■健太が語るOFG&ケージでのキックボクシング
――通常のグローブとは違って、オープンフィンガーグローブ(以下OFG)での戦いはどうでしょうか。OFGだとガードしていてもその隙間から攻撃が入ってくると言われています。
「僕は特別違いを感じません。今年5月のONE2戦目、リトアニアのデイヴィダス・ダニーラと戦った時に、アッパーを受けてスウェーで避けたのですがそれは感じましたね」
(C)ONE
――グローブよりもOFGの方が表面が薄いことでタイ人のパンチが重く感じることは?
「そこは感じないのですが、首相撲の攻防になった時にタイ人は素手に近いOFGだと相手をコントロールする力が上がってしまうので、タイ人に有利なルールなんじゃないかなと。グローブを付けてあれだけ首相撲がうまいのに、更に取り合いがうまくなるので首相撲からのヒジに恐怖を感じます」
――逆にOFGで戦うことでご自身にメリットは?
「僕はジャブを結構得意としているのですが、ジャブでも鼻を折れるぐらいの強打になりますし、僕の良さが出るんじゃないかと思ってます」
――リングではなくケージでの戦いに関してはどうでしょう。
「ONEだとリングでも試合はありますが、僕は3戦ともケージでの戦いでした。リングよりも広いので、首相撲で捕まれにくいとも感じましたね。リングだと詰まりやすいですが、ケージだと詰まれにくいのかなと。ケージは円なので横の動きができるから、リングよりも捕まりにくくて僕はフットワークが使えていいかなって思っています」
――ロープを利用したスウェーが出来ませんよね?
「ケージはタイ人よりもタイ人ではない選手の方が有利のような気がしますね。タイ人が逃げに入った時に、ロープに寄りかかって前蹴りをするじゃないですか。ああいうのが使えないから。ただ、あまりケージを使ってとか特別な戦い方は考えてないですね」
――ケージでの際での攻防になった時に、蹴ったらケージに足が当たりそうで蹴り辛い、負傷しそうだという選手もいます。そこを意識したことは?
「金網は凄く硬いので、なるほど、確かにそうですね(笑)。距離を詰めてミドルを出そうと考えたことはありませんでした。逆に相手に際で蹴らしてそれを狙うのもありですね。ケージ慣れしているMMAの選手にそこは相談してみたいと思います」
(C)ONE
――健太選手はOFGでの戦いでもダウンが一度もないことで、自身のタフさに改めて気づいたりは?
「ダニーラのアッパーを食らって記憶がなくなったのでそれは感じないですね(笑)。でもロッタンはOFGでバカバカ打ち合ってあんなに打たれ強いので凄いですよ」
――ONEで戦いたいという日本人キックボクサーは増え続けていますが、そんなに甘い世界ではありません。キャリア豊富で日本トップファイターの一人である健太選手が過酷な状況であることを証明していますよね。
「ホント厳しい道ですよ。僕がセンマニーにやられて凄い結末になる…なんてことを見せ付けるつもりはないですけど、逆に日本人選手は凄いと希望を与えるような、ONEと日本人キックボクサーの架け橋になります」
――センマニーに勝ったら試合後に大変なことになりますね。
「タイでは輸入物はまだ高いのですが、ホテルではF-1で優勝した時のようなシャンパンパーティーですよ。日本でもやったこともないですけど(笑)」
――次が92戦目となり、100戦に近づくことで新しく見えてきた景色はありますか?
「100戦に近付くにつれて自分がさらに強くなっている、健太完全体になりつつあるのを感じています。以前よりもバランスが良くなってきましたし、バランスが良くなったことで今まで出来なかったコンビネーションができるようにもなりました。20戦目、30戦目、40戦目……の時と比べても間違いなく、今の自分の方が強いです」
――年齢を重ねることでスタミナ面で不安は?
「日々の疲れは出るようになりましたけど、全然不安はないですね。技術も備わってきていて、もう強くなり続けるだけです」
――2011年K-1 MAXに出ていた選手が次々と引退していく中で、今だにトップ戦線で活躍しているのは、2011年9月、-70kg日本トーナメント一回戦で対戦した城戸康裕選手ぐらいですね。
「確かにどんどん引退してますね。でも僕は他人との比較でやっていないので、特に気にしていません。今自分がONEに出て強い選手とやり続けることだけを考えています。といいつつ、キックに限らず、ベテラン選手が活躍するスポーツを見るとやたらと感情移入して勇気をもらっているのは確かです。ちなみにリーチ・マイケル(ニュージーランド出身の日本国籍を持つラグビー選手)が頑張っているな~と思ったら、年下でした。なんだ! あの貫禄ある顔は! みたいな(笑)」
――ジムにはタイ人トレーナーも雇って練習環境も充実してきたようですね。
「はい、凄くいい人でどんどん自分のバランスが良くなってきている気がします。よりミドルキックとかスウェーが上手くなっている気がしています」
――センマニー戦をクリアーして2020年はどういう1年にしたいですか。
「世間の30代アスリートに勇気を与えるような、世界で活躍する健太を見せたいと思います。センマニーに勝ったらONEのタイトルに挑戦させてくれと、シャンパンで酔っぱらった勢いで調子に乗って言っちゃいそうですよね」
――最後にファンへメッセージを。
「格闘技の醍醐味はアップセットじゃないですか。みんなをビックリさせたい、感動させたいと思います」