2020年2月7日(金・現地時間)インドネシア・ジャカルタのイストラ・セナヤンにて、ONE Championship『ONE: WARRIOR'S CODE』が開催され、 元シュートボクシングスーパーバンタム級王者の内藤大樹(BELLWOOD FIGHT TEAM)が、キプロスの強豪サバス・マイケルから2度のダウンを奪い、判定勝利。ONEムエタイフライ級世界王者のロッタン・ジットムアンノン(タイ)が持つベルトに挑戦をアピールした。
内藤は、2019年9月の「ONE Championship:Road to ONE:CENTURY」で渡辺優太を1R TKOに沈めると、2019年10月からONE本戦に出場。アレクシ・セレピソスをTKO、ルイ・ボテーリョ、サバス・マイケルを判定で下し、ONE本戦3連勝をマークしている。
内藤は今回サバスからダウンを奪った右のクロスについて、「オープンフィンガーグローブになってからは近い距離でも戦えるよう、ジムの鈴木(博昭)代表と初心に帰って、得意だったクロスを一から練習しました」と、勝負を決めた一撃が、チームで磨き上げたものだったことを明かした。
多くの大会で流れていく試合の数々のなかで、心に留めておきたい熱戦を、ONE Championshipの協力のもと、本人に聞いた。
世界の強豪の中で必ず生き抜いていく
──バンコクでシントンノーイ・ポーティラックン(タイ)を破っている強敵のマイケル・サバス選手に、内藤選手はダウンを奪っての判定勝ちでした。試試合を振り返って、率直な感想から教えてください。
「一言でいうと、『本当に精神的に疲れた試合』というか、頭を使った試合だったと思います。フルラウンド通して一瞬も気が抜けない試合。気が抜ける試合なんて無いんですけど、今まで経験した試合の中でも一番精神を使うというか……終わった後はどっと疲れましたね」
──20歳の時点で36勝2敗というサバスの戦績に、必要以上に強いイメージを持ってしまいそうでしたが、実際対峙してみていかがでしたか。
「事前に強い選手だという事はしっかり理解した上で戦ったので、そこまで驚くことはなく、単純に強い選手とどう戦おうかという冷静な部分がありましたね」
──想定を上回った部分は?
「圧力ですかね。どのくらいあるのかなと思ってたんですけど。ダウンさせても最終ラウンドまで詰めてきたので、今までなかなか経験した事がないタイプでした。これまでは、だいたいダウンしたら相手が怯んで、こっちが一方的に行ける展開が多かったので、圧力が今までの選手とは違うなと感じましたね」
──間合いの支配率はどうでしたか?
「周りから見れば自分が下げられているように見えるんですけど、その中でマイケル選手がやり辛い距離、クリーンヒットを与えない距離は常に保っていたのかなと思います」
──今回もダウンを奪ったカウンターのタイミングは、天心戦含めいつ頃から磨いてきたパンチでしたでしょうか?
「そうですね。ずっと右のあのクロスパンチは元々得意でした。オープンフィンガーグローブになってからは、遠い距離でいかに相手を入らせないかという練習だけでなく、近い距離でも戦えるようジムの鈴木(博昭)代表と初心に帰って、得意だったクロスを一から練習しましたね」
──そうだったんですね。あの当て感も練習で磨かれるものですか。
「常にどう当てるか、どう倒すかを意識して練習しています。シャドーボクシングでも相手の顔を想定して振り切る練習だったり、ミット打ちでもただ殴るだけじゃなくて、拳にインパクトを乗せて打つ練習などをします。一回一回の練習にしっかりテーマを持って、考えて試合に挑めたかなと思います」
──あらためてオープンフィンガーグローブでの戦いが、内藤選手の試合スタイルに向いていると感じる部分は?
「僕は基本的に、試合中よく頭を振るので オープンフィンガーの方が見えやすいですし、手が開く感じが好きで、グローブだと閉じられて不自由というか緊張しちゃいますね。体もリラックスして試合に挑めるので、僕にはオープンフィンガーグローブが合ってます」
──「手が開く感じでリラックスできる」というのは興味深いです。試合はダウンを2度奪っての完璧な試合でした。どのような作戦でしたか。
「今回は、まず下から削る作戦でカーフキックはバレてるなと。インローとカーフでは無く、前足で腿を蹴るローキックを多用しようと思っていました。その中で倒すのであれば右ストレートかなっていうのは自分の中でありました」
──腿を蹴る……ローキックひとつとってもこれまでと高さや蹴る場所を変えていたのですね。どのタイミングで勝ちを確信しましたか。
「1ラウンドは完璧に取られたなと正直思うんですけど、1ラウンド後半から相手のパンチが雑になってきて、少しイライラしている感じが自分もセコンドも分かっていたので、後半にかけてだんだん自分のペースに持っていけてるなと話していました。相手にやらせたい事をやらせずにイライラして大振りになって来た所を狙う作戦でしたね。徐々にハマっていったのかなと思います」
──1回ダウンを取って落ち着いてましたか? それとももっと引き離そうと思って焦ったりしませんでしたか。
「逆に落ち着いてましたね。しっかり見て、やはり一発のある選手だし、諦めないのは分かっていたので。変にムキになって(打撃を)もらうよりは、もう一度仕切り直してと、冷静な部分はありました。今回はラウンドを重ねる毎に冷静になるように自分に言い聞かせてましたね」
──3R目にもダウンを取った時、かなり相手も焦って襲いかかってきましたよね。あの時は、もう一度ダウンを取ろうと思っていましたか。
「チャンスがあれば行きたいなと思ったんですけど、そこはセコンドがしっかり見てくれていて、『今行くタイミングじゃない』と。その声はしっかり聞こえていたので、徹底して切り替える事が出来ました。セコンドがあそこで間違えて『行け』って言っていたら逆転されてた可能性もあったと思うので」
──チームワークが活かされたと。
「今回本当にチームワークを感じましたね。あの2回ダウン取ったパンチは、2回とも鈴木博昭代表の指示でしたし、出したパンチが当たったので正直ビックリしましたね」
──あれは鈴木代表が合わせろと?
「『腹くくって右だ!』と。『あの右クロスしかない』と言ってくれました」
──鈴木代表といえば、試合前の現地の練習で、セコンドなのに鈴木代表の練習にも熱が入って、身体がパンプアップしていましたが、どう感じていましたか(笑)。
「いつも通りというか(笑)、鈴木さんもセコンドだけどアガってるなと。常に熱い人なので。いつも通りの良い空気で逆に変わらない日常を作ってくれた。精神的にすごく安心しましたね」
──3連勝でマイケル・サバスを倒したということは、いよいよONEムエタイフライ級トップランカーの仲間入りですね。
「ようやくフライ級の強豪の中に入れたのかな、と自分でも思っています。ただ、一瞬でも満足したらすぐに潰されてしまうと思うので、より気を引き締めて行こうと思います。強い選手はどんどん出てくると思うのでその選手たちを次々倒していきたいなと」
──「次の対戦相手は誰でも良い」と言ってましたが、あえて名前を挙げるとすれば?
「やっぱり、正直このままタイトルマッチ(※王者はロッタン)が理想かなと思いますけど……そうでなければタイトルマッチを経験した選手、ジョナサン・ハガティーだったりボルター・ゴンサルベスだったりとか。そういう選手に勝てば本当に『次は内藤しかいないだろ』って分からせる事ができると思うので」
──フライ級王者のロッタンまであとどれくらいの道のりだと思いますか?
「まず日本人がフライ級王者に挑戦した事がないのが大きいと思うので、タイミング的にダイレクトマッチで戦える可能性はあるのかなとも思ってます」
──もしロッタンと試合するとなると、どういった展開になると考えますか。
「あのロッタンの圧を捌ききるのは相当難しいと思うのですが、逆に自分が前に出るというか、ロッタンのやってる事を自分もやる。真正面からぶつかるのも面白いのかなと思います」
──最後に応援してくれるファンの方々へメッセージを。
「いつも日本から応援ありがとうございます。戦う場所は海外ですけど、日本からの応援がすごく力になっているので、必ずその期待に応えて世界の強豪の中で生き抜いていきたいと思っていますので、これからも日本からの応援、よろしくお願い致します!」