2019年11月22日(金) シンガポール・インドアスタジアムにて、ONE Championshi「ONE: EDGE OF GREATNESS」が開催された。
メインは、ONE Super Seriesムエタイ世界バンタム級タイトルマッチ。リングでオープンフィンガーグローブをつけたONE無敗の強豪タイ人同士の対戦が実現した。王者ノンオー・ガイヤーンハーダオ(タイ)と挑戦者セーマペッチ・フェアテックス(タイ)の対戦。
ノンオーはシンガポールのメガジム「Evolve MMA」に所属する32歳。259勝54敗1分の驚異的な戦歴を誇り、ルンピニーでスーパーバンタムからライトまで四階級制覇、ラジャダムナンのベルトも獲得している、まさにムエタイの伝説的存在だ。2019年5月のバンコク大会では、元SB世界スーパーライト級王者の鈴木博昭を2Rに腓骨を骨折させるなど、強豪ぞろいのONEで3連勝中。
対するセーマペッチはMTGP(ムエタイ・グランプリ)ウェルター級世界王者。4月大会ではLion Fight世界ライト級王者オグニエン・トピッチ(セルビア)を判定で下し、ONEムエタイの超新星と呼ばれている。
試合は、初回から得意の右ミドルを効かせていくノンオーが2Rに右ストレートを当ててセーマペッチを下がらせるとコーナーに詰めての右アッパーの連打でダウンを奪取。
さらに4Rには、右ミドルで腕にダメージを負わせたノンオーが、互いに見合った刹那、いきなり中央を打ち抜く右ストレートをヒット。後方にもんどりうって倒れたセーマペッチを見て、レフェリーが試合終了を告げた。
かつてノンオーに判定で敗れている鈴木が、試合後SNSで「あのミドルと右ストレートのタイミングが過去イチ読みづらい。ミドルも強いし巧いんだけど、正直威力ヤバいなと思ったのは右ストレートだった」と証言するフィニッシュブロー。
上り調子のセーマペッチをマットに沈めたノンオーは、メインをKOで締めると、「どうだいシンガポール! セーマペッチはタフでスマートでスーパーアスリートだった。勝ててよかったよ」と挨拶した。
▼ONE Super Seriesムエタイ世界バンタム級選手権試合 3分5R○ノンオー・ガイヤーンハーダオ(王者/タイ/65.8kg)[4R 1分46秒 KO] ※右ストレート×セーマペッチ・フェアテックス(挑戦者/タイ/65.2kg)※ノンオーが3度目防衛に成功
オープンフィンガーグローブ&リングでのムエタイ。タイ人同士のONE無敗対決。サウスポー構えのセーマペッチに、オーソドックス構えのノンオー。
1R、右ストレート&右ミドルはノンオー! ブロックするセーマペッチも左ミドルを軽く返す。右ミドルから組みにいくノンオー。対処するセーマペッチ。構えて沈み込んでから右ミドルを当てるノンオー! さらに右ロー。セーマペッチも左ボディストレートを当てる。しかし左ミドルの打ち終わりにノンオーが右ストレートを当てる。速い右ローはノンオー。さらに右ヒジがかすめる。ノンオーの右ミドルに左を返すセーマペッチ。
2R、右を伸ばして右ミドルを蹴るノンオー。さらに右ハイ。ブロックするセーマペッチだがノンオーのリズム。セーマペッチも左ミドルを蹴り返す。
左の奥足ローはセーマペッチ! そこに右ストレートを狙うノンオー。右インローはノンオー。左ローを蹴り返すセーマペッチ。しかし右ミドルはノンオー!
一気に畳かけ右ストレートを効かせると、下がるセーマペッチにノンオーは右アッパーの連打! ダウンしたセーマペッチは立つ。コーナーに詰めるノンオーは左右ラッシュから右ヒジ、右アッパー! 前方にダウンしたセーマペッチだが、なんと立ち上がる。ゴング。
3R、右ミドルで前に出るノンオーに左ミドルを返しにいくセーマペッチ。さらに左インロー! ノンオーの右ミドルをスウェイでかわして左を打ち込む! 首相撲ヒザはセーマペッチ。
離れて右ミドルはノンオー、さらに右ストレート! 蹴りの打ち終わりに左ストレート、左ヒザを当てるのはセーマペッチ! 右ミドルのノンオーにワンツーも当てる。しかしノンオーも右ストレートを返す。
4R、右ミドルから入るノンオーは軸足払いでセーマペッチをこかす。さらに右ミドルをガード上に叩き込むノンオー。ボディストレートも。セーマペッチも左の蹴り返しを入れ、左ボディストレートも。
ノンオーは右ミドル! 腕で受けたセーマペッチだが、互いに見合った刹那、ノンオーがジャブは打たずいきなり中央を打ち抜く右ストレート! 後方にもんどりうって倒れたセーマペッチを見て、レフェリーは試合終了を告げた。
メインの激闘を見事にKOで締めたノンオーは、「どうだいシンガポール! セーマペッチはタフでスマートでスーパーアスリートだった。勝ててよかったよ」と挨拶した。
また、ノンオーの試合を、現地でAbemaTVのゲストコメンテーターとして生観戦したSKE48の松井珠理奈はメインの迫力に興奮。
同じく現地解説の青木真也との大会振り返りのなかで、「これは生で観戦してほしい! 私はムエタイがお気に入りで、あのビシッっていう音が好きなんです。試合はAbemaTVで振り返って見たい」と、キックの練習経験を持つ松井ならではの印象を語った。芸能活動を一時休止していた時期には、ONE大会サポーターとしての活動も控えていた松井だが、今回の現地リポートを期に「また来ます!」と元気よく復活した様子を見せていた。
さらに、メイン後には、EVOLVE MMA Fight Team入りを果たし、シンガポール・インドアスタジアムで今大会を生観戦した澤田龍人も登場。12月6日のONE Championshipクアラルンプール大会に向け、「デビュー戦に続いていい勝ち方をしたいです。相手は強い選手(※ボカン・マスンヤネ。レスリングで実績を持ち、MMAでもアマチュア6戦無敗、プロでも6戦無敗。PANCRASEで驚異的な身体能力を発揮)ですが、同い年(23歳)なのでいい勝ち方をして早い段階で王者に挑戦したいです」と、意気込みを語っている。
▼ライト級(※77.1kg)5分3R○アミール・カーン(シンガポール)[判定2-1]×イヴ・ティン(マレーシア)
1R、ともにオーソドックス構え。圧力かけるティンに突き放すカーン。左を振り前に出るティンに右で差してスタンドで横につくカーンが崩し。立つティンにカーンは深追いせず。
シングルレッグのティンに立つカーン。ティンの組みに再び脇を潜り崩すもスタンド勝負を望む。ティンは右で差してテイクダウンを狙うが四つに組むカーンは体を入れ替え右ヒジ! ティンのバックを狙うが落としたティンが上に。ゴングに上体を上げるとティンの顔が真っ赤に出血している。鼻の右側をカットか。
2R、オーソから左ハイで前に出るティン。しかし、右で差すもコーナー背に凌ぐカーンは突き放す。右フックのティンもいなすカーンはスタンドバックにつく。右フックを振るティン。しかしカーンは左ジャブ、アウトボクシング。右を振って上体を上げさせてコーナーにつめてシングルレッグテイクダウンはティン。しかしガードから立つカーンは、ロープを背にサークリング。
3R、距離を取り右ローを2連打するカーン。互いに左の蹴りで牽制後、右で差して組むティンだが、正対し体を入れ替えるカーン。しかし手数が足りない。詰めるティンは右から左、さらに右! 下がるカーンだが左の差しで体を入れ替え離れる。詰めて頭を下げて触りに来たカーンに左ヒザをカウンターで当てるティン! 回るカーンは左ハイ牽制も「モアアクション」を告げられる。左右振り右で差してテイクダウンはティン! すぐに立つカーン。
判定は2-1スプリットで1Rにヒジでダメージを負わせたカーンがEVOLVEジムの地元で勝利した。
▼ムエタイ・バンタム級 5分3R○トロイ・ウォーセン(米国)[2R 4分56秒 TKO]×チェン・ルイ(中国)※68.45kg
▼ライト級(※77.1kg)5分3R○ラフール・ラジェ(インド)※78.85kg[2R 3分00秒 リアネイキドチョーク]×ファカン・チーマ(パキスタン)※80.95キロ
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▼ストロー級(※56.7kg)5分3R○デェダムロン・ソーアミュアイシルチョーク(タイ)[3R 1分21秒 TKO] ※首相撲ヒザ×ムハマド・イムラン(パキスタン)
▼女子フライ級(※61.2kg)5分3R○コルビー・ノースカット(米国)[判定3-0]×プトゥリ・パドミ(インドネシア)
元UFCで現在ONEに参戦中のセージ・ノースカットを弟に持つ姉のコルビー。アンジェラ&クリスチャン同様に姉弟でONE参戦を果たした。コルビーは首里流空手の世界王者でキックボクシングの経験も持つ。
大学を卒業後、2017年にMMAデビューも2R TKO負け。今回、テキサス州からカリフォルニア州に引っ越し、TJ・ディラショーが所属する『Treigning Lab』で練習。コーチはマーク・ムニョス、サム・カラビッタ、フアン・アーチュレッタ、そして夫のレイモンド・ダニエルズらと練習を積んできた。インドネシアのプトゥリ・パドミ(プロ1敗)を相手にONEデビュー戦に臨む。
試合は長身でリーチ・コンパスで勝るコルビーがジャブ・右ストレートのワンツー、前蹴り・右ハイなどで距離を支配。1Rには腕十字を極めかけ、草刈りで倒すなど、見せ場を作り、判定3-0で勝利した。
▼ストロー級(※56.7kg)5分3R○アレックス・シウバ(ブラジル)[2R 4分45秒 腕十字]×パン・シューウェン(中国)
ボディロック、大内刈りでテイクダウンを奪うシウバは、マウントから脇をこじ開けると、右腕を脇下につかみ、左手を掴んで内側に流してから右足を頭にかけて三角絞めを狙いつつうつ伏せになりながらヤスケビッチ式に腕十字へ。足も手繰りシューウェンを前転させて上を向かせてタップを奪った。
▼ONEムエタイ フェザー級○ペットモラコット・ペッティンディー・アカデミー(タイ)[2R 1分48秒 KO] ※左ヒザ蹴り×チャーリー・ピータース(英国)
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▼バンタム級(※65.8kg)5分3R○上久保周哉(日本/TRI.H studio/頂柔術)[判定3-0]×ブルーノ・プッチ(ブラジル/Evolve MMA)
ONEバンタム級(※65.8kg)で上久保周哉(TRI.H studio/頂柔術)とブルーノ・プッチ(ブラジル)が対戦。
MMA10勝1敗1分の上久保は2019年7月からONEに参戦し、スノト、ムハマド・アイマン、キム・デファン相手に3連勝中。8月大会にも名を連ねていたが、右目の怪我により直前にドクターストップがかかり、今回が9カ月ぶりの試合となる。
対するプッチは2010年のノーギワールド優勝者。MMA7勝3敗で現在2連勝中。2018年11月にシャオ・シェにギロチンチョークで一本勝ち、2019年1月に朴光哲にリアネイキドチョークで一本勝ち後、グリーンカードの取得のため米国から出国できず、試合から遠ざかっていた。10カ月振りのファイトは1階級下げたバンタム級。10月日本大会で勝利した妻のアンジェラ・リーに続き、3連勝を飾ることができるか。EvolveのTシャツを着こんだプッチのセコンドにはアンジェラとクリスチャンのリー姉弟がつく。
リングでの試合。1R、いきなり中央に走り込み跳びヒザを狙う上久保。受け止めたプッチはすぐに圧力をかけて左で前に出る。続く右をかわしてダブルレッグに入る上久保だが、がぶるプッチはバックを狙うが、左手を胴に回し、バックを阻止した上久保は、ロープに押し込み、右足へハイクラッチのシングルレッグへ。右腕でオーバーフックし上久保の上体を起こすプッチ。
そのまま右をオーバーフックして引き込んだプッチは三角絞め狙いへ。ロープの1段目と2段目の間に頭を出すプッチ。腕と頭を抜いた上久保はインサイドからパウンド。しかし、プッチも腰を逃がして左で小手に巻いて立つと、上久保は今度は右で差して左足にシングルレッグでコーナーに押し込んで右足をかけにいく。
プッチのアゴ下に頭を着ける上久保。左でオーバーフックしクラッチを切るプッチ。上久保は空いた左手でプッチの顔面に細かいパンチを入れていく。四つに組み直しヒザを突くプッチ。ダブルレッグに入りクラッチを組むと上久保をリフトしテイクダウン! ヒザを着いて着地した上久保のバックに回り、リアネイキドチョークを狙うが、上久保も背後のプッチの右手を手繰って前方に落としていく。
トップを取った上久保。コーナー背に左で差して立とうとするプッチを引き寄せ、両足でプッチの両足を挟み、細かいパンチ。足を抜いたプッチはディープハーフガードから右で差して尻着けて立とうとするが、そこに上久保は右ヒザ! プッチはシングルレッグに。そこは足を後方に飛ばして切ろうとする上久保。しかしプッチもシングルレッグから立ち上がり、再びダブルレッグでクラッチ組んで持ち上げてテイクダウン!
背中を見せて亀で着地し立とうとする上久保にバックに回るプッチだが、中腰で両足はかけさせない上久保は落ちたプッチの右足を手繰り、ダブルレッグへ。コーナー背に座るプッチは足を取りにいくが、そこに上久保はがぶりながらヒザを連打! もらいながら立つプッチ。上久保のシングルレッグに、シングルバックで足をかけてシートベルトに組んでバックを狙う。上久保が足を引いてプッチに尻餅を着かせたところで1Rが終了。
2R、1R同様に中央に走り出る上久保。細かい左右で迎え撃つプッチだが構わず押し込む上久保が早々にシングルレッグでコーナーに押し込みダブルレッグテイクダウン! 右で差して立とうとするプッチを左で小手に巻き、右で頭をクォーターネルソンで押さえてヒザを突く。潜りを狙うプッチにヒザで突き放す上久保。顔面にもらうプッチはそれでもハーフガードは解かず、スイープを狙う。
足を抜きがぶる上久保にヒザを立て中腰から立ち上がろうとするプッチ。そこにヒザを突く上久保。プッチが頭を抜くと上久保はすぐにダブルレッグ、シングルレッグへ。常にアタックを続ける上久保。プッチはコーナー背に頭を押さえてキムラも一瞬狙うが、上久保はシングルレッグテイクダウン! プッチに背中を着かせると細かくパンチ。しかしプッチも左足を上久保の右足に外からかけて遠い方の足を手繰ってテイクダウン!
ここもすばやく亀から立ちを狙う上久保。汗が大量に流れるなかバックに乗るプッチを想定しながらすぐさま立ち上がりダブルレッグテイクダウン! ガードを取るプッチに強い左右のパウンド! プッチの蹴り上げをさばいてサイドに回ると、そこにプッチもシングルレッグへ。すぐに両足を後方に飛ばして切る上久保。逆にダブルレッグからシングル、再度ダブルレッグでクラッチしテイクダウン! プッチもすぐに中腰まで立つ。
3R、1R、2Rともに猛アタックを続けた上久保。スタミナはいかに。3Rのゴングに走りこんで中央を取った上久保。プッチの左の打ち終わりに右フックを打ち込む。さらにダブルレッグからシングルレッグに移行し、右足を外からかけて頭をアゴ下につけて空いた左手でプッチの顔面にパンチする。
右で差し返しにきたプッチの右腕を巻き込んだまま右足にシングルレッグは上久保。今度は右手でパンチを入れながらダブルレッグへ。右で小手に巻き、前方に送り出して投げを狙うプッチ。正対すると上久保はすぐにダブルレッグ→シングルレッグへ。コーナーを背にするプッチ。上久保は尻下でクラッチを組むと持ち上げてテイクダウン! 両足を挟み、頭を胸に着けて左手で顔面を狙う。
背中をついたプッチはキムラ狙いから背中を預けて立つことを選択。そこにバックに回る上久保。前転してついてきたところを正対するプッチ。エビで足を戻すプッチ。中腰からパウンドを狙う上久保に下から蹴り上げを当てる。インサイドガードに入っていった上久保。
プッチはクローズドから腰を切って得意の腕十字へ! しかし頭にかけさせない上久保はインサイドにステイ。上体を立てようとするプッチを寝かせてプッチの下からの腕十字を警戒しながらパウンド! 立ち上がり、プッチの蹴り上げをさばくとサイドへ。すぐに腹ばいになり立とうとするプッチをがぶりヒザを5連打する上久保! プッチが頭を抜いて立ったところでゴング。
コーナーに戻る上久保は長南亮氏に両手の親指を立てて自信の表情。判定は3-0で、組み勝ち、がぶりからのヒザも当てた上久保が勝利。強豪相手に値千金の4連勝で上位戦線に名乗りを挙げた。
▼ONEムエタイ フライ級(61.2kg)3分3R○ニューイェン・トラン・デュイ・ニャット(ベトナム)[2R 0分30秒 KO] ※右ハイキック×渡辺優太(日本/PKセンチャイムエタイジム)
WPMF日本、WMC日本、J-NETWORK、MA日本キック、MuayThaiOpenとスーパーバンタム級で5本のベルトを獲得した渡辺と、WMF世界のベルトを5度獲得したベトナムのニューイェンの対戦。
渡辺は9月に日本で行われた「Road to ONE:CENTURY」で内藤大樹に1R KO負けも本戦出場に。試合は1Rにニューイェンが右ハイキックで2度ダウンを奪い、2Rにも右ボディから右ハイキックと上下に散らしたニューイェンが、2R0分20秒 KO勝利。ニューイェンは9月のベトナム大会に続く2連続KO勝利。渡辺はONE初陣を飾ることはできなかった。
▼ONEムエタイ・フェザー級 3分3R○リアム・ノーラン(英国)[判定3-0]×ブラウン・ピナス(オランダ)