2026年5月31日(日)東京・後楽園ホール『K-1 REVENGE』の第7試合にて、K-1ミドル級3分3R延長1Rで対戦するカスペル・ムシンスキ(ポーランド/Armia Polkowice)と谷川聖哉(Yogibo DATSURIKI GYM)のインタビューが、主催者を通じて届いた。
ムシンスキは、25年のK-1 WORLD MAX世界トーナメント一回戦(70kg)でオウヤン・フェンに僅差の判定負けを喫し、26年2月は階級をミドル級(75kg)へ上げてデング・シルバと対戦したもののボディブローでダウンを奪いながらも、逆転のKO負け。まさかのK-1 2連敗で、再起を狙う。
谷川は第3代Krushクルーザー級王者の肩書きを持つ日本人重量級トップファイターの一角で、長らくクルーザー級(-90kg)を主戦場としていた。26年1月にKrushクルーザー級王座を返上。同月開催の『Krush.184』では、80kgまで減量してジュリオ・セザール・モリと戦い、KO勝ちを収めた。今回はさらに5kg落としての75kgでの試合となる。
ムシンスキ「努力し、成長し、前に進み続けるだけ」
――今回の大会名は、『K-1REVENGE』です。大会のテーマである“リベンジ”について、ご自身の思いを聞かせてください。
「今大会に『K-1 REVENGE』という名前が付いていることは、この試合に伴う感情に非常によく合っていると思います。スポーツにおいて、苦しい瞬間や挫折は避けられませんが、それが同時にモチベーションにもなります。自分にとって今大会は、強さを証明し、本来の姿を取り戻し、ファイターとしての野心を満たすためのチャンスと捉えています」
――『K-1REVENGE』は、27年ぶりに復活する大会名です。K-1レジェンドの故アンディ・フグさんが、自分自身へのリベンジのために行われた大会でした。リアルでは知らないと思いますが、アンディさんをリスペクトする点があれば教えてください。
「残念ながら、私はまだ若かったため、その時代をリアルタイムで見ることはできませんでした。しかし、これまで見てきたものから、アンディ・フグさんは格闘技界において特別な存在だったと感じています。特に尊敬しているのは、彼のメンタリティ、カリスマ性、そして世界中のファンに与えた影響力です。そんな伝説的な存在の歩みを追えることは、とても刺激になっています」
――今年2月のデング・シルバ戦は、KO勝ちまであと一歩でした。ダウンを奪った時の手応え、なぜ逆転されてしまったのか敗因を教えてください。
「デング・シウバ戦では、序盤で試合を決められる感覚がありました。もしかしたらKOを狙いすぎてしまい、守備面の集中が少し落ちてしまったのかもしれません。ただ、その経験から大きな学びを得ることができました。精神的な部分は何も変わっていません。これからも努力し、成長し、前に進み続けるだけです」
――オウヤン・フェン戦、デング・シルバ戦とK-1では連敗中です。ファンの期待になかなか応えられない厳しい状況だと思いますが、ご自身ではどう捉えていますか?
「今の自分のキャリアは、外から見ると厳しい状況に見えるかもしれません。しかし、自分は世界最高レベルの選手たちと戦っています。本当にトップを目指すなら、こうした挑戦から逃げることはできません。後悔はありませんし、むしろこれは自分の成長の過程であり、さらに強くなって戻ってくるためのモチベーションになっています」
――今年3月28日の『STRIKE KING』ではダン・ルング選手から勝利しました。完封した内容に見えましたが、ご自身ではどんな手応えがありましたか?
「前回の試合のパフォーマンスは、自信につながっています。落ち着いて試合をコントロールできましたし、ゲームプラン通りに距離を支配し、無駄なミスも避けることができました。自分にとっては、経験を積み、ファイターとして成長するための大切な一歩だったと思います」
――今回、谷川聖哉選手と対戦しますが、オファーがあった時の気持ち、彼のファイターとしての印象を教えてください。
「谷川選手との試合オファーを受けた時は、本当に嬉しかったです。彼は経験豊富でフィジカルも強く、独特なスタイルを持った選手なので、とても面白いマッチアップになると思っています。そして、自分と戦うことを受けてくれた初めての日本人選手という点でも特別な意味があります」
――谷川選手は、主に90kgで試合をしたり、前回は80kgで戦っていました。彼の耐久力、パワーについてはどう分析していますか?
「90kgで戦っていた選手が75kgに落としてくるというのは、非常に大きな違いです。もちろん、そのサイズはアドバンテージにもなりますが、一方でデメリットもあると思います。彼のフィジカルの強さや打たれ強さについては、実際にリングの中で戦ってみないと分からないですね」
――あなたは、勇敢に前へ出てプレスをかけるファイトスタイル。今回の谷川戦でも、それは通用すると考えますか? それとも違う戦略を考えているのでしょうか?
「プレッシャーをかけ続けることやアグレッシブなスタイルは、自分のファイトスタイルの自然な一部なので、そこは変わりません。ただ同時に、賢く戦い、ディフェンス面でも規律を保ちたいと思っています。その両方を組み合わせて、成熟したパフォーマンスを見せたいです」
――今回は、どんな試合を見せたいですか?
「今回は“完成度の高い試合”を見せたいと思っています。試合をコントロールし、ファンを楽しませ、自分がこの階級のトップ戦線にふさわしい存在であることを証明したいです。常に強いインパクトを残すことが自分の目標です」
――ファンの中には、あなたの圧勝を予想する声もあります。そうした意見については、どう思いますか?
「ファンの皆さんが自分を信じてくれていると聞くのは、本当に嬉しいです。ただ、そういった予想や期待によって自分の考え方が変わることはありません。自分は毎試合勝つために練習していますし、常にリングの中で最高の自分を見せることだけに集中しています」
――デング・シルバ選手は、前回の試合でアラッサン・カマラ選手を破り、K-1とKrushの2冠を手にしました。彼へのリベンジ、タイトルへの思いを聞かせてください。
「デング選手が2つのタイトルを獲得したことは、自分のモチベーションをさらに高めてくれました。自分は今でも、彼を含め世界中の誰とでも戦えると思っています。再びコンテンダーとしての立場を築き、最終的にもう一度K-1のベルトに挑戦することは、自分にとって大きな目標の一つです」
――今回も75kgでの試合になりますが、この階級がベストですか? 階級を含めて今後の展望を教えてください。
「今の自分にとっては、75kgが最も適した階級だと感じています。70kgの時と比べて、より健康的で、スピードもパワーも良い状態です。もちろん、このスポーツでは何が起こるか分からないので、今後の階級変更について『絶対にない』とは言いません。ただ現時点では、75kgが自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるベストな階級です」
――日本には、あなたの熱烈なファンがたくさんいます。最後に彼らにメッセージをお願いします。
「日本のファンの皆さん、本当にいつも応援ありがとうございます。たくさんの方々が自分を支え、歩みを見守ってくれていることに心から感謝しています。リングの上では全力を尽くし、皆さんに“見て良かった”と思ってもらえる試合を必ずお見せします」
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谷川「勝てば全部ひっくり返る」
――ヘビー級で戦っていた谷川選手が、前回は80kgまで落としての試合でした。試合をしてみていかがでしたか?
「体のキレや動きを振り返ると、80kgがやっぱりベストかなと思いましたね。めちゃくちゃハマった感じはありました。めちゃくちゃ調子良かったです」
――減量は何kgくらいだったのでしょうか。
「トータルで見たら20kgです。体重は100kgくらいあったので」
――20kg!そんなに減量したんですね。
「でも90kgまでは食生活を調整すれば落ちるので、実際の減量幅は10kgくらいですよ」
――試合の1週間前は何kgだったのでしょうか。
「85kgですかね。意外とビビりなんで、あんまり水抜きやりたくないんです」
――そうなると戻し幅は少なくなりますね。
「失敗したら終わりなんで。できるだけ水抜きはやりたくないです」
――ただ、今回は75kgとさらに5kg落としての挑戦になります。以前も75kgに挑戦して動けなかったのか、もう落とさないと明かしていましたよね。
「まあ、やっぱりチャンスをもらったっていうのもありますし。実は前回75kgまで落とした時は、半年かけて肉体改造に取り組むはずだったのが3ヵ月に短くなってしまって。単純に体重を落とすことはできるけど、身体を作り直す時間がなかったんです」
――そうだったんですか。では、以前に75kgで試合をした時は、フラフラな状態だったんですか?
「動き的には問題ないのかなと思っていたんですけど、水抜きしてみてフラフラしたというか。身体に力が入らなかったですね。すごく浮いてる感じがあって、力が全く入らなかったです」
――なるほど。今回はその時のリベンジというか、じっくり時間をかけて身体を作ってきたと。
「はい。80kgで試合をした後は、ずっと85、86kgをキープしています」
――今回のムシンスキー戦のオファーが来た時は、どう思ったのでしょうか。
「とんでもないやつを当ててくれるなというのと同時に、この階級で海外の選手と試合ができる日本人がいないと思いましたので、これはやらないといけないというかビッグチャンスかなと。K-1がさらに大きくなるためには、海外強豪と戦える日本人の対抗馬が必要だと思っています。だから僕がやるしかない、やると決めました」
――外国人が中心になってきている現在のK-1の中で、頼もしい発言ですね。試合が決まってからは、どんな反響がありますか?
「SNSで散々言われましたね(苦笑)。いやー、タイミングが悪くエイプリルフールに僕のカードが発表されたので、嘘だろ、冗談だろうみたいなことをめっちゃ言われたんですよね…」
――なるほど。エイプリルフールだから偽の情報を発信したと思われたと。
「その意味でも、今までの試合前の反響の中で一番あったかもしれないですね。Xの引用でアンチコメントばかりあって(笑)」
――それは酷い。
「でも、以前も話したかもしれませんが、意外とみんな見てくれているんだなっていうのは思いました。だったら、SNSをもっとフォローしてくれよとは思いますけど…。でも、自分の人気のなさも同時に痛感しましたね。期待されていないんだなーと」
――期待の裏返しかもしれませんよ。
「それは、自分が蒔いた種というか、今まで積み上げてきて外国人に勝てていないことが背景にあるのは分かっています。なかなか報われないなって思いますけど」
――ただ一方で、試合で全部ひっくり返せる可能性があるということですね。
「その通りです。だから絶対に負けられないです」
――ちなみに奥さんは、何て言っていましたか。
「ムシンスキ選手のことをよく分かっていないんだろうけど、強いんでしょう? みたいな感じでした。いつもK-1の舞台に弱いやつは出てこないと言ってるんですけど、反響が大きいので何かを感じているようです。以前、山口翔大君との試合後に“相撲”と揶揄された時よりも反響が大きいですね。日本人だから応援してくれるだろうと思っていたんですけど、なかなか現実は厳しいですよ」
――ムシンスキ選手は、日本でも人気がありますからね。
「彼は確かにかっこいいし、ファイトスタイルも面白いですもんね。それは分かります」
――ちなみに、ムシンスキ選手の評価は。
「もちろん、めちゃくちゃ強いと思っています。クリーンファイトのイメージもあり、いい意味でのワイルドさも感じます。正々堂々と戦ってる印象です」
――ムシンスキ選手の前回のデング・シルバ戦は、どう思いましたか?
「会場で見ていたんですけど、圧力で勝ったなと思ったら大逆転負けになって驚きました。その時は、まさか試合をするとは思っていなかったので楽しんでみていました」
――K-1は90kgか75kgの階級にチャンピオンがいますが、80kgはないんですよね。ちなみに90kgはティアン・ターザン選手、75kgはデング・シルバ選手がチャンピオン。90kgはサッタリ選手を倒した、ルーカス・アハテルバーグという怪物もいます。
「サッタリ選手が負けた姿を見てショックでした。僕はサッタリ選手に3回も負けているんで、もはや戦友だと思っているんですよね。で、今、実は一緒に練習をしているんです」
――あ、そうなんですか。
「多分、今日本で一番僕のことをわかっているのがサッタリ選手で、ずっとスパーリングしています。僕にとってのサッタリ選手はトラウマと思える存在で、彼がいなければK-1もKrushもタイトルを獲っているはずなんです。いつも目の前に立ちはだかってくるので、苦手意識もありました。でも、自分が75kgで試合をしていくことになれば戦うことはないと思うので、今は一緒にやらせてもらっています」
――ムシンスキ選手とは、どんな試合になりそうですか?
「僕が、どれだけ自分のやりたいことをやれるかということに尽きると思います。みんなに指摘されるのは、自分に自信がないんじゃないかということ。最近は、それをすごく自分でも感じるようになってきて。迷いがあるから、実力を出し切れていないんだろうなと」
――弱い自分が試合に出てしまっていると。
「そうだと思います。それを考えると、ムシンスキ選手はどんどん前へ出てくるファイターなので、相性的には最悪なのかもしれません。それを乗り越えることが、今回の試合のテーマです」
――とても明確ですね。
「自分にとっては、最悪であり最高の相手です。ここで勝てば、誰にも文句を言わせずにデング・シルバ選手とタイトルマッチをやらせてもらえると思っています」
――ムシンスキ選手を倒して、次はシルバ選手のタイトル挑戦したいと。
「大事な試合前に先を見てはいけないですが、チャンピオンになるために階級を落としていますので、そこは目指したい」
――ちなみにシルバ選手は、どんなイメージですか。
「リュウ・ツァー選手は、『進撃の巨人』と呼ばれていますけど、シルバ選手はその小さいバージョンのイメージですね。小さいけど、とんでもなく強い」
――谷川選手がムシンスキ選手を破り、シルバ選手にも勝ってベルトを巻いたら、とんでもリベンジになりますね。
「勝てば全部ひっくり返るのが、格闘技の醍醐味。それをするために、僕は格闘技を続けています。おそらく僕が負ける姿を見たい人は多いかもしれませんが、ムシンスキファンがひっくり返るような試合をしますので、楽しみにしていてください」