2025年11月30日(日)福島・KNOCK OUT常葉アリーナ『KNOCK OUT REBELS SERIES.8』に、注目の女子選手が初参戦する。
その女子選手はSHIORIN(=名前の後ろにハートマーク/GRATINESS)。伝統派空手の世界選手権大会で優勝し、キックボクシングは第6代K-1 WORLD GPスーパー・ライト級王者&元WBCムエタイ世界同級王者・大和哲也に師事。プロ戦績は7勝1敗2分で、WMC日本女子スーパーバンタム級王座に就いている。
今大会ではKNOCK OUT-RED女子スーパーバンタム級3分3Rで、山本“魂武羅”知美(FAITH)と対戦。KNOCK OUT初の日本人女子同士によるREDルール(オープンフィンガーグローブ着用、ヒジ打ちあり、つかみからの攻撃無制限)に臨む彼女は何を見せたいと思っているのか?
伝統派空手が活きているところ
──今回はREBELSに初参戦ということで、KNOCK OUTにはどんな印象がありますか?
「KNOCK OUTは、後楽園ホールでやる時は常に満席になるような、今熱い興行だなという印象ですね。今は福島でも大会をやっていて、そこに呼んでいただけるのはすごくうれしいなと思ってます。もともと、重森陽太選手がKNOCK OUTに出る前から、ムエタイスタイルですごくキレイな戦い方をするのでずっと見ていて、今もオープンフィンガーグローブ(OFG)でやったりしているので、重森選手の試合はずっと見ています」
──今回は山本“魂武羅”知美選手との対戦ですが、どんな印象ですか?
「けっこうキャリアの長い選手なのかなという印象で、最近MAX MUAYTHAIとかにも出ているので、いつかどこかで当たるんだろうなと思ってた選手でした。試合では最後まで体力があって、ガンガンガンガン前に出てくるタイプだなという感じですね」
──特に警戒しなきゃと思うところは?
「パンチはけっこう思いっきり振ってくると思うんですけど、今回OFGなので、そういうのも一発当たると危ないのかなと。あと試合動画を見る感じだと右ヒジとか打つのが得意なのかなと思うので、そういうところもしっかり対策しています」
──自分としてはどう攻めていきたいですか?
「もともと伝統空手をずっとやっていたので、ムエタイ・スタイルというよりはキックボクシング寄りの動きになっちゃうんですけど、そこが自分の強みではあると思っているので、空手ベースの戦い方を生かして戦いたいなと思っています」
──最終的にはどう勝ちたいですか?
「やっぱりやるからには倒したいなと思っているので、パンチもしっかり当てながらヒジも当てて、ダウンを取ったりKOできたりしたらいいなと思っています」
──OFGでの試合は初めてですよね? 練習では通常のグローブとの違いをどう感じていますか?
「初めてです。でも、空手でもOFGみたいなグローブをつけてやってたので、まっすぐ当てるのは、相手選手よりも得意なのかなとは思っています。自分の空手ベースを生かせるのがOFGかなと思っているので、やりやすいなとは思います。ただ、ボクシンググローブと違って、ガードしているつもりでもその間を抜けてくるので、そこは難しいなと思うところでもありますね」
──伝統派空手は何歳からやっていたんですか?
「4~5歳ぐらいから、22歳までやってました。インターハイで2位だったのと、あと流派の世界大会で優勝しています」
──世界チャンピオンなんですね! 伝統派出身の選手はキックにもMMAにもいますが、一番活きてるところはどういうところですか?
「MMAだと、たぶん堀口恭司選手が皆さんには代表的で分かりやすいと思うんですけど、ちょっと遠い間合いから速い出入りで技を出して、すぐ距離を取る動きは、伝統派をやってる人じゃないとできないのかなと思っています」
──それは今回の山本選手みたいなタイプにも有効だと思いますか?
「そうですね。どれだけ練習相手を立ててやっても、なかなかそういう動きができる方もいないと思いますし。あと首相撲に捕まってしまうと、どうしても私は背が小っちゃくて不利になりがちなので、自分のマイナスなところに持っていかれないようにするためにも、出入りは大事だかなと、毎試合思いながらやってます」
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海外でも試合できるようにしたい
──22歳まで空手で、そこからすぐキックに移行したんですか?
「一度就職したんですけど、そこからちょっとやりたいなと思って、ダイエット目的ぐらいの感じでGRATINESSに入会してキックボクシングを始めました。やり始めると、マススパーをやってみたいとか試合に出てみたいと思うようになって、試合に出たら今度はプロになりたいと思うようになって」
──まんまとそうなったわけですね(笑)。伝統派空手と、プロキックボクサーとしての活動はだいぶ違うと思うんですが、そこはどう感じていますか?
「伝統派空手だと一つの大会で個人戦とか団体戦の競技に出て、1日で十何試合とかに出るんですけど、それでも1試合2分とかだし、寸止めなのでケガすることもなく、自分が動ければ勝っていけるって感じだったんですね。でもキックボクシングは、ある意味相手を壊しにいく競技なので、1試合1試合の重みは全然違うなと思いました」
──でもここまで10試合してタイトルも獲って、順調なのでは?
「今思えば、順調ではあるなと思いますね。最初は、間合いとか構えとかも違うじゃないですか。そこはメチャクチャ苦労しました。寸止めだったので、拳で当てることもしないし、インパクトも全然違うし。蹴りも、私たちは足の甲で蹴ってたんですけど、キックではそれではダメだし。寸止めなのでパーリングできるような力でしか殴られなかったんですけど、キックではもっと強くなりますし。それに当たった者勝ちなので、『やめ』がかかると後出しできないんですね。でもキックだと当てられてもやり返せるので、止めちゃう癖が抜けなかったりとか」
──いろいろありますね。
「そもそも、私はステップを踏むスタイルを貫き通してるんですけど、最初はジムの大和哲也代表からは、ムエタイ・スタイルなので『ステップを踏むな』と言われたんです。『どっしり構えろ』と。それも大変でしたね」
──でも、そこは貫いたんですね。
「貫きました(笑)。どっしり構えると、やっぱり動けなかったので、技が出せなくなっちゃうし、練習でどれだけどっしり構えてても、試合だとやっぱりクセで飛んじゃうので、もう代表も諦めて、『いいよ』と言ってくれて(笑)」
──あとは試合結果で証明してきているわけですね。
「証明できてるのか分からないですけど(笑)、今はもう『それがSHIORINだ』みたいな感じなので」
──でも面白いですね。伝統派空手をやっていたSHIORIN選手が「合氣ック」を押し出している大和哲也さんのジムに入り、ムエタイ・スタイルを指導されながら伝統派のスタイルを貫いているわけですよね。
「失礼な話なんですけど、ジムに入る時も哲也さんのことを知らなくて。プロになってから、みんなに『大和哲也のところでやりたいから入ったの?』とか言われるんですけど、本当にたまたまで。でもそれがいろいろ結びついて今の結果になってるので、よかったのかなとは思ってます」
──今もタイトルは保持していますが、これからの目標は?
「やっぱりスーパーバンタムとかの階級だと、日本だとなかなか女子選手がいなくて。今いる55kgの日本人選手はしっかり倒していって、海外でも試合できるようにしたいなと思っています。あとKNOCK OUTにも、今後呼んでいただけるなら出ていきたいですね」
──では最後に、今回の試合で注目してほしいポイントはどこでしょう?
「OFGなので、当たった感じで倒れ方も変わってくるとは思うんですよね。『女子の試合は面白くない』とか『塩試合』とかって言われがちなんですけど、私も頑張って、そうじゃないんだよ、女子でもしっかり倒せるんだよというところを見てほしいなと思います」