2026年3月28日(日本時間29日)米国ワシントン州シアトルのクライメット・プレッジ・アリーナにて『UFC Fight Night: Adesanya vs. Pyfer』(U-NEXT/UFC Fight Pass配信)が開催され、メインイベントのミドル級戦で、ジョー・パイファー(米国)が、イスラエル・アデサニヤ(ナイジェリア)を2R TKO。UFC4連勝をマーク後、ケージ内のインタビューで「まるでこの瞬間が現実になるのが見えるみたいなんだ。数週間前までは自殺しかけてたのに──」と、深い絶望と葛藤を抱えていたことを告白した。
本誌の取材でもかつて「幼少時から父親の虐待を受けて捨てられ、公園のベンチで寝泊まりしていたこともある」とトラウマを語っていたパイファーは、奇しくもその父に連れられた柔術道場で、「生きる道具」を与えられた。
DWCSを激しい試合で勝ち上がりダナ代表から『ジョー・パイファーのように戦え』と、評されたタフさが売りとなったが、今回の試合直前に、自ら命を絶つ危機に襲われたという。
試合後会見でパイファーは、マット上での告白について、「多くの人は、俺がそんな状態ならケージに入って粘り強さや獰猛さを保つことなんてできないだろうと、聞き流していたと思う。俺はファイターとして生まれた。混沌とした家庭、めちゃくちゃな家族の中に生まれたんだ。俺は自分自身の“自己破壊”の犠牲者だった。性欲の問題や、有毒な依存のサイクルを抱えていた。薬物関係とかじゃないがね。だがある時、自分自身に嫌気がさす夢を見たんだ。周りの多くの人々を傷つけ、特に一人の人間を……もう二度と傷つけないと誓った。クソ、自分に吐き気がしたんだ」と、自らの愚行によりパートナーを傷つけたことで、自殺を試みる寸前だったことを明かした。
そのときのことについて『The Ariel Helwani Show』では、祈りがあったという。
「頭の中で何かが呼びかけているような気がしたんだ。自分がやりたいことではないと感じていたけど、いつものように、痛みから逃げて何かで埋めようとしていた」
「まるで神様が夢の中で私に現れて、体外離脱体験をさせてくれたような気がする。そこで俺は自分が何者なのかを知ることができ、そして嫌悪感を覚えた。それから、自分が本当に望んでいること、なりたい自分、つまり自分の魂はまだ純粋で、愛は本物だと気づくことができた。そして、6年以上付き合っている今の恋人が、私の2人の子供の母親になる姿を見ることができたんだ。俺はずっと子供を持つことに迷いがあった。子供たちの顔は見えなかったけど、彼女の顔ははっきりと見えた。それはとても力強い瞬間だった。俺は溺れかけていたけど、イエスの手を見たような気がしてその手を取り、目が覚めると、人生がすっかり変わってしまったように感じた」
「自分の信仰を世間に公言することには多くのことが伴うと分かっているけど、おらはそれで構わない。結局のところ、俺は自分の人生で何が大切なのか、そして今何をすべきなのかを非常に明確に理解している。自分が進むべき道がはっきりと見えている。そして、自殺未遂をするほんの数秒前、祈りが俺を救ってくれたんだ。まさに最後の手段だった」
アデサニヤ戦の1Rは接戦で、右カーフキックを被弾するなど、キレのあるアデサニヤの動きに後手に回っていたパイファーだが、2Rに左ボディと左右フックとアッパー、右ヒジを効かて徐々にペースをつかみ始めると、アデサニヤにプレッシャーをかけ、左フックを空振りさせて組んでテイクダウン。バックを奪い、マウントからパウンド連打でレフェリーストップを呼び込んだ。
14位のパイファーが上位ランクの4位のアデサニヤを下した瞬間だった。パイファーは4連勝。アデサニヤは4連敗がついた。
「みんな彼に厳しすぎると思う」とパイファーは敗者を気遣う。
「一つの勝利の裏には誰かの苦しみがある。俺は勝って嬉しいが、イジーがこれほど叩かれているのを見るのは辛い。俺は29歳で、階級屈指のハードヒッターだ。彼は俺相手にとてもよく戦った。彼はハングリーに見えたし、あそこにいたいという意志が感じられた。あんなレベルで戦っていれば、誰だって勝つし、誰だって負ける。だから俺は浮かれていない。信仰が俺をここに留めているのもあるが、一方でイジーが『名前のない奴に負けた』なんて言われて攻撃されているのを見るのは……俺が成し遂げたことへの敬意さえ払われていないようだし、彼が攻撃され続けているのは悲しいことだ。彼は史上最高の一人だし、今も最高レベルで競い合っている。俺の前に彼が負けたのはトップ5の奴らだけだ。だから、彼に少し寛容になってあげてほしい。本当に腹が立つし、悲しいよ。ファンには憎しみよりも愛を示してほしい」
パイファーは、UFCファイターへのキャッチフレーズとなった『Be Joe Pyfer』の言葉を異なる意味を持つようになったという。
「この6週間の人生を考えると、ああ、今は(以前の自分は)見たくないな。ただ、俺の相棒がInstagramに投稿してくれたビデオがあるんだ。儀式的な計量の時に俺が言った『誰でもよかったはずだが、神が俺を選んでくれた』という言葉。あの瞬間の自分は誇りに思う。そして彼女のアシュリンにどれほど愛しているか、残りの人生を彼女と一緒にいたいと伝えたことも。俺は今、精神的に本当に良い状態にいるんだ。
『Be Joe Pyfer』としての俺、かつての人間としての俺は死んだ。だが『Be Joe Pyfer』という言葉は、人々をインスパイアするもっと大きな意味を持って生き続けるだろう。今はそれに意味がある。今の自分を誇りに思っている。毎日厳しい選択を迫られるが、今やっていること(信仰に基づいた正しい生き方)が実は一番難しいことなんだ。世の中の悪が攻撃してこようとするから、ますます難しくなる。そういう仕組みなんだよ。だから『Be Joe Pyfer』はこれからも存在するが、今は違う意味を持っているんだ」──会見でのジョー・パイファーとの一問一答と、『The Ariel Helwani Show』でのパイファーの言葉は以下の通りだ。
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パイファー「人は変われる、より良い人間になれる」
──試合を終えた調子はいかがですか、ジョー。イスラエル・アデサニヤというレジェンドを相手に、あなたのキャリアで最大の勝利を挙げたこと、おめでとうございます。それぞれのパフォーマンスをどう感じたか教えてください。
「ああ、イジーは本当に一生懸命トレーニングしてきたと思うし、実際、俺を打ちのめしていたよ。でも、俺はプレッシャーをかけ続けた。ショットを受けても、何かにひどく傷つけられたとは感じなかった。結局、自分のテイクダウンに持ち込むことができたし、多くの人が過小評価していると思うが、自分がハイレベルのグラップラーであることを証明できた。それで、彼を痛めつけて出血させ始め、バックを取ったんだ。
あの流れるような一連の動き(シークエンス)は、ちょうど取り組み始めたばかりのものだった。以前からあの動き自体は知っていたが、世界最高のグラップラーの一人であるニッキー・ロドリゲス、そしてジョナサン・ウェブと一緒に、文字通り練習してきたんだ。だから、彼らにはとても感謝している。そしてイジーにも感謝しているよ。今でも彼は史上最高のミドル級選手だと思っているし、彼は素晴らしい男だ」
──2ラウンド、彼が勢いに乗り始めて君を押し戻し始めましたが、あなたは「パンチによるダメージはあまり感じなかった」と言いました。それなら「ただ歩いて突き進める」と思った瞬間があったのか、それともタイミングを見計らって待つ必要があったのでしょうか?
「いや、やはり時期を待つ必要があった。イジーは戦術家だからね。彼のパンチ力は怖くなかったが、蹴りは怖かった。蹴りが怖いというのは、例えば頭へのクエスチョンマークキック(ブラジリアンキック)とかね。彼の(キックボクシングの)戦績が75勝4敗だか5敗だか、すごいのは知っていたから。だから、ガードを高く保ち、隙を無くすことに集中した。まだ試合を見返していないからどうだったか分からないが、とにかく感謝しているし、今日は神が味方してくれた。イジーは本当に、本当にすごい奴だよ」
──試合後、あなたが経験してきた個人的な葛藤について明かしましたね。特にひどい時期があり、自分を傷つけることも考えたと。これはあなた自身の物語であり、話せる範囲で構わないのですが、一体あなたの身に何が起きていたのか、そして何がそれを克服する助けになったのか教えていただけますか?
「今週ずっと言ってきたことだが、多くの人は、俺がそんな状態ならケージに入って粘り強さや獰猛さを保つことなんてできないだろうと、聞き流していたと思う。俺はファイターとして生まれた。混沌とした家庭、めちゃくちゃな家族の中に生まれたんだ。多くの子供たちがそうであるように、俺の境遇が他と比べて特別に不幸だというわけじゃないが。
ああ、俺は自分自身の“自己破壊”の犠牲者だった。性欲の問題や、有毒な依存のサイクルを抱えていた。薬物関係とかじゃないがね。だがある時、自分自身に嫌気がさす夢を見たんだ。周りの多くの人々を傷つけ、特に一人の人間(※パートナー)を……もう二度と傷つけないと誓った。クソ、自分に吐き気がしたんだ。
それでセラピーを受けた。あの夢の中で、神が俺を選んで手を取ってくれたように感じた。そして、修復された人生、新しい人生を与えてくれた。今言える唯一のことは、世界中のあらゆるプレッシャーや期待が消え去り、真に自由な人間になれたと感じているということだ。今週一週間、チームやコーチたちのサポートがあって本当に素晴らしかった。彼らに『人は変われる、より良い男になれる』ということ、そして神は実在し、イエスは実在し、生きるべき道があるということを示せた。俺はその道に従った。祈りを通じて、この勝利を授かったんだ。今週はたぶん50回は祈ったよ。人生で最も穏やかで、幸せで、平和で、感謝に満ちた状態でいられた」
──何か助けを求める方法を他人に教えるのはあなたの責任ではありませんが、今その暗闇を経験した者として、同じような状況にいる人々にメッセージはありますか?
「耳を傾ける気があるなら、聖書を読む機会を作って、一冊一冊について質問してみてほしい。俺はもうすぐ聖書を読み終えるところだ。俺はあまり読書が好きじゃない、すぐ眠くなるから読み通せないんだ。だからオーディオブックをダウンロードして、6カ月以上聴き続けている。各章から質問や理解できないことを書き出している。
まず第一に、より良くなりたいと願う人々に囲まれること。そして自分の信仰にチャンスを与えてほしい。それは世界で最も自由になれることだ。『罪の報酬は死である』というが、俺たちはただここにいて、良い人として生きて死んで、その後は永遠の暗闇……なんてことは、俺がこれまでの人生で聞いた中で最も愚かな考えだ。
俺は常に葛藤していた。自分は信者だ、クリスチャンだと言いながら、実際には生ぬるい態度だった。クリスチャンだと言いながら、外で女遊びをしたり、あれこれしたり。それは神に従った生き方じゃない。キリスト教の道徳に従って生きることにデメリットなんて何もない。それを尊重しないならそれでも構わないが、真の自由のために自分にチャンスを与えてほしい」
──勝利おめでとう。
「本当にありがとう」
──試合中にアイポークがありましたが、それで調子が狂うことはありましたか? 見たところそうでもなさそうでしたが、あの時何を考えていましたか? 集中している時にそういうことが起きると、試合の流れが変わってしまうこともありますよね。
「ああ、そうだ。イマボフとイジーの試合でもアイポークか何かの問題があったから、感謝しているよ。皮(グローブ)が目に入ったのか、指が入ったのかは分からないが、ジャック・ハーマンソンと戦った時に目に当たった時は何も見えなくなった。正直、視界がぼやけたんだ。イジーには『嘘はつかない』と言ったよ。多くの観客がブーイングしていたが、パンチだったのか指だったのかは分からない。ただ眼球に当たったことだけは分かるし、失明したくないからね。もしアイポークじゃなかったら申し訳ない。リプレイは見てないが、どう見えた?」
──アイポークのように見えましたよ。
「それなら正当化されるな。でも、あの後に彼にフィニッシュされたり、逆に俺がフィニッシュしたりしなくて本当によかった。それだと勝利にケチがついてしまう。とにかく大丈夫だったよ。ただ過敏になっていたんだと思う。前回のジャック戦で目に当たった後、文字通り彼が見えなくなって、次の3ラウンドはずっと彼が4人に見えていたからね」
──今週、精神的に非常に異なっているという話がありましたが、今、自分自身が以前とどれほど違う人間になったと感じるか、過去の試合と比べてどうでしたか?
「暖かい毛布に包まれているような感じだった。説明するのは難しいが、痛みは感じるのに、全くひるまなかったんだ。彼がすることに驚くことも、ショックを受けることもなかった。彼が脚を蹴ってくるのは分かっていたし、それに対して大したことはしなかったが、とにかく“タックルし続ける、前進し続ける、やり続ける”という気持ちだった。あいつ、すぐ汗をかいたな、めちゃくちゃ滑ったよ。とにかく、何も驚きはなかったし、神の存在が俺を勝利に導いてくれたと感じている」
──試合後、イスラエルと話をしていた瞬間がありましたが、もしよければ内容を教えていただけますか?
「イジーとはこれまでに2回会ったことがある。1回目は俺がマイアミのカードでジェラルド・マーシャートと戦った時で、彼に『なあ、あんたならやり返せる(ベルトを取り戻せる)って分かってるぜ。あんたにできないなら誰にもできない』と言ったんだ。その後彼はアレックス(・ペレイラ)を倒して、史上最高の素晴らしいスピーチをした。俺はそれにすごく刺激を受けたよ。UFCに入る前からずっとイジーを見てきたからね。それから去年のインターナショナル・ファイト・ウィークでも会ったが、彼は本当に紳士的だった。試合後には、まだ彼の考えを吸収したいし、学びたい、と伝えたよ。彼は別に仕返しをしようとしているわけじゃないからね。だから、あっち(ニュージーランド)へ飛んで行って、一緒に練習して学びたいと言ったんだ。打撃の面で研ぎ澄ませることができる部分がたくさんあると思う」
──足に装具をつけて引きずっていますが、今どういう状態ですか? 試合は終わったので教えてもらえますか?
「たぶん、イジーの方が俺よりずっと怪我なく歩いていると思うよ。ああ、ふくらはぎを打ち抜かれた。腫れているだけだ。神経が通っている過敏な場所だから、慎重に扱っている。手の方は、まだ分からない、検査してもらうよ。あいつの頭を殴った時に痛めたんだ。まあ、一発当てれば十分だからね」
──次の質問ですが、いつ頃戻りたいですか? メインイベントという大きなプレッシャーのかかる試合でした。数カ月休んで今年後半に、という感じでしょうか? 理想は?
「マッチメイクはしたくないんだ。メディア向けには『次はこの相手だ!』と言うべきなんだろうが、俺はそういう点ではデビー・ダウナー(※場をしらけさせるキャラクター)だよな。ただ、8月にフィラデルフィアで大会があるのは知っている。東海岸には準備万端の仲間がたくさんいる。ショーン・ブレイディの結果次第だが、俺と彼でメインを張るのもクールだと思う。とにかく、できれば8月のそのカードでメインを務めたい」
──あの勝ち方なら、その資格はあると思います。
「ああ、だから8月頃かな。今はマッチメイクはしたくない。階級の他の奴らについて話したくないんだ、みんな素晴らしいファイターだから。かつての俺は、常に『次は何だ、次は何だ』と先ばかり見ていたが、それはたった今勝ち取った勝利の価値を損なうものだと思う。外にいる俺のチーム、17、18人の仲間は家族のように一緒にやってきた。だから『次は何だ』というプレッシャーをかける前に、まずは彼らと一緒にこの勝利をじっくり味わいたいんだ」
──これだけは聞かせてください。君は4位(のアデサニヤ)を倒しました。ランキングも4位になるべきだと思いますか?
「100%そうだ。4位をフィニッシュしたんだから。そうなるべきだと思わないか?(※6位に)」
──そうあるべきだと思います。対戦相手の数字を引き継ぐというのが道理ですから。
「ああ、そう機能するだろ? フットボールの仕組みは知らないが、とにかく12位の奴が世界最高の男と戦うという大きなリスクを取って、フィニッシュしたんだ。アデサニヤのようなレベルの相手とは戦ったことがなかったが、フィニッシュした。これで16勝のうち14勝がフィニッシュで、しかも相手は世界最高の一人だ。くだらない批判をしていた連中は、さぞかし悔しい思いをしているだろうな。ざまあみろ」
──あと数問だけ。今週初めに話した時、あなたに「自分自身と戦うならどう攻略するか」と聞いたら、あなたは『脚を攻める』と言いましたね。そしてイジーはそれを実行しました。試合はあなたの完勝でしたが、1ラウンドが終わってスツールに座った時、脚は気になっていましたか?
「感じてはいたが、止まるつもりはなかった。ジャック(ハーマンソン)からは30発以上もらったが、あの時は前進しなかった。今回はそこが違う。何発かチェック(カット)したが、それでも彼は蹴り続けてきた。彼も蹴りながら痛めていたはずだ。確かに痛かったが、致命的ではなかった。適切な場所を適切な回数叩かれなかったということだ」
──最後に、個人的な成長と変化について。今週初めに『Be Joe Pyfer』というタグラインについて聞いた際、あなたは「ジョー・パイファー(という以前の人間)は死んだ」と言いました。しかしプロモーションでは常にその名前が使われます。コンテンダーシリーズの頃の自分を好ましく思っていない今、プロモーション映像などで以前の自分を見るのは嫌なものですか?
※『ダナ・ホワイト・コンテンダーシリーズ』を激しい試合で勝ち上がったパイファーを例に、ダナはしばしば「『Be Joe Pyfer』(ジョー・パイファーになれ)」と語っていた。
「この6週間の人生を考えると、ああ、今は見たくないな。ただ、俺の相棒がInstagramに投稿してくれたビデオがあるんだ。儀式的な計量の時に俺が言った『誰でもよかったはずだが、神が俺を選んでくれた』という言葉。あの瞬間の自分は誇りに思う。そして彼女のアシュリンにどれほど愛しているか、残りの人生を彼女と一緒にいたいと伝えたことも。俺は今、精神的に本当に良い状態にいるんだ。
『Be Joe Pyfer』としての俺、かつての人間としての俺は死んだ。だが『Be Joe Pyfer』という言葉は、人々をインスパイアするもっと大きな意味を持って生き続けるだろう。今はそれに意味がある。今の自分を誇りに思っている。毎日厳しい選択を迫られるが、今やっていること(信仰に基づいた正しい生き方)が実は一番難しいことなんだ。世の中の悪が攻撃してこようとするから、ますます難しくなる。そういう仕組みなんだよ。だから『Be Joe Pyfer』はこれからも存在するが、今は違う意味を持っているんだ」
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パイファー「長い間、俺はあまりに怒り、傷つき、トラウマを抱えていたせいで、魂の一部や幸せを奪っていくような対症療法に溺れていた」
『The Ariel Helwani Show』
──ジョー、試合後の手の状態はどう?
「ああ、折れているかどうかはまだ分からない。明日病院に行ってエックス線検査を受ける予定だ。間違いなく痛みはある。だから、大したことなければいいんだが」
──今日は信仰について聞きたいんだ。2カ月前にこの試合が決まった時に話した時は、こういう話は一切出なかったよね。これは比較的最近のことだと思うけど、転換点というか、いつそれが起きたんだ?
「2月7日だ。俺にとっては非常に暗い日だった。だが、同時に人生で最も実りあることが起きた日でもあった。それを理解するのには少し時間がかかったがね。メンタルヘルスの問題で苦しんでいて、自分の人生を終わらせることなどを考えていた。自分が犯した過ちのせいでね。正直に言うのは恥ずかしいが、実際に起きたことの一部なんだ。
夢の中に神が現れたような感覚だった。自分の魂が抜けて外から自分自身を見るような体験をして、自分という人間に吐き気がした。そして、自分が本当はどうありたいのか、どんな人間になりたかったのかが見えたんだ。俺の魂はまだ純粋で、愛はまだ本物だった。
それから、6年以上付き合っている今の彼女が、俺の2人の子供の母親として見えた。子供を持つことにはずっと迷いがあったんだが、子供たちの顔は見えなくても彼女の顔は見えた。非常に強力な瞬間だった。それから俺は溺れていて、イエスの手が見えた。その手を取って、目が覚めたんだ。それから人生がまるごと変わったように感じている。過去に自分が言ったことや感じたことが、どうしてあんな風だったのか自分でも説明できないくらいだ。まるで、かつての自分は死んだみたいだよ」
──2月7日がその夢を見た日なのか?
「いや、2月7日は俺がクズな人間であることの限界に達した日で、その約2日後にその夢を見たんだ」
──君がそう言うなら聞くが、2月7日に何が起きたのか教えてくれるかい?
「それは勘弁してくれ」
──分かった、もちろんだ。
「できるだけ多くの情報を伝えたいとは思っているが、自分自身への敬意も含めて、話すべきではないこともある。ただ、メンタルヘルスの問題を抱えていて、それを乗り越える必要があったということ、そしてその2日後に夢を見て、そこから本当の旅が始まったということだけ知っておいてくれ」
──記者会見でも少し触れていたが、ロケット科学者じゃなくても君が何を話しているかは推測できる。人間関係の問題、女性の問題だね。
「ああ、全般的な問題の一つとして、自分でも納得いっていなかったんだ。その日に起きたことだけじゃなく、女性との問題や、承認欲求、自信の無さ、そういったものすべてだ。正直に言って、女性を通じて現実逃避をするという悪い習慣が染み付いていた。それは俺を愛してくれる多くの人々、彼女だけでなく周囲の全員を傷つけるものだった。彼らは俺を高い基準で見てくれていたのに、俺は“これは俺の人生だ、ジョー・パイファーなんだから誰にも指図されない。生き残るために、幸せになるために、自分にとって最善のことをするんだ”と全員を切り捨てていた。だが結局、心は満たされなかった。
魂の中に悪魔がいて、それを浄化して追い払う必要があった。それができて、より良い男として戻ってこれた。イスラエルが与えてくれたチャンスでのこの勝利も、神が俺の人生に置いてくれたものだと思っている。神は、俺が経験したすべてのこと──良いことも、悪いことも、腕を骨折したことも、関係を失いかけたことも、すべてを経験することを望んでいたんだ。それが一つの美しい瞬間に結びつき、どんな人間も手遅れではないということを示せた。イエスと神に頼ればね」
──DC(ダニエル・コーミエーとの試合後のインタビューで、数週間前に命を絶つことを考えていたと言ったね。2月7日と言ったが、そこから数週間前までの間に他にも何か起きたのか?
「2月7日から2月16日くらいまでは、本当に、本当に暗い2週間だった。
──その間、すべてに向き合ってどう進むべきか考えていたんだね。彼女とは、今は元に戻ったのかい?
「ああ、俺たちの心は……時間をかけて正しい方法で、神を関係の中心に置いて修復しているところだ。彼女も他の誰も求めていないし、俺も他の誰も求めていない。彼女は俺の変化が本物かどうかを見極める必要があったんだと思う。試合前に会った時、俺たちはすでに良い状態だったが、彼女は俺がどれほど彼女を愛しているかを知る必要があった。俺はそれまで本当に愛を示してこなかった。俺はずっと愛を受け取るのが苦手な人間だったが、彼女は無条件に俺を愛してくれた。決して俺を恨まず、復讐もせず、見捨てなかった。あの女性こそが、今の俺がある理由だ。
心からそう信じている。神が彼女を理由があって俺の人生に置いてくれたと思っている。俺を今の男としての姿に変えるためにね。以前の俺は男じゃなかった、世界の邪悪に屈した男だった。長い間、俺はあまりに怒り、傷つき、トラウマを抱えていたせいで、魂の一部や幸せを奪っていくような対症療法に溺れていた。格闘技もそれ(幸せ)じゃなかった。格闘技をすべてだと思い込もうとしたが、それでも幸せにはなれなかった。彼女がしてくれた最高のことの一つは、俺を自由にしてくれたことだ。俺が神との関係に取り組めるようにね。俺が戻ってきてより良い男になれる唯一の方法は、悔い改め、許し、すべてをイエスの足元に委ねることだった。俺はそれに取り組んだ。毎朝起きてトレーニングに行くのが辛かった時期もあったし、キャンプも最高とは言えなかったが、神が望んでくれた。俺は起き上がり、突き進み、ここにたどり着いた。キャリア最大の勝利を挙げ、トップ5に入ったんだ」
──答えるのが難しい質問だとは思うけど、実際にその考えを実行に移すまで、どれほど近かったんだ?
「非常に近かった。数秒の差だ」
──どうして踏みとどまれたんだ? 何が止めたんだ?
「頭の中で呼びかけを感じたんだ。“それはお前が本当にやりたいことじゃない”と。俺はまた逃げようとしていたんだ。いつものように、痛みから逃げて何かの中に埋め込もうとしていた。だが今回は、ようやくそれに向き合った。“神様、助けてください、あなたのもとへ連れて行ってください、あなたを信じます”と叫んだんだ。おそらく人生で最も困難なことだった。やめるのは簡単だからな。信仰を世界に宣言することには多くの困難が伴うことも分かっているが、それでいい。今の自分の人生で何が重要か、何をすべきかは明確に理解している。進むべき道がはっきりと見えているんだ。だから、数秒の差だったが、あの祈りが俺を救った」
──誰か友人に電話したり、助けを求めたりはしなかったのか?
「もちろん、助けてくれたり導いてくれたり支えてくれた人々はいる。だが、あれは完全に神のおかげだった」
──君は有名人だが、彼女はそうではないはずだ。君は今、魂をさらけ出してすべてを語っているが、彼女はそれをどう思っている?
「彼女がこれを良しとしているのは、俺の変化が本物だと知っているからだ。俺は一生彼女と一緒にいたいし、彼女もそう思ってくれている。俺たちは離れない、一緒に取り組んでいく。復縁したと言っていいだろう。ただ、以前のように一緒に住んでいるわけではないし、それは最善のことだと思っている。結婚して、それから一緒に住むという、あるべき正しい手順を踏みたいんだ。ゼロからのスタートだ。俺は別人になったように感じるし、彼女もそれを感じている。あまり親しくない人でさえ、俺の顔つきが変わったとか、何かが違うと言ってくれる。自分自身を誇りに思うよ」
──信仰心が強くなり、今の君の感じ方と、人を傷つける「格闘」との間で内面的な葛藤はないのか?
「ないね。多くの人が『信仰を持つと相手を傷つけるエッジがなくなる』と言うが、俺にとっては違う。俺はファイターとして生まれたんだ。人間は本質的に悪いものだと俺は思っている。だから神が必要で、祈りが必要なんだ。人間の自然な傾向は、奪うこと、裁くことだ。謙虚さを保ち、復讐は俺の仕事ではないと理解することが重要だ。この人生は信仰の試練であり、死後には続きがある。俺もまた失敗し、罪を犯し、間違えるだろう。だが、二度としないと決めたこともある。神や、俺を愛してくれる人々をどれほど悲しませるか理解したからだ。
ケージの中に入るのは俺にとって簡単なことだ。試合を見れば分かったはずだ。冷静さ、成熟さ、敬意、優しさ、愛、そして勝利への執拗な追求を見せられたと思う。俺は今、神に栄光を捧げるため、そして愛する女性のために戦っている。何年も前、UFCに入る前から、彼女に『俺たちの人生を変えてみせる』と言った。この勝利が人生を変える。俺は今の自分の言葉に100%の責任を持つ男だ。だから、今は試合のことや次が誰かについては話したくない。神が与えてくれたこの勝利を味わいたい。人生で再構築すべきことがたくさんあるし、怪我もあるから、数カ月かけて人生をより良い場所に持っていきたいんだ」
──これらすべてのことを抱えながら、試合を欠場することは考えなかったのか?
「いや。怪我もあったしトレーニングキャンプも最高ではなかったが、死ぬほどトレーニングした。どう感じようが、何に悩まされようが、やり遂げなければならないと分かっていた。これは神が俺に“お前はどんな男だ?”と示すために与えてくれた機会だった。俺はそれを優雅にパスした。だからイジー(アデサニヤ)に対してもあんなに敬意を払えたんだ。以前の俺なら不遜な態度を取っていたかもしれないが、彼は生ける伝説だ。史上最高のミドル級で、俺に対してもずっと親切だった。彼とケージを共有し、特別な瞬間にできたことを誇りに思う。その夜はたまたま俺の方が上回っただけだ。彼が築き上げたレガシーは誰にも奪えない」
──試合後のインタビューで自殺を考えていたと話した時、会場は静まり返った。それは非常に重い告白だ。彼女はそのことを前から知っていたのか?それともあの場で初めて聞いたのか?
「昨日帰ってきたばかりで、彼女と再会したんだ。美しかったよ。……いや、彼女は知らなかった。あんな状態の時に誇らしく話せることじゃないし、彼女にこれ以上の負担をかけたくなかった。友人にもコーチにも言わなかった。誇れることではないが、あの瞬間、共有すべきだと感じたんだ。信仰の旅がなければ、俺はあそこにいなかったからだ。公の場で話すのは難しいが、二度とあんなことはしないと心から確信しているから、今は話せる。俺も人間なんだ。空気を感じ、血を流し、みんなと同じように疑いや吐き気、幸せや悲しみ、絶望を感じる。自殺を考えるのは非常に身勝手なことだ。たとえ一人でも大切に思ってくれる人がいるなら、やる価値はない。神の子供として、誰もが幸せになるチャンスがある。神と正しく向き合い、命じられたように生きれば、報われる。俺はその生きた証拠だ。普段ならアデサニヤに勝てなかったかもしれないが、勝ったんだ」
──試合後、彼女と会った時、彼女はどう反応した?
「まずは『愛している』と伝えて、泣きながら抱き合った。最近は、お互いを見つめては涙があふれてくる、そんな感じだ。愛が修復された。6年経った今、かつてないほど強く愛し合っていると感じる。クレイジーだよ。変化が起きたのは2月7日からで、2月16日か17日あたりから“完全に別人にならなければならない”という強い衝動に駆られたんだ。夢を見た後も少し抵抗したが、最後には降参して“あなたの計画が何であれ、それに向き合います”と言った。彼女は、俺がなぜ言わなかったのかと泣いたが、彼女自身が癒やそうとしている時にそれを押し付けるべきではないと思ったんだ」
──今の人生はどう違う? 具体的にどう変わったんだ?
「結婚の重要性を理解したこと。迷っていた子供を持つことの目的を理解したこと。格闘技がレガシーではない、子供こそが真のレガシーだ。アシュリン(彼女)をどう愛するか、イエスが教会を扱ったように彼女を扱うこと。すべてが変わったよ。過敏に怒ることもなくなった。強い男とは忍耐強く、怒るのが遅い男のことだ。もちろん、誰かが彼女を侮辱したり傷つけようとしたりすれば、出会わなければよかったと思うような俺の側面を見ることになるだろうが、そうならないように祈っている。今の俺が暴力を振るう唯一の例外は、自分や彼女が危険にさらされた時だけだ。それ以外は、平和で、優雅で、全員に対して敬意を払って生きたい。そして、できるだけ多くの人をイエスのもとへ導きたい。この世界には俺と同じように苦しんでいる人がたくさんいるからだ」
──彼女は土曜日の試合を見た?
「もちろんだ。彼女は涙の海にいたよ。……俺が使った入場曲もそうなんだ。EBENの『Hurts』という曲だ。2月7日にすべてが起きた後、彼女に手紙を書いていた。パソコンの前で泣きながら書いていた時にこの曲が流れてきた。幸せな曲じゃない、悲しく感情的な曲だ。自分が約束したのに変われず、愛が薄れていくことを歌っている。だからあの曲で入場したんだ。彼女に『俺は自分がしたことを分かっている、でも俺は君を選ぶ』と伝えたかった。彼女はどんな時も俺を選び、祈ってくれた。俺たちはそれを乗り越えたんだ」
──試合後、イジーと交わした言葉について教えてくれるかい?
「彼に伝えたんだ。『今夜起きたことなんて気にするな。あんたが成し遂げてきたことは誰にも奪えないし、俺の中ではあんたが史上最高だ。このチャンスをくれて感謝している、あんたが俺の人生を変えてくれたんだ』とね。彼は『俺たちにはお前が必要だ、これからはお前の時代だ。掴み取れ』と言ってくれた。俺は彼と練習して彼の頭脳から学びたいとも伝えたよ。彼には良いエネルギーを放つオーラがある。
みんな彼に対して厳しすぎると思う。コメントを見ると本当に腹が立つよ。一つの勝利の裏には誰かの苦しみがある。俺は勝って嬉しいが、イジーがこれほど叩かれているのを見るのは辛い。俺は29歳で、階級屈指のハードヒッターだ。彼は俺相手にとてもよく戦った。彼はハングリーに見えたし、あそこにいたいという意志が感じられた。あんなレベルで戦っていれば、誰だって勝つし、誰だって負ける。だから俺は浮かれていない。信仰が俺をここに留めているのもあるが、一方でイジーが『名前のない奴に負けた』なんて言われて攻撃されているのを見るのは……俺が成し遂げたことへの敬意さえ払われていないようだし、彼が攻撃され続けているのは悲しいことだ。彼は史上最高の一人だし、今も最高レベルで競い合っている。俺の前に彼が負けたのはトップ5の奴らだけだ。だから、彼に少し寛容になってあげてほしい。彼は格闘技以外にもやりたいことがあるんだ。本当に腹が立つし、悲しいよ。ファンには憎しみよりも愛を示してほしい」
──同感だ。彼はまだトップレベルのファイターだ。最後になるが、ダナ・ホワイトが君のインタビューを聞いて驚いていたようだが、その後話したかい?
「ダナもハンター・キャンベルも裏に来てくれた。多くは語らなかったが、ダナの顔に感情が表れているのが見えた。俺が勝ったことを心から喜んでくれていると感じた。ハンターもね。俺が勝てるとは思っていなかった人も多かっただろうし、ましてやあの勝ち方は予想外だっただろう。二人はとても良い言葉をかけてくれた。内容はお互いだけの秘密にするが、とても誠実なものだった。計量の時もダナは感謝を伝えたら誠実な言葉を返してくれた。俺は、ダナ・ホワイトは一人の人間として俺のことを気にかけてくれていると思っているよ」
──彼と最初に出会った時からそうだったね。ジョー、本当に嬉しいよ。ありがとう。怪我が早く治ること、そして彼女との関係や人生が最良の方向に向かうことを願っている。公の場で話すことは簡単ではないが、君の意志に感謝する。
「ありがとう、アリエル。プラットフォームを貸してくれて感謝する。最後に一つだけ。友人の投稿をリシェアしたんだが、それは俺が警察官でイジーを捕まえているような画像だった。あれはシェアすべきじゃなかった。イライラしていたわけじゃないが、軽率だった。リスペクトに欠けるものだったかもしれないし、あの『ボディカメラ・オフ』といったネタは世界中で深刻な問題を引き起こしているからね。撤回してイジーと世界に謝罪したい。そんなつもりじゃなかったんだ」
──分かった。ハッピー・イースター。君と家族にとって素晴らしい休日になりますように。
「ありがとう、話せてよかったよ」