2019年12月31日(火)さいたまスーパーアリーナにて、15時から開催される『RIZIN.20』の前日公開計量が16時より、都内ホテルにて行われ、全選手が計量をパスした。
第12試合では、「Bellator×RIZIN対抗戦・大将戦」として、RIZIN MMAルール(※ヒジあり)66kg契約 5分3Rで、朝倉未来(トライフォース赤坂/11勝1敗)とジョン・テイシェイラ・マカパ(ブラジル/23勝4敗2分)が対戦する。
前日計量では、未来が66.00kgのジャスト、ジョン・マカパが65.70kgの300gアンダーで計量をともにパス。
29日の「Bellator JAPAN」では「Bellator×RIZIN対抗戦」で、先鋒のダロン・クルックシャンク(米国)がゴイチ・ヤマウチ(ブラジル)にリアネイキドチョークで一本負け。次鋒戦は渡辺華奈(FIGHTER'S FLOW)がイララ・ジョアニ(ブラジル)に3R TKO勝ち。中堅戦で中村K太郎(K太郎道場)がロレンズ・ラーキン(米国)に判定の末敗れ、対抗戦はRIZINの1勝2敗となっている。
31日には副将戦で元谷友貴(フリー/23勝7敗)がパトリック・ミックス(米国/12勝0敗)と対戦し、大将の未来が対抗戦のトリを務める。
計量後、未来に初日の対抗戦の結果について訊ねると、「ここまでの対抗戦の結果は関係ないです。対抗戦がどうこうより、自分が勝つということしか考えていない。その結果が対抗戦にも繋がる」と、1勝2敗で劣勢であることは気にせず。あくまで個人の勝利が全体に繋がると、マカパ戦に向けて集中していることを語った。
当初、未来は対戦相手にダリオン・コールドウェルとアーロン・ピコを希望。しかしコールドウェルは「Bellatorフェザー級ワールドGP」に参戦中で1月25日(日本時間26日)に強豪アダム・ボリッチとの対戦が決定済みで、次に希望したピコも同じ1月大会に参戦が決まり、未来の対戦相手選びは難航していた。
そこで決まった「対抗戦」とジョン・マカパという相手に、YouTubeでも成功している未来が、どれだけのモチベーションを持って臨めるのかという危惧もある。しかし、未来は「モチベーションはありますよ、試合なので」ときっぱりと語る。
28日の個別インタビューでも、「マカパは強い選手ですよ。世界的にも僕よりも実績が上なので、自分の力を試すいい機会かなと。戦績を見ると4敗しかしてなくてトップレベルの選手に負けただけ(ウゴ・ヴィアナ、AJ・マッキーJr、パット・カーラン、ダニエル・ヴェイケル)。ほぼトップに近い選手なので、4敗の次に僕がどんな形でも土を付けたいと思います」と、Bellatorの実力者を評していた未来。
YouTuberとしての人気を確立しているが、「自分をきっかけに格闘技を知って試合を観に来ている人や、地上波で見てくれる人に“本気の姿”を見てもらえたら」と、ファイターとしての姿を見せるつもりだ。
試合展開は「打撃戦になると思います。勝ちにこだわりたいです」と語った未来。
その対戦相手のジョン・マカパは、ブラジルのアマゾン川河口部の北岸にあるマカパ出身。貧しい家庭で生まれ育ったマカパは、地元での柔術の活躍を機に、大都会リオに単身引っ越し、名門ノヴァ・ウニオンで頭角を現した。
MMAファイターとして、今日の評価を獲得するまでには、艱難辛苦の連続だったという。特に地元マカパでは、将来が見えない日々を送っていた。
「貧しかったから、いろいろ苦労したし、ひどい目にもあった。実家が火事で燃えてしまったり、大きな怪我もあった。マカパにいた頃、身体能力もあっていろんなスポーツに挑戦したけどピンとこなかったんだ。ある日、柔術を始めたら、自分に向いているなと感じ、マカパ市内の大会で優勝したら賞金をもらえた。いま思えば大きな金額ではなかったけど、“短期間でこんなにお金がもらえるんだ、と感動し、自分にはこの道しかないと確信したんだ。その後もいろんな大会に出たけど、北東部の地方にいたままだと限界だ、と感じ、リオに引っ越したんだ」
リオデジャネイロは格闘技のメッカだ。ビーチ沿いに数多の柔術道場やMMAジムが並ぶ。
「でも、リオでは右も左も分からず、すぐにホームシックになったよ。家族や友人を地元に置いて、僕はほんとうに成功できるのかと悩んだ。寂しかった。話し相手が誰もいなくて、落ち込んでいた時もあった。
それにMMAを始め頃、ヒザを大怪我した。腹に大きな手術をしたこともあった。MMAを続けられない時期もあったけど、幸いにも1年で復帰できたんだ」
マカパの人生が好転したのは、2012年のUFCのリアリティーショー「The Ultimate Fighter: Brazil」がきっかけだった。そこでジオバニ・サントス、ホドリゴ・ダムらと激闘を繰り広げたマカパは、オクタゴンデビューも果たしている。
「ある日、リアリティショーのTUFに出て、ファイナルに進出し、一気に知名度が上がった(2012年「The Ultimate Fighter: Brazil」)。あのヴァンダレイ・シウバが僕をチーム・ヴァンダレイにピックアップしてくれたんだ。それが地元で話題になり、UFCに出ることも出来た。大きな進歩だったよ」
チャンスをくれたヴァンダレイがかつて死闘を繰り広げた地、さいたまスーパーアリーナのリングに、今回は自身が足を踏み入れる。
「さいたまは憧れの場所だった。PRIDEでヴァンダレイ・シウバやミノタウロらが戦った場所だ。そこで試合ができる事がほんとうに嬉しいよ。母国ブラジルやチームを背負って、いい試合をし、いい結果を残したい」と、マカパは熱く語る。
所属するノヴァ・ウニオンの師匠であるアンドレ・ペデネイラスからは、「日本では礼儀正しくするように」とアドバイスを受けたという。
「デデ(ペデネイラス)はビジネスマンとしても忙しいなか、作戦を練ってくれて、対戦相手を研究してくれた。デデ自身も日本で戦ったことがあるしね(※佐藤ルミナ、宇野薫、須藤元気と対戦)。心強く感じたよ」
また、対戦相手の朝倉未来については、「試合が決まってから相手の研究をしたけど、アグレッシブでとても優れている選手だなと思った。試合がとても楽しみだ」と語る。
さらに「この試合は恐らく3R続くと思う。観客に楽しんでいただきたいし、とにかく良い結果を残し、次も呼ばれたいと思っている」と、粘り強く戦い、注目されている朝倉未来に勝利し、RIZINへの継続参戦を希望している。
左胸に漢字で「信」の文字を刻んでいるマカパ。
「マカパに帰省すると、MMAを目指す子供たちからアドバイスを求められる。ファベイラなど貧しい地域でいろんな講演もやったよ。これまで大きな骨折もしたし、家も燃えた。それでも格闘技を一度も辞めようと思ったはことないんだ。自分のことを信じていた。格闘技で食べていけると信じていた。だから、身体に“信”と刻んだんだ」
ケージの柄に刻まれた「信」。しかし、朝倉未来はリングでのテイクダウンデイフェンスに長けてる。そして、相手の動きを見切ったときの打撃は脅威だ。
果たして大将戦は、Bellatorの壮絶苦労人のマカパが、そのハングリー精神でチームを勝利に導くか。それとも日本の“路上の伝説”未来が7連勝を決めるか。