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【UFC】ダスティン・ポイエーの冷めない格闘技愛「私の一部が死んだ」

2025/10/13 19:10
 元UFC世界ライト級暫定王者のダスティン・ポイエーは、まだ“ファイト”が頭から離れないようだ。 “ザ・ダイヤモンド”ことポイエーは、2025年7月19日に故郷ルイジアナ州で行われた『UFC 318』でライト級5位のマックス・ホロウェイとBMFベルトを懸けて3度目の対戦。熱闘の末に5R 判定負けで現役引退を発表した。  30勝10敗1NC(UFC22勝9敗1NC)、41戦のキャリアのハイライトは、2019年4月『UFC 236』でホロウェイとの2度目の対戦で5R判定勝ちし、暫定王座を獲得したこと。そして、その5カ月後の『UFC 242』でハビブ・ヌルマゴメドフとUFC世界ライト級王座統一戦を戦い、ハビブのテイクダウンにギロチンチョークを仕掛け、外された直後にリアネイキドチョークで一本負けし、王座陥落した試合も。ベルトを失った次の試合では、ダン・フッカーと対戦し、攻守が激しく入れ替わる死闘の末に、5R判定勝ちで再起を遂げた。そして、コナー・マクレガーを相手に2度の注目の勝利も飾っている。  数多くの熱闘により、ポイエーはMMA史上最も愛されるファイターの一人となった。 『UFC 318』でホロウェイに敗れ、引退を表明したポイエーは、「正直、圧倒的だったよ。感謝されていると感じる。見られていると感じる。戦いの外に出て、こんな風に考えることはなかった。いつも格闘技に没頭し、家族のために次の目標を目指して努力してきた。第三者の視点から見ることはなかったけど、今週は本当に素晴らしかった。ファンやルイジアナ、会社から愛されていると感じる。本当に、本当に素晴らしい経験だった。夢を追うことで、こんなに多くの人々に影響を与えるとは思わなかった。この人生を生き、この旅を続けることができたことに永遠に感謝しています、本当に。皆を愛しています。私はここで夢を追い続ける子供のようなものです。ただ夢を追い続けているだけです」と語り、オープンフィンガーグローブをマットに置いていた。  引退を決めたポイエーに友人のテオ・フォンは「勝てなかった試合の後でも、君は常に誠実だった。言い訳せず、自分に正直に向き合い、ファンに失望や痛みまでも共有してくれた。その姿を見て、僕たちは君と一緒に悲しみ、乗り越えられた。本当にありがとう。君がどんな時も立ち上がり、自分自身のために、そして仲間や家族のために戦い続ける姿に、何度も勇気をもらった。僕だけじゃない、世界中の人がそう感じている。諦めそうな時に、『ポイエーは諦めなかった』と思い出す。だから僕も諦めない。君は自身を立て直し、軌道を修正し、再び自分を信じて“人生という火の中”に戻っていく。君がそうすることで、僕らもそうできる。本当に素晴らしいよ。ファンを代表して、そしてルイジアナ州を代表して、君に心からありがとう、を伝えたい。“ダイヤモンド”が次にどんな輝きを見せてくれるのか、楽しみにしているよ」とメッセージ。  また、ATT入団当初からコンビを組んでいたマイク・ブラウンコーチは、試合前にポイエーに以下の手紙を送っていた。 「DP、これが最後の試合だと思うと、本当に複雑だ。正直、寂しい。ルイジアナに住んでる君が、キャンプのために来るたびに会えなくなるからね。でも、君らしいと思うのは、『必要があればいつでも戻って、誰かを手伝う』と言ってくれたこと。いつでも誰かの練習を手伝い、自費でフロリダまで飛んできた。本当にそういうチームメイトだった。君がいなくなるのは悲しいけど、より安全で健康的な人生に進むのは嬉しい。何より、君は常に『自分に正直でいる』と言い、その言葉通りの生き方をした。『タイトルを取るためにあと何試合か必要でもいい』――そう言って焦らず努力を続けた。  最初のタイトル挑戦の時、君がそこに辿り着くまでの道は、マイケル・ビスピンに次いで長かった。キャラを作ったり、派手な格好をしたりせず、ただ努力を積み重ね、全力で戦った。その姿勢で、このスポーツの歴史に残る名勝負をいくつも作ってくれた。…くそ、泣きそうだ。一番恋しいのは、仲間たちとの遠征の時間。試合前は緊張もあるけど、君がいるとみんな和んで楽しかった。家を借りてコーチたちと一緒に過ごした時間。ピンポンやゲームで笑いあって――あの空気が最高だった。(もしかして、君まだ俺に金借りてるかもな?)  あの頃のジムの思い出も忘れられない。昔は16オンスのグローブにヘッドギアつけて、本気のスパーをしてたよな。今ではもうやらないけど、当時の君は怪物だった。16オンス越しでも相手を倒してた。スパーの相手がいなくなって、ボストンの友人のマークを呼んだんだけど、初日でいきなりKOしてしまった(笑)。あの時、“もう誰も相手してくれないかも”って思ったよ。でも君に悪気はなかった。ただ完璧な一撃を放っただけだ。その時みんな気づいたんだ。“ダスティンのパンチは本物だ”って。  相棒、すごい旅だったな。15年、あっという間だった。みんな君の偉大さと、真のファイターとしての姿を見てきた。こんなキャリア、君ほどふさわしい人はいないよ」(マイク・ブラウン)  3カ月前、ポイエーは自身の決断に満足しているように見えたが、土曜日の夕方、試合への愛は変わらず強いとポストした。 「毎日、目が覚めた瞬間、20年間格闘技に人生を捧げてきた…。私の一部が死んだ」  ポイエーは昨日もファンからの「ねえ、@DustinPoirier あなたの試合が見られなくなるのは寂しいよ、俺はあなたと一緒にMMAを見始めたんだ、君はレジェンドだよ」のメッセージに、「信じて、私もそれが恋しいよ」と、返信している。  この日は、自身も対戦したチャールズ・オリベイラが、これまで一本負けしたことが無いマテウス・ガムロットにリアネイキドチョークを極めて一本勝ち。イリア・トプリア戦のKO負けから再起を飾った試合を見届けた。  オリベイラとは、22年4月にポイエーが起ち上げたグッド・ファイト基金を通して、オリベイラが運営するサンパウロ州グアルジャのファヴェーラ(貧民街)に住む子供たちに無料の格闘技トレーニングを提供する非営利団体「チャールズ・オリベイラ・インスティテュート」へ2万ドルを寄付した間柄でもある。  そのオリベイラとホロウェイの再戦の可能性についても予想を語っているポイエー。36歳、自身のなかのファイターとしての炎を、次の人生に向けられるか。それとも──。
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