この試合までにたくさんの手術を経験した。フライ級の「プロブレム」が戻ってきた
──アミル・アルバジ選手、ファイトウィークに入りました。1年3カ月ぶりの試合、おめでとうございます。
「どうも、ありがとう。ありがとう」
──今回は興味深い一戦です。というのも、あなたは壊滅的というか、もしかしたら選手生命に関わるような怪我(ヒザ負傷、首手術、心臓手術)から復帰したけれど、モレノ戦は納得のいく内容ではなかった。そして今、新たなチャンスを得ました。今回の試合について聞く前に、あのモレノ戦についてうかがいます。あの怪我がパフォーマンスに影響していたと思いますか?“リングラスト”(Ring Rust=リング錆 ※試合勘の鈍り)のようなものがあったのか、それとも今回の試合に向けて克服した何かがありましたか?
「リングラストだったのかは分からないけれど、あの試合では間違いなく本来のパフォーマンスが出せなかった。本当の、本来のアミル・アルバジ、オリジナルのアミル・アルバジを一度も見せられなかったんだ。だから今、ようやく皆に『これが本物のアミル・アルバジだ、この階級の“プロブレム”だ』と見せられる機会を得られて嬉しいよ。土曜日に皆に見せるのが待ちきれない」
──あなたは特に「ケージの中でいじめっ子(Bully)になりたい、自分の力をしっかり見せつけたい」と言っていましたね。アミル・アルバジがオクタゴンで“いじめっ子”になるというのは、具体的にどういう状態なんでしょうか。
「僕はいつだっていじめっ子だよ。ケージに入ればね。外ではナイスガイだけど、ケージに入れば相手を痛めつけようと思っている。バイオレンスを──そう、バイオレンスを再び素晴らしいもの(Nice)にするつもりだ。僕は常にそれを持ち込んできたけれど、モレノ戦ではそれが欠けていたと感じている」
──前回の試合以来、グラップリングの大会にもいくつか出て忙しくしていました(2024年12月の『ADXC 8』でUFCのジャフェル・ フィーリョに判定負け、25年12月の『ACBJJ 20』でUAEWのラシド・ヴァガボフに判定勝ち)。それは今回の試合でも実行してよりグラップリング重視のアプローチになるのでしょうか。
「全てをやるつもりだ。でも間違いなく自分のルーツに戻るよ。試合以外でも、できる限りコンペティションに出ていきたいと思っている」
──堀口恭司は長く活躍している選手です。あなたも昔、彼がデメトリアス・ジョンソンと戦った試合を見ていたと言っていましたし、ファンだったとも。彼の息の長さや、このレベルで戦い続けられていることについてどう思っていますか?
「彼は本当に長く第一線にいる。格闘技の真のファンである僕が、堀口恭司という存在を知らないわけがない。自分の階級の選手はだいたい把握しているしね。彼はベテランだ。でも以前のインタビューでも言ったように、彼をアイドル視したり、崇拝したりはしていない。結局のところ、僕と同じように腕が2本、足が2本ある人間だ。僕ら二人とも血を流す。どうなるか見てみよう」
──アルバジ選手が以前話してくれたストーリーを、まだ知らない人のためにここでもう一度聞かせてほしい。あなたの生い立ちやMMAを始めたきっかけについて。スウェーデンに移住していじめに遭い、テレビでUFCファイターを見て、それが今のあなたに繋がった?
「ああ。僕はイラクからスウェーデンに移住した。新しい国に来て、色々な場所を転々とし、荒れた地域にも住んだ(※8年半、シリアとストックホルムの難民キャンプで生活)。学校の内外でたくさん喧嘩をしたよ。正直に言うと、それを楽しんでいた部分もあった。みんなに言われるんだけど、人を叩きのめすのが好きだったんだ。叩きのめされるのは嫌いだったけどね(笑)。ある日、偶然テレビでUFCを見たんだ。それで“ああ、自分を守るためにこれを学ぶ必要があるな”と思った。それがきっかけだ(※その後、13歳で柔術を始め、15歳でポルトガルでMMAデビュー)」
──あなたは25年8月に平良達郎選手と戦う予定でしたが、結局メディカルチェックが通らず実現しませんでした。それは首の怪我や手術に関連したものだったのでしょうか
「いや、首の怪我とは関係ない。別の理由だけど、それは明かさないでおきたい。ただ、本当にたくさんの手術を経験したのは辛かった。カイ・カラ=フランス戦(23年6月)の後に心臓の手術をした。そしてブランドン・モレノ戦が決まっていた時に、首の手術をした。ようやく復帰して試合を待っていたのに、平良戦で許可が下りなかった。
(※公式インタビューでは「平良との試合に向けて準備を進め、キャンプも全て終えた、試合の1週間前に(試合出場不可の)知らせを受け取った。大変だったよ。今のところ一番辛かったのは疑問(現役を続けられるのか)に常に向き合わなければならないことなんだ。何度も何度も。まるで誰かが『おい、(続けるのは)やめろ!』と言っているみたいに。そう感じた。でも、ジムでのパフォーマンス、今の気持ち、戦い方、そして自分がどれだけ成熟したかを考えると、辞めるにはまだ早すぎるような気がした。そういう考えが頭をよぎるけれど、しっくりこない。直感は『ダメだ』と言っているのに、頭の中では『まだ終わっていない。ミッションは達成されていない』という声が聞こえる」「これは物語の一部に過ぎない。そこから抜け出すには十分に強くならなければならない。これはファイターであるということの一部だと思う。ケージの中で戦うだけでなく、人生とも格闘し、闘わなければならない」とコメント)
でも、それはすべて過去のことだ。今はベガスに戻って、ここに座っていられることが嬉しいし、土曜日にケージに入って戦うことに、これ以上ないほどエキサイトしているよ」
──キャンプをドバイに移したきっかけは何だったのでしょうか。
「すでに変化を求めていたんだ。満足いかない点があったし、さっき言ったように、自分のルーツに戻って“オリジナルのアミル・アルバジ”のスタイルを取り戻したかった。ドバイでオージー(アザマト・オジー・ドゥグルバゴフ=WSOF5勝1敗)コーチに出会い、アトリアス・トレーニングセンターで練習している。少数精鋭のタイトなチームで、この変化にはとても満足しているよ」
──小さなチームの方が好みなのですか?
「そうだね、間違いなくスモールグループの方がいい。もともと小さなチーム出身だし、それが僕のスタイルに合っている。大きなチームも試したことがあって、メリットもあるけれどデメリットもある。僕にとっては小さなチームの方が理にかなっていると思う」
──ところで手短に、なぜイラクのケバブが最高なのか皆に説明してくれますか。
「イラク料理は一度食べたらもう戻れないよ。試合が終わったら誰か食べたい人はいるかな? 堀口に奢ってあげてもいいかもね」
──それは面白そうです。レストランを開く予定は?
「いや、僕は戦って食べる専門でいる方がいい。そっちの方がずっと簡単だからね(笑)」
堀口は見たこともないような相手ではないし、対処できない相手でもない
──幸運を祈ります。UFCに参戦してから、基本的には年に1回しか戦えていません。以前、あなたは年2回、3回と戦いたいと言っていましたが、コンスタントに試合ができないフラストレーションはどの程度でしたか?
「とても辛かったけれど、自分ではコントロールできないことだった。一緒に練習しているコーチやチームメイトなら分かってくれると思うけど、僕はものすごくハードに練習する。できる限りの時間を注ぎ込むし、オフシーズンなんてほとんどないくらいだ。でも、それが同時に僕の“アキレス腱”(弱点)でもあった。今は自分を理解してくれるチームとコーチを見つけた。準備の仕方も、やり方も変えた。これからはもっと頻繁にオクタゴンで僕の姿を見ることになると思うよ」
──練習しすぎて怪我をし、そのせいで試合ができなくなっていたということでしょうか。
「その通りだ。でも、ジムですべてを出し切るよりも、試合をして報酬をもらう方がずっと楽しいからね」
──現在のフライ級全体についてどう感じていますか。パントージャからヴァンに王者が変わり、次はマネル・ケイプが挑戦すべきだと思いますか。
「この階級は大きく変わった。特に僕のように長く離脱していると、モレノと戦った時とは全く違う景色に見える。でも正直に言うと、あまり周りのことは気にしていない。自分自身にだけ集中している。今の僕の頭にあるのは土曜日(日本時間8日)の堀口戦だけだ。それが終われば他の選択肢も考えるけれど、今は彼のことだけだ」
──堀口選手に勝つことは、あなたのキャリアや2026年にとってどんな意味を持つだろう?
「単なる勝利以上のものを期待している。トップ戦線に自分の名前を再び刻み込みたい。そのためにはフィニッシュして勝つしかないと思っている。判定なんて狙っていない。決着をつけに行く」
(※公式インタビューでは「2月7日に良いパフォーマンスを見せられたら、その(トップ戦線の)話題に加われると思う。ただ勝つためだけに出場するんじゃなくて、その争いに自分の名前を載せるために出場するんだ。そして、次に話題になる選手の一人にもなるつもりだ。(これが)まさに僕が望んでいたことだ。僕の名前を出すには、これ(堀口戦)が唯一の方法だった。もし他の選手と戦ったら、『ああ、でも……』って言われて、また戦わなきゃいけないってことになるだろう。堀口と戦えることは、自分の名前を戦場に出す素晴らしい機会になるだけでなく、ファイターとしても素晴らしい経験になる。誰もが『最強の選手と戦いたい』と願っている。そして最終的には、チャンピオンになるかどうかに関わらず、『最強の選手と戦えた』と言えるようにしたいと思っている。堀口はまさにそんな選手の一人だ」とコメント)
──幸運を。堀口選手にアルバジ選手のグラップリングやスキルについて聞いたところ、彼は「非常に完成されたファイターで、打撃も良い」と言っていました。あなたから見て、彼のどこが最も危険だと思いますか? 試合開始直後に集中すべき点は?
「彼もまた完成されたファイターだ。MMAのあらゆる領域に精通しているし、動きも速い。でも僕には僕の対処法があるし、戦略もある。良い試合になるだろう。皆に見てほしい。花火が上がるような試合になるはずだ」
──この試合が最も重要だという前提で、すぐにでもやりたい再戦などもありますか。モレノにリベンジしたいなど。
「もちろん。プロとして戦っている以上、やり返したいという気持ちは常にある。でも今は考えていない。堀口戦の後で、階級の状況を見て次を考えるよ」
──健闘を祈ります。堀口選手は長くこの世界にいますが、あなたにとって彼は以前から研究したり、憧れたり、あるいは“いつか交わるだろう”と意識していた相手なのでしょうか。それとも今回対戦することに驚きはありますか。
「いや、彼は長く活躍しているけれど、僕だって長いんだ。13歳からトレーニングを始めて、もう20年近く格闘技をやっている。彼が僕より長くスポットライトを浴びてきたのは確かだけれど、見たこともないような相手ではないし、対処できない相手でもない。それは土曜日の夜に分かることだ」
──間違いなくハイレベルな試合になりますね。カードにこの名前を見つけた瞬間、チケット代に見合う価値があると確信しました。今回のトレーニングや準備に関して、ベガスのApex(Meta APEX)に戻ってくる気分は? ベガスに2年住んでいたこともあるし、一種のホームタウン・アドバンテージというか、勝手が分かっている安心感もありますか。
「ああ、ここに2年住んでいたし、Apexでも何度か戦っている。すべてがどうなっているか、裏側がどうなっているか、どういう流れで進むかも正確に分かっているから、もちろん安心感はあるよ」
──モレノ戦に話を戻すと、いつも両方のファイターに話を聞けるわけじゃないから貴重なのですが、あの試合から得た最大の教訓や、学んだことは? あなたは格闘技の探求者だから、何か持ち帰ったものがあるはずだと。
「たくさんのことを学んだ。一番重要なのは、“考えすぎないこと”だ。ただアミール・アルバジを戦わせること。自分の体を解き放ち、ただ戦い、自分が得意なことをやる。それが勝利に繋がると信じることだ。これまではずっとそうしてきた。あの試合では躊躇しすぎたし、考えすぎた。ブランクのせいか他の要因かは分からないけれど、それが一番の失敗だったと感じている」
──解き放つことだと。あなたが今言ったことはとても重要ですね。ジョルジュ・サンピエールも「多くのファイターが、準備段階の練習場でキャリアを台無しにしている」と言っていました。一歩引いて「練習しすぎないようにしよう」と考えるのは、キャリアを長くし、ファンに素晴らしい試合を見せるために素晴らしいことだと思います。
「正直、練習場でのラウンドに対してはお金をもらえないからね。練習はあくまで準備のためにやるものだ。最高のパフォーマンスはファンの前で見せたい。ファンの歓声を聞くのは最高に気分がいいし、そのために格闘技を始めたんだ。これからもっとUFCのケージで僕の姿を見ることになるだろうし、次は大観衆の前で戦えたら最高だね」
──2026年に大きなアリーナで戦えるといいですね。今回は「新しい自分」で頑張ってください。
「ありがとう」
──今回のApexは少しレイアウトが変わって、座席数が増えるらしいです。以前の仕様を知っているあなたとして、新しいバージョンを見るのは楽しみでしょうか。
「正直に言うと、それは全く気にしていない。結局のところ、ケージに入れば、僕が考えているのは堀口と戦うことだけだ。観客が50人だろうが200人だろうが、僕にとっては何も変わらない」
──よくファイターは「観客の応援が奮い立たせてくれる」と言いますが、アルバジ選手は完全に集中しているから関係ないのですね。空っぽの部屋でも同じように戦えそうです。
「観客がいないと動けないのなら、それは間違った理由で戦っているんじゃないかな。誰もいない部屋でも、数千人のアリーナでも、僕はどのみち100%でやりに行く。そこは変わらないよ」






