公開練習では2Rのシャドー、1Rのミット打ち、1Rのサンドバッグ打ちを披露した那須川天心
2026年4月11日(土)東京・両国国技館『Prime Video Boxing 15』にて、ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)とWBC世界バンタム級挑戦者決定戦を行う那須川天心(帝拳ジム)が、3月31日(火)都内所属ジムにて公開練習を行った。
「発想だったり、他の格闘家にはないタイミングだったり、考え方だったり。ボクシングとはこういうものだってところを外してきた感じです」と、今回は那須川天心らしさにこだわりたいとし、キックボクサー時代からボクシングを学んでいた葛西裕一トレーナー(元・帝拳ジム)や、父である那須川弘幸TEPPEN GYM会長との練習を再開した。

葛西トレーナーは「(天心が)中学を出た時に紹介されたんですけれど、今まで教えた中で、自分も世界チャンピオンを4人、本田会長と帝拳ジムに携わって育成しているんですけれども、その4人の運動神経に匹敵する呑み込みの早さ、それと目がいいんですよね。目がいいっていうのは運動神経の象徴なのでこれは凄いなと感じました」と出会いの頃の印象を語り、今回再び指導するようになって「自分の古巣の帝拳ジムの教えをしっかり身に着けてきているなっていう。自分も本田会長、亡くなられた長野さんの弟子なので、自分は帝拳ジムのボクシング、本田会長のボクシング、自分の中のボクシングを天心にやってもらおうかなと言いました」という。

浜田剛史・帝拳プロモーション代表はエストラーダについて「いろいろな経験をしているのが大きい。そこが那須川天心との違いですね。ただ、今回後がない状況ですからそういったオールマイティーな選手にもまず勝たないといけない。勝つためにはどうすればいいか、そういったことが今までの練習の中でも出来たんじゃないかなと思いますね」とした。

メキシコ人ボクサーのスパーリングパートナーを招聘するなどして、「元々外して打つ、そういったセンスの良さはあったわけですよね。前回は井上拓真くんが突っ込んできたので慌ててしまったというのがありましたが、反省点としてそこをどうするか。今回もパートナーたちと一人ひとり外して打つセンスの良さを磨きながら、追加した点は打ち合うと。分かりやすく言えば打ち合ってどっちが強いか。それを体力使ってバテながらでもやった。この練習は次の試合には活きるんじゃないかなと思いますね」と、打ち合う練習を追加したとする。

これに那須川は「手応えはもちろんあるし、自分の中でも人間として強くなれたって部分がとても今回は多くて。一番キツかったかもしれないですね。自分で納得できたスパーリングがなかなか出来ない状況があり、試行錯誤しながら。近い距離、打ち合う距離って僕は正直あまり得意ではなかったんですけれども、そこであえて足を止めてじゃないですけれど今まで出来なかったことを出来るようにするってことは怖いことじゃないですか。新しいことに挑むっていうのは。だけど、その中にしっかり入り込んで自分から試合を作っていく。そういうところを戦いの中でも日常生活の中でも取り組んできたっていうのは、自分の幅になるかなと凄い感じます」とした。

エストラーダに関しては「何でも出来るし、一筋縄ではいかないっていうのもあるし、パターンをいろいろ出していかないと勝てない相手だと思いますね。自分の気持ちだったり、自分の持ってるものを全てぶつけてKOしたいなと思っています」と評する。

KO宣言は久しぶりではないか、と言われると「相手を仕留めに行くって勘だったり、心構えが自分の中であまりなかったなっていうのがありまして。ゲームを作るってイメージでずっとやっていたので。そうじゃなく、一人の男を狩りに行くじゃないですけれど、例えば自分の動きがいい時はいいんですけれど、悪い時もあるじゃないですか。そこをどうごまかして自分のペースに持って行くか、そういうところをずっとやってきたので、人として強くなれたっていうのがあります。今近寄られたら手が出るんじゃないかなって、それくらいの心意気ではあるので、ぜひ皆さん近寄ってみてください。10cm以上は近寄らないでください(笑)」と、人として強くなれたからだとした。

今回は倒すことにこだわりを持っているのか、と聞かれると「こだわることではないですけれど、自分の中で自分に対しての前回の不満だったりムカつくことだったりとか、そういうものをたくさん感じています。そういうものをしっかりと晴らしたい。世の中に対してもそうだし、常にムカついておりますので、そういったものを試合にすべてねじ込んで全面的に出していけたらいいなと思っていますね」と、答える。

プロ初黒星を喫したことで強くなれたと思うか、との質問には「強くなっていると思うし、負けを美化されるのもあまり好きじゃないので。負けは負けじゃないですか。切り離すことは出来ないので、負けたというのは1個の自分の中の経験になりますけれど、絶対にもう負けたくないですし、本当にギリギリの状況にいるなっていうのがあるので。そこをいろいろ言う人はいるかもしれないですけれど、自分の中では“黙れよ”って感覚ではあります。しっかりとやるだけかなと思います」と、反発心を力に変えるという。
負けたことでメンタルへの影響は「最初はありましたね。最初はずっと一人でいたりとか、ぼーっとする時間が増えたりとか。今は、切り替えることはあまり僕は好きじゃないので、その感情を一緒に持って行くというのをやっていますね。だから一人になって寂しい時もあったし、それが怒りに変わったりとかもしたし。それがあったから強くなれたと今は思えているので、必要な人間の最後のピースを手に入れたって感じではあります」と、今はいい方向へ進んでいるとした。

今回は挑戦者決定戦という形で行われるが「挑戦者決定戦とかっていうのはそこまで意識せず、自分が持っているもの、それ以上のものをしっかりぶつけて一人の男になろうかなっていう風に思っていますね」と、意識はしていないとのこと。
ここまでの話で、キーワードは怒りか、と問われると「怒りをぶつけるというか、自分に対してのですね。いろいろな感情が前回負けて出てきました。そういったものを拳にぶつけるじゃないですけれど、そこの感情を常に持っておりますね」との答え、
葛西トレーナーは井上戦の敗因を聞かれると「敗因を自分が言ってしまうと、次もし戦った時に向こう側の参考になってしまうので細かくは言えないんですけれども、天心が言った通りクロスレンジの対処が後手に回った感じがあったのでそれを修正しましたし、自分もラスベガスとベネズエラ、本田会長の指導で海外のボクシングを見てきてまして。そこで全てのパンチを打てるようにならなければいけないのが必須なんですけれど、自分もショートでは戦ったことはあまりないんですけれども、ロングが得意だったんですけれど、ショートのパンチのノウハウは知っていたので今回はそれを指導しました」と、近距離での打ち合いを修正したことを明かした。

また、試合の中でどう戦略を変えるかがポイントとなり、今回は井上よりもそれが上手い相手だが出来るのか、と問われると「出来ます」ときっぱり。「そのためにやってきてますから。今は迷いというものが一切ないです。そこで試合中に揺らいだりとか、一瞬の隙を見せると突かれてしまうので、そこを一切消してきてどの局面でも出来るぞっていう。自分に自信が出てきた感覚はあります。試合にならないと分からないですけれど、どの局面でも自分で試合を作れるようにずっとやってきているので問題はないかなと思っています」と、どの局面でも慌てず対処できそうだとした。
それは練習の中で根拠をつかんだのか、と聞かれると「今回はたくさん崖の上から落とされた気がしまして、そこから這い上がって来いよみたいなメッセージがいろいろな方々から来まして。そこをしっかり登ってきたというのがあります」と、那須川らしい返答。

後がない覚悟については「そこは自分的にも客観的に見ても、ギリギリの状態にいると思います。自分もギリギリの状態は強いと言いますか、そういう時の方が力を発揮できるなっていうのもあるし、常にギリギリではあるんですが、本当のギリギリだなと思いますね。そういう時こそやってやるよっていうようなものが、自分の心の中に芽生えてきていますね。あまり普段、感情だったりを出さないですけれど、練習でも一人になった時でもそうですし、たくさんそういうものが生まれてきてますね」と、そういう状態だからこそ力が発揮できるという。
3月28日の『RISE ELDORADO 2026』にて、弟の那須川龍心が逆転KO勝ちしたことには「弟から刺激をもらうっていう。本当にいい勝ち方をしてくれたので、自分の中でも嬉しい想いもありますし、やってやらなきゃなっていうのもありますし。4Rまでポイントをとられていたので、本当に持っているなって。俺だったらポイントは獲られないぞって思っています(笑)」と、刺激を受けたとする。
また、今回のテーマである原点回帰については「大きくなったりとか成長するといろいろな人と出会っていくわけじゃないですか。自分が有名になったり、お金を稼いだりするといろいろな人が寄ってきたりするわけで。そこで出会った人も自分を好きでいてくれる人もいると思うんですけれど、そういうところじゃない、元々知ってた人とか、例えば学校の幼馴染とかって自分が有名じゃない時も知っているし、本当の人間として見てくれている人が多いと思うんですけれど。そういったところを自分でもう1回探りにいったのが今回の自分の中のテーマでもあるし、本来の自分を知っている人に自分が今持っていなかった、見えていなかった、あるいは失くしかけていた、そういったものを呼び覚ましてもらう作業をしてきたって感じですね。そこを試合でしっかり見せないといけないと思います。この期間はそういった気持ちで挑んでやってきましたね」と話した。



