第9回「立ち技総合格闘技 XSTREAM 1 アマチュア大会」2025年10月12日(日)東京・ゴールドジムサウス東京アネックス
今回は過去最多となる270名が参加し、全148試合が行われた。年度末恒例の各部門チャンピオン決定戦では、昨年から王座を守った防衛王者に加え、新階級による新たな王者も誕生し、一年の集大成にふさわしい熱戦が繰り広げられた。
目玉イベント「1分間高速ミドルキック連打チャレンジ」には、RISEウェルター級1位・實方拓海(TSK Japan)が登場。出場予定だったムエタイ“四冠”王者・伊藤紗弥(尚武会)がケガにより欠場し、急遽、同門のWBCムエタイ世界ミニフライ級王者・藤原乃愛(尚武会 フジワラムエタイジム)の参戦となり、会場は熱気と歓声に包まれた。
また、『DEEP☆KICK』との共同開催による6階級の東西対抗戦では、3勝3敗の引き分けとなり、両陣営が互いの健闘を称え合う激闘となった。さらに注目を集めた「マーシャルアーツ無差別級オープントーナメント」決勝では、テコンドーの実力者・山ノ内蓮(T.K.KING鎌ヶ谷)が圧巻の勝利を収め、新王者に輝いている。
「1分間高速ミドルキック連打チャレンジ」實方拓海&藤原乃愛が圧巻パフォーマンス
豪華ゲストによる「1分間高速ミドルキック連打チャレンジ」で、まずリングに登場したのは、ムエタイ“四冠”王者の伊藤紗弥(尚武会)。今回はケガのため出場が叶わなかったが、コスチューム姿で登壇し「代わりに乃愛ちゃんがムエタイ選手のすごさを見せてくれます」とコメント。
続いてWBCムエタイ世界ミニフライ級チャンピオンの藤原乃愛(尚武会 フジワラムエタイジム)が登場。急遽の参戦にもかかわらず、「目標は100回。紗弥ちゃんに負けないマシンガンミドルをお見せします!」と堂々宣言。
ゴングと同時に放たれたミドルキックは体幹がぶれず、リズミカルかつ力強いフォームで会場を魅了。終盤を迎えてもスピードが落ちることなく蹴り抜いた。しかし、結果は「85回」と告げられ藤原も会場も戸惑いの表情。回数が伸びなかった理由は規定のラインに届かない蹴りが24回もあり、全てカウントされていれば109回の大記録だった。
以前、辻井和花(BRINGITONパラエストラAKK)が叩き出した歴代最高記録の104回を上回る結果となるはずだった見事なパフォーマンスを演じた藤原は「悔しい。またリベンジしたいです」と笑顔で語り、伊藤は「今回、乃愛ちゃんのチャレンジを見てコツをつかんだので、次は私が挑戦して乃愛ちゃんの分もリベンジしたいです」と再挑戦を誓った。
そしてトリを飾ったのは、RISEウェルター級1位の實方拓海(TSK Japan)。白鳥の人形を頭と腰に飾り付けたユーモラスなコスチュームで入場すると、会場からはどよめきと笑いが。實方は「こんな格好をしていますが、100回を目指して頑張ります」と宣言し、チャレンジスタート。實方の蹴りと連動する白鳥の人形に注目が集まったが、キックは本物。迫力ある重厚感のミドルキックをリズミカルに放ち、観客の大声援を受けながら、後半も加速。結果は99回と重量級として好記録をマークした。
實方は「キッズが120回も蹴っていると聞いていたのでどんなものかと思いましたが、本当にきつかったです。白鳥は皆さんが笑顔になってくれたらと思って着けました。アマチュア選手の帯同でXSTREAM 1に来ることが多いのですが、いつもポジティブなパワーを感じています」と語り、「来年はケガをしっかり治して(試合で)完全復活します」と力強く宣言した。
前田憲作総合プロデューサーは、「プロの2人はそれぞれの個性で大会を盛り上げてくれました。實方選手の普段の真面目な姿を知っているだけに白鳥の姿には爆笑してしまいましたが、観客を楽しませようという気持ちが伝わって嬉しかったです。藤原は、あと数センチ上を蹴っていれば、109回と言う最高記録だったのであまりに惜しく、見ている我々も残念な思いです。近くリベンジしてくれるとおっしゃっていたので楽しみです」と総評した。
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「1分間高速ミドルキック連打チャレンジ」、チームバトルX-1名物「高速ミドルキック鬼3連」
キッズから一般、ジェントルマン・クラスまで、幅広い年齢層が挑む「1分間高速ミドルキック連打チャレンジ」では、挑戦し続ける選手たちの姿に、会場全体が拍手で包まれた。
また、チームを組んで挑戦する「高速ミドルキック鬼3連」には3チームが参戦。中でも、親子でチームを組んだ「チーム小川ファミリー」は、家族ならではの連携プレーを発揮。軽量級150kg以下の部で285回という最高記録を樹立した。キックボクシングの練習以外で特別な模擬練習は行っていなかったそうだが、「さらに高みを目指して、もう一度挑戦したい」と意欲を語っていた。
「1分間高速ミドルキック連打チャレンジ」や「高速ミドルキック鬼3連」は、年齢やキャリアを問わず、すべての参加者が同じ条件で挑戦できる、XSTREAM 1ならではの競技。プロ選手と同じリングに立ち、観客の前で全力を出し切る。その体験が、次の挑戦への原動力となっている。
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王者誕生と防衛戦が織りなす白熱のチャンピオンカーニバル
今大会は、年間を通じてランキング上位に名を連ねた選手たちが集結し、各種目・各階級の今年度チャンピオンを決定する「チャンピオンカーニバル」が開催された。
全試合が王座を懸けた真剣勝負となり、選手たちの気迫、そして応援する観客の熱量がいつにも増して会場全体を包み込んだ。
会場は立ち見が出るほどの満員となり、リングサイドには緊張感と期待が漂った。本大会からは階級を2.5kg刻みに細分化したことで、より公平なマッチメイクが実現。新チャンピオンの誕生や昨年王者による防衛戦など、全試合で手に汗握る展開が続出した。
数ある熱戦の中でも、観客の注目を集めたのが今回MVPに選出された67.5kg級のタイトルマッチに挑んだ村松寛昌(TSK japan)の試合。村松は昨年70kg王者に輝き、今回は1階級落としての挑戦となった。相手は強打が持ち味の守屋凱琉(RAUSUジム)。村松は序盤からリーチを活かした距離感と冷静な試合運び、そして打撃戦で的確にヒザ蹴りを織り交ぜ、判定勝利で見事王座を獲得。また、その活躍が評価され、今大会のMVPに選出された。
村松は「18歳から27歳までアマチュアで約140戦をしてきて、ずっとMVPを取りたいと思っていました。緊張しましたが、ようやく取ることができて本当に嬉しいです。来年はプロデビューも決まっているので、格闘技界全体、そしてXSTREAM 1をもっと盛り上げていきたいです」と語った。
前田憲作総合プロデューサーは選出理由について「試合前からSNSなどで大会を盛り上げてくれた姿勢が印象的でした」と述べ、「実は試合前に拳を骨折していたのですが、それでも諦めずにサウスポースタイルへ切り替えて出場し、見事に勝利を収めた。そうした挑戦と精神力が素晴らしかったため、今大会のMVPに選びました」とコメントした。
また、65kg級王者の志賀野真人(TSK japan)は見事にベルトを防衛。「来年高校を卒業するタイミングでプロデビューを目指しています。これから格闘技をさらに盛り上げていきたいです」と意気込みを語った。
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「DEEP☆KICK」東西対決──意地と誇りがぶつかった最終戦、結果は3勝3敗の激闘ドロー
「DEEP☆KICK」との共同開催による東西対抗シリーズ最終戦。本シリーズは、東日本の育成を担う「XSTREAM 1」と、西日本を拠点とする「DEEP☆KICK」が連携し、年間を通して実施してきた選手育成・技術交流の場。今年4月に大阪で行われた前半戦では、東代表が3連勝を飾り、西代表は背水の陣で今大会を迎えた。
初戦、プレッシャーのかかる場面で見事に結果を出したのが、西代表の朴竜佑(VALIENTE)。東京代表の吉岡洸希(TSK japan)を相手に、渾身のミドルキックを叩き込み勝利を収めた。
続く第2試合では、西代表の川端大心(team Bonds)が冷静な試合運びで、東代表の相沢空音(健成會)に対し、的確なストレートを何度もヒット。再び西軍の勝利。
迎えた最終第3試合は、65kg級の山田真也(パラエストラ森ノ宮)とNico Tso(LAILAPS東京北星ジム)による一進一退の打撃戦。山田の勢いと手数が最後まで勝り、会場を沸かせる判定勝利を手にした。
これにより、今年の東西対決シリーズは、東京3勝・大阪3勝の引き分け決着。序盤戦を圧倒した東代表に対し、西代表が意地を見せて最終戦を全勝で締めくくり、年間を通じて行われた交流戦は互いの健闘を称え合う形で幕を閉じた。
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「マーシャルアーツ無差別級オープントーナメント」山ノ内蓮が堂々の王座奪取、テコンドーの魅力を存分に発揮
異種格闘技「第2回マーシャルアーツ無差別級オープントーナメント」では、前回王者・三留空也(岡澤道場)がケガによって欠場となり、頂点を懸けて山ノ内蓮(T.K.KING鎌ヶ谷)と、杉浦よしひろ(チームドラゴン)による一戦が行われた。
“無差別級対決”らしく、両者の体格差は歴然。しかし山ノ内はプレッシャーをものともせず、試合開始直後から主導権を握る。得意とするテコンドーの華麗な足技を次々と繰り出し、回転技を織り交ぜた連続攻撃で観客を沸かせた。さらに接近戦では、オーバーフックをヒットさせるなど近距離の攻防にも対応。多彩な攻撃で試合を完全に支配し、見事マーシャルアーツ無差別級王者に輝いた。
山内は「勝つことができましたが、次回は以前負けている三留選手との再戦で勝ちたいです」とコメントした。
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拳で語り、敬意で結ぶ夜の部「ジェントルマンファイト」熱戦の数々
夜の部のリングを彩るのは、年齢や職業を超え、それぞれの人生経験を背負ってリングに上がる選手たちが、互いの闘志と敬意をぶつけ合う「ジェントルマンファイト」。勝敗はもちろんのこと、“挑戦する姿勢”が称えられるXSTREAM 1ならではの舞台だ。また、各階級の王者が決定するとあって、今回はいつも以上の盛り上がりを見せた。
65kg級タイトルマッチで、見事チャンピオンに輝いた田中志幸(心成塾)は「人に支えてもらっての勝利だと思っています。普段はSEをしていますが、夜7時半から週4日練習を続けてきました」と喜びを語った。
また、50歳以上の選手による60kg特別階級の戦いでは梶山正明(心成塾)が、元MA日本キックボクシング王者・飛鳥信也(目黒ジムAS-K丈夫JV)との一戦を制した。「相手の飛鳥師範、本当に強かったです。60歳を超えているとは思えないです」と試合後に相手選手への敬意を示した。
メインを飾った80kg超級のタイトルマッチ、長里清(サンライズジム)と片岡良輔(戦ジム)の対戦は迫力の大打撃戦となった。両者とも一歩も退かず、激しいパンチの応酬から長里のヒザ蹴りが片岡をとらえる。しかし、片岡が反撃に転じ、強烈なパンチで長里がダウン。その後も激しい攻防が続き、最後は片岡がもう一度ダウンを奪い、勝利を収めた。試合後、両選手は互いの健闘を称え合った。
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総合プロデューサー前田憲作の大会総評
「大会のテーマは『挑戦することに挑戦する』。その言葉どおり、出場した選手一人ひとりが、自分自身の限界に挑み、その姿を通して多くの感動を与えてくれました。
XSTREAM 1は、『誰もが輝ける場所』『誰もが挑戦できる場所』でありたいと願っています。そのために、私自身も主催者として、これまで以上に多くの人が挑戦できる舞台をつくることに挑戦し続けます。
格闘技の新しい形を生み出し、挑戦する人を増やし、挑戦する姿を応援できる場を広げていくこと。それこそが、私にとっての“挑戦”でもあります。これからも進化するアマチュア大会として、そして将来的にはプロ化も視野に入れながら、格闘技界をさらに盛り上げていきます。
選手の皆さん、スタッフ関係者の皆さん、そして応援してくださったすべての方々に心より感謝申し上げます。また次の挑戦の場でお会いしましょう。来年は3月1日(日)ゴールドジムサウス東京アネックスからスタートします。ぜひご期待をお寄せください」