2020年2月11日(火・祝)東京・大田区総合体育館『KNOCK OUT CHAMPIONSHIP.1』に出場する鈴木真治(フジマキックムエタイジム)のインタビューが主催者を通じて届いた。
鈴木は2005年にプロデビューし、40戦以上のキャリアを持つベテラン選手。様々な団体に出場してトップ選手と拳を交え、2018年11月に開催されたシュートボクシング世界トーナメントS-cupでは決勝進出を果たしている(決勝は棄権)。ヒジ打ちやローキックを駆使する粘り強いファイトが持ち味。KNOCK OUTには2019年8月以来の参戦となり、今回はタップロン・ハーデスワークアウト(タイ/ハーデスワークアウトジム)と対戦する。
■淡々と相手にダメージを与えて、ただ倒すということだけですね
――前回、昨年8月のKNOCK OUTでの宮越慶二郎戦を振り返っていただきたいと思います。
「映像を見返したところ、自分の思い描いていた通りの試合はできて、相手にダメージを与えることはできたのですが、3Rにヒジで切られてしまいました。格闘技は一瞬の勝負なのでそれを逃さないで制した宮越選手は一枚上手でしたね。それは宮越選手が今まで積み重ねてきたものであり、実力かなと思います」
――宮越選手とは2010年12月1日に対戦していて、その時は鈴木選手の2RTKO負けでした。9年ぶりの再戦でしたが、あの時の宮越選手とは違いました?
「試合中にあそこが変わったなどといったことはわかりませんが、もちろんお互いにうまくなってました。でも前回と比べてめちゃくちゃ強くなったという印象は正直ありません。宮越選手の持ち味が出ていた試合の中で、前回と同じくヒジで切られるという結末になってしまったので僕の負けですね」
――昨年は2戦して1勝(1KO)1敗でしたが、ご自身にとってどういう1年になりました?
「試合数は少なく負けた試合もあって悔しかったのですが、6月にタイで試合をしたり、8月にはKNOCK OUTの大きな会場でたくさんのお客さんの前で試合をさせていただいたので自分にとっては濃い1年になったと思います」
――2試合で自分にプラスになったものはありますか?
「自分の悪い癖を確認できたことが収穫になりました。あと、タイという慣れない場所で初の試合をやらせていただき精神的な成長ができたのかなと思います」
――KNOCK OUTのリングに上がった印象を教えて下さい。
「試合になってしまうとどんなリングであっても周りが見えず、対戦相手とレフェリーしか見えなくなってしまうので、リング上からの景色を楽しむことはできませんでした。試合前に会場内を見たら、こんなにたくさんの方が来てくれているんだと思ったら、ありがたい気持ちでいっぱいでしたね」
――周りが見えなくなるというのは、いつからスイッチが入るのでしょう。
「入場してリングインしたらもうスイッチが入って限られた範囲しか見えなくなります(笑)。応援してくれる方の応援や、セコンドの声は時と場合によりますが、聞こえる時は聞こえ、聞こえない時はかなり聞こえません。プロキャリアは43戦あるに、そこは安定しないですね」
――スイッチが入ったらどういうことを考えています?
「自分のやるべきことをやって、淡々と相手にダメージを与えて、ただ倒すということだけですね。カッとしてしまうと僕的にはマイナス効果で良くないと思うので、なるべくそうならないように押さえてます」
――今までにカッとなって失敗した試合はありました?
「タイ人選手との対戦では、こっちが熱くなってしまい、焦れば焦るほど、淡々とやってくるのでひたすら空回りした展開になり、結局は判定で印象を取られてしまったことが何試合かありました。タイ人によって戦い方はそれぞれ違ってきますが、総じてタイ人は冷静によく見て相手をコントロールしてくるイメージはあります」
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■相手が強ければ強いほど気づくことがたくさん出てくる
――今回はまさにタイ人選手との対戦になりました。タップロンにはどのような印象がありますか?
「僕よりも年齢が上で、強い選手たちに勝っていますし、タイから日本に来てあれだけ身体を保っているのは凄いこと。黙々と継続してトレーニングをし続けないと無理なことなので、真面目な性格の方なのかなと思います。僕は前戦で負けているにも関わらず、昨年には強い選手ばかりが集まった岡山の賞金トーナメントで優勝したばかりのタップロン選手といきなりやらせていただけるなんて、なかなかないことです。試合を組んでくださったKNOCK OUTの関係者、山口元気プロデューサー、相手のタップロン選手には感謝いたします。もちろん、試合では思いっきりぶつからせていただき、お客さんには観に来て良かったと思われるような試合をして勝つことが僕の仕事だと思います」
――タップロンは日本滞在歴は長いですが、いつか対戦相手するんじゃないかと意識したことはありました?
「強い選手だとは知っていましたが、RISEさんを主戦場にしていてヒジなしのルールでやっていたイメージがあり、僕とやることはないのかな? と思っていたので、そこまで意識したことはありませんでしたね」
――ファイトスタイルの印象を教えてください。
「一般的なタイ選手に通ずると思うのですが、相手のことをよく見て、なおかつ、相手にはこれがはまるな、こうやって戦えばいいなとわかって、すぐにそれができてしまう引き出しの多さは凄いなと。冷静に相手を分析して頭の中で考えた作戦をすぐに具現化するうまさ、強さはキャリアのある選手ならでは、ですよね」
――日本での戦いにも順応していると思いますか?
「そうですね。ヒジなしルールでもあれだけ強いということは、日本人選手のファイトスタイルなどを熟知しているからでしょう。タップロン選手は今までに凄い試合ばかりやってますが、印象的な試合は“ブラックパンサー”ベイノア選手との一戦目(2019年3月10日)です。あのベイノア選手を一発で倒す凄い勝ち方をしてましたよね」
――タップロン戦に向けて強化していることはありますか。
「新たなことをやるというのは限られた時間では難しいことなので、しっかりいつものことをやるだけです。あと、追い込みでもう身体が動かないと思った時に、タップロン選手の顔を思い出すと『これじゃダメだ!』と思って、高いモチベーションを持ってもう一歩踏み込んだ練習ができ、質も量も向上して自分を高めることにつながっています。そういう選手と戦わせてもらえるので、ありがたく思います。年齢もキャリアも上の先輩に胸を借りるつもりで頑張ります。前回の試合でもっとこうすれば良かったと思う部分があったので、それを直した試合ができるので今回の試合が楽しみです。前回のような失敗は繰り返しません」
――タップロン戦をクリアーして、今年はどういう1年にしたいですか?
「毎年同じことになってしまうのですが、ただ単に強い選手と戦って勝つことを目標にしていて、僕は自分をどこまで高められるか、自分の満足のためにキックボクシングをやっています。それで自分の力が落ちたと感じ始めたらもう引退だと思うので、その時が来るまで全力で練習してキックボクシング、ムエタイを追及し続けたいと思います」
――次が44戦目ですね。20代の頃よりも今の方が強くなっているという実感はありますか?
「20代前半と比べて、若干の反応、スピードは落ちたと思う気はするのですが、今で一番良いところは心をある程度コントロールできるようになったことです。あと、一発の威力も備わったと思うので、その2つがあることで総合的に20代よりも強くなっていると思います」
――今年は何戦したいですか?
「4~5戦はしたいですね。タイ人はもちろん、日本にも強い選手はたくさんいます。そういう選手とやらせていただけたら、自分を高めていられます。一人では気づけないことが、相手が強ければ強いほど、試合のやり取りでこういうことがやりづらい、こういうことがいいのかと気づくことがたくさん出てきます。そして、周りが見たいと思わなかったら組む必要のないカードなので、周りが見たいと思ってもらえる試合をしていきたいです」
――ファンにメッセージをお願いします。
「お忙しい中、応援に来ていただきありがとうございます。ファンの方の応援があってこその競技ですし、ファンの方の応援があればあるほど興行も大きくなり、レベルも上がってさらにいい物になっていくと思うので、ファンの皆さんに感謝の気持ちしかないです。キックボクシングをやらせていただきありがとうございます」