2025年12月27日(土)タイ・ラジャダムナンスタジアム『RWS ラジャダムナンスタジアム80周年記念大会 R80』にて、ラジャダムナンスタジアム認定バンタム級世界タイトルマッチに出場するRISE世界スーパーフライ級王者・大﨑一貴(OISHI GYM)が、ムエタイでも活躍するRISE世界スーパーライト級王者チャド・コリンズ(オーストラリア)と初対談を行った。
元々はムエタイルールでも活躍、ラジャダムナンとルンピニーの両スタジアムに上がり、2018年6月にはルンピニー王座にも挑戦したことがある大﨑だが、2020年2月にRISEに参戦してからは初のムエタイルールとなる。記念大会という大舞台でラジャ王座に挑む大﨑に、ムエタイとキックボクシングの試合を並行して行っているチャド・コリンズが送ったアドバイスとは?
“やらないといけない”(大﨑)
――お二人が交流を持つようになったきっかけはいつくらいからですか?
大﨑「いつぐらいからだろう。最初はチャドの方から『君のファンです。ファイトスタイルがとても好きだ』って話しかけてくれて、そういう風に言ってくれたのがすごい嬉しかったんです。チャドはその時もトップで活躍していた選手で、そういう言葉をもらえたのが心にずっと残っていて、チャドが日本に来た時は仲良くさせてもらっています」
チャド「一貴のスタイルは速いし強いしすごく大好きだよ。一貴もトップの選手だし、世界一のレベルのファイターだと思っています」
――調べたら2019年の2月にKNOCK OUTでお二人とも一緒に同じ大会に出場されていましたね。
チャド「もうそんなに前になるんですね。その日が僕の初来日でした。とても大変な試合で、ローを効かされて何日間も歩けなかったんですよ。僕が対戦した中で不可思が1番タフで、次がペッチでその次が原口で、その3人が自分の中で1番タフなファイターでした。2月だったから試合が終わったら日本でスキーに行きたいって言っていたんだけど、試合が終わったら歩けなくて未だにその夢が叶っていません(笑)」
――チャド選手は先日肩の怪我をされてトーナメントを欠場となってしまいましたが、怪我の具合はいかがですか?
チャド「ちょっと時間はかかっているけど、だいぶ良くなって頭ぐらいまで手を上げられるようになったし、今は軽いウェイトトレーニングもできています」
――今回の大﨑一貴選手がRWSにチャレンジするというニュースはご存知でしたか?
チャド「日本のファイターが日本だけではなくて、ONEやRWSもそうですし、世界のプロモーションに色々と出て活躍しているのはすごいことだと思います。8月に撫子選手がオーストラリアでWBCの世界タイトルに挑戦して、ルーシーというオーストラリアでも有名な選手に勝ったので日本の選手が海外で活躍しているのは見ていて嬉しいです」
――一貴選手は今回RWSに挑戦しますけど、改めて心境をお聞かせください。
大﨑「段々と試合の日が近づいてきて、より一層試合に向けて気合が入っていますし、今回は特にRWSという大きい大会のタイトルマッチでもあるので、すごく沢山の方が応援してくださっていて期待もしてくれているので、“やらないといけない”っていう思いがどんどん強くなっています」
チャド「自分の気持ちが高まってそこに応援が重なって、色んなことが混ざってくるのはすごく良いことだと思うよ」
――RISEに参戦する以前はムエタイルールでヒジありもやっていましたが、RISEに参戦してからはおそらくヒジありのルールでは試合をしていないと思います。今回ムエタイに挑戦するにあたって苦労していることや試行錯誤していることはありますか?
大﨑「1番は首相撲だったりヒジだったり、今までやってきたRISEルールではない所の部分、ムエタイ特有のルールの練習を強化してやっています。その中で今までRISEで培ってきた部分や成長させてきた部分を出せるように、それこそムエタイルールにもアジャストできるように練習しています」
チャド「ムエタイの練習もしていますが、同時にRISEルールによって多くのものを得られていると思います。コロナ以降でラジャもONEやRWSの影響でムエタイのルールも変わってきていて、どんどんアップデートされているので良いと思います」
――アグレッシブにいく選手がより有利になるようなルールになっていますよね?
チャド「そうですね。ただ判定の基準はダメージ重視なので、強い攻撃が1番重要です。だから一貴は前からムエタイもやっているし、1発1発の攻撃が強いから良いと思います。速くて手数だけだとなかなかポイントにならないからね」
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アウェーの環境も楽しむぐらいの気持ちで(チャド)
――チャド選手自身もRISEに出場している一方で常にムエタイにも挑戦していますが、それぞれルールが違う中で両立させていく秘訣や両立できている理由はありますか?
チャド「僕にとっては難しいことではないですね。僕のファイトスタイルは前にガンガン出て強い攻撃を当てるというのが特徴で、それはムエタイでもキックボクシングでも通用するので、ヒジを出せるか出せないかの違いになります。あとはムエタイの場合はもうちょっと見て的確に当てるという感じなのですが、基本的にはスタイルは変えないので、両方ともにマッチするスタイルだと思っています」
――ガンガン前に出て攻撃を当てるという部分ではチャド選手も一貴選手も同じようなスタイルなので、おっしゃったような戦い方ができれば一貴選手は今回の試合に活かせそうですね。
チャド「5ラウンドでの戦いは散々やっているから問題ないだろうし、逆に5ラウンドで良かったんじゃないかな」
――アウェーの状況で試合をする経験も多かったと思うのですが、そういった環境で試合をするにあたって、良いコンディションとモチベーションを保って試合をする秘訣はありますか?
チャド「まず最初に言いたいことは、そういうプロセスも楽しんだ方が良いということ。後から『こうすればよかった』という後悔をしないように、アウェーの環境も楽しむぐらいの気持ちで臨むんです。本当に楽しんで笑いが出るような戦い方をするんです。一貴のスタイルは皆が大好きなスタイルだから、そのままで素晴らしい戦いができると思っています」
――ラジャダムナンスタジアムでいうと、最近は海外からの観光客の方も観戦されている人が多いですよね。
チャド「僕は昔のムエタイが好きだから寂しい部分もあるけれど、世界スポーツにするためにはそういうのが必要ですし、会場にLEDライトを入れたり変わっていく部分も必要ですよね。3ラウンドのムエタイというのが主流になってきていて、本当にムエタイも変わってきたと思います」
――一貴選手からチャド選手へ質問したいことはありますか?
大﨑「さっきも話しにあったんですけど、今回はムエタイなのでRISEルールとムエタイルールの違いがある中で、ポイントを取る上でどういった所を意識した方が良いですかね。どちらかと言うと僕はパンチの方が得意なんですけど、蹴りもどんどん使っていった方がいいのか、それよりもパンチで攻めた方がいいのか教えてほしいです」
チャド「とにかく“最初”に手を出して“最後”に手を出すことを意識して、相手が蹴ってきたら必ず蹴り返すっていうのをやればポイントを取れます。あと、とにかくブレないように重心をしっかりさせて強く当てていくというのが重要です」
――それは相手の攻撃によって体が流されたりしたら、マイナスな印象になるからですか?
チャド「そうですね。もしくはスウェーで攻撃をかわしても良いですけど、攻撃で言うとフェイントをかけての前蹴りは、タイ人も真っ直ぐ立つのでそこに前蹴りから中に入っていくというコンビネーションが効果的なので、毎回使っているし練習しています」
大﨑「それ、練習します」
チャド「とにかく一貴のスタイルで戦えば大丈夫だよ」
大﨑「分かりました。あとは、対戦相手がサウスポーなんですけど、サウスポーの相手とオーソドックスの相手と戦う時に何か意識していることはありますか?
チャド「とにかく右のパンチと右のハイキックを狙った方がいいよ。パンチを出す時に相手がヘッドスリップをするので、そこにハイキックを当てられるといいね」
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WBCムエタイのベルトも獲りたい(大﨑)
――チャド選手から一貴選手に改めて伝えたいメッセージはありますか?
チャド「本当に素晴らしいファイターなので、自分のスタイルで戦ってください。それだけです。あとは試合と試合までの時間も含めて楽しんでください」
――お二人に聞きたいのですが、チャド選手は30歳で一貴選手は29歳という事で、これからキャリアのピークを迎えてくると思うのですが、今後目標にしていきたい事とかはありますか?
チャド「やっぱりとにかく強い選手と戦いたいです。是非RISEとGLORYでユニファイドした新しいベルトを作ってもらって、自分とペッチでそのベルトをかけて戦いたいです。GLORYではペッチもずっと勝っているし、僕は1回ペッチに勝っているので、GLORYとかRISEのベルトじゃなくて両方の新しいベルトでやってもらいたいです。2人とも同い年で昔からムエタイやキックボクシングをやっているし、最初の試合もすごい試合だったし、次の試合も絶対にすごい試合になると思うから、是非その機会を与えてほしいです」
――一貴選手はいかがでしょうか?
大﨑「とりあえずこのラジャのベルトを巻くという事もそうですし、RISEとしては世界のベルトも持っているのでその防衛もしたいです。そしてこの53kgという階級だと僕が1番強いという所を証明し続けていきたいです。この階級だったら確実に僕が1番だろうと皆んなに言わせられるような試合だったり勝利を持ってこないといけないなと思っています」
チャド「一貴はWBCムエタイのベルトも獲ってね」
大﨑「チャドと同じWBCのベルトも獲りたいですね」
――一貴選手のWBCが実現したら、チャド選手がラジャのベルトを獲る番ですね。
チャド「前から『ラジャでベルトを』と言われていたのでそういう日がくると嬉しいし、一貴にはグリーンとゴールドのベルト(WBCムエタイ)を獲ってもらわないといけないね」
――お互いに同じようなベルトを獲れる貴重なお2人だと思うので、拳を交えることはないですけど切磋琢磨してRISEを含めこの業界を盛り上げていってほしいと改めて思いました。
チャド「自分が子供の頃にピーター・アーツを見て育ったように、今の子供達が一貴や僕を見て育ってくれて、その子たちが自分たちのことを語ってくれればすごい楽しいです。今でも覚えているんですけど、伊藤代表と初めて話した時に、伊藤代表がジョン・ウェイン・パーと戦った事があるのを知っていて、僕にとって彼はヒーローだったし、そういう話で自分も将来若い選手に言われてみたいってすごく思ったんだよね」
――そうやってまたどんどん新しい子たちが出てくるので、この業界がずっと盛り上がるように我々も手を取り合って盛り上げていきましょう。宜しくお願いします。
チャド「こちらこそよろしくお願いします」
――最後に日本のファンの方にチャド選手からメッセージをお願いします。
チャド「この前は怪我をしてしまって、楽しみにしていたファンの皆さんには申し訳なく思っています。復帰した時には生まれ変わったような戦いをするし、今までの試合よりもっといい試合ができると思っているので、引き続き応援をお願いします」
――一貴選手からもファンの皆さまに向けてメッセージをお願いします。
大﨑「12月27日まで1週間ちょっととなりました。チャドが言ったように残りの期間で悔いのないように楽しんで、試合も会場の雰囲気とかも楽しみながらやっていきます。それでベルトは必ず僕が巻くので、是非応援をお願いします」