米国のミャンマー人コミュニティが、俺のために祝賀会を開いてくれたんだ

(C)Chin Youth Organization of North America
──ファンが君に惹かれる理由の一つは、その活動量と「チーフ・キーフ」で入場することだ。最高のチーフ・キーフの曲は?
「『Love Sosa』は間違いないな。でも俺が入場に使うのは『I Don't Like』だ。中学や高校の頃、あの曲を聴くたびに“全員ぶっ飛ばしてやる”って気分になったんだ」
──なるほど。他に誰を聴く?
「実は、最近はラップを全然聴いてないんだ、ブラザー。失恋ソング(Heartbreaking songs)とかそういうのばっかり聴いてる(笑)」
──ええ!? 裏で泣いてるの?(笑)全く予想してなかったよ。
「ああいう切ない曲が俺を奮い立たせるんだ。トレーニング中もな」
──誰のことだろう? ドレイクとか?
「いや、カントリーソング系だよ。みんな驚くけど、ジムのみんなも気に入ってくれてるよ。いいバイブスだって」
──衝撃的だよ。テキサスにいるから? カウボーイになって農場を持つのが目標?
「ああ、いつか牧場を持って、自分の農場を持つのが夢さ」
──ラップの「ビッグ3(ジェイ・コール、ケンドリック・ラマー、ドレイク)」についてはどう?
「わからないな……ドレイクかな……いや、本当にラップを聴かないんだ。ジェイ・コールも聴かない。21サヴェージは好きだけどな。チーフ・キーフは高校の頃みんな聴いてたから、その思い出が頭にこびりついてるだけなんだ」
──なるほど。あなたのファイトスタイルについてですが、ボディショットをすごく多用します。頭と腹でのKO、どちらで勝ちたいと感じていますか?
「確実にボディだ。ボディを打てば、相手の心を壊せる。顔なら一発もらっても持ち直せることもある。でもボディをまともに食らったら、嘘はつけない。ポーカーフェイスは作れても、体は正直だ」
──UFCの歴史の中で、お気に入りのノックアウトは?
「自分の試合ならブルーノ・シウバ戦だ。フィニッシュの仕方がいい(※左ボディを効かせて連打)。あとはエドガー・チャイレス戦。ひどいダメージを負って追い詰められたところからカムバックして勝った。あの試合で“俺は本物だ(I'm that guy)”と確信できたんだ(※1Rにチャイレスがカーフを当てるが、2Rにヴァンが左ボディを効かせて逆襲。チャイレスはバックブローでさらに形勢逆転も、3Rにヴァンがテイクダウンからパウンドで判定勝ち)」
SPINNING BACKFIST 💥
— UFC (@ufc) September 15, 2024
{ #UFC306 | @RiyadhSeason #NocheUFC ] pic.twitter.com/yzGg6efHZY
──ロイヴァル戦よりも価値がある? チャイレス戦は(短期間の準備の)ショートノーティスでした。それともロイヴァル戦の方が「俺はナンバーワンコンテンダーだ」と証明したという意味で重要でしょうか。
「チャイレス戦だな。負けた直後のどん底の状態から、試合中にまた怪我をして、それでも勝ち切った。それが“もっと上を目指そう”っていうモチベーションになった。自分を鼓舞してくれた。ロイヴァル戦の時には、もう自分がタイトルに挑戦するのは分かってたからね」
ストライカー💥ジョシュア・ヴァンの連打👊
— UFC Japan (@ufc_jp) September 15, 2024
ピンチな場面もありながら、ユナニマス判定でエドガル・チャイレスに勝利💪
🏟️スフィア @SphereVegas よりライブ配信中✨️
【 #UFC306 | @RiyadhSeason #NocheUFC | @UNEXT_fight & #UFCFightPass 】 pic.twitter.com/8veMwFn3pW
──あなたの黒星は2つ。一つはプロデビューした2021年のFury FCでのデボン・ジャクソン戦のRNCによる一本負け。もうひとつは24年7月のUFCでのチャールズ・ジョンソン戦の右アッパーでのKO負け。ジョンソンとの再戦か、パントージャとの再戦か、どっちをより望んでいる?
「あんたはどっちがいいと思う?」
──パントージャ戦です。あの終わり方に納得してないファンも多い。勝って嬉しい反面、すべてを出し切れなかったもどかしさもある?
「ああ、試合前から『3ラウンド以内にフィニッシュする』って予言してたんだ。でも、すべては理由があって起こることだ。今は幸せだよ。でも、再戦はやりたい。あの夜、(怪我が無くても)俺が勝つはずだったんだってことを証明したい」
──チャールズ・ジョンソンとの再戦については?
「みんな聞いてくるけど、あいつのランキングは何位だ? ランク入りしてるのか?(13位)。俺がその位置にいた時は、そこから3人と戦わなきゃいけなかった。あいつもまず誰かを倒して上がってくるべきだ。俺が『チャンスをプレゼントされた』なんて言う奴もいるけど、俺はロイヴァル戦にショートノーティスで飛び込んで自力で掴んだんだ」
──そういったアンチにメッセージはある?
「“俺は有名になったんだな”ってことさ。アンチがいるのは、成功した証拠だよ。俺もようやくそこまで来たかって感じだ。今のこの階級はすごく面白い。ファンが俺を嫌って別の選手を応援する。それが興奮を生むんだ。チャールズ・ジョンソン、ケイプ、平良、もう一人の日本人……堀口(恭司)だっけ? 彼もだ。それからもちろんパントージャ。全員かかってこい」
── UFCが拡大して、ヒューストン、シアトル、ホワイトハウス(ワシントンD.C.)なんかでも開催される。キャリアが終わるまでに一度は戦ってみたい場所はある?
「ミャンマーと言いたいところだけど、無理だろうな。でも、地元のヒューストンでは絶対に戦いたい。あとは、ミャンマーに近いどこかだ」
※日本にいるミャンマー人の数は、2025年6月末時点で約16万人に達し、在留外国人の国籍別ランキングでは中国、韓国に次ぐ上位に位置する。
──ミャンマーにはまだ帰れてないんですよね。帰国を妨げているのは……。
「向こうでは戦争が起きているんだ。内戦だ。それが理由だよ。みんな自国に帰ってパレードをしたりするだろ? でも、アメリカのインディアナ州に住んでいる10万~20万人くらいのミャンマー人(ビルマ人)コミュニティが、俺のためにパレードをしてくれたんだ。彼らが祝ってくれたのは本当に恵まれていると感じたよ。自分のルーツのみんなが支えてくれているのを見るのは最高の気分だ。次の防衛戦が終わる頃には、状況が良くなって故郷に帰り、ミャンマーの人々に恩返しができることを願っている」
※ミャンマーの軍事政権は2025年12月28日から2026年1月25日にかけて、国軍主導の総選挙を実施。2021年に犠牲者を多く出したクーデターで権力を掌握し、アウンサンスーチー氏を拘束して以来、初めての投票となるが、今回の総選挙は、スーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が実質排除されたなかで実施されており、正当性が疑問視されている。
──あなたの家族の誰かが「本物の男は路上で戦わない。人々のために、国のために戦うんだ」と言ったという言葉を聞きました。チャンピオンベルトを掲げて、国を代表しているという感覚は大きいですか。
「ああ、俺にとってすべてだ。ミャンマーがどこにあるか知らない人も多い。『どこ出身だ?』と聞かれて『ミャンマーだ』と答えると、『どこだよ、それ?』って言われる。でも『タイの隣だ』と言うとみんな納得する。だから俺の国を世界に知らしめるチャンスを得たのは、本当に恵まれていると思う。国、そして第二の故郷であるヒューストンを代表できることも誇らしい。俺はヒューストン出身で初めてのUFCチャンピオンでもあるからな。ヒューストンにシャウトアウト(Shoutout 敬意)を送るぜ」
──外から見ていても、あなたは毎日ずっとジムにいるように見えます。UFCチャンピオンになるために、人々が気づいていない「大変なこと」は何でしょう。ショートノーティスで最強の男たちと戦い続け、年に3、4回試合をするために、どれほどの努力が必要なのか。
「そうだな……その過程で多くの友人を失うことになる。夢を追いかけて本気になれば、友達と遊んだり今までやっていた楽しいことをする時間はなくなる。それでみんな離れていくんだ。愛する人や友人をたくさん失ったよ。でも俺は自分の夢に正直であり続け、追いかけ続けた。簡単なことじゃない。一番近い人間が『あいつは格闘技のことしかしてない』って陰口を叩くこともある。でも自分を信じて、神に祈り、成功をイメージするんだ。それが現実になった時の喜びは計り知れない。今は一度獲ったこのベルトを、何度か防衛するためのモチベーションに溢れている。プロセスは過酷だけど、それだけの価値はあるよ」
──2026年に向けての抱負は? プランやタイムラインを教えてください。
「2025年の初めに『今年はテイクオーバー(乗っ取る)の年になる』と言ったが、本当に乗っ取った。2026年は、この頂点に居座る年だ。それがメインゴールだ。今年中に3回防衛したい。それから……ボクシングに行くのもありかな。可能だと思うよ。何度か防衛してから、ボクシングでベルトを獲って、また戻ってきて防衛戦をする」
──ボクシングにも挑戦したいのですか。夢のカードはパッキャオ?
「パッキャオは少し歳を取りすぎているから現実的じゃないかな。でも、引退する前に一度はボクシングを経験してみたいんだ。その時に勢いのある奴なら誰でもいい」
──試合はよく見るのですか。
「自分の試合はよく見るよ。自分を客観的に見て、何が悪くて何が良かったかを集中して分析するんだ。でも他人の試合はあまり見ないな。ピョートル・ヤンみたいに、本当に研究対象にしている選手の試合以外はね」
──最後に、あなたをサポートし続けているファンにメッセージを。
「2026年か、まずはサポートしてくれて、信じてくれてありがとう。俺はタイトルを防衛し続ける。ベルトが欲しい奴は誰でもかかってこい。連絡先は知ってるだろ。俺はいつでも戦う準備ができている。口先だけのやつはもういい。ケージの中で会おう。やってやろうぜ」





