒される。出場を決めてからずっと練習してきたというタックルをガブる動作は伊調には通用しなかった。
(写真)手を上げられる勝者・伊調。藤井(右)は悔しさを隠しきれなかった
3分51秒、藤井は1ポイントも取れぬまま、10-0のテクニカルフォール負け。ここで藤井のレスリング初挑戦は幕を閉じた。