2019年年末にさいたまスーパーアリーナで開催された『BELLATOR JAPAN』で、キックルールで芦田崇宏(BRAVE)を1R KOに下した平本蓮(K-RIVER・AXジム)が4月19日、自身のYouTubeチャンネルで「朝倉未来、ぶん殴ってみた。」と題した動画を投稿。その平本に未来がYouTube撮影でのジムマッチを提案するやりとりがSNSで展開された。新型コロナウイルスの影響により無観客試合が増えるなか、この動きは何を意味するのか。
キックとMMAの二刀流を意識したのか、2本の刀を背負ったデッドプールのコスプレで、未来の顔写真を貼り付けたサンドバックに強烈な右ストレートを打ち込んだ平本。ツイッターで「とりあえず、ぶっ倒してみました。ワンパン」と記し、YouTubeで「ぶん殴ってみたシリーズ第一弾はこの人。」と題して未来の顔写真にパンチを打ち込み、ミルクをぶっかけた。
その平本の投稿に対して、朝倉は「今はこんな状況で試合も出来ないのでどこかジムを借りてレフェリーを入れてガチのスパーリングしませんか? こちらのYouTubeで撮影させてもらいますが、あなたのRIZIN初戦より高いファイトマネーを僕が払います」と反応。
平本は「そんなはした金はいらないです。俺はみんなの前で未来選手をぶっとばしたいのでしっかりRIZINでやりましょう。やる価値ないって言うなら、僕がしっかりパンチでグスタボKOしてからでもいいんで」と、RIZINでの対戦をアピールした。
矢地祐介、上迫博仁をKOに下し、未来に判定負け、パトリッキー・フレイレにTKO負けしているグスタボを倒してから未来戦を実現してもいいと記した平本に対し、未来は「ださ」「だったら初めからグスタボ倒してから煽ってこいよ。グスタボもやりたくないと思うけど…ただの売名でしたね」と一蹴している。
実は未来は、今回の平本の挑発前に、榊原信行CEOとの対談動画で、「ファンの人の声も大事だと思うんです。というのも、ファンはほんとうにこんな試合が見たいのっていうカードを言ってくることがある。平本蓮君が僕とやりたってつぶやいたらしくて、こっちからしたら何を言っているのって感じなんですけど、もしそんな試合を組んでもらえたら、打撃は強いですけど、ほんとうにイージーなんで。でもそれを逆に観たいっていう人が多いんだろうなと」と、選手本人が想像もしないカードでもファンの声に耳を傾ける必要があることを語っており、「でも、(平本戦は)社長としては無いですよね」と確認を求めている。
榊原CEOは「ファイト感が無い。若くていいポテンシャルを持っているけど、総合ではキャリアを積む必要がある。やるなら打撃を活かして早く総合格闘技一本でトレーニングする必要がある。目指すは朝倉未来でもいいと思う」と今後のMMAファイターとしての成長次第としていた。
3月20日に、平本はInstagramで「正論がどうとか常識がどうとか知ったこっちゃない。誰がどう言おうと俺はこれで良いと思ってる。アンチ含めて計算通り。本来であれば(RIZIN横浜大会で)昨日試合終わった後にリングで言いたかったけど、コロナで試合が無くなってしまったから、自粛ムードの格闘技ファンが少しでも好き嫌い色々含めて盛り上がるような事ができた。後は必ず実現できるように死ぬ気で努力するのみ。今日も格闘家として本気で生きる。なによりまずは一刻も早くコロナウイルスがどうか落ち着きますように」と、一連のやりとりの意図を説明した。
当初は、RIZINでの立ち技戦で白星を積み上げ、Bellatorキック勢も含めた世界トーナメントの実現を望んでいた平本だが、コロナ禍により、出場を予定していた4月19日の『RIZIN.22』が中止に。キックのGLORYで活躍し、現在UFCで8連勝中のイスラエル・アデサニヤのジムでの出稽古も延期となり、ストレスがたまる中、MMA挑戦も模索している状況だ。
そんななかでの未来の「今はこんな状況で試合も出来ないのでどこかジムを借りてレフェリーを入れてガチのスパーリングしませんか? こちらのYouTubeで撮影させてもらいますが、あなたのRIZIN初戦より高いファイトマネーを僕が払います」の提案は何を意味するのか。
プロモーションとファイターとの契約は様々だ。独占契約ながらグラップリングマッチであれば、他団体出場を許容するMMA団体の例もある。しかし、「興行」主であるプロモーションにとって、観客を集めた他団体の興行に主要選手が出ることがあれば、ストーリーラインが崩れマッチメークはしにくくなる。では「無観客」のスタジオ・スパーリングの場合はどうなるか。
今後、このコロナ禍が続くなかで「無観客」大会が増えたとき、「個人」での無観客配信“試合”は増えてくると思われる。そんななか懸念されるのが、アスレチックコミッションが存在しない日本での安全面での担保だ。未来の発言で注目されるのは、「レフェリーを入れて」「RIZIN初戦より高いファイトマネーを払う」と言った点にある。
資金力を持つ個人がYouTube等で、ライブストリーミング形式であるインターネットテレビサービス並に、「ガチスパーリング」ながら、レフェリー・ジャッジ・ドクターを雇い、スタジオマッチ的に配信することが可能となれば、その選手のバリューによっては、その投資がペイできる可能性があるからだ。
しかし、プロモーション(団体)は、無観客でも大会を組むことで、そのジャンルに種を蒔き、人を育てる役割も担っている。ところが未来は、そんな点でもYouTubeを駆使して、青汁王子とコラボし、若手格闘家育成プロジェクト『朝倉未来1年チャレンジ』と称して選手を育成。既存の団体の前座に選手を送り込むなど、それぞれの存在価値を理解しバランスを取っている。
スペシャルマッチ、あるいは厳選された試合での個人配信は、今後どうなっていくのか。注視すべき現象だ。