練習嫌いで有名な栗秋だが、やる時はやる男だ (C)KNOCK OUT
2020年2月11日(火・祝)東京・大田区総合体育館『KNOCK OUT CHAMPIONSHIP.1』に出場する、栗秋祥梧(クロスポイント吉祥寺)のインタビューが主催者を通じて届いた。栗秋は58.0kg契約RED(ヒジ打ちあり)ルール3分5RでBigbangスーパーフェザー級王者・駿太(谷山ジム)と対戦する。
ハードパンチャーの栗秋は近年のREBELSを牽引する存在で、2019年8月大会で185戦166勝の戦績を持つルンピニースタジアムの元ランカーをKO、10月のKNOCK OUTではISKAスペイン・ムエタイ・フェザー級王者ミケール・フェルナンデスを降している。また、12月にはシュートボクシングに参戦し、SB日本スーパーバンタム級王者・植山征紀をヒジ打ちでTKOに葬った。
■九州にいた時は月に2~3戦はしていた
――2018年9月の翔貴戦以来のKNOCK OUT参戦が決まりました。
「1年ぐらいKNOCK OUTに出ていないので久しぶりに試合に出る感覚がします。僕はREBELSを主戦場にしていて、他団体のリングに上がる時はREBELSの名に恥ないような試合をしようと思っているので、KOで勝ちたいという気持ちは増しますし、モチベーションは上がります」
――昨年はご自身にとってどういう1年でした?
「福岡から上京して今年で2年目になるのですが、昨年は自分をどう魅せるべきかを考えた1年でした。今年の1年は、自分はどうあるべきかを見つけられる年にしたいと思います。福岡からまだ右も左もわからない中で手探り状態で東京にやってきて、自分でクロスポイント吉祥寺入りを選択し、REBELSで試合を重ねてきたことはやはり間違いではなかったと思いますし、自分自身が少しずつ変わってきたのを感じます。一気に階段を上ってしまうと、足を滑らせたときには落ちるのが早いので、これからも下の土台から着々と作っていこうと思っています」
「6戦では足らないのでもっともっと試合をしたいですね(笑)。九州にいた時は月に2~3戦はしていたので、もっと刺激が欲しいんです。この試合でケガをしてしまうと来週の試合ができなくなるかも!? と思ってしまうぐらいの感覚で試合をやっていきたいのですが、東京の大会は試合間隔を空けないとうるさいじゃないですか。僕的に試合が2カ月とか空いてしまうと、試合の感覚がわからなくなるんです。僕は練習が好きなタイプではなく、試合で自分のスタイルを作っていく感じなので、期間が空いてしまうと対戦相手との距離感が掴めなくなります。今回の試合は約2カ月空いているので、そこだけが不安ですね」
――前戦となった12月3日のシュートボクシングでの試合は、現王者の植山征紀選手にヒジによるカットで2RTKO勝ちでした。
「試合時間が短く、もう1試合したいぐらいでした。僕は足や腕をケガしてても、試合はできると思うんです。負傷箇所があることで、別な攻撃をいっぱい出すことができるので、僕は無理をしてでも試合に出ていきたいですね。山口会長は絶対に出させてくれないでしょうけど(苦笑)」
――実際に負傷した状態の時に、試合に出たいとアピールしたことはあるのでしょうか?
「それはないです(笑)。こっちに来て、万全な状態でないと試合には出させてもらえないなというのは感じてますから」
――栗秋選手は練習嫌いとして有名ですが、そろそろクロスポイント吉祥寺のプロ練には慣れてきました?
「だいぶ慣れてきたとは思います。それで体つきも上京する前と比べると全然違いますし、昨日も練習動画をジムの仲間に撮ってもらったのですが、撮り終わった後に自分の動きを見たら昔とは全然違っていました。でも僕はそんなに真面目じゃないので、プロ練を1から最後まで練習しているとはまだまだ言えません。一緒にジムの仲間と練習していると、それぞれ出る大会が違っても、みんなで強くなっている感覚はありますし、ようやく楽しさを感じるようになりました」
――クロスポイント吉祥寺のプロ練習は、ほかのジムのものと比べても相当きついと聞いたことがあります。練習嫌いの栗秋選手が続けられている理由はなぜですか?
「僕はぶっちゃけ逃げたいですよ(笑)。でも逃げ出したいと思ったら常に“なんのために東京に来たのか?”と原点に戻る気持ちでいます。ここに来るまでに誰が背中を押してくれたのか? と、毎晩寝る前には考えるようにしていて、練習に行きたくないですけど、明日も一日頑張るしかないと自分を追い込むようにしています。僕と同じ年の人でも結婚している人もいれば、当たり前のように仕事をして安定した生活を送っている人もいます。SNSで同世代の人の投稿を見ると、凄く幸せそうなのが伝わってきて、あ~地元に帰りたいと思うのですが、僕は僕なりに頑張っていれば、何か人の励みになっているんじゃないかなと思うんです」
――上京して良かったと、どういう時に思います?
「飲みが楽しいこと(笑)。あと、東京だとかっこいい服も充実してるんです。地方にも色んなおしゃれな服は売ってるのですが、店舗が小さくて在庫がないといったことが結構あるんです。その分、東京は服がたくさんあるし、かわいい女の子もいっぱい揃っているので東京に来てよかった~と幸せに感じます」
――例えば、辛い練習を乗り越えて試合で勝った後に応援してくれる方の笑顔を見た時とか、そういう感動的な答えを期待していたのに、格闘技と関係ないじゃないですか(笑)。
「僕は勝ち負けにこだわってないんです。その方が気が楽ですし、勝ちにいこうとすると昔からの癖で大振りになってしまうんです」
――このまま福岡に残っていたら今は何をしていたんだろうと考えたことはないですか?
「相変わらず外仕事をしながら格闘技をして……俺は何をやっているんだろうな? と思ってるんでしょうね。僕は地方で記事にもならないような大会に出ていた時に、東京の選手は大舞台で活躍している姿をネットなどで見ると、俺って何をしてるんだろう? と思っていましたから。やっぱり格闘技をやっている以上は多くの人に僕の試合を見てもらいたいですし、東京に来て有名になりたいという気持ちは大きいです」
■天心選手は自分の中で届かない存在と決めたくない
――今回の相手、駿太選手の印象を教えて下さい。
「凄く真っすぐな方で、人としても凄くいい人ですよね。YouTuberとしも成功されていて、さらに格闘家として頑張っていて凄く尊敬しています。選手としての印象は、手数も多いですし、パンチと蹴りの打ち分け方もうまくて凄く頭を使って戦っているなと思います。あと、気持ちが強くて打たれてもガンガン前に出てくるじゃないですか。どんな精神状態してるんだ!? と思いますね」
――そういう気持ちの強い選手とはやり辛いですか?
「いいえ、瞬殺します(笑)。10秒で終わらせますよ。打ち合いもいいと思うのですが、打ち合いの中でもヒジを出して斬ってもいいかなと。今回は瞬殺しないと、自分の中では嫌なんですよね」
――それはどういう意味ですか?
「九州からお兄ちゃんが来て、今回セコンドに就いてくれるんです。僕が九州時代にお兄ちゃんと練習していた時から、兄弟揃って駿太選手に憧れていたんです。今回このカードが決まった時、お兄ちゃんはすぐに行きたいと言ってくれたので、どうせ来るならセコンドに付いてもらいたいなと。そういう想いのある一戦をパっと超えたいですね。長いラウンドで戦っても意味がないですし、瞬殺しないと次に進めません。駿太選手は僕よりもベテランで、ストイックに練習していたり、試合でもアグレッシブに前に出ていて過去には凄い選手と戦っていたりと、相当格上の選手ですが、一瞬で終わらせて僕の相手じゃないよというところを見せたい」
「それは全然なかったですね。KNOCK OUT大阪大会に出たときに、駿太選手も出ていたので兄弟で一緒に見ていて、僕が苦手なタイプなのでやりたくないなと思ってましたね。でもこっちに来てからはその考え方が変わって、あの選手を超えたいと思うようになったんです」
――ちなみにお兄さんがセコンドに付くと無敗というジンクスはないですか?
「それはないですけど、凄くリラックスしてできます。僕の格闘技人生は兄弟愛でできたものです。今回お兄ちゃんを呼びたくなったのは、1年前のKNOCK OUTでの翔貴戦がドローだったからです。あの時は僕が九州時代ラストの試合となり、お兄ちゃんがセコンドに付いてくれて臨んだ試合だったんです。そこから上京して1年経ってKNOCK OUTに帰ってきました。ここからまた再スタートを切りたいという想いもあり、セコンドをお兄ちゃんにお願いしました」
――他に超えたい選手はいますか?
「那須川天心選手です。今、世界のトップ選手といえるのは天心選手と武尊選手の2人です。どちらと戦いたい? と言われたら僕は迷わず天心選手なんです……」
――それはなぜ?
「武尊選手はガンガン前に出てくるタイプなんで僕はやりたくないんですよ(笑)。天心選手は自分から攻めるときもあれば、カウンターもうまい。あの人が持っている距離感を僕は味わってみたいですね」
――昨年の大晦日のRIZINでKNOCK OUTの現チャンピオンの江幡塁選手に天心選手は圧勝しました。ああいう姿を見てもやりたいと?
「そうですね。同じ格闘技をしているのになんであんな試合ができるんでしょうか。どこまで頑張れば彼のところに辿り着けるんだろうと考えてたらかなりショックで落ち込みましたね。天心選手はどの試合でもレベルの高い内容を見せていますし、倒して当たり前と思われている中でも魅せる試合をしてますよね。僕らがボクシングをしていて、誰と戦いたい? と言われてメイウェザーとは言えません。それと同じで、天心選手は自分の中で届かない存在と決めたくないのですが、いつか僕らごときが名前すらも出せない選手になるんでしょうね。そういう中でも“栗秋なら倒せる”と思わせる試合をしていきたいですね」
「特にないですけど、チャンピオンたちと戦っていきたいですね。僕は自分自身のことや生活に満足しているわけではありませんが、一試合一試合を終えるごとに達成感を感じています。こっちに来たことで他団体のチャンピンやREBELSのチャンピオンといった選手とずっとやらせてもらっています。そこで結果を出しているので、ベルトの価値というものがわからなくなってきました。ベルトを獲らなくてもチャンピオンとやらせてもらえますし、ベルトを持ったところでどうなるのかなとも思います。なので、僕は逆にそういうベルトを持っている人たちをどんどん狩っていきたいですね」
――無冠のままチャンピオン狩りをすると。
「そうですね。僕はベルトに全く興味がないんです」
――会場に来てくれるファンにメッセージをお願いします。
「僕が戦っている以上、見ている人に夢や希望を与えていくのは選手として当たり前のことなんです。僕の試合だけじゃなく全試合を見て、いい刺激をもらって帰ってほしいですね。そして、それを自分だけじゃなく、周りの人に伝えていってほしいです」