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インタビュー

【UFC】ジョシュア・ヴァン「なんで皆バカみたいにテイクダウンに行くんだろうって」×平良達郎「僕はただのグラップラーじゃない」=5月10日(日)『UFC328』

2026/05/07 15:05
 2026年5月9日(日本時間10日)米国ニュージャージー州ニューアーク・プルデンシャル・センターで開催される『UFC328』(U-NEXT/UFC Fight Pass配信)で「UFC世界フライ級選手権試合」(5分5R)として、王者ジョシュア・ヴァン(ミャンマー)と挑戦者・平良達郎(THE BLACKBELT JAPAN)が対戦する。6日(日本時間7日)、両者はメディアデーのインタビューに応じた。  当初4月11日(同12日)の『UFC 327』マイアミ大会で行われる予定だったこのタイトルマッチは、ヴァンが負傷欠場で1カ月後の今回のニューアーク大会に延期されていた。  日本でライブビューイングも行われる「平良vs.ヴァン」はUFCの歴史上、初めてアジア人男性アスリート同士によるタイトルマッチであり、さらに、2000年代生まれ同士の王座戦としてもUFC史上初。アジア人男子初のUFC世界王者のヴァンが勝てば王座初防衛、平良が勝てば日本人初のUFC世界王者誕生となる。 ヴァン「タックルに来たらノックアウトしてやる」  個別インタビューに先立って公開された『UFC 328 Countdown』では、ヴァンと平良の生い立ちから、UFCの頂点までの軌跡が紹介されている。  ヴァンは、「僕はミャンマーで生まれた。父と母は軍事政権下のミャンマーで苦難を経験した。だから僕が12歳の時にアメリカのヒューストンに来たんだ。これが“フィアレス(恐れ知らず)”のボクシングだ。本物だよ。ここに来た当初、僕は英語が話せなかった。みんなが僕をバカにし始めたけど、“そんなことはさせない”と思った。それが僕の最初の喧嘩だった。そこから戦うことが楽しくなって、自分から喧嘩を売るようになった。でも、ジムの門を叩いた日から人生が変わり始めたんだ。もう外へ遊びに行きたくない、バカなパーティーもしたくない。今はジムに行って、家に帰って寝るだけだ。MMAのキャリアを始めた時、UFCに行けるなんて思っていなかった。ただ格闘技が好きだからやっていたんだ。コーチに『僕ら本当にUFCに行けると思う?』って聞いたら、『もちろんだ、試合に勝ち続ければ行ける』と言ってくれた。『よし、行くぞ』って覚悟を決めたよ」と、過酷な少年期を経て、MMAに出会い人生が変わったことを明かしている。  9割以上がキリスト教徒というミャンマーのチン族出身で、母国では迫害も受けてきた。米国に移住してからも敬虔なクリスチャンとして、後進に希望を与えている。 「ベルトが欲しかった。それがすべてだった。 2025年、聖書のローマ人への手紙8章31節を掲げた。『もし神が私たちの味方であるなら、誰が私たちに敵対できるでしょう』。2025年は自分たちが天下を獲ると言ったし、実際に獲ったんだ。僕がUFCデビューした時、パントージャは王者だった。彼は非常にアグレッシブだからタフな試合になると思っていた。序盤にローキックを食らった時、“二度と蹴らせない”と思ったんだ。彼が二度目のキックを打とうとした時、僕は彼を突き飛ばした。その時、彼の腕が折れたんだ。偶然じゃない、僕が仕掛けたんだ。黒帯なら受け身の取り方くらい知っているべきだ。  パントージャとはすぐに再戦したいけど、彼は怪我を治さなきゃいけない。彼を永遠に待つつもりはないよ。僕はアクティブな王者でありたいし、全員を倒したい。だから次の相手だ。僕は“フィアレス”だ。誰が相手でも戦う」と、平良戦を受けた思いを語る。  日本からの挑戦者について、「彼はボディロックが得意で、一度寝かせたらサブミッションを狙ってくる。トップコントロールもいい。でも、僕のボクシングの方が上だ。彼は僕と打ち合いたくないはずだ。タックルに来るだろう。でも、来たらノックアウトしてやる。フライ級で一番危険なのは俺だ。僕は史上最高(GOAT)を目指している。達郎より僕の方が上だ。ボコボコにしてやるよ」と、テイクダウンを許さず、スタンドで仕留めると自信を見せる。 「ベルトを掲げた時、それをお母さんに渡した。ミャンマーの人々、今や世界が僕たちのことを知っている。お母さん、愛してるよ。彼女、笑顔が止まらなくて、ベルトを離そうとしなかったんだ(笑)。完璧な瞬間だった。母は素晴らしい女性だ。母の面倒を見るのが僕のすべてだ。家族全員で苦難を乗り越えてきた。でも今、僕らにはベルトがある。そして最高の部分はここだ。(ミニチュアのベルトに)ついに僕の国旗(ミャンマー)がここに入った。これは素晴らしいことだよ。自分の国を代表し、ミャンマー初の世界王者になれたことを誇りに思う。本当に素晴らしい。二度と同じような物語は生まれないだろう。たくさんの子供たちや親から連絡が来るんだ。『子供に格闘技を習わせたい』『国を代表して、自分の力で人生を良くしたい』って。それを見ると、“ああ、これこそが僕が戦っている理由だ”と思う。ミャンマー人初のUFC王者だけど、自分が最後じゃない。彼らを信じているよ」と、後に続くもののために戦う、と語る。 平良「彼にない柔術スキルを持っているし、打撃でも戦える」  対する平良について、UFCは「ミャンマーがUFC王者を輩出した一方で、もう一つのアジアの国が歴史的突破口の直前に立っています。日本がMMAというスポーツに与えた影響は多大ですが、まだUFC王者は生まれていません。今、その期待はフライ級、平良達郎の肩にかかっています」と紹介する。  沖縄のTHE BLACKBELT JAPANで、佐山聡、中井祐樹、鶴屋浩ら師匠の写真が映し出されるなか、松根良太代表は、「『修斗のチャンピオンになった人間がUFCのチャンピオンになる』──それを目標に平良を育ててきました。先人たちの思いを背負って平良がUFCタイトルを日本に持って帰ってくれることを願っています」と、王座戦への思いを語る。  野球から格闘技へ、自宅での幼き平良兄弟のスパーリングの様子とともに、平良は「兄の後を追って始めただけでした。でも、勝つ喜びを知ってから変わりました」という。  修斗で10戦無敗、UFC8勝1敗でチャンピオンシップにたどり着いた。 「ジョシュア・ヴァンは、僕がずっと戦いたいと思っていた相手でした。素晴らしいボクシング技術を持っている。彼のハンドスピードだったりは警戒しないといけない。僕がヴァンに対して優位なのは、彼にない柔術スキルを持っていること。柔術を始めた頃からバックを取るのが好きだったし、僕のスタイルは変わらずフィニッシュを獲りに行くスタイルで、ヴァンに挑んでパウンドKO、彼をチョークだったり、どれかの形でフィニッシュして、ベルトを獲りたいと思います」と、フィニッシュしての戴冠を目指す。  今回のフライ級王座戦が「ストライカーvs.グラップラー」と言われていることについて平良は、それだけではないMMAの進化を見せるつもりだ。 「新しい自分の姿もあるのでその姿でヴァンに挑んで、ほんとうに向き合って打撃の攻防をするのがすごい楽しみです。(ヴァンの「平良はタックルに来るだろう。でも、来たらノックアウトしてやる」の言葉に)僕はただのグラップラーじゃない。打撃でも戦える。ジョシュア・ヴァンは間違いなく過去最強の相手です。でも、自分が一番強いと証明します」と、スタンドから始まる試合で、立ち合う瞬間を「楽しみ」とした。 「UFCのベルトを僕が日本に持ってくる。沖縄から世界へ。自分がベルトを獲ることで、日本の格闘技がもっと盛り上がってほしい」と、世界の頂点に立つことで、日本格闘技の復興をも願う。  日本時間7日のメディアデーでの一問一答は以下の通りだ(※平良達郎との一問一答はこちら)。 [nextpage] ジョシュア・ヴァン「アジア男子同士の初の王座戦は、アジアのコミュニティにとっても素晴らしいことになる」 ──本来なら4月11日のマイアミで試合を見る予定でしたが、少しアクシデントがあったということですよね。こちらの認識が間違っていたら訂正してほしいのですが、身体の状態は今どうですか? そして今回のカードの方がファンの注目度も高く、より多くの目があなたの試合に集まるという意味では、結果的にベストな形になったとも言えるのでしょうか? 「そうだな。いつも言ってるけど、すべてには理由がある。今はもう100%、準備できてるよ。それにポスターも前より良くなったしね」 ──平良達郎(フライ級3位)戦への準備期間がかなり長く感じていますか? もともと数年前、まだお互いにランキングが上がっていく途中に一度組まれていて、その後マイアミでも組まれ(2024年6月のUFC 302)、今度はニューアークで組まれています。あなたの中では、彼に向けた長い準備期間がずっと続いているような感覚なのでしょうか? 「最初に組まれたときは、俺にとってはちょっとショートノーティスみたいな感じだった。だから彼に向けてしっかり準備する時間はなかったんだ。でも今回は、7週間、いや12週間くらいかな。そういう時間があった。だから今回は長いキャンプになったね」 ──タイトルマッチ前までは毎月、あるいは隔月くらいのペースで試合をしていた印象があります。その後、アレシャンドレ・パントージャ(フライ級1位)とのタイトルマッチがあり(※パントージャ戦=2025年12月『UFC 323』で第1R0分26秒TKO勝ち)、さらに今回も少し長い間隔が空きました。こうした長めのトレーニングキャンプはあなたにとってプラスになっていますか? 「今みたいに長い期間があると、回復する時間もあるし、そういう部分は大きいね。技術に取り組む時間もあるし、リカバリーにも時間を使える。だから身体も強くなってると思う。そういう感覚はあるよ」 ──平良をマイアミのカードに残して、暫定王座戦を組まれてしまうのではないかという不安はありましたか? それとも、この対戦カードを維持したまま日程だけを変えてほしいと思っていましたか? 「いや、UFCのハンター(キャンベルCBO)から電話が来たとき、俺はすぐに言ったんだ。『次の月でいい、って。あと数週間くれれば、俺たちはやれる』ってね。だからハンターとUFCには感謝してる。かなり早い段階で組み直してくれたからな」 ──平良のスキルセット全体をどう見ていますか? 外から見ると、かなり独特なテイクダウンを持っている印象があります。バックマウントの形から相手を引きずり落として、自分の体重の使い方も非常に上手い。事前番組では、彼の方があなたより柔術が上で、そこが自分の見せ場になると言っていました。彼のスキルセット全体をどう評価していますか? 「彼は総合的にいいファイターだと思う。みんな彼のグラウンドの技術を知ってるけど、打撃もなかなか上手い。ただ、彼の試合を見ると、なんでみんなバカみたいにテイクダウンに行くんだろうって思うんだよ。そこがこれまでの対戦相手のミスだと思う。平良の方がグラウンドに自信があるんだから、なんでわざわざそこに付き合うんだって話だろ。だから今回の試合では、俺の好きなスタイルで戦う。ただ、もしグラウンドに行ったとしても、そこでも俺が勝つよ」 ──試合以外での生活はどうですか? これまで何年も、国を背負いたいという話をしてきて、今は自分の国を代表し、ベルトも持っています。 「人生は最高だよ。俺はもともと自分のことを王者だと思ってたからね。だから何も新しいことじゃないんだ」 ──(平良と同門の)鶴屋怜との試合は、平良との試合に向けた準備になったと思いますか? 「そうだな。すべての試合がこの瞬間に向けた準備になってると思う。ただ、平良と鶴屋はまったく違うファイターだよ(※鶴屋戦=2025年3月『UFC 313』で判定勝ち)。だから今は、達郎のことを考えているよ」 ──このテストをクリアした場合、次はパントージャとの再戦になると思いますか? それとも堀口恭司(フライ級5位)対マネル・ケイプ(フライ級2位)の勝者、あるいはロニー・カヴァナ(フライ級6位)でしょうか。次に誰と戦いたいですか? 「平良に勝った後のことは、UFCが決めることだよ。次に誰と戦うかはUFCが決める」 ──堀口対ケイプはどのような試合になると思いますか? 「分からないな。今は平良のことしか頭にない。だから彼らは彼らでやればいい。いつか俺たちもやれるよ」 ──最後に、パントージャについて何か聞いていますか? 彼のケガや復帰時期について、何か情報はありますか? 「何もない。彼が投稿したもの以外は何も知らないよ」 ──今回の試合は、2000年以降に生まれたファイター同士によるUFC初のタイトルマッチです。UFCの歴史に残るような試合の一部になることを、どう感じていますか? 「馴染みがある感じだね。2000年代生まれの相手と戦うのは初めてじゃないから(鶴屋怜は2002年生まれの23歳)。これで2回目だ。ただ今回は、それがたまたまタイトルマッチになったってことだね。それにアジア人同士でもある。アジアのコミュニティにとっても素晴らしいことになると思う」 ──これはUFC史上、アジアのコミュニティにとって最大の試合だと思いますか? 「間違いないね。アジア人男性同士がタイトルマッチで戦うのは初めてだろ? だから間違いなくそうだと思う」 ──所属ジムであるフォーオンス・ファイトクラブの名前を広げていけていることについては、どのような意味がありますか? あそこから名前を上げ、自分の道を切り開くファイターたちも出てきていますが、あなたはその中でも最初に大きく名前を売った存在です。 「最高だよ。もちろん、ヒューストンからUFCに行った最初のファイターはダニエル・ピネダだから、彼にはリスペクトしてる。そして、結局はコーチたちのおかげで強くなれているんだ。それにチームメイトにも感謝してる。みんなが毎日、俺たちを押し上げてくれる。あそこには良いファイターがたくさんいるから」 ──パントージャが正しい形で受け身を取るべきだったとあなたは言っていましたが、それでもタイトルを獲得した形について、いまだにコメント欄で批判している人たちもいます。そういう声にイラつくことはありますか? それとも、もう気にせずネガティブなものは遮断していますか? 「いや、俺は好きだよ。話題にしてくれているってことだからね。それはいいことだと思ってる」 ──タイトルまでのこの道のりで、あなたは常にアクティブであること、短い間隔で試合をすることを誇りにしてきましたよね。4月に試合をしないよう、チームがあなたを説得しなければならなかったとも話していました。どんな時でも出場するというマインドセットを持っているあなたにとって、それはどれくらい難しいことでしたか? 「そうだな。UFCも分かってると思うし、パントージャ戦のときだって、俺はケガを抱えて戦った。今回は俺にとっても初めてのことだったけど、コーチたちがそう判断したんだ。ダニエル・ピネダがノーって言うなら、それは相当なことだよ。ダニエル・ピネダがどんな人か分かるだろ。彼は絶対に試合を断らないタイプだからね」 ──あなたの周りに、そういった人がいることは重要ですか? あなたはまだとても若いですし、長いキャリアを築いていく上で、今の判断が長期的に影響すると思います。 「そうだな。俺はいつもコーチを信じてる。だから彼らが言うことを、俺はやるだけだよ」 ──事実なのか噂なのか確認したいのですが、あるインタビューで聞きました。あなたはかなり最近までMMAを知らなくて、マットでのトレーニング歴もまだ5年くらいだと。本当ですか? それとも、もっと長いのでしょうか? 「そうだね。俺はコナー・マクレガーとメイウェザーの試合(2017年8月)を見るまでMMAが何かも知らなかった。2018年だったかな、その頃に初めてジムに入ったんだ。でもそこはファイトジムじゃなくて、家族向けのフィットネスジムみたいな場所だった。そこから2020年に、本当のMMAコーチに出会って、トレーニングしてもらうようになった。だからMMAを始めたのは2020年だね」 ──王者の地位までたどり着けた要因は何だと思いますか? あなた自身の意欲、野心、ハート、あるいはご両親から受け継いだものなのでしょうか? 「自分を信じることだね。それに、叔母は俺の人生ですごく大きな存在なんだ。最初に俺が戦いたいって話したとき、まだトレーニングも始めていないのに、彼女は俺を世界王者として扱ってくれた。インタビューを見始めたり、いろいろ準備させてくれたりしたんだ。いつか王者になったとき、人前でどう話せばいいか分かるようにってね。だから叔母には本当に感謝してる」 ──あなたと平良は、メインイベントの2人とは性格的にかなり違うタイプですよね。このカード全体の盛り上がりをどう感じていますか? それからショーン・ストリックランド(ミドル級3位)とハムザト・チマエフ(ミドル級王者)のやり取りについてはどう見ていますか? 「メインイベントのことは分からないな。今は平良のことしか頭にない。ただ試合が楽しみだよ」 ──今週は普段と違う感じはありますか? 彼らの周りには大きな警備体制もありますよね。ホテルの周辺などで、警備が強化されていると感じることはありますか? 「いや、俺には同じに感じるよ。違いは見えないし、特に何も違うとは感じないね」
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