一夜明け会見全文=井上尚弥「僕は中谷選手のパンチでは倒れないなという感覚はあったので、接近戦で来たとしてもまた違った展開で試合は流れていったと思う」
大橋会長 まだ昨日終わったばっかりでその余韻が残ってる感じですけども、5万5千人超満員の中、2人とも素晴らしい試合をやってくれて、対戦相手の中谷潤人選手、井岡一翔選手あっての超満員だったと思うので、本当に出場選手には感謝申し上げます。またチケットも完売いたしましたし、視聴数の方もボクシング・格闘技全てで多分トップだったと思いますので、本当にこれも皆様のご協力の賜物です。本当にありがとうございました。
――7度目の防衛おめでとうございます。
「ありがとうございます」
――東京ドームでの5万5千人超満員の中で日本人対決という世紀の一戦を制したわけですけども、一夜明けて率直な心境を教えてください。
尚弥 ひとまずホッとしてるのと、こうして一夜明け会見を拓真と2人で迎えられたっていうのが、戦う前から2人で話してた『絶対に2人で勝つぞ『』っていう約束も果たせましたし、本当に今日2人でここに出席してることを嬉しく思います。
――昨日の試合を振り返っていただいて、ラウンド中にはお互い笑顔を見せるようなシーンもあり、我々的には見ていて世界最高峰の戦いを楽しんでいるというような印象も受けたんですけれども、改めて試合を振り返ってみていかがですか。
尚弥 中谷選手の技術だったり気迫だったり、そういうものを感じながら戦っていたし、逆に向こうも多分そういう気持ちだったと思うので、自然とディフェンスからオフェンス、オフェンスからディフェンス、そういったお互いが打っても当たらない空間っていうものを多分お互いが楽しんでいたと思うので、あれはもうそこから自然と出た笑顔だったかなと思います。
――判定結果を見ても多分井上チャンピオンがこれまで判定勝利した相手の中で1番競った相手だったと思うんですけども、中谷選手ともう1度戦ってみたい思いがあるのか、それともそれよりも次のステージに行きたいのか、今いかがでしょうか?
尚弥 うーん、どうですかね。別に僕的にはそういう望む声があるなら第2弾というか、そういったのも全然ありかなと思いますし、逆にまた違うステージに行くっていうのも、選択肢の1つではあると思うので、そこは大橋会長ともしっかりと話し合って決めていきたいと思います。
――メインの試合について、井上真吾トレーナーにも伺います。様々なプランを想定して、様々な引き出しを用意して挑んだ試合だったかと思いますけれども、試合の中でポイントを奪っていくラウンドであったり、あとは倒しに行くようなプランもあったかと思うんですけども、中谷選手の出方を見ながらどのようなプランを試合展開を受けて組んでいったのか教えていただけますでしょうか。
真吾トレーナー 1R目の中谷選手の出方が、自分の方が一番こうやりやすいなっていう感覚があったんで。プレッシャーをかけてきてるんですけど、尚弥のプレッシャーで入りたくても入れないっていう。あの中間距離ってのは尚弥が一番得意としてる距離なんですね。尚弥のパンチは届いてて、中谷選手のパンチがなかなか届いてないのは感じたんで、このテイだったら一番理想としてたパターンだなっていうのは感じました。
――「やがて伝説と呼ばれる日」と銘打って行われた興行で、まさに最高峰の戦いで伝説を残されたと思うんですが、我々としてはやはりさらに凄い次の伝説を求めてしまうんですけども、昨日のドームを超えるような伝説を期待してもよろしいでしょうか。
尚弥 もちろん。期待してください。
――具体的にどのような、イメージだけでもあれば是非教えていただけますか。
尚弥 昨日も話はしたんですけど、「この先 は白紙です」ということを自分の口から言ったんですけど、そこも少し選択肢がある中、また大橋会長としっかりと決めていきたいなと思います。
――しばらく「ゆっくり休みたい」という話もあったかと思うんですけども、今やってみ たいことだったり、食べたいものだったりのプランありますか。
尚弥 そんな欲も別にないんですけど、ひとまずこの張り詰めた精神的なダメージというものがあるので、そこをしっかり抜きたいなと。肉体的なダメージはさほどないんですけど、ここに来るまで凄いプレッシャーとの戦いもありましたし、まずはそこをリセットしたいなと思ってます。
――続いて井上拓真チャンピオンに伺います。井岡一翔選手との激闘を終えて、見事防衛されました。一夜明けて今の心境を教えていただけますか。
拓真 自分もやる前から本当に勝てるか負けるか、どっちか分からないような状態の中でしっかり勝てた試合だったんで、凄く今はホッとしています。
――早いラウンドでダウンもありましたが、試合前からの評価もあったように、まさに最高の技術戦になったと思います。勝負を分けたポイントは?
拓真 一番はやっぱりジャブですかね。ずっと父と話してた。まだジャブで勝つ。そこがちゃんと遂行できたんで。試合の流れもいい流れに持っていけたと思うんで、そこが一番の鍵ですか。
――真吾トレーナーはセコンドから見ていて、試合の展開やプランをどのように見ていらっしゃいましたでしょうか。
真吾トレーナー いま拓真も言った通り、井岡選手は凄くジャブがいいわけで、最低でも五分に持っていかないと勝ちはなくて。練習で五分五分以上、そこに拓真の足のスピード。ここがパーフェクトに出来れば絶対いけるって自信はありました。そこをしっかり出してくれてたんで自分は本当に安心して見てられました。
――試合後の会見でも今後「統一戦をやりたい」というお話もあったかと思います。アントニオ・バルガス選手とバム(ジェシー・ロドリゲス)選手が統一戦を行ったり、堤聖也選手との対戦であったり、WBCで言えば那須川天心選手が挑戦者として構えていたり、いろんな選択肢があると思いますが、拓真チャンピオンが今ご自身で戦いたいと思っている相手がもしいれば教えてください。
拓真 “戦いたい相手”っていうのはいないですけど、ベルトを持っているのあれば誰でもいいかなっていう感じです。
――両チャンピオンに、昨日の激闘を終えて、またさらに日本中のファン、世界中のファンが期待をしていると思います。そのファンに向けてメッセージをお願いします。
尚弥 昨日は本当にたくさんの応援をありがとうございました。 本当に皆さんの応援が 力になりましたし、またあの舞台で戦いたいっていう気持ちにもなってますので、また皆さんが期待するファイトを出来るように少し休んでから頑張りたいと思いますので、また応援よろしくお願いします。
拓真 昨日は本当に多くの応援ありがとうございました。またファンの皆様がワクワクするようなカードをやっていきたいと思ってますんで、今後とも応援よろしくお願いします。
――尚弥チャンピオン、2度目の東京ドームで、そして前回よりもはるかな盛り上がりがあったと思いますけれども、その辺り戦ってみてどういう風に感じながら戦っていたのでしょうか。
尚弥 まず入場する時から前回のドームとはお客さんの数、声援、違いというものを感じながら入場はしてました。戦ってる時も皆さんの応援だったりが本当に力になりましたし、ドームは井上兄弟にとって凄くいいステージだなという場所になってます。
――試合後は「ゆっくりしたい」という話もありました。去年は4試合ありました。これから年間での試合ですとか、当然タイミングもあると思うんですけど、自分の中でこういうスケジュールでやれたらっていうのがありましたら。
尚弥 そこもひとまずは白紙です。
――拓真選手は試合前に井岡選手とやることでたかぶりがあったという話がありました。 実際の試合中に自分の中の手応えだったり、井岡選手とのやり取りの中で感じたものがあると思いますけど、改めてどんな風なものを感じたんでしょうか。
拓真 井岡選手の経験値というか、レジェンドっていう強さも試合中で感じられましたし、自分の中では凄く楽しかった12Rでした。
――拓真選手から、兄・尚弥選手の昨日の12Rの戦いにどういうものを感じたのか教えてください。
拓真 入れさせないプレスというか。相手の方が大きいですし、そういう大きい相手でも入れさせない空気感は間近で見て凄いなって感じましたね。
――尚弥選手は拓真選手の昨日の戦いに何を一番感じましたか。
尚弥 自分は控室でアップしながら見てたんですけど、本当にパーフェクトだなと思いながら見ていて。昨日家に帰ってから従兄弟の浩樹と拓真の試合を見直したんですけど、ロープ際のディフェンス、接近した時の肩の入れ方、密着具合、変態だなって話(笑)。それぐらい、2人で見て関心してました。“あそこがやっぱり拓真にとって一番強いパターンだな”みたいな。そんな話をしてました。
――尚弥チャンピオン、昨日の中谷選手との戦いは、ご自身のこれまでのキャリアの中でどういう位置付けの一戦だったか教えていただけますか。
尚弥 昨日の戦いは自分のキャリアを通して、ポイント的にも内容的にも、少し競った試合の中の一つではあるので、そういった試合は自分にとって貴重な試合というか、またレベルアップを出来た試合であるかなと思います。
――両選手、自分の試合は見直されましたか? 改めて、試合直後に感じなかった感想などがあれば。
尚弥 2ポイント差は厳しいなと思うんですけどね。自分はやってる感覚と見直した感覚で。でも、そこの感覚が今後もっと必要になってくるのかなっていう。陣営と確認しながらポイントはなんとなくは合ってるんですけど、ただそれ以上に詰まってるジャッジもいたので。そういったジャッジが、どういうものをポイントに優勢として加えていったのかってところも知りたいと思う。そこはやってて帰って見直して、率直に思うんですよ。
――自分の中で試合中の判定の判断材料に加えるってことですか?
尚弥 そうですね。そこの技術とかをこれから見直していくのも必要ですし、またその採点を試合中に僕とセコンドとしっかりとずれないように。そこの見直しも必要なんじゃないかなってのも感じました。
拓真 家に帰って見直そうとしたんですけど、PPV買ってなくて(笑)。『あれ? 見れねえじゃん』てなって、その日は諦めました(笑)。
――真吾トレーナーは見ましたか?
真吾 自分も見れてないんですよ。システムが分からなくて(苦笑)。
――大橋会長、先ほど尚弥選手から次のステージというお話がありましたけど、何かプランがあれば。
大橋 まだ白紙なんでこれから考えます。 全く白紙です。色々出てますけど全く白紙です。
――尚弥チャンピオンにお伺いしたいんですけど、1年前に年会表彰式で対戦に乗りかけたところから戦いは始まってた印象があって、その心理戦とか駆け引きも珍しくて楽しまれながら色々進めてたような印象があって。その戦いも含めて、この1年間の戦略とか考えて仕掛けていたことを教えてください。
尚弥 でもピカソ戦が終わるまでは、そういうのはないですけどね。
――特に先手を取るとか、あるいは牽制したりとかそういう部分も楽しんでやられてるような印象がありました。
尚弥 ありました? でも1年前に呼びかけてから、こなさなきゃいけない試合がまだあったんで、そこをしっかりと集中しながらはやってました。
――8~10Rくらいはある程度渡してもいいかなという話しでしたが、最初の4R、相手が受けの状態を取ってたと思うんです。そこからの流れとかどういう風な判断でポイントを取ったり、ある程度渡したりしていたのか解説をしてもらってもいいですか?
尚弥 1から4はある程度あの距離で戦って、、ポイントをピックアップできたかなっていう感覚でした。そこから微妙に強めながら、そこもなんとなく取れたかなって、陣営ともポイントは大丈夫ということで。8~10Rで中谷選手もプレスを強めてきたのでそれを攻撃で迎え打つのではなく、少し体力を温存しながら受けに回ってポイントをピックアップできればいいけど、できなければ別に自分の中では譲ってもいいかなっていう感覚でそこら辺のラウンドは戦ってました。
――結果的に中谷選手が受けるというかカウンターを狙うような入り方になりました。この構図になったのは井上チャンピオンとしては良かった?
尚弥 うーん、どうですかね。それは“たられば”になってしまうのでなんとも言えないですけど。でも昨日やった感覚、僕は中谷選手のパンチでは倒れないなという感覚はあったので、接近戦で来たとしてもまた違った展開で試合は流れていったと思うので、そこはもう本当に分からないですね。
――11Rの右アッパーで、中谷選手は左目を負傷したみたいでガードが高くなった。あれは当然気付いていたと思うんですけど、そこを攻めに利用したのか、それとも気持ちを抑えたところがあったのか。
尚弥 少し(抑える気持ちが)ありましたね、自分の中でも。本当にこのまま叩きのめそうっていう気持ちが100%ではなかった。ちょっと複雑な感情で初めてでしたね。その後のリカバリーもうまかったのもありますけどね。あそこで本来であれば仕留め切るっていうのが一番の理想形ではあったと思うんですけど。
――それは甘さではないですか?
尚弥 甘さではないです。
――12Rの残り1分ぐらいでモニターを見たと思うんですよ。時間を確認したと思うんですが、あれはどういう意図で?
尚弥 意図はないですけど、あと何秒あるかなって確認しただけです。
――それはその中で倒さなきゃって部分で?
尚弥 時間次第でどうしようかなっていうのも。もうラストだし、陣営からの声と自分の気持ちとをしっかりと合わせないといけないんで。そのままでいいよっていう指示であればそのままで行くのが正しいかなと自分は思うし、行けってアドバイスがあれば行ってだと思うし。その中であと何秒あるかなっていう、ただそれぐらいの気持ちです。
――インターバルを聞いてると真吾さんは圧をかけろ集中しろで、行けとは言ってなかった。
真吾 そうですね。でもフェイントからのスイングってずっと言ってましたよ。
――TikTokでスーパーバンタム級で1人戦いたいヤツが残ってるっていう発言をしてて 、その時は名前を出さなかったんですけど今はどうですか。
尚弥 そんなこと言いましたっけ? 記憶にございません(笑)。TikTok初めてだったし、その時のテンションでなんかちょっと喋っちゃったぐらいで。白紙なんで。
――昨日まで相当な緊張感とテンションで来て、それが終わってこの朝は、眠れたのかも含めてどういう心境ですか?
尚弥 まず大仕事を終えたっていう気持ちと、睡眠は2時間半です。
拓真 自分は1時間ぐらいですかね。寝てもなんかすぐパって起きちゃって全然寝れなかったですし。家で何も考えずゆっくりしてるのが幸せだなっていうのを噛みしめてました。
――井岡選手が最後のワンチャンスでやって最後まで立ち続けて、どんな思いを受け止めて、あの姿を今後のボクシング人生にどんな風に繋げていきたいでしょうか?
拓真 今後のことより井岡選手と戦えたことが自分のボクシングキャリアの中でも大きな宝になったのかなって、そういうのを一番感じました。
――あれだけ緊張感ある戦いで2人が終わった瞬間にあの柔らかい表情で抱き合ってるのは2人にしか分からない時間だったと思うんですが、どうでしたか?
尚弥 うん、そうですね。36分間やり合った、それも1年前から多分お互い意識し合いながらやってきましたから、終わった瞬間っていうのは戦いが終わった瞬間なんで、全てが終わったっていう、ああいう表情なのかなとは思いますね。
――「東京ドームでまたやりたい」と言われてまして、昨日は中谷選手という強敵がいてこそ成り立ったっていう部分もあると思います。次の東京ドームでやるとなった場合、どんな相手とやりたいか。
尚弥 イメージはないですね。ネリ戦やった時、2年後、じゃあ中谷選手とっていうイメージもなかったし、またここからそういうふさわしい相手、自分もドームでやれるようにいい試合をまたしていかなきゃいけないし、そこはタイミングかなと思います。
――拓真チャンピオンに伺いたいですが、試合が終わった瞬間に井岡選手から「ありがとう」っていう声をかけられてたのを口の動きだけで見たんですが、言われた時に感じたことは?
拓真 自分自身、このレジェンドと12Rを戦えたことが凄くいい経験にもなったし、嬉しく思えたし、自分自身も本当にありがとうございましたっていう。そういう感謝の伝え合いじゃないですけど、そういう感じでしたね。
















