プロのナルシスト=“プロフェッショナルシスト”を名乗る健太のナルシストポーズ 撮影/安村発
2020年1月10日(金)タイ・バンコクのインパクトアリーナにて開催されるONE Championship『ONE: A NEW TOMORROW』で、センマニー・ サティアンムエタイ(タイ)とキックボクシングルールで対戦する健太(E.S.G)。
健太は2005年1月に高校生でプロデビュー、大学生時の2008年5月にNJKFウェルター級王座に就くと同スーパーウェルター級王座、Krush-70kg初代王座、WBCムエタイ日本統一ウェルター級王座などを獲得。2011年9月にはK-1 WORLD MAX日本トーナメントに出場し、1回戦で城戸康裕を破り準決勝へ進出している。ONEには今年3月から参戦。
今回の相手センマニーは6歳でムエタイを始め、15歳でルンピニースタジアム認定ミニフライ級王座を獲得。その後はラジャダムナンスタジアムで3階級制覇も達成し、2012年にはタイ・スポーツ記者協会が認定するムエタイMVPも獲得したムエタイ界のスーパースターだ。
■崖っぷちだと思っていたが、崖から突き落としに来た
――2020年1月にONE参戦が決まりました。2020年初戦になります。
「ONEでの戦績が1勝2敗で崖っぷちなので“次は勝たないといけない。リリースされないためにも今度こそは!”という気持ちでいたところに、凄いのが来たなとビックリしました」
――健太選手のSNSを拝見したところ、センマニーの“噛ませ犬”という表現をされていましたね。
「言いたてのものをちゃんとチェックしていただきありがとうございます(笑)。正直なところ、バンコクでの開催ですし、タイではバリバリのスター選手ですし、僕は噛ませ犬的な立場でもあるのかなと。もちろん僕はそんなつもりはないですけどね」
――逆にポジティブに考えるとビッグチャンスです。
「ここで勝ったらめちゃくちゃ大変なことになりますよ。僕的には格闘技人生一発逆転の大チャンスだと捉えています」
――主催者は“健太なら何かやってくれるんじゃないか!?”と期待している部分もあるのでは?
「主催者は期待してないと思います(苦笑)。ONEでなかったら普通は組んでもらえないマッチメイクですし、タイだとギャンブルの賭けの対象にもならないマッチメイクですよね」
――ONEのマッチメイクは鬼だとは思いませんか?
「そうですよね。ペットモラコット、ムアンタイ、次がセンマニーと、レジェンドクラスと続々と。崖っぷちだと思っていたんですが、崖から突き落としに来たな、というのが正直な感想です(笑)。でも逆に、先ほど言ったように最大のチャンスでもあります。ONE Championshipだけに“ワンチャン”です」
「全くないですね(笑)。練習前にYoutubeでムエタイのトップ選手の試合映像を見るのですが、そんな感じでテクニックなどを参考にして見ていた選手の一人でしたから」
――センマニー選手の参考になったテクニックはどういうところでしょう。
「組んでからのヒジ、ヒザの使い方、距離感の取り方、ミドルを蹴った時のブレないバランス感覚ですね。正直なところ、攻略が難しい相手ではあります」
――左ミドルキックの名手として知られています。
「距離感もいいし、左ミドルと左ストレートが同じモーションから出て来たり、左ミドルを蹴った後すぐに左ストレートを打って来たり。あれは厄介ですね。でもそこに合わせていかないとしょうがないです」
――目もいいですし、カウンターも上手いです。
「よく取材で聞かれるし、SNSでも言ってるんですけれど、逆にみんな教えてくれって思うんですよ。何がいいのか、どう戦ったらいいのかって(笑)」
――健太選手は梅野源治選手の物真似が得意ですが、センマニーの物真似で本人と対戦することもありえるのでしょうか。
「えっ!? 僕は梅野選手の物真似をしているとは公言していないのですが……(苦笑)、センマニーはサウスポーであって僕はそうでもないので、センマニーの動きを参考にしているというよりも、今回はセンマニーと対戦している選手の動きを参考にしています」
――現在の状況を崖っぷちと言われましたが、過去にもそう考えた時期はありました?
「過去に2度、3連敗していた時期があり、その時は崖っぷちだったのでもう辞めようと思ったことがありました。いつも思うのですが、ただやっていてもしょうがないのでこんなんだったら辞めようと思うことがあって、また気持ちが立ち上がる。その繰り返しが続いていて、もういつ辞めてもおかしくない状況です。91戦もやってきてその言葉に信憑性もないんですけどね(笑)。今の状況をどげんかせんといかん!(宮崎弁でどうにかしないといけないという意味)。僕が勝つと思ってみんな見ていないと思うので、僕は噛みつきます。めちゃくちゃ闘志が燃えていて、めちゃくちゃワクワクしてます」
――ONEでは2人のタイ人選手と対戦していますが、これまでキックルールで対戦したタイ人とファイトスタイルなどで違いはありますか?
「日本人の母とタイ人の父のハーフであるチャトリ・シットヨートン会長は、タイのレジェンドたちが活躍できる場、世界のスポーツと比べても遜色ない舞台として与えたのがONEなんじゃないかなと勝手に思っています。ルンピニーやラジャダムナンで活躍していた選手が、そういう場所を卒業し、もう1つ輝ける舞台だとも思えるのですが、センマニーに関してはまだ若くてタイの二大殿堂スタジアムで活躍している現役バリバリの選手ですね(笑)」
――ONEで獲得するファイトマネーが高額だけに、タイ人選手の試合での勢いが違ったりは?
「そうですね。それも感じますね。あと、これまでに対戦した2選手の試合映像をYoutubeで見ていたらタイ人同士の試合で5R制だったので、1、2Rはゆっくりしたペースで戦い、3、4Rは攻めて5Rはゆっくり流すというペースで戦っています。そのイメージでペットモラコット、ムアンタイと向き合ったら、1Rから攻められてポイントを取られてしまいました。3Rしかない中で1Rから取られるなんて致命的で、2Rに取り返しにいっても、3Rに逃げられてしまいます。逃げるタイ人はめちゃくちゃうまいですからね。今回も3分3R制ですが、いかに1Rを取るかが勝負になります。まさに“ONE”です」
――1Rから勝負にくるなんて、ムエタイ選手の戦いではなく、日本人選手と戦っているようですね。
「そうなんですよ。ムアンタイなんかゆっくりしたペースで来ると思ったら、1Rから声を出してフルスイングしてミドルキックを出してましたから。向こうは元々試合巧者ですが、さらに作戦を考えてきてますよね。次は三度目の正直なので、僕は初回からフルスピードで攻めますよ。3戦目でようやくONEでの戦い方に気付きました(笑)」