ジョシュア・ ヴァン(フライ級1位)「誰も俺にサブミッションを狙ってこなかったから今回ディフェンスも見せられる」
──最近はほぼ毎月あなたの試合を会場で見ていましたが、今回は久々に短期スパンではない準備期間になりました。タイトルマッチに向けて、しっかりとキャンプを組めたことはどう感じていますか?
「フルキャンプをできるのはやっぱりいいよ。2カ月ぐらい休みを取って身体を休められたのも良かった。今回のハードなキャンプに向けて身体をちゃんと回復させられたから、すごく満足してる」
──あの短期間での連戦がありましたが、フィジカル面はどうですか?
「フィジカル面では力強さを感じているよ。正直、あのタイミングで休みが必要だったんだと思う。今はめちゃくちゃ調子がいい」
──オンラインでは“ジョシュア・ヴァンの試合は勝っても負けても激闘になる”という声が上がっています。デビューから短期間で“外れのない試合をする男”と言われていることについてはどう受け止めていますか?
「クレイジーだよな。ロイバル戦(※2025年6月『UFC 317』で判定勝ち)の前なんて“負けてもいい”みたいに言われてたんだ。でも俺は負けるつもりなんて一切ない。俺はこの階級で最強の1人からベルトを奪いに来てるんだからね。そこに全部を集中してる」
──あなたのコーチの一人から聞いた話ですが、ジム初日に相当しごかれたのに、あなたは帰らず続けたと。そこから今までの間で、学びの部分でいちばん大きく変わった点は?
「最初にジムに行った時、俺はちょっとイキった子供だったんだよ。俺は世界最高のファイターだ! って思ってた。でも今は技術もスキルも全部積み上げて、もっと大事なもののために戦ってる」
──王者アレシャンドレ・パントージャ(フライ級王者)は、前に出ながら相手の攻撃をかいくぐって、テイクダウンからの一本を素早く狙うスタイルで知られています。彼のこれまでの相手たちはどんな過ちを犯したのでしょう?
「いつも言ってるけど、みんな彼をリスペクトしすぎなんだよ。俺はカウンターファイター、カウンターパンチャーだ。だから彼が突っ込んでくるなら、どうなるかは試合を見れば分かる」
──“新世代 vs 旧世代”という構図で語られることをあなたはあまり好まないようですが、なぜでしょう?
「パントージャを甘く見てはいけない。俺の中では、彼はこの階級の史上最高の一人だよ。“新進気鋭挑戦者 vs 偉大な王者”の構図なんだ」
──UFC復帰戦で勝利した堀口恭司がタイトルマッチを要求し、平良達郎もブランドン・モレノ(フライ級2位)に勝てば次の挑戦者は自分と言っていました。けれど長く王者だった選手が敗れた場合、即リマッチになるケースも多いです。仮にあなたが勝った場合、パントージャとはすぐ再戦になると思いますか?
「パントージャに勝った後のことはUFCが決めることだ。俺はそこを気にしてない。今、頭の中にいるのはパントージャただ一人だ」
──あなた自身ではなく、あなたの周りの人たちの方は、この急激な変化をどう受け止めていますか? ジムや教会、家族の反応は?
「いろんなことが変わったよ。本当に大きく変わった。ロイバル戦の後は特にね。まあ一言で言えば、人生は最高だよ。俺はそう言ってる」
──タイトルをヒューストンに持ち帰ること、そしてミャンマー出身としてミャンマー初のUFC王者になることは、あなたにとってどういう意味を持ちますか?
「ミャンマー初のUFCファイターになった時点で歴史をつくった。でも王者になるってのは、まったく別次元の意味がある。ヒューストンもずっと応援してくれてるし、この試合と聞いた瞬間から何でも言ってくれって仲間たちが連絡をくれる。ヒューストンはずっと俺を支えてくれてるよ」
──今もエゴサーチをして自分の試合に関するコメントや動画を全部チェックしているんですか?
「もちろん見てるよ」
──今回の試合に関することで一番笑ったコメントは?
「“この試合はパントージャが勝つだろうけど、ヴァンはまだ子供だし負けてもいいよね!”みたいなコメント。いや、そんなのアホだろって思うよ(笑)」
──あなたがマクドナルドを食べているというコメントもありましたが、その点について伺いたいです。元NFL選手のチャド・オチョシンコは“現役中ずっとマクドナルドを食べていた”と公言していて、“健康的な食事をしてる奴らのほうがケガしてる。俺はジャンクを食べてるけど大きなケガは一度もない”と言っていました。あなたの食生活については、“プロのファイターがマクドナルドでいいのか?”という声もありますが、どう説明しますか?
「ヘルシーな食事って、正直もう飽きるんだよ。見た感じからして“健康そのもの”って感じだろ? 俺は1日に3回トレーニングするんだ。ストレングス&コンディショニングの後に、次のジムまで移動する時間が30分くらいしかなくてさ。その間にマクドナルドがあるんだよ。だから毎回寄って、ブリトー、ハッシュブラウン、オレンジジュースを買って行くんだ」
──ジムの仲間に“またマクドナルドかよ!”と何か言われたりしますか?
「言われるよ。“お前またマクドナルド食ってるのか”って。でも体重で問題が起きたことは一度もない」
──UFCの選手はアーティストと交流することもあります。マクレガーはドレイク、ダスティン・ポイエーはリル・ウェインなど。あなたも試合前に“このアーティストと会ってみたい/コラボしたい”という相手はいますか? チーフ・キーフとか?
「チーフ・キーフなら大歓迎だよ。俺の入場曲って、だいたい彼の曲だからな。でも、そういうことは今まで特に考えたことなかったよ」
──この試合に向けて、テイクダウンディフェンスやサブミッションディフェンスの準備には満足していますか?
「もちろん。すごく満足してる」
──あなたのサブミッションディフェンスはこれまで試合であまり見る機会がありません。その点について少し教えてください。
「誰も俺にサブミッション勝利を狙ってこないからだよ」
──タイトルマッチに向けて、メンタル面の準備はどう整えてきましたか?
「俺のメンタルはいつでも準備できてる。2試合前から“タイトルマッチを戦える”って思ってたからね。だからもう準備万端だよ」
──去年の今ごろ、あなたはここでコーディ・ダーデンと早い時間帯の前座で試合をしていました。それが1年後の今日はタイトルマッチです。この急成長をどう感じていますか?(※ダーデン戦=2024年12月『UFC 310』で判定勝ち)
「最高の気分だよ。今回のポスターを見たんだけど、俺がめちゃくちゃカッコよかったからね。今起きてることにすごく満足してる」
──もし王座を獲得したら、“ホワイトハウス”で防衛戦をしたいですか?
「俺が勝ったら、UFCが“ここでやれ”と言う場所ならどこでも防衛するよ」
──今回、家族は全員応援に来ますか? お母さんはケージサイドで応援してくれますか?
「もちろん。母さんは毎試合俺を応援してくれるよ。今回も来てくれる」
──あなたは母国とヒューストンを背負うことの意味を語っていましたが、“新しい時代を象徴するファイター”として戦う意味についてはどう感じていますか? 2000年代生まれでタイトルマッチに挑む最初の選手になります。
「若い世代を代表できるってのは最高だよ。“2000年代に生まれた最初のタイトル挑戦者”。それも歴史だよね? だから毎回の試合が新しい歴史になってるって感じるし、すごく誇りに思ってる」
──あなたのタイトル挑戦が“早すぎる”という声もあります。今回のパントージャ戦は、最適なタイミングだと思いますか?
「間違いなく、俺にとって完璧なタイミングだよ。メンタルもフィジカルも仕上がってるからね」
──最後にもうひとつ。あなたはパントージャを“GOAT”と呼んでいましたが、ファンの中には“デメトリウス・ジョンソンはどうなんだ”という声もあります。なぜパントージャをデメトリウスより“史上最高”と考えているのでしょう?
「俺がUFCを見始めたのは2017年からなんだ。それより前のデメトリウス・ジョンソンの試合はほとんど見てない。俺が見てきたのはパントージャで、彼がベルトを取った時、ちょうど俺がデビューした頃だ。だから俺にとって“トップにいる存在”といえばパントージャなんだよ。だからそう言ってるだけなんだ」




