2026年10月23日(金)東京・後楽園ホール『MAROOMS presents KNOCK OUT.69』(U-NEXT配信)にて、KNOCK OUT-RED女子ライトフライ級3分3Rでウォン・フーカ(香港)と対戦する、ぱんちゃん璃奈(フリー)のインタビューが主催者を通じて届いた。
ぱんちゃんのムエタイ転向3戦目の相手フーカは、8勝8敗の戦績を持つ32歳。8月の『RWS』でプロ初の連敗を喫してしまったぱんちゃんは、悲壮な決意での再起戦に望む。
このままフェイドアウトしたら向こうの思うツボ
──KNOCK OUTへの参戦は昨年12月30日、代々木第二大会のサネーガーム戦以来になります。初のREDルール挑戦でしたが、あの試合を今振り返ると?
「だいぶ空きましたね(笑)。サネーガーム選手はミドルキックとヤッサイ(首相撲で押し込みながらのヒザ蹴り)がうまかったので、首相撲で負けたわけではなかったという試合でした。組んでみて、腕(かいな)力は別に強くないなと思ったし、コカしたり押しつぶしたりはできたので正直、組み負けたなとかは思わなくて、タイ人でも意外と組みでは押しつぶせるんだ、みたいな感じで思っちゃってました」
──負けたけど、ある意味手応えもあったわけですね。
「あと、あの時は試合直前にプライベートでいろいろありすぎて。もうリングに立つだけで精一杯で、『勝たなきゃ』みたいな感じになれなかったですね。もうとりあえず試合に穴を空けないようにしようとしか思えなかったし、3日ぐらい寝られなかったりとかもしたのでパフォーマンスもよくなくて、悔いが残る試合ではありました」
──その後、8月にはタイのRWSでムエタイ2戦目を闘ったんですよね。
「はい。そこで初めてムエカオ(首相撲をメインに闘うタイプ)の選手と当たって、初めて『やっぱり首相撲をもっとやらなきゃいけないな』と思ったんです。そこからは、とにかく首相撲の練習を徹底的に増やしました。広島のTRASHまで出稽古にも行きましたし、今は藤原乃愛選手や伊藤紗弥選手がいる尚武会に毎週行かせてもらっていて、彼女たちは世界王座も獲ってタイ人に勝ってきているので、タイ人に勝てる組みとかいなし方とかを、一緒に練習して学ばせてもらっています」
──練習環境もさらにムエタイ仕様になったわけですね。
「あと打撃の部分については、(小笠原)瑛作さんに強くしてもらってます」
──そうなんですね。それは吉祥寺で?
「そうですね。年末の試合が終わった後、今年の2月頃から、瑛作さんのパーソナルを週4とかでずっと受けてます。正直、年末からトレーナーもいなくなったので、練習もできなくてどうしよう、みたいなことになってて。正直、もう無理だなと思って一時期は練習もやってなかったんですよ。それで、本格的にまたやり始めたのが3月かな。3月ぐらいに(山口)元気さんが『もう1回頑張ってみようよ』って声をかけてくれて、KNOCK OUTの人たちも助けてくれて。それで私がトレーナーの希望する条件を出したら、『瑛作が合うよ』って元気さんが言ってくれて、そこからずっとパーソナルを受けています。それと週2ぐらいでKNOCK OUTクロスポイント吉祥寺のプロ練にも参加させてもらってます」
──なるほど。
「瑛作さんはムエタイで、しかもオープンフィンガー(OFG)で勝つ打撃を知っているし、タイ人にも勝ってきてるじゃないですか。やっぱり、ムエタイにムエタイの組みとか蹴りで対抗しても勝てなくて、ムエタイには打撃でいかないと勝てないなと思って。プラスアルファ、タイ人に首相撲で負けないような打撃とか組み方とか、そういうのもいろいろ知っているので、ずっと見てもらってます」
──もう8カ月ぐらいになるんですね。
「はい。前回、RWSに出た時もタイまで来てくれて、セコンドに入ってくれました。今までも同じ大会に出てることはあったんですけど、あんまり交流とかはなかったんですけど、メッチャ面白い方で(笑)」
──しかし、状況は変われば変わるものですね。
「ですよね(笑)。いろいろあって、もうさすがに格闘技はできないと思ったんですけど、でもやっぱりスポンサーの人とか選手とか、助けてくれる人もいたり、周りの人を含め応援してくれてる人もいるので。何か、ムエタイに転向して負けたままで終わるのも腹立つし、KNOCK OUTに恩を返したい気持ちもあるので、もうちょびっとだけ頑張ろうかなと思っています」
──再開する動機はあったと。
「はい。今、ムエタイ選手としては負け越してるんですけど、何も知らないまま転向しただけですからね。自分は、普通に誰よりも追い込めるし、まだまだ伸びしろあると思って今練習しているので、そこは悲観してないですね」
──周りの人たちもそこを分かっていて、「格闘技以外のことでやめちゃったり、ダメになるなよ」という思いが強かったんじゃないですか。
「ですよね。まあだから、4年前に自分が事件を起こしてやらかしたときも、KNOCK OUTは引っ張ってくれましたし。あそこでもう1回頑張ろうとなったのに、そこからあまり結果も残せてないし。それで自分にも見切りをつけて、あと1年でいいかなと思って、その後は引退して結婚して子ども産んで…って考えてたんですけど、それもなくなってしまったので。もう先が真っ暗というか、今年の1月とかはホントにしんどかったですね」
──ああ…。
「プライベートがダメでもキックはやれたり、キックがダメでもプライベートが調子よかったりとかだったらまだいいんですけど、初めてどっちもなくなっちゃったというか。『ホントにどうしたらいいんだろう…』って感じでしたけど、助けてくれた人には恩返ししたいし、見返してやりたいヤツもいるので(笑)。今は両方の気持ちで頑張ってます。
このままフェイドアウトしたら向こうの思うツボかなとも思うし、そこは負けず嫌いなので。瑛作さんに教えてもらってメチャクチャ打撃が伸びたとか、ムエタイのジムに行ってめっちゃムエタイが強くなったとか、そういうところを世間に認めてもらいたいという気持ちが、今は強いですね」
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もう自分の中ではキックは引退した
──今回のウォン・フーカ戦では、それができそうですか?
「やっぱり打撃で勝つのは当たり前だと思うんですよ。前回のRWSで、たぶんいろんな人に『コイツはまったく組みができない』『ムエタイでは絶望的だ』って思われたと思うので、今回の試合では『ムエタイ』を見せたいです。キックボクサーじゃなくて、ムエタイ選手になったなって思ってもらえる試合をしたいと思ってます」
──打撃よりも組みなんですか?
「でももちろん、瑛作さんと打撃も磨いているので、フェイントとかも使っていきながら、ムエタイが少しはできるようになったところを見せたいです」
──相手のウォン・フーカ選手は、ムエタイ的にはどう見ていますか?
「彼女がキックボクシングじゃなくてムエタイで試合をしてるのは知ってるんですけど、打撃はザルだなと思ってます。打撃で負けることは絶対ないなと。ムエタイに関しては、相手の方が試合経験は多いと思うんですけど、16戦して8勝8敗、負けも勝ちも半々じゃないですか。さすがにそういう選手に負けたら、もう自分的に未来はないなと思ってます。
前回、RWSで闘った相手は60戦55勝とか、ちょっとあり得ないぐらいの戦績、やっぱりメッチャ強いんですよ。サネーガームもやっぱりメダルを獲ってるぐらいで、穴はあるとしても、ムエタイでは実績があるじゃないですか。だから負けたけど、それでメチャクチャ評価が下がる試合ではないと思うんですよ。相手もメチャクチャ強かったので、よく挑んだなぐらいだと思うんですけど、次の相手に負けたら、さすがにもう、引退した方がいいと思うんですよ。逆にそういうプレッシャーはあります」
──ではそれも踏まえて、最終的にはどういう勝ち方をしたいですか? ヒジで勝ちたかったりはしますか?
「ヒジはまだ試合で出せたことがなくて。タイミングが分からないし、タイ人は組みがうまいので、どこで当てていいのかが分からなかったんですけど、前回のRWSで、タテヒジをもらったんですよ。その時、やっぱり見えなかったんです。やっぱり見えないもんなんだなと思って。でもやっぱりムエタイに来たからには、自分も1回はヒジで切ってみたいんですよ。焦らず、今回は3Rかけて闘うイメージで、どこかでは当てたいなと思ってます」
──そこもムエタイらしく。
「私は今、キックボクサーとムエタイの間ぐらいの構えだと思うんですよ。キックボクシングのステップも踏むし、後ろ重心で構えるところはムエタイだし。それと、ヒット&アウェイのスタイル。相手に通用しなかった時はスタイルを変えなきゃいけないので、その3つのスタイルをずっと瑛作さんとやっています。試合になってみないと分からないので、全部ができるようにしておいて、試合中に瑛作さんに指示を出してもらおうかなと思ってます」
──今回勝ったら、その先はどう考えていますか?
「年末の代々木第二大会に出してほしいという話はしています。強いタイ人とやって、今度こそ勝ちたいです。そのためにも、今回打撃で勝ったとしても次につながらないので、今回ムエタイで勝つことによって、次に強いタイ人との対戦を実現させたいです」
──ムエタイでの目標は、当面はタイトルとかではなく、という感じですか?
「まだ私はムエタイでは0勝なので。ムエタイでデビューする時は『タイトルを目指します』って言ってましたけど、やっぱり実際に試合をしてムエタイの技術のすごさを目の当たりにしてしたら、簡単にそういうことは言えないですよね。とりあえず、しっかりムエタイで勝って見せられてからだと思っています。飛び級みたいなことは言いたくないし、やるからには、この前闘った相手みたいなトップ選手とやって、ベルトを獲りたいので、それにはまだまだ技術が必要だなって思ってます」
──以前は、勝ち続けることが一つのアイデンティティみたいなところがあったと思います。今ももちろん勝つことを目指しているとは思いますが、ムエタイで強くなるためには負けることを恐れないという気持ちですか?
「キックとムエタイって、全然違うなって思ったところがあったんですよ。キックは正直、ケンカスタイルとか気持ちとかでもどうにかなったんですね。あと、キックで勝っていた時は、日本人選手に負けたら引退するとも思っていて。実際、危なかった試合もいっぱいありましたけど、でも結局、キックでは日本人には負けずに終わってるので、もう自分の中ではキックは引退したと思ってるんです」
──そうなんですか。
「今、キックの試合をするモチベーションが正直なくて。闘いたい相手がいないというか。もう十分やってきたし、今ベルトを争っている山田真子、平岡琴ともやってきてるし。彼女たちと再戦ってなっても全く燃えないですけど、ムエタイとなると別ですよね。私は今、山のふもと、一番下にいて、山の頂点まではすごいレベルの差があると思ってるので。あと、ムエタイは気合いとか根性とかじゃ無理っていうのを知って、何より技術と冷静さが必要で、それが自分に一番足りないものだなというのが分かったので。今はムエタイのトップ選手と闘える技術、力が欲しいです」
──では今回の試合は、現時点での中間報告みたいな感じですね。
「そうですね。まず年末に向けて。マジで、ここで負けるんだったらもう向いてないので、ムエタイはやめた方がいいですから。 タイ人のトップ選手に負けても、またこの先勝てばいいと思うかもしれないですけど、今回みたいな相手に負けたらもう終わりだと思ってるので。負けたら終わりだなっていうプレッシャーは、正直あります」
──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
「今までファンの方とかが見てきたぱんちゃんは、前に出てパンチで勝つ選手というイメージだと思うんですけど、今回はムエタイらしく、蹴りとか組み、崩しとかヒジとか、あと冷静さだったり、今までなかった部分を見てほしいです。ムエタイはそういう部分がないとうまく勝てない競技だと思ってるので、同じ人が闘っているようには見えないようなスタイルを見せられたらいいなと思ってます。ムエタイをやってる女子はまだまだ少ないので、ムエタイの素晴らしさを広めていきたいなと思ってます。キックとはまた違う楽しさがあると思うので」