キックボクシング
インタビュー

【ONE】ムエタイの強敵と3連勝を懸けて対する内藤大樹「鈴木博昭さんと二人で勝ち上がって一緒にONEのベルトを巻きたい」

2020/02/07 14:02
2020年2月7日(金・現地時間)インドネシア・ジャカルタのイストラ・セナヤンで開催されるONE Championship『ONE: WARRIOR'S CODE』にて、元シュートボクシング日本スーパーバンタム級(55kg)王者の内藤大樹(BELLWOOD FIGHT TEAM)がキプロスのサバス・マイケルと対戦する。  内藤は2019年9月の『ONE JAPAN SERIES -Road to CENTURY-』で渡辺優太に1R1分22秒、右ハイキックでKO勝ちしONE本戦デビューを決めると、10月25日のジャカルタ大会でアレクシ・セレピソフ(ニュージーランド)に右フック、アッパーなどのラッシュで3R TKO勝ち。12月のクアラルンプール大会でもルイ・ボテーリョ(ポルトガル)を得意の蹴り技で制し判定勝利。ONE2連勝を飾っている。  対するマイケルは、キプロス人ながらタイのムエタイ業界最大手のペッティンディープロモーション所属で、タイを本拠地にしてビッグマッチにもしばしば登場して活躍するムエタイ戦士。アマチュアボクシング出身でパンチとヒジを、突き刺すような鋭いヒザ蹴りを得意としている。  ONEでは前ONEフライ級キックボクシング王者のペッダムやバンプリーノーイらムエタイの強豪と練習を積んでおり、5月のバンコク大会ではシントンノーイ・ポーティラックン(タイ)に判定勝利を挙げている。8月のルーシラー・プーケットトップチームとの試合では、2Rにサヴァスの蹴り足を掴んだルーシラーがテイクダウン、左手をマットに着いたサヴァスが傷め、TKO負けしている。  この強豪との大一番を迎える内藤と、ジムの代表であり、ONEでムエタイルール世界バンタム級王座に挑戦した鈴木博昭に話を聞いた。(聞き手/安村発) ようやく本物、ONEに来たなと思える相手が用意されました(鈴木) ――昨年、デビュー戦から所属していたストライキングジムARESを離れ、ジムの先輩である鈴木博昭選手のジム、BELLWOOD FIGHT TEAMに移籍したんですよね。 内藤 去年2月に移籍しました。元々、鈴木さんとは一緒に練習していたので練習する場所が変わったぐらいで感覚的には何も変わっていません。自分はアマチュアだった中学生の時から「プロになって世界チャンピオンになりたい」と鈴木さんに伝え、プロ練以外でも走り込みに連れていってもらったりしてました。ずっと鈴木さんの背中を見てきたので自然な流れかなと思います。 鈴木 どこのジムでもプロになりたいという選手はいるじゃないですか。内藤が15歳からずっと一緒にやっていて、そういう中でも内藤は「本気でプロでやっていきたい」と言っていて、プロ練習以外でもずっと練習を一緒にやっていました。僕は2018年9月にジムを出てフリーになり、公民館などを練習場所にしてやっていました。内藤はちょこちょこ練習に来てくれていて、今はプロ選手が自分を入れて7人います。以前以上に士気を高くして練習できています。 現地入りした内藤 (C)ONE Championship――最初に内藤選手を見た時から素質はありました? 鈴木 元々別なジムで空手をやっていて強い子がうちに来たんだという印象でしたね。覚えが早いとは思ったことはないのですが、体格や素質あるないは僕にとってはどっちでもよく、やる気があるかどうかを重視していえて、練習する姿勢を見ていて内藤からは真剣にやっていることが伝わってきました。 ――内藤3兄弟(長男は凌太、三男は啓人)ですが、一番真面目でした? 鈴木 一番負けん気が強かったですね。あと、最初からできることはなかったのですが、学習能力が高く修正箇所があると修正して伸びるための努力ができる子でした。  ――今年初戦が決まりました。 内藤 昨年12月のONEでのルイ・ボテーリョ戦が終わって帰国してすぐに今回の試合が決まったので、ファイターとしては凄くありがたいと思ってます。 鈴木博昭の持つミットで現地での最終調整 (C)ONE Championship――今回の相手、サバス・マイケルはかなりの強豪になりました。 鈴木 ONEで今までに対戦した相手と比べても強豪ですし、ようやく本物、ONEに来たなと思える相手が用意されましたね。 内藤 ONEと契約する以前に、鈴木さんのセコンドで昨年5月のONEバンコク大会に行った時にたまたまマイケル選手が試合(vsシントンノーイ・ポーティラックン)をしていて控室で一緒だったんです。同じ階級の選手だなと思いながらウォーミングアップを見ていたら、この選手は強いなと。そうしたら今回対戦が決まったのでテンションが上がりましたね。日本での知名度は低いですけど、ムエタイ関係者の評価は高く、ONEのベルトを持っていてもおかしくない選手だと思います。 ――現在、内藤選手はONE本戦で2連勝。ここで勝ったら王座挑戦にも近づきますね。 内藤 そうですね。いいアピールになると思いますし、いつ王座挑戦者に選ばれてもおかしくない状況になると思います。 鈴木 ONEで2戦したことで経験値も上がっていますし、確実に内藤はレベルが上がっていますよね。 [nextpage] オープンフィンガーグローブはボクシンググローブよりも戦いやすい(内藤) ――ONEではオープンフィンガーグローブ(以下OFG)着用、ケージでの戦いが特徴的ですが、もう慣れました? 内藤 OFGなのでディフェンス面を鈴木さんには教えていただいています。日本での戦い以上に自由に楽しんで戦えていて、自分の良さが出ているのかなと思います。OFGでの戦いは正直最初は怖いなと思っていたのですが、ボクシンググローブよりも戦いやすいです。 ――OFGのメリット、デメリットは何でしょう? 内藤 メリットは指先を出せるグローブなので、身体に変な緊張感や縛られたような感覚はなく、リラックスしやすいのかなと思います。デメリットはボクシンググローブよりも小さいことで、距離感が今までと比べて遠くなるのかなと。あとは表面上のケガをしやすくなりますよね。日本で戦っていた時は顔に傷ができたことはほとんどなかったのですが、ONEで2勝していても顔に傷があったのでOFGならではの危なさがあるのかなと。 鈴木 ボクシンググローブは大きいのですが、OFGは素手に近く小さいのでちゃんと戦いが見えていたら攻撃は避けやすいです。デメリットは、食らったら痛いことですね(苦笑)。 ONE第1戦のセレピソフ戦は3RでKO勝ち (C)ONE Championship――練習ではずっとOFGでやられているんですか? 鈴木 割とそういう時期もあったり、ボクシンググローブで練習するべきだなと思うこともあります。ボクシンググローブで練習すると、遠心力を使って打つパンチが打ちやすいんです。OFGだと荒くてバイオレンスな感じで攻めればいいと思うのですが、ボクシンググローブだとそうはいかずに頭を使って打たないといけないので、良いところ取りができるように、その時の場面に応じて色々と考えながらやっています。 ――ケージでの戦い方のメリット、デメリットは何でしょう。 内藤 広く使えますし、僕は周りに囲まれていることで周りのお客さんが視野に入らないので戦いに集中できることがいいかなと。デメリットはそこまで感じたことはありません。 鈴木 僕も内藤とほぼ同意見でケージの中に閉じ込められている感じが良くて、集中できるかなと。今ではリングよりも、ケージの方が戦いやすいですね。 12月、ボテーリョを判定で下して2連勝 (C)ONE Championship――ケージだと4つのコーナーがないことで相手を追い詰めることができず、そこをデメリットと感じている選手もいます。 内藤 特に相手に逃げられやすいと感じたことはないですね。 鈴木 リングだからこう戦おう、ケージだからこう戦おうとあまり考えすぎるのも良くないかなと。戦いを楽しもうという感じでいます。 ――ケージでの際の攻防で蹴ると自分の足がケージに当たって危険だと感じることは? 内藤 そういうのも考えたことはありません。僕はむしろ相手を金網ごと叩きつけるという気持ちで攻めているので、そういうマイナス的なことは考えていません。 鈴木 ジムにはケージがないので、校庭にあったケージで練習相手を押し込んだ練習をしたことがあります。試合では相手をサンドウィッチにしたろ!と思って、ONEデビュー戦(2018年11月23日、vsデイヴィダス・ダニラ)で相手をケージに押し込んで攻撃しようと一度試してみたらすぐに反則行為で注意されました。レフェリーから「次やったら減点だよ」と言われました(笑)。 [nextpage] ONEはベルトだけを見て勝てばいいという甘い世界ではない(内藤) ――現在は二人ともONEを主戦場にしていますが、師弟で同じ海外の団体に出ているというのは刺激になりますか? 内藤 鈴木さんのONEでの活躍を見て凄く刺激になってました。鈴木さんよりも先にONEのベルトを獲りたいと思ったことはありませんが、二人で勝ち上がって一緒にONEのベルトを巻きたいですね。鈴木さんは先輩でありながらライバルという関係でもあります。ONEでは最低でもタイトルマッチまで行かないと鈴木さんを越せないですし、恩返しできないなと思っています。 鈴木 今までの僕はジムの先輩という立場でしたが、今はジム代表であり、指導者です。僕的には僕が辿り着いたところを超えてもらってこそ、仕事をしたと言えると思うんです。内藤には最低でもタイトルマッチをやってもらいたいなと。僕が先にチャンピオンになったら、最低でもチャンピオンにもなってもらわないといけません。 先代なんて超えて当たり前だと僕は思っています。そこに行くまでのテキスト、エッセンスはもう出来上がっているので、教え子は指導者を超えて当り前でしょ?と思うんです。もしそこまで辿り着けなかったら僕の指導者としての立場は失格だと思います。内藤は中学生の時に世界チャンピオンになりたいと言っていたのと今もその想いは変わりません。片田舎でチャンピオンになると言っていたものが今も物語が続いている最中です。 内藤 鈴木さんが昨年5月にONEタイトルマッチで僕はセコンドに付かせていただきました。会場に着いたときにでかいポスターに鈴木さんがどんと乗っていて衝撃的でしたね。チャンピオンのノンオーと向かいあっているときに、鈴木さんは凄い舞台に立っているんだ、今から日本人がベルトを獲りにいくんだなと不思議な感覚で見ていました。 ――鈴木選手はONEでは日本人としては初のキックタイトル挑戦でしたね。 鈴木 僕はシュートボクシングで日本タイトルを獲らせてもらって、内藤の目の前で自分が少しずつ上がっているものを見せられています。自分が挑戦できたことで、国内の格闘技界でも1つ切り開くことができたとも思います。 僕はノンオーとやらせてもらって序盤に負傷した箇所があったのですが、次こそはという手応えも感じてます。無理になるまで僕は走り続けたい。ONEのチャンスはいつ来るかわからないので、そのためにも一戦一戦をしっかり勝ち上がって証明していくだけです。先を見るためにも目の前のことを勝ち獲るという精神でいきます。 内藤 ONEはベルトだけを見て勝てばいいという甘い世界ではないので、来たチャンスを1つ1つクリアーしていくことが大事かなと思います。ONEのスーパーフライ級は日本人の活躍が難しい階級ではあると思いますが、活躍を楽しみにしてください。 鈴木 僕は1つ上のバンタム級で勝ち上がります。この舞台で勝ち上がることで先があります。これからもシュートボクサーとしての僕の生き様を見ていてください。
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