MMA
インタビュー

【修斗】松根良太とLemino修斗沖縄大会「日本から世界で活躍するMMA選手を育てるために」──野瀬vs.シンバートル、西條vs.バトルの国際戦2試合のほか、宮城vs.シモン、畠山vs.ニシダ、平良vs.梅木、砂辺が修斗初参戦=19日(日)

2025/10/18 22:10
 2025年10月19日(日)、17時から沖縄ミュージックタウン音市場にて『Lemino修斗.2』(Leminoプレミアム配信)が開催される。  9月に東京・後楽園ホールで開催された『Lemino 修斗.1』に続く沖縄大会では、国際戦2試合に加え、宮城友一vs.シモンスズキのフライ級ランキング戦、ストロー級で畠山隆称の再起戦、砂辺光久の修斗初参戦など、さまざまなテーマのカードが並んでいる。修斗沖縄大会を継続的に開催してきた松根良太代表に、Lemino修斗の見どころを聞いた。 日本で海外勢と戦う経験を積むということ ──松根代表に10月19日(日)の『Lemino修斗2』の見どころと試合の意図などをうかがいます。メインイベントのMASTER JAPAN福岡の野瀬翔平選手は、モンゴルのシンバートル・バットエルデネ選手との国際戦が実現しました。 ▼第10試合 バンタム級(61.2kg)5分3R野瀬翔平(MASTER JAPAN FUKUOKA)14勝6敗2分 61.1kgシンバートル・バットエルデネ(Team Tungaa Shandas)5勝0敗 61.1kg 「岡田遼がLemino修斗のパートナーとして前回から加わって、このカードは彼からの強い意向なんです。これまでも修斗沖縄では1試合だけ国際戦が組まれていましたが、国際戦のノウハウが自分にあるわけではなかったので、そこには様々な大変な部分があるのですが、岡田とともに、このLemino修斗のレベルを高く安定させるために、やはり国際戦を毎回組んでいこうと。Lemino修斗としては世界に向けて強い日本人をどんどん送っていきたいというところからですね」 ──野瀬選手にとっては上海での『ROAD TO UFC』(RTU)のユ・スヨン戦以来の国際戦になります。 「野瀬選手は『ROAD TO UFC』にチャレンジしつつ、師匠が修斗世界チャンピオンからUFCでも戦った弘中邦佳さんで、その後を追って野瀬選手もUFCを目指している。来年の『ROAD TO UFC』も見据えるなか、ここで強い外国人選手と戦って勝つこと。その国際戦の機会が必要だろうと。5勝無敗のシンバートル選手にとっても勝利を重ねて、来年RTUにチャレンジしていきたいという、そういう2人の厳しい戦いになります」 ──野瀬選手は沖縄にも出稽古に来たことがあるそうですね。 「そうですね。ちょうど1年くらい前に平良達郎のスパーリングパートナーにもなってもらいました。弘中さんから『行って来い』と送り込まれた形ですね。練習を見て“この子はすごく強いな”と感じました。柔道時代に大変な怪我をして壮絶なリハビリを経て奇跡的に回復して、選んだ道が格闘技だったと。精神的にも肉体的にも強い。そしてグラウンドの強さにも定評がある」 ──対するシンバートル選手も『Breakthrough Combat01』での初来日時に、あの吉野光選手に組み勝ったことに驚きました。 「力、身体が強いですよね。モンゴル選手ならではの持って生まれた体のバネと爆発力があり、シンバートル選手のポテンシャルは世界レベルだと思います。それに、組みだけでなくシザースチョークを極めたり、打撃も投げもテイクダウンもこなすオールラウンダーでもあります。野瀬選手もそのあたりを充分承知して挑むと思いますので、それでも野瀬選手が極めるか、シンバートル選手がそれを防ぎながらダメージを与えられるか。本当にアジアでなかなか組めないぐらいのレベルの高いカードだと思います」 ──こういった国際戦の必要性は、松根代表がTHE BLACKBELT JAPAN勢のセコンドを海外での国際戦でも務めるなかで、肌感覚で感じたこともあるのでしょうか。 「そうですね。自分だけでなく『Lemino修斗1』で山内渉選手がデウジヴァン・ソウザ選手と対戦しましたが、高谷裕之さんから『海外で戦うことに繋がる国際戦を』という意向がありましたし、弘中さんからも『強い外国人選手と』というリクエストをいただきました。そういった志の高い声に応えようと。  自分自身で言うと、タイでの試合でセコンドについていて、やはり選手が充分に実力を発揮できない部分があるなと感じました。もちろん日本から海外に飛んで試合をする経験も必要ですが、初の国際戦が海外、というのはハンディもある。ホームの日本で海外勢と戦う経験を積んでいくことが、とても重要だなということを感じていました。それは、平良達郎が交流させていただいている、井上尚弥選手の陣営のキャリア形成からも参考にさせていただいたことなんです」 ──なるほど。まずはホームで国際戦の経験を積んで海外に出ていくと。アジアを突破して世界にというのもいい道筋ですね。 「はい。この『Lemino修斗』は、第3回が2026年2月18日の水曜日に後楽園ホールで、第4回大会も3月30日の月曜日に、同じく平日ですが後楽園ホール大会が決まっています。そこでも続けて国際戦を組んでいきたいと考えています」 [nextpage] タイでロシア人相手に悔しい思いをした西條が沖縄で再起戦 ▼第9試合 ウェルター級(77.1kg)5分3R西條英成(THE BLACKBELT JAPAN)5勝2敗 77.1kgクルボン・バトル(Prodigy Training Center)2勝0敗 77.0kg ──国際戦はメインだけに収まらないですね。ウェルター級で、THE BLACKBELT JAPANの西條英成選手と、クリスチャン・リー率いるProdigy Training Centerからクルボン・バトル選手が対戦します。 「昔から交流があり、今回も試合するショージン・ミキの推薦選手で、クリスチャンの弟のエイドリアン・リーが1年ほど前に、沖縄に来た時にウチのジムで練習して、すごく強かったんです。西條とも手合わせをして、いま19歳ですから去年来たときは18歳だったのかと思うと、そんなに若くて強いんだと。そのエイドリアンやクリスチャンとともに練習しているクルボン・バトルも、打撃ベースながら、これからどんどん強くなる選手だと感じました。  地元ハワイでキックボクシングのタイトルを獲っていますし、ボクシングでも試合して、右の蹴りと右ストレートが強烈な武器で、首相からのヒザ蹴りも得意とする。ほんとうに“ダイヤの原石”というか、キックルールでは元UFCのルイス・ペーニャにも勝っている。相当、強いと思います。  月曜日に空港に迎えに行った時に話を聞いたら、実は幼少期に家族がミリタリーで沖縄に住んでいたということも分かり、5歳くらいだったけど覚えてると。だからバトル選手にとっても縁のある場所での大会に呼ばれて嬉しい、とモチベーションも高く試合の臨みます」 ──オーソからの右の蹴りは上下に打ち分け、自分からのテイクダウンを仕掛ける場面も見ました。それを西條選手に、というのはウェルター級で海外勢と戦うために、やはり必要な経験になるということでしょうか。 「そうですね。西條も前回、6月のONEでロシア人相手に悔しい思いをしているので、初心に帰って修斗でチャンピオンになって、再び海外で試合をするためにも沖縄で試合をして勝ちたいと」 ──手合わせしたエイドリアンから西條選手の印象も聞いているでしょうね。 「西條は、ウチのプロ練習を一番引っ張ってってるような存在なんです。こうやって練習するんだというのを背中で選手たちに見せるような。今回もリスクある試合かもしれないですが、そういったところで勝ち切って、修斗のベルト、そして世界へ行ってくれればなと思っています」 ──そのために今後も国際戦を組んでいくと。 「はい。意味のある国際戦を組んで、日本から世界で活躍するMMA選手を育てる。すべてにおいての根本は、ここにあります」 [nextpage] THE BLACKBELT JAPAN同門対決でセコンドは── ▼第8試合 フライ級(56.7kg)5分3R宮城友一(キックボクシングDROP)56.4kgシモンスズキ(和術慧舟會HEARTS)56.6kg ▼第7試合 ストロー級(52.2kg)5分3R畠山隆称(THE BLACKBELT JAPAN)51.8kgニシダ☆ショー(BURST)52.0kg ──畠山選手も2月のバンコクでの試合からの再起戦となります。熱戦でしたが競り負けて、プロMMAキャリア初黒星を喫しました。あの試合で松根代表が感じたことは? 「通常のMMAと異なる部分にどう対応するか。計量の部分でハイドレーションテストがあり、通常から1階級上での戦いになる。これはだいぶリスクが上がるなと感じました。9月にTHE BLACKBELT JAPAN(千葉)の黒澤亮平が畠山の相手のジェイソン・ミラルペスに勝ったのですが、そのときにもこの経験は伝えて、このONEの計量体制と、身体の大きさの違いにしっかり備えて挑む必要があると。ウチでも練習してくれた和田竜光選手も、身体の調整、計量方法を熟知した上で、階級を落としている。  畠山に関しては、あの試合の時に色々新しいことが多すぎて、本来の自分の実力を出せなかったことが大きいです。その経験も活かし、いずれはまたチャレンジしたいと本人もいうなかで、復帰戦をLemino修斗で行うことになりました」 ▼第6試合 フェザー級 5分2R内藤太尊(ROOTS)65.6kg工藤圭一郎(グランドスラムAPP)65.4kg ▼第5試合 ストロー級(52.2kg)5分2R梅木勇徳(THE BLACKBELT JAPAN)52.1kg平良龍一(THE BLACKBELT JAPAN)52.2kg ──畠山選手と戦うニシダ☆ショー選手も7月に三角絞めで一本勝ちしたばかりですので、楽しみな試合です。フライ級の宮城友一選手が4月の沖縄大会で復活を果たし、4連勝中のシモンスズキ選手と戦う好カードも。ところで、第5試合にはTHE BLACKBELT JAPANの千葉と沖縄の同門対決があります。設立会見のときにそのことを聞いたときに鶴屋浩代表は「やります」と答えていましたが、ここで組まれるとは……。 「THE BLACKBELT JAPAN千葉は選手層が厚いですし、たくさん試合をしたいという選手がいっぱいいるんですね。その中で、ウチの沖縄でも試合がしたい選手がいるというときに、まだランキング上位でなく、練習したことがなくて、互いに了承し、お互いの経験になるんであればいいんじゃないかというところですね。この試合は岡田のマッチアップで、福岡から18歳で単身、千葉に入門した梅木選手と、平良達郎の兄で2戦2KOの龍一の試合になります」 ──となるとセコンドは鶴屋代表と松根代表が反対側のコーナーに立つと……。初めてでしょうか。 「実は2020年の修斗沖縄大会で波平コングと阿部剛卓の試合でそうなったことはありました。試合は1R カットでドローになったんですけど。今回も両コーナーに分かれて、岡田はセコンドにはつかないそうです」 ──平良龍一選手は米国で達郎選手の試合にも帯同している中で、変化を感じていますか。 「龍一がウチに来たときははじめはキックボクシングだったんですよね。続けて入ってきた達郎が柔術やMMA、修斗で戦績を上げていくなかで興味を持ち出して、柔術にハマり、当初は修斗の試合はやらないような感じだったんですが、22年の全日本アマ修斗で準優勝してライセンスは取っておこうかな、と。就職するのでプロの試合は……と言っていたのですが、『1試合だけやっておきたい』と。今となっては『あと2年で修斗ストロー級のベルトを獲る』と変わっていった。“平良達郎の兄貴”からMMAの“平良兄弟”となるように、本当に努力してますね。梅木も今年すでに2試合をこなして、組みも極めも強いので岡田は梅木優勢と見ていると言っていました。いい試合になると思います」 [nextpage] 平良達郎をUFCチャンピオンにすること、日本から平良に続く選手を育てていくこと (C)Zuffa LLC/UFC ▼第4試合 バンタム級 5分2Rショージン・ミキ(米国/Prodigy Training Center)59.9kg水嶋敬志(THE BLACKBELT JAPAN沖縄)61.2kg ▼第3試合 フライ級 5分2R砂辺光久(reversaL GYM OKINAWA CLOSS×LINE)56.4kg福島祐貴(BURST)56.4kg ▼第2試合 フライ級(56.7kg)5分2R輝龍(ROOTS)56.5kg小生隆弘(グランドスラムAPP)56.3kg ▼第1試合 2025新人王トーナメント ストロー級(52.2kg)準決勝 5分2R黒瀬恭平(マスタージャパン山口宇部)52.1kg賢人(BJ MMA SHCOOL)52.2kg ▼オープニング第1試合 ジュニア修斗 62kgj契約 4分1R高松一喜(カルペディエム三田)*当日計量通事安朋(THE BLACKBELT JAPAN)*当日計量 ──MMA PLANETで対談があったように、今回は宮城選手のみならず、砂辺光久選手もLemino修斗に参戦するなど、沖縄格闘技の歴史も感じさせます。柔術黒帯の松根さんは、パラエストラ松戸で当時、鶴屋代表のかけ声のなか、チームをこえたプロの越境練習にも参加していましたよね。修斗世界王者となり、VTJ沖縄では地元でカナ・ハヤットとも戦った。ジムを開き、中央の技術を沖縄に持ち帰り、大会を継続開催してきました。そしていまは、平良達郎選手がUFCで活躍し、海外の練習に帯同し、その最前線を沖縄に持ち込み、沖縄大会で国際戦も組んでいる。世界と伍する日本人選手を育成していく、その道筋は見えていますか。 「そうですね。沖縄に戻って来て14年になります。砂辺さんと宮城友一の対談も読みましたが、当時の方々が沖縄に格闘技の土壌を築き上げて、今の繋がりに発展したと思うんですけれども、僕はやはり中井祐樹先生と、鶴屋浩さんの弟子ということにとても誇りを持っていて、弟子としてその指導を受けた僕が教えれば、しっかり選手が強くなるっていう思いでやってきて、それを実践できていることは、とてもありがたいことだなと思います。今回も鶴屋さんはセコンドに入りますし、中井先生も解説で来ます。そのお2人に大会を見てもらえることがとても光栄ですし、大会のノウハウとしては、若林太郎さんから教わったことで運営ができています。そうした先人たちの力があってこその自分だと思いますし、それを後進に伝えていくのが自分の使命です。  今後もまずは、平良達郎の次戦がフライ級2位のブランドン・モレノに決まったので、平良達郎をUFCチャンピオンにするという一つの車輪を前進させ、もう一つは、このLemino修斗で日本から、THE BLACKBELT JAPANから平良達郎に続く選手を育てていく。日本MMAを活性化させて、日本からどんどん強い選手を輩出していくというのが、私の人生の使命ですね」(※この項、続く)
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