もう自分の中ではキックは引退した
「やっぱり打撃で勝つのは当たり前だと思うんですよ。前回のRWSで、たぶんいろんな人に『コイツはまったく組みができない』『ムエタイでは絶望的だ』って思われたと思うので、今回の試合では『ムエタイ』を見せたい
です。キックボクサーじゃなくて、ムエタイ選手になったなって思ってもらえる試合をしたいと思ってます」
──打撃よりも組みなんですか?
「でももちろん、瑛作さんと打撃も磨いているので、フェイントとかも使っていきながら、ムエタイが少しはできるようになったところを見せたいです」
──相手のウォン・フーカ選手は、ムエタイ的にはどう見ていますか?
「彼女がキックボクシングじゃなくてムエタイで試合をしてるのは知ってるんですけど、打撃はザルだなと思ってます。打撃で負けることは絶対ないなと。ムエタイに関しては、相手の方が試合経験は多いと思うんですけど、16戦して8勝8敗、負けも勝ちも半々じゃないですか。さすがにそういう選手に負けたら、もう自分的に未来はないなと思ってます。
前回、RWSで闘った相手は60戦55勝とか、ちょっとあり得ないぐらいの戦績、やっぱりメッチャ強いんですよ。サネーガームもやっぱりメダルを獲ってるぐらいで、穴はあるとしても、ムエタイでは実績があるじゃないですか。だから負けたけど、それでメチャクチャ評価が下がる試合ではないと思うんですよ。相手もメチャクチャ強かったので、よく挑んだなぐらいだと思うんですけど、次の相手に負けたら、さすがにもう、引退した方がいいと思うんですよ。逆にそういうプレッシャーはあります」
──ではそれも踏まえて、最終的にはどういう勝ち方をしたいですか? ヒジで勝ちたかったりはしますか?
「ヒジはまだ試合で出せたことがなくて。タイミングが分からないし、タイ人は組みがうまいので、どこで当てていいのかが分からなかったんですけど、前回のRWSで、タテヒジをもらったんですよ。その時、やっぱり見えなかったんです。やっぱり見えないもんなんだなと思って。でもやっぱりムエタイに来たからには、自分も1回はヒジで切ってみたいんですよ。焦らず、今回は3Rかけて闘うイメージで、どこかでは当てたいなと思ってます」
──そこもムエタイらしく。
「私は今、キックボクサーとムエタイの間ぐらいの構えだと思うんですよ。キックボクシングのステップも踏むし、後ろ重心で構えるところはムエタイだし。それと、ヒット&アウェイのスタイル。相手に通用しなかった時はスタイルを変えなきゃいけないので、その3つのスタイルをずっと瑛作さんとやっています。試合になってみないと分からないので、全部ができるようにしておいて、試合中に瑛作さんに指示を出してもらおうかなと思ってます」
──今回勝ったら、その先はどう考えていますか?
「年末の代々木第二大会に出してほしいという話はしています。強いタイ人とやって、今度こそ勝ちたいです。そのためにも、今回打撃で勝ったとしても次につながらないので、今回ムエタイで勝つことによって、次に強いタイ人との対戦を実現させたいです」
──ムエタイでの目標は、当面はタイトルとかではなく、という感じですか?
「まだ私はムエタイでは0勝なので。ムエタイでデビューする時は『タイトルを目指します』って言ってましたけど、やっぱり実際に試合をしてムエタイの技術のすごさを目の当たりにしてしたら、簡単にそういうことは言
えないですよね。とりあえず、しっかりムエタイで勝って見せられてからだと思っています。飛び級みたいなことは言いたくないし、やるからには、この前闘った相手みたいなトップ選手とやって、ベルトを獲りたいので、それにはまだまだ技術が必要だなって思ってます」
──以前は、勝ち続けることが一つのアイデンティティみたいなところがあったと思います。今ももちろん勝つことを目指しているとは思いますが、ムエタイで強くなるためには負けることを恐れないという気持ちですか?
「キックとムエタイって、全然違うなって思ったところがあったんですよ。キックは正直、ケンカスタイルとか気持ちとかでもどうにかなったんですね。あと、キックで勝っていた時は、日本人選手に負けたら引退するとも思っていて。実際、危なかった試合もいっぱいありましたけど、でも結局、キックでは日本人には負けずに終わってるので、もう自分の中ではキックは引退したと思ってるんです」
──そうなんですか。
「今、キックの試合をするモチベーションが正直なくて。闘いたい相手がいないというか。もう十分やってきたし、今ベルトを争っている山田真子、平岡琴ともやってきてるし。彼女たちと再戦ってなっても全く燃えないですけど、ムエタイとなると別ですよね。私は今、山のふもと、一番下にいて、山の頂点まではすごいレベルの差があると思ってるので。あと、ムエタイは気合いとか根性とかじゃ無理っていうのを知って、何より技術と冷静さが必要で、それが自分に一番足りないものだなというのが分かったので。今はムエタイのトップ選手と闘える技術、力が欲しいです」
──では今回の試合は、現時点での中間報告みたいな感じですね。
「そうですね。まず年末に向けて。マジで、ここで負けるんだったらもう向いてないので、ムエタイはやめた方がいいですから。 タイ人のトップ選手に負けても、またこの先勝てばいいと思うかもしれないですけど、今回みたいな相手に負けたらもう終わりだと思ってるので。負けたら終わりだなっていうプレッシャーは、正直あります」
──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
「今までファンの方とかが見てきたぱんちゃんは、前に出てパンチで勝つ選手というイメージだと思うんですけど、今回はムエタイらしく、蹴りとか組み、崩しとかヒジとか、あと冷静さだったり、今までなかった部分を見てほしいです。ムエタイはそういう部分がないとうまく勝てない競技だと思ってるので、同じ人が闘っているようには見えないようなスタイルを見せられたらいいなと思ってます。ムエタイをやってる女子はまだまだ少ないので、ムエタイの素晴らしさを広めていきたいなと思ってます。キックとはまた違う楽しさがあると思うので」





