2026年4月29日(水・祝)東京・有明アリーナにて『ONE SAMURAI 1』(U-NEXT配信)が開催された。
メインイベント(第15試合)のONEフライ級(-61.2kg)キックボクシング暫定世界タイトルマッチ3分5Rは、ロッタン・ジットムアンノン(タイ)から武尊(team VASILEUS)が合計4度のダウンを奪い、5R2分22秒でTKO勝ち。引退試合でこれ以上はないという有終の美を飾った。
試合後、武尊は安堵の表情を浮かべてインタビューに答えた。
勝因は「自分の弱さを認識できたこと」
――試合を終えての率直な感想をお伺いできますでしょうか。
「本当に嬉しいの一言しかないですけど。34歳、今の年まで現役やるとも思ってなかったし、身体的にも持たないかなと思ってたんですけど、本当にたくさんの人の支えのおかげでここまで格闘家としてやってこれて。最後にチャトリがタイトルマッチを組んでくれて、そのおかげでこの引退試合のモチベーションがめちゃくちゃ変わったので、本当にONEのスタッフ、チャトリ、みんなに感謝ですね。現役最後、この試合ができて本当に幸せです。ありがとうございます」
――今後の目標や展望があれば教えていただけますでしょうか。
「現役生活は今日で終わりですけど、本当にこの格闘技の熱を止めたくないし、僕は魔裟斗さんが盛り上げた日本格闘技界、魔裟斗さんが引退して一回盛り下がって、僕が憧れてK-1を目指して東京に出たけど、K-1が1回消滅しちゃって、テレビとか表舞台から格闘技がなくなっちゃって。最初に苦しい時期を過ごしたので、僕に憧れて格闘技を始めてくれた子供たちとか、これからのファイターにちゃんと同じようにこの盛り上がる舞台を残してあげたいし、次の格闘技を引っ張る選手が出てくるまで、僕はもっともっとK-1とかRISEとかいろいろな団体がありますけれど、どの団体も一緒に盛り上げたいと思ってるので、出来ることがあれば僕も協力するので、格闘技界をこれから盛り上げ続けていくことが出来たらなと思ってます」
――最高の形での引退試合だったと思うんですけども、今回最大の勝因というのは自分でどう分析されますか?
「ONEに来て、自分の弱さをちゃんと認識できたのが。今までの戦いって、ずっと勝ち続けてきた時って、本当に自分が負けない、絶対勝てると思ってやってたんですけど、ONEに来て、こんな弱いところがあるんだなとか、いろいろ自分で発見できて。それをこの最後の試合で、今までONEで感じた自分の弱さだったり、それこそ身体もどんどん壊れていくところもあったり、そういう自分の弱い部分をちゃんと認識した上で、それに合った自分の戦いだったり、身体作りっていうのを最後にバチッとハメられたっていうことかなと思います」
――今回、弱い自分という部分も克服できたってことですか?
「弱点とかもそうなんですけど、今まで出来たことが出来なかったりとか、そういうことがいっぱいあって。だけど今までと同じようなことをしちゃってたので、それで壊れちゃってた部分もあったりしたので、そこを自分で認識してやり方を変えたりとか。難しいですけど、上手く修正を最後だったから出来たっていうのはあるんですけど、今日まで身体を全部使い切って壊れてもいいつもりで追い込みもやったし、そのギリギリを上手く…すいません、言葉が難しいですけど、それができたのが良かったなと」
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みんな日本の団体一緒に格闘技界を盛り上げましょう
――厳しい道のりだったと思うんですけど、その一番最後にそれが報われるベストバウトを戦うことができた気持ちはどういう感じでしょうか。
「自分の試合をまだ見てないので実感がないですね。試合前、弱音を吐きたくなかったんで言わなかったんですけど、毎日また倒される、自分が失神してる夢とか、足の骨が折れてる夢とか毎日見てて、怖かったんですよ。みんなの期待を裏切っちゃうなとか。だから生きて帰ってこれてよかったなみたいな。そんな感じです」
――チャトリさん、武尊選手はこの後もう1試合の可能性はありますか? スーパーレックへのリベンジとかありますか。
チャトリ「今日は最高の武尊選手を見ました。そのような武尊選手を日本、そして世界に覚えられて欲しいです。最高の締め方でした」
――ロッタン選手への感想は?
チャトリ「ロッタンが心を痛めているのは分かっているので、私もとても悲しいです。しかし、彼は元世界チャンピオンのファイターです。もし彼がトレーニングを学び、そして成長に再び打ち込み、再び闘志を取り戻すことができれば、再び世界の頂点に立つことができるでしょう。私たち誰もが、安住しすぎてしまうと、それが破滅を招くことがあるのです」
――最後にマイクの関係なのか、会場で武尊選手が話されていたことが全て伝わってない部分もあったかと思います。どんなことをおっしゃっていたんですか?
「一言一句は思い出せないですけど、僕って格闘技センスが本当になかったんですよ。小学校から格闘技を始めて、勝てなかったし、運動神経も普通なんですよ。だけど、こういう風に強くなれたし、結果も残せたので、夢を持つ人は絶対諦めてほしくないなって。みんな天才とかエリートって思っていると思うんですけど、全然そうじゃなくて。本当に勝てなかったので、それを伝えたかったのと、あとは今格闘技界にいろいろ団体の壁だったり、いろいろ問題があったりとかして、一回盛り下がりそうだなみたいになっていて。
それが僕的には凄くつらかったし、僕が引退することで魔裟斗さんが辞めた後みたいにK-1がなくなったりとか、ONEみたいな大きな舞台が日本からなくなっちゃうのは凄く悲しいことなので。そういう次のファイターが出てくるまで、ファンの人たちみんな一緒に格闘技界を盛り上げましょうっていう。いろいろな団体、K-1もRISEもKNOKC OUTも、みんな日本の団体一緒に格闘技界を盛り上げましょうっていう、みたいな感じですかね」
――試合中は笑顔が見られて、ロッタン選手に殴って来いってやられていたのをご自身では覚えていらっしゃいますか?
「はい、覚えてます」
――戦っている最中、楽しいっていう感覚は感じられてましたか?
「はい、楽しかったですけど。なんか殴り合いたいなっていうか(笑)。そんな感じです」
――もっと試合が続けばいいな、と?
「勝ちたいのはもちろんあるんですけど、格闘家人生、小学校から始めて30年ぐらいやってきて、この5Rで終わっちゃうんだと思ったら、勝ちたいよりロッタンのパンチをもっともらっておきたいなって思っちゃって(笑)。それと戦ってましたね」
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死んでも倒れるなと思ってパンチを
――昨日、那須川天心選手のインタビュー動画があがっていて。
「ああ、ちらっと見ました」
――試合前に何か感じるものはありましたか?
「ああいうインタビューで僕のことをちゃんと喋ってくれたことがなかったと思うので、応援してくれたのも嬉しかったし、勝って欲しいって言ってくれたのも。本当に戦った戦友として嬉しかったし。天心選手もこれからボクシングでずっと活躍していくと思うので、ボクシング、キックボクシング、ムエタイ関係なくみんなでこれから盛り上げたいと思っています」
――2Rに2回ダウンを奪って、その後かなりロッタンが反撃してきて、ノーガードでかなり打たれたシーンがありましたが、前回はKOされた武尊が今回立っていられたのは何だったんでしょうか?
「いろいろな要因はあるし、戦い方もすごい研究したので。ロッタン選手ってブンブン振り回してるんで達人みたいな動きをするので、それを前回の試合ですごい感じて。それで勉強できたっていうのもあるし。前回は、本当に言い訳はしたくないですけれど、実際戦えるような状態ではなかったと思うので。胸骨と肋骨が折れていて、脳では頭をガードしなきゃと思うんですけど、お腹を守らなきゃと自然と動いちゃったのもあったし。今日は、絶対ロッタン選手のパンチが強いとか効くっていうのも分かった上でもらったので耐えられたのもあるし、最後なのでみんなの期待を裏切れないし、死んでも倒れるなと思ってパンチをもらいました」
――やり切りましたか? もう一度、みたいなものが盛り上がってることはないですか?
「やれるならやりたいですけど、本当に今日このリングに立てるかどうかも分からないぐらい、僕の中では身体が持つのかなっていう不安の方が大きくて。今日で使い切ったなっていう。そんな感じです」
――武尊さんにとって格闘技、キックボクシングっていうのはどういうものでしたか?
「僕は格闘技と出会っていなかったら本当にろくでもない人生だったなっていうふうに思うし。34ですけれど、こんな最高な人生にしてくれたのは格闘技のおかげなので。格闘技に感謝しかないですね」
――殴り合いながらも、しっかりカーフやミドルを蹴ってましたけど、落ち着いてましたか、興奮してましたか?
「頑張って興奮を抑えてましたね。それこそ丁寧にやろうっていうのもあるんですけど、僕、試合のイメージを作る時にどうしても我慢できなくて殴り合いに行っちゃうんですよ。何回イメージしても。試合直前まで丁寧に削って、自分が強かった時の戦い方を思い出して。ロッタンとだから思い切り殴り合いたいけれど、丁寧に削ってから殴ってを意識しましたね。頑張って。今日来てくれた人もそうですけど、応援してくれてた全ての人たちに勝ちを届けたかったので、このベルトを届けたかったので自分と戦いました」
――明日からは選手として練習しなくてもいい日々が始まりますけど、どんな風に過ごしたいですか?
「ジムには行くと思います。言ってないですけど、いろいろ身体も壊れてるところもあるので、それを治しながら私生活に支障が出ない程度に格闘技をやろうかなと思ってます」