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【ボクシング】井上尚弥と中谷潤人、濃密な12Rを振り返る──尚弥「望む声があるなら第2弾も全然あり」

2026/05/05 18:05
 2026年5月2日(土)、東京ドームにて『THEDAY』(Lemino配信)が開催された。  5万5千人を集めた同大会のメインイベントでは、32戦全勝同士、日本ボクシング史上最高のスーパーファイトとして、世界スーパーバンタム級4団体(WBA・WBC・WBO・IBF)統一王者の井上尚弥(大橋)と、WBA&WBC&WBO同級1位の中谷潤人(M・T)が対戦した。この試合を、両陣営と本誌解説員の鈴木秀明氏のコメント、リングサイド公式カメラマン福田直樹氏の写真とともに振り返る。  試合は、前半から慎重な展開に。身長165cm、リーチ171cmの井上に対し、身長173cm、リーチ173~176cmの中谷はサウスポー構えで、オーソの井上とは喧嘩四つ。  スーパーバンタム級2戦目で28歳の中谷は、大きなフレームを活かし、サウスポー構えで後ろ重心。上から打ち下ろすことで近い距離になるよりも、低い構えで長い足を広げて腕でもブロック。遠い位置からジャブを放ち、井上に簡単には踏み込ませなかった。  その中谷相手に、33歳の4団体統一王者も右で入るのではなく、左ジャブで攻めていった。  本誌解説員の鈴木秀明・STRUGGLE代表は、「フェイントの掛け合いや、距離の取り合い、お互いがどう動くかといういうことを想定して、それぞれが多く練習してきた。相手の出方によっていろいろ変化しながら、ものすごい攻防が最後の12ラウンドまでずっと続けられて、しかも二人とも集中力を切らすことがなかった」と高い集中力の攻防が続いたといい、そのなかで「無敗」を守った井上の勝因を「“井上選手の強引さ”」と評した。 「届く感じがないところを強引に踏み込んでみたり、一手目のアクションで届かないところを二手目のアクション、さらにその後のパンチで当てるなど、様々な試みをしていて。この展開を踏まえてしっかり練習し、実戦で本当にこれだけ出していける、試合のなかでいろんなチャレンジをして当てに行くっていう、その強引さであの勝ちを引き寄せたのかなと思います」とした。  互いにクリーンヒットが無いなか、双方ともに反応よく、バックステップでも外すなか、それでも好戦的だったのは井上で、自らアクションを起こして削っていく。空振りなどワンミスも許されないなか、その打ち終わりを中谷もずっと狙い、井上のジャブを受けるも崩れず。仕掛けた井上もスタミナを落とさない。  結果的に、1~4Rのジャッジは3者ともに井上につけるラウンドに。  中谷の左が待つところに入っていく危険があるなかで、井上が仕掛けていく姿勢に、鈴木氏は「出した後にすぐ避けるとか、すぐ避けるパターンだと、またそこを狙われる可能性があるため、一瞬止まって避けたりとか、もう本当にギリギリの攻防の中で、井上選手は火中の栗を拾いに行くというのをやりながら、こんな大きな試合で守ることなく、自分から試合を作って勝ちを獲りに行った」と振り返る。  中盤以降、中谷が反撃に転じる。力強く先に出て井上が下がる時間も見られるも、そのとき井上は「温存していた」という。 「1から4Rはある程度あの距離で戦ってポイントをピックアップできたかなっていう感覚でした。そこから微妙に強めながら、そこもなんとなく取れたかなって、陣営ともポイントは大丈夫ということで。8~10Rで中谷選手もプレスを強めてきたのでそれを攻撃で迎え打つのではなく、少し体力を温存しながら受けに回ってポイントをピックアップできればいいけど、できなければ別に自分の中では譲ってもいいかなっていう感覚でそこら辺のラウンドは戦ってました」(尚弥)  しかし、9Rに中谷は右アッパーでとらえると、10Rに右フック、左ストレートをヒット。井上に効かせていたかに見えたが、攻勢に出たところで偶発性のバッティングにより、中谷が眉間から出血。そして続く11Rには、井上の右アッパーが目に。「左眼窩底骨折」がこのラウンドだったことを中谷は明かしている。  12Rのジャッジは2者が116-112、1者が115-113の最大4P差の3-0で、井上尚弥が判定勝ち。4団体統一王座の7度目の防衛に成功し、男子歴代最多記録を更新。世界戦の連勝も28に伸ばし、自身の持つ男子歴代最多記録を塗り替えた。戦績は33戦全勝(27KO)。中谷は33試合目で初黒星を喫した。  鈴木氏は「この規模の大会を、日本で日本人同士が本当に実現させた、ビッグファイトを東京ドームでやったというのは、すごいこと。そして、これだけの熱を生み出し、緊張感のあるラウンドで、判定でもお客さんはみんな満足しているように見えます。派手なKOだけじゃないんですよね。その技術と流れと、二人のアスリートのぶつかり合い、激しい倒し合いだけじゃなくて、これがボクシングっていう動きを見せてくれて、感銘を受けました。どの階級になるか分かりませんが、僕はもう一回、再戦を東京ドームで見たいなと思ってしまいます」と、今後の両者にも期待を寄せている。  チャンピオンはどこへ向かうか。両陣営の試合直後のコメントと、一夜明け全文は以下の通りだ。 井上尚弥「脳のスタミナが凄く削られた」 ――試合を終えての今のお気持ちからお願いします。 「ホッとしてます」 ――それだけ精神をすり減らしてプレッシャーもかかる一戦だったということでしょうか。 「そうですね。歳も33になって、日本人のパウンド・フォー・パウンドでランキングしてる、下から上がってきた選手と戦うというのはやっぱり負けられない気持ちというのが今までの試合と全く違う。やっぱりそういう重圧だったり、そういう雰囲気があったので、自分の中で張り詰めたこの5月2日までだったので、ひとまず今日は勝てて本当にホッとしてます」 ――試合全体を振り返ってのプランはどうだったでしょうか。 「プランはプラン通りでしたね。中谷選手がそう出てくるなら今日の戦い方、というところでした」 ――ということは相対してみて何か想像と違う部分だったりは感じなかったんでしょうか。 「想定内という入り方でした」 ――真吾トレーナーはどう見ましたか? 真吾トレーナー “中谷選手次第”っていうところが全部できたと思うんですよ。前半は逆に尚弥になかなかパンチが当てられなかったんじゃないのかなって。だから空間をしっかり尚弥の方が支配してたのかなっていう。練習通りしっかりできたと思います。 ――今終わったばかりで、先ほどリング上で「ちょっと休みたいな」という話もあったばかりなんですが、今後について少し教えてもらえますか。 「自分の口からは今言えることはないのかなと思います。あとは大橋会長を含め、また今後のプランっていうものがあると思うので、またそこから始めていきたいと。今は僕の中では白紙です」 ――大橋会長、『THEDAY』どんな1日になりましたか。 大橋会長 やっぱり、戦前に「日本最高の技術戦になる」って言いましたけど、この2試合とも本当になったと思うし、井岡選手がああいった形で2回もダウンするっていうのも想像もつかなかったと思うんですけど、最終回も井岡選手効いたんだけど、行った瞬間にものすごい右を合わせてきて井岡選手らしさも出してきたなと。技術的に凄いなってのも見せましたし。  あと中谷選手も本当にいい選手で、終盤の攻撃、左ストレート、左アッパー、本当に怖いボクサーだったので、またこれから必ず世界チャンピオンに返り咲いて、また日本のボクシング界を盛り上げていく男になると思います。そんな今日は1日でした。 ――中谷選手も素晴らしいチャンピオンであった選手であり、そして今日も素晴らしい試合を見せてくれたと思うんですけれども、彼のこれからについてはどうお考えですか。 「気持ちも強い選手でしたし、その中で高度な技術も含まれてたので、必ずまたスーパーバンタム級でチャンピオンになる選手だなというのは今日戦って感じました」 ――拓真チャンピオン、向こうのペースに引いてボクシングをした。あれはカウンター封じというか、こっちのカウンター狙いとか、あえてああいう作戦を取ったんですか。 拓真 そうですね。あえてあの戦い方に変えたっていう感じですかね。 ――試合の中で? 拓真 そうですね、はい。 ――狙いとしては? 拓真 自分の得意とするパターンで結構ハマると思ったんで、試合中にこの作戦で行くっていうのは父に言いました。 ――那須川天心戦からの成長をすごく今日見てて感じたんですが、自分自身ではどうですか。 拓真 そうですね。まだまだいいとこも出せたんですけど、物足りない部分もまだまだあるんで。まだノビシロはあるかなっていうのは自分自身も感じてます。 ――尚弥チャンピオン、8~10Rは1人ジャッジが中谷に行っていて、8・10Rは2人が行っていた。あの辺で危機感みたいなものもあったのか。それと判定を聞く時にもう勝ったということがあったのか。最後に、今日は伝説の日にできたのか。 「前半からポイントを陣営と確認しながら戦っていて。戦う前から言っていた『今日は勝つ(ことに徹する)』という。その中で8~10R辺りっていうのは捨ててもいいのかなっていう。自分がポイントを取るというか、少し引きながらポイントを譲っても大丈夫かなと思いながら戦ってました。  今日が『伝説の日』になったかどうかというのはちょっと分からないですけど、“やがて”なんでね。ただ僕のボクシング人生というのは今日がゴールではないので、まだまだ伝説を作っていけるんじゃないかなとも思ってるので、今日以上の伝説を今後作っていけたらいいなと思います」 ――頭脳戦っていう部分でもいろんな駆け引きがあったりして、頭脳も疲れる試合だったと思うんですけど。駆け引きの中で笑顔なんかも見えたりして、その辺りの心境はどうだったんでしょう? 「今日は体力というか、脳のスタミナが凄く削られたなと。それだけ張り詰めて12R戦った試合でしたね。お互い打って外してという技術戦、お互いが楽しんでるなと試合をしながらそんな感覚で凄く楽しい試合でした」 ――あとリング上で「また東京ドームで」という言葉もありましたけども、その辺りはどうでしょうか。 「そうですね、またここで試合が出来たらもう本当にボクサーとして(冥利に)尽きるなと思うので。またそんな試合ができたらいいです」 中谷潤人「井上選手は学ぶ力が凄く強いので学ばせないように戦った」 ――試合を終えての感想からお願いします。 「5万5千人のお客さんの前と、PPVで見ていただけている皆さんの前で戦えたことを光栄に思います」 ――井上選手と対峙しての印象はどうだったでしょうか。 「いろんなことを想定して準備してきたので、驚きというか、そういったところは特には 感じなかったですけど、さすがチャンピオン。上手さがあって、ボクシングを作っていく、ボクシングはすごく上手だったなっていうのは感じました」 ――村野会長からご覧になって中谷選手の戦いぶりいかがだったでしょうか。 村野会長 練習でやってきたことをある程度は出せたんじゃないかなとは思います。ただですね、相手も名チャンピオンですので、簡単には進まさせてくれないと思いましたが、各所各所で付け入る隙があったなとはトータル12Rを終えて感じました。 ――結果的にスコアを見ると1Rから4Rまで向こうに行ってるんですけども、それは全く予定していなかったのか、ある程度取られてもいいから相手を焦らすとかそういう作戦だったのか。序盤戦の戦い方について教えてください。 「井上選手は“学ぶ力”が凄く強いので、そういったところで学ばせないっていったところでああいう戦い方になりました。ただ井上選手もそのタイミングだったり、フェイントを入れながら取ってきてたので、そこの駆け引きを楽しみながらやってました」 ――検査するのはどちらの目になりますか。 「左の目ですね」 ――10Rのバッティングによるもの? 「パンチだったと思います」 ――11Rの? 「はい」 ※診断結果は「左眼窩底骨折」 [nextpage] 一夜明け会見全文=井上尚弥「僕は中谷選手のパンチでは倒れないなという感覚はあったので、接近戦で来たとしてもまた違った展開で試合は流れていったと思う」 大橋会長 まだ昨日終わったばっかりでその余韻が残ってる感じですけども、5万5千人超満員の中、2人とも素晴らしい試合をやってくれて、対戦相手の中谷潤人選手、井岡一翔選手あっての超満員だったと思うので、本当に出場選手には感謝申し上げます。またチケットも完売いたしましたし、視聴数の方もボクシング・格闘技全てで多分トップだったと思いますので、本当にこれも皆様のご協力の賜物です。本当にありがとうございました。 ――7度目の防衛おめでとうございます。 「ありがとうございます」 ――東京ドームでの5万5千人超満員の中で日本人対決という世紀の一戦を制したわけですけども、一夜明けて率直な心境を教えてください。 尚弥 ひとまずホッとしてるのと、こうして一夜明け会見を拓真と2人で迎えられたっていうのが、戦う前から2人で話してた『絶対に2人で勝つぞ『』っていう約束も果たせましたし、本当に今日2人でここに出席してることを嬉しく思います。 ――昨日の試合を振り返っていただいて、ラウンド中にはお互い笑顔を見せるようなシーンもあり、我々的には見ていて世界最高峰の戦いを楽しんでいるというような印象も受けたんですけれども、改めて試合を振り返ってみていかがですか。 尚弥 中谷選手の技術だったり気迫だったり、そういうものを感じながら戦っていたし、逆に向こうも多分そういう気持ちだったと思うので、自然とディフェンスからオフェンス、オフェンスからディフェンス、そういったお互いが打っても当たらない空間っていうものを多分お互いが楽しんでいたと思うので、あれはもうそこから自然と出た笑顔だったかなと思います。 ――判定結果を見ても多分井上チャンピオンがこれまで判定勝利した相手の中で1番競った相手だったと思うんですけども、中谷選手ともう1度戦ってみたい思いがあるのか、それともそれよりも次のステージに行きたいのか、今いかがでしょうか? 尚弥 うーん、どうですかね。別に僕的にはそういう望む声があるなら第2弾というか、そういったのも全然ありかなと思いますし、逆にまた違うステージに行くっていうのも、選択肢の1つではあると思うので、そこは大橋会長ともしっかりと話し合って決めていきたいと思います。 ――メインの試合について、井上真吾トレーナーにも伺います。様々なプランを想定して、様々な引き出しを用意して挑んだ試合だったかと思いますけれども、試合の中でポイントを奪っていくラウンドであったり、あとは倒しに行くようなプランもあったかと思うんですけども、中谷選手の出方を見ながらどのようなプランを試合展開を受けて組んでいったのか教えていただけますでしょうか。 真吾トレーナー 1R目の中谷選手の出方が、自分の方が一番こうやりやすいなっていう感覚があったんで。プレッシャーをかけてきてるんですけど、尚弥のプレッシャーで入りたくても入れないっていう。あの中間距離ってのは尚弥が一番得意としてる距離なんですね。尚弥のパンチは届いてて、中谷選手のパンチがなかなか届いてないのは感じたんで、このテイだったら一番理想としてたパターンだなっていうのは感じました。 ――「やがて伝説と呼ばれる日」と銘打って行われた興行で、まさに最高峰の戦いで伝説を残されたと思うんですが、我々としてはやはりさらに凄い次の伝説を求めてしまうんですけども、昨日のドームを超えるような伝説を期待してもよろしいでしょうか。 尚弥 もちろん。期待してください。 ――具体的にどのような、イメージだけでもあれば是非教えていただけますか。 尚弥 昨日も話はしたんですけど、「この先 は白紙です」ということを自分の口から言ったんですけど、そこも少し選択肢がある中、また大橋会長としっかりと決めていきたいなと思います。 ――しばらく「ゆっくり休みたい」という話もあったかと思うんですけども、今やってみ たいことだったり、食べたいものだったりのプランありますか。 尚弥 そんな欲も別にないんですけど、ひとまずこの張り詰めた精神的なダメージというものがあるので、そこをしっかり抜きたいなと。肉体的なダメージはさほどないんですけど、ここに来るまで凄いプレッシャーとの戦いもありましたし、まずはそこをリセットしたいなと思ってます。 ――続いて井上拓真チャンピオンに伺います。井岡一翔選手との激闘を終えて、見事防衛されました。一夜明けて今の心境を教えていただけますか。 拓真 自分もやる前から本当に勝てるか負けるか、どっちか分からないような状態の中でしっかり勝てた試合だったんで、凄く今はホッとしています。 ――早いラウンドでダウンもありましたが、試合前からの評価もあったように、まさに最高の技術戦になったと思います。勝負を分けたポイントは? 拓真 一番はやっぱりジャブですかね。ずっと父と話してた。まだジャブで勝つ。そこがちゃんと遂行できたんで。試合の流れもいい流れに持っていけたと思うんで、そこが一番の鍵ですか。 ――真吾トレーナーはセコンドから見ていて、試合の展開やプランをどのように見ていらっしゃいましたでしょうか。 真吾トレーナー いま拓真も言った通り、井岡選手は凄くジャブがいいわけで、最低でも五分に持っていかないと勝ちはなくて。練習で五分五分以上、そこに拓真の足のスピード。ここがパーフェクトに出来れば絶対いけるって自信はありました。そこをしっかり出してくれてたんで自分は本当に安心して見てられました。 ――試合後の会見でも今後「統一戦をやりたい」というお話もあったかと思います。アントニオ・バルガス選手とバム(ジェシー・ロドリゲス)選手が統一戦を行ったり、堤聖也選手との対戦であったり、WBCで言えば那須川天心選手が挑戦者として構えていたり、いろんな選択肢があると思いますが、拓真チャンピオンが今ご自身で戦いたいと思っている相手がもしいれば教えてください。 拓真 “戦いたい相手”っていうのはいないですけど、ベルトを持っているのあれば誰でもいいかなっていう感じです。 ――両チャンピオンに、昨日の激闘を終えて、またさらに日本中のファン、世界中のファンが期待をしていると思います。そのファンに向けてメッセージをお願いします。 尚弥 昨日は本当にたくさんの応援をありがとうございました。 本当に皆さんの応援が 力になりましたし、またあの舞台で戦いたいっていう気持ちにもなってますので、また皆さんが期待するファイトを出来るように少し休んでから頑張りたいと思いますので、また応援よろしくお願いします。 拓真 昨日は本当に多くの応援ありがとうございました。またファンの皆様がワクワクするようなカードをやっていきたいと思ってますんで、今後とも応援よろしくお願いします。 ――尚弥チャンピオン、2度目の東京ドームで、そして前回よりもはるかな盛り上がりがあったと思いますけれども、その辺り戦ってみてどういう風に感じながら戦っていたのでしょうか。 尚弥 まず入場する時から前回のドームとはお客さんの数、声援、違いというものを感じながら入場はしてました。戦ってる時も皆さんの応援だったりが本当に力になりましたし、ドームは井上兄弟にとって凄くいいステージだなという場所になってます。 ――試合後は「ゆっくりしたい」という話もありました。去年は4試合ありました。これから年間での試合ですとか、当然タイミングもあると思うんですけど、自分の中でこういうスケジュールでやれたらっていうのがありましたら。 尚弥 そこもひとまずは白紙です。 ――拓真選手は試合前に井岡選手とやることでたかぶりがあったという話がありました。 実際の試合中に自分の中の手応えだったり、井岡選手とのやり取りの中で感じたものがあると思いますけど、改めてどんな風なものを感じたんでしょうか。 拓真 井岡選手の経験値というか、レジェンドっていう強さも試合中で感じられましたし、自分の中では凄く楽しかった12Rでした。 ――拓真選手から、兄・尚弥選手の昨日の12Rの戦いにどういうものを感じたのか教えてください。 拓真 入れさせないプレスというか。相手の方が大きいですし、そういう大きい相手でも入れさせない空気感は間近で見て凄いなって感じましたね。 ――尚弥選手は拓真選手の昨日の戦いに何を一番感じましたか。 尚弥 自分は控室でアップしながら見てたんですけど、本当にパーフェクトだなと思いながら見ていて。昨日家に帰ってから従兄弟の浩樹と拓真の試合を見直したんですけど、ロープ際のディフェンス、接近した時の肩の入れ方、密着具合、変態だなって話(笑)。それぐらい、2人で見て関心してました。“あそこがやっぱり拓真にとって一番強いパターンだな”みたいな。そんな話をしてました。 ――尚弥チャンピオン、昨日の中谷選手との戦いは、ご自身のこれまでのキャリアの中でどういう位置付けの一戦だったか教えていただけますか。 尚弥 昨日の戦いは自分のキャリアを通して、ポイント的にも内容的にも、少し競った試合の中の一つではあるので、そういった試合は自分にとって貴重な試合というか、またレベルアップを出来た試合であるかなと思います。 ――両選手、自分の試合は見直されましたか? 改めて、試合直後に感じなかった感想などがあれば。 尚弥 2ポイント差は厳しいなと思うんですけどね。自分はやってる感覚と見直した感覚で。でも、そこの感覚が今後もっと必要になってくるのかなっていう。陣営と確認しながらポイントはなんとなくは合ってるんですけど、ただそれ以上に詰まってるジャッジもいたので。そういったジャッジが、どういうものをポイントに優勢として加えていったのかってところも知りたいと思う。そこはやってて帰って見直して、率直に思うんですよ。 ――自分の中で試合中の判定の判断材料に加えるってことですか? 尚弥 そうですね。そこの技術とかをこれから見直していくのも必要ですし、またその採点を試合中に僕とセコンドとしっかりとずれないように。そこの見直しも必要なんじゃないかなってのも感じました。 拓真 家に帰って見直そうとしたんですけど、PPV買ってなくて(笑)。『あれ? 見れねえじゃん』てなって、その日は諦めました(笑)。 ――真吾トレーナーは見ましたか? 真吾 自分も見れてないんですよ。システムが分からなくて(苦笑)。 ――大橋会長、先ほど尚弥選手から次のステージというお話がありましたけど、何かプランがあれば。 大橋 まだ白紙なんでこれから考えます。 全く白紙です。色々出てますけど全く白紙です。 ――尚弥チャンピオンにお伺いしたいんですけど、1年前に年会表彰式で対戦に乗りかけたところから戦いは始まってた印象があって、その心理戦とか駆け引きも珍しくて楽しまれながら色々進めてたような印象があって。その戦いも含めて、この1年間の戦略とか考えて仕掛けていたことを教えてください。 尚弥 でもピカソ戦が終わるまでは、そういうのはないですけどね。 ――特に先手を取るとか、あるいは牽制したりとかそういう部分も楽しんでやられてるような印象がありました。 尚弥 ありました? でも1年前に呼びかけてから、こなさなきゃいけない試合がまだあったんで、そこをしっかりと集中しながらはやってました。 ――8~10Rくらいはある程度渡してもいいかなという話しでしたが、最初の4R、相手が受けの状態を取ってたと思うんです。そこからの流れとかどういう風な判断でポイントを取ったり、ある程度渡したりしていたのか解説をしてもらってもいいですか? 尚弥 1から4はある程度あの距離で戦って、、ポイントをピックアップできたかなっていう感覚でした。そこから微妙に強めながら、そこもなんとなく取れたかなって、陣営ともポイントは大丈夫ということで。8~10Rで中谷選手もプレスを強めてきたのでそれを攻撃で迎え打つのではなく、少し体力を温存しながら受けに回ってポイントをピックアップできればいいけど、できなければ別に自分の中では譲ってもいいかなっていう感覚でそこら辺のラウンドは戦ってました。 ――結果的に中谷選手が受けるというかカウンターを狙うような入り方になりました。この構図になったのは井上チャンピオンとしては良かった? 尚弥 うーん、どうですかね。それは“たられば”になってしまうのでなんとも言えないですけど。でも昨日やった感覚、僕は中谷選手のパンチでは倒れないなという感覚はあったので、接近戦で来たとしてもまた違った展開で試合は流れていったと思うので、そこはもう本当に分からないですね。 ――11Rの右アッパーで、中谷選手は左目を負傷したみたいでガードが高くなった。あれは当然気付いていたと思うんですけど、そこを攻めに利用したのか、それとも気持ちを抑えたところがあったのか。 尚弥 少し(抑える気持ちが)ありましたね、自分の中でも。本当にこのまま叩きのめそうっていう気持ちが100%ではなかった。ちょっと複雑な感情で初めてでしたね。その後のリカバリーもうまかったのもありますけどね。あそこで本来であれば仕留め切るっていうのが一番の理想形ではあったと思うんですけど。 ――それは甘さではないですか? 尚弥 甘さではないです。 ――12Rの残り1分ぐらいでモニターを見たと思うんですよ。時間を確認したと思うんですが、あれはどういう意図で? 尚弥 意図はないですけど、あと何秒あるかなって確認しただけです。 ――それはその中で倒さなきゃって部分で? 尚弥 時間次第でどうしようかなっていうのも。もうラストだし、陣営からの声と自分の気持ちとをしっかりと合わせないといけないんで。そのままでいいよっていう指示であればそのままで行くのが正しいかなと自分は思うし、行けってアドバイスがあれば行ってだと思うし。その中であと何秒あるかなっていう、ただそれぐらいの気持ちです。 ――インターバルを聞いてると真吾さんは圧をかけろ集中しろで、行けとは言ってなかった。 真吾 そうですね。でもフェイントからのスイングってずっと言ってましたよ。 ――TikTokでスーパーバンタム級で1人戦いたいヤツが残ってるっていう発言をしてて 、その時は名前を出さなかったんですけど今はどうですか。 尚弥 そんなこと言いましたっけ? 記憶にございません(笑)。TikTok初めてだったし、その時のテンションでなんかちょっと喋っちゃったぐらいで。白紙なんで。 ――昨日まで相当な緊張感とテンションで来て、それが終わってこの朝は、眠れたのかも含めてどういう心境ですか? 尚弥 まず大仕事を終えたっていう気持ちと、睡眠は2時間半です。 拓真 自分は1時間ぐらいですかね。寝てもなんかすぐパって起きちゃって全然寝れなかったですし。家で何も考えずゆっくりしてるのが幸せだなっていうのを噛みしめてました。 ――井岡選手が最後のワンチャンスでやって最後まで立ち続けて、どんな思いを受け止めて、あの姿を今後のボクシング人生にどんな風に繋げていきたいでしょうか? 拓真 今後のことより井岡選手と戦えたことが自分のボクシングキャリアの中でも大きな宝になったのかなって、そういうのを一番感じました。 ――あれだけ緊張感ある戦いで2人が終わった瞬間にあの柔らかい表情で抱き合ってるのは2人にしか分からない時間だったと思うんですが、どうでしたか? 尚弥 うん、そうですね。36分間やり合った、それも1年前から多分お互い意識し合いながらやってきましたから、終わった瞬間っていうのは戦いが終わった瞬間なんで、全てが終わったっていう、ああいう表情なのかなとは思いますね。 ――「東京ドームでまたやりたい」と言われてまして、昨日は中谷選手という強敵がいてこそ成り立ったっていう部分もあると思います。次の東京ドームでやるとなった場合、どんな相手とやりたいか。 尚弥 イメージはないですね。ネリ戦やった時、2年後、じゃあ中谷選手とっていうイメージもなかったし、またここからそういうふさわしい相手、自分もドームでやれるようにいい試合をまたしていかなきゃいけないし、そこはタイミングかなと思います。 ――拓真チャンピオンに伺いたいですが、試合が終わった瞬間に井岡選手から「ありがとう」っていう声をかけられてたのを口の動きだけで見たんですが、言われた時に感じたことは? 拓真 自分自身、このレジェンドと12Rを戦えたことが凄くいい経験にもなったし、嬉しく思えたし、自分自身も本当にありがとうございましたっていう。そういう感謝の伝え合いじゃないですけど、そういう感じでしたね。
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