キックボクシング
インタビュー

【KNOCK OUT】復活の激闘大魔神・橋本悟「無法島GPで見せたいのは『俺はまだ終わってねえぞ!』っていうところ」

2020/01/30 19:01
2020年2月11日(火・祝)東京・大田区総合体育館『KNOCK OUT CHAMPIONSHIP.1』で行われる「無法島GP トーナメント」。同トーナメントに出場する橋本悟(橋本道場)のインタビューが主催者を通じて届いた。  橋本は“激闘大魔神”の異名を持つアグレッシブファイターで、右ストレートを武器に様々な団体で活躍。MuayThaiOpenスーパーライト級王座、INNOVATIONライト級王座の二冠を持ち、戦績は20勝(10KO)16敗3分。 ■今思うと『絶対に油断しないぞ』が油断だなって  橋本悟がもっとも嫌うのは「逃げること」だ。  昨年10月4日、東京・後楽園ホールで開催された『KNOCK OUT×REBELS』。そのメインイベントを飾ったのは“激闘大魔神”橋本悟vs“クレイジーダイヤモンド”鈴木千裕だった。  これがキック39戦目で、北川“ハチマキ”和裕と潘隆成を相手に2連続KO勝利中の橋本と、まだキック2戦目の鈴木。下馬評は「橋本の勝利」はまず動かないと見られた。 秒殺KO負けを喫した鈴木千裕戦 ところが、試合開始ゴングが鳴ると鈴木が猛然とプレッシャーを掛けると、右ハイキックから怒涛のパンチラッシュ。不意を突かれた橋本は防戦一方となり、わずか45秒でマットに沈んだ。 「油断だったんだと思います」  試合からしばらく経ち、橋本が試合会場に行くと知り合いのキックボクサーたちからは口々に「お前、どうしたんだよ?」と敗因を聞かれた。  そして、2人の先輩にはこう指摘された。 「黒田(アキヒロ)さんに『舐めてたでしょ?』って言われて、大月(晴明)さんは『あれは油断だから』って。ベテランの二人に言われたのは突き刺さりましたよ。『あれでは分からない』と言われることもあるんですけど、やっぱり油断なんです」  橋本にとって「下馬評の高さ」と「調子の良さ」が裏目に出てしまった格好だったという。 「あの試合は、みんなに『橋本が勝つだろう』と言われてて、でも僕は『絶対に油断しないぞ』と思ってたんです。だけど、今思うと『絶対に油断しないぞ』が油断だなって(苦笑)。『俺の方が強いから』って思ってるんですよ。挑戦者なら『油断しないぞ』なんて思わないんで」  しかも、橋本は2連続KO勝利で勢いに乗っていた。そのうち1つは、鈴木千裕の先輩で実力者の潘隆成。その潘に、橋本は会心の一撃KO勝利を決めていた。 「潘君との試合で上手くいって、元々、大して上手くもないくせに(苦笑)『上手くやってやろう』と思ってしまった。あとで『俺はそういう選手じゃねえだろ』って思ったし。確かに千裕君の勢いも凄かったです。最初からあれだけ前に出られるのもなかなかないですけど、でも逆に、経験が浅いから出られるんだと思いますよ。僕らぐらい試合してると、最初からあそこまで出られないし、彼も10戦やったら出られなくなるでしょう。『怖いもの知らず』だから出られて、僕は油断してた。だから、僕にとっては逆に負けてよかったんですよ」 ■『俺は上手い試合じゃなくて、倒すか倒されるかだ』の原点  痛恨の敗北の原因を見つめ直し、練習を再開した矢先に、橋本の元に「無法島GP」のオファーが来た。「倒し屋」を集めたサバイバルトーナメントに、常に「倒すか倒されるか」を実践してきた“激闘大魔神”は外せない、という山口元気プロデューサーの判断だ。  橋本は、一瞬、迷ったという。 「最初は『えっ』と思いましたよ。あんな倒され方をして、それでトーナメントに出てきたら『なんで負けたお前が出てくるんだよ』と思われるだろうし。だけど、どういう相手と復帰戦をやろうかな、格下を選ぶのか、逆にものすごく強い相手を選ぶのかって迷ってた時に、ちょうど『無法島GP』のオファーを貰ったんです」  橋本は「ちょうどいい」と考えた。 「負けた千裕君も出てくるし、リベンジを兼ねて、復帰の舞台にふさわしいな、と思って」  1RKO負けで「引退」がよぎることはなかった。むしろ「やってやろう」という闘志がわきあがった。 「あのまま辞めて引退したら情けないじゃないですか。僕は5連敗した経験があって、その時も苦しかったですよ。だけど『これで辞めたら、ただの負け犬だな』と思って。  最近は結構、引退のことも考えるんです。もし今回の無法島GPに出ず、誰か違う選手とやって復帰しても、引退する時に『俺、無法島GPに出ていたらどうなってたんだろうな?』と絶対に思うと思うんですよ。だったら出場した方がいいです。たとえ1回戦で負けたとしても『俺は逃げてねえよ』と思える。もちろん、出ると決めた以上、負けるつもりなんかないですよ。今、すごくいい練習が出来てるんで『勝てる』と思ってます」  あの敗北は、注目される舞台だった上に、テレビ中継では「倒されるシーン」が繰り返し流される。橋本にとってこれ以上ない「痛恨の1敗」となったが、それでも、橋本は前を向き、挑戦を続ける。  それこそ、プロで10年間戦い続けてきた男のプライドと強固な意志だ。 「あきらめが悪いだけなんですけどね(笑)」  そうして、橋本は自身の「原点」を明かした。 「24歳でプロデビューして、27歳の時に初めてタイトルを獲ったんです。相手はイノベーションのチャンピオンの梶田義人選手で、ウチの道場の田中(秀和)さんも1RでKOされてて。みんなに『8割、9割、橋本が負ける』と思われてて。そうしたら、開始1分半でダウンを取られたんです。ボディを打ちに行ったところにカウンターを合わされて、フィギュアスケートみたいにクルっと回転して倒れたんですよ(苦笑)。それを道場のみんなによくいじられるんですけど(苦笑)」  ダメージは深かった。だが、橋本の心は折れなかった。 「めちゃめちゃ効いたんです。漫画みたいですけど、カウンターを食らった瞬間、目の前にパッと火花が散ったんですよ(苦笑)。だけど、強いのは分かってたんで『やっぱりそうなるのか』と焦りはしなかったし、立ち上がったら足元がフラつく感じもない。それで『取り返してやろう!』と思って、1R後半から5Rまで、ずっと前に出続けて、ダウンは取り返せなかったけど、3-0の判定で勝って、初めてベルトを巻きました。あの時に『俺は上手い試合じゃなくて、倒すか倒されるかだ』って」  橋本は、道場の中でも「特異な存在」だという。 「ウチの道場の選手は、みんなジュニアからやってて、キック通の人が見ても『上手いな!』とうなるような上手さがあるし、負けが少なくて勝率もいいです。僕だけなんですよ。上手くないし、こんなに負けも多くて(苦笑)。  だけど、僕は『倒すか、倒されるか』しかできないんで。打ち合って、面白いところを見せて、勝つ。前から『力が落ちてると感じたら辞める』と言ってますけど、練習では(安本)晴翔ともガンガン打ち合えてる。まだ『落ちてる』と感じたことは一度もないです」  無法島GP1回戦では、バズーカ巧樹(菅原道場)と対戦する。 「噛み合うと思うんですよ。バズーカ選手も『超絶テクニシャン』というタイプではないし(笑)、打ち合って、僕が倒しますよ。  勝ち進めば1日3試合ですけど、負けたら終わりなんで。『先のこと』なんて考えてたらやられちゃうと思うんで。常に『この試合で終わりだ』と思いながらやります。  千裕君に負けて『橋本悟は終わったな』と思ってる人もいると思うんで、一番、この無法島GPで見せたいのは『俺はまだ終わってねえぞ!』っていうところですよ。  第一試合なんで、イベントの火付け役なのは分かってます。打ち合って、面白い試合を見せるんで、ぜひ、2月11日は、大田区総合体育館に来てください」 文/撮影=茂田浩司
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