2019年10月26日(土)シンガポール・インドア・スタジアムにて「UFC Fight Night: Maia vs. Askren」が開催された。
第2試合の女子ストロー級では、UFC初のタイ人ファイター、ローマ・ルックンブンミー(23)が階級を上げてオクタゴンデビュー。モルドバ出身のアレクサンドラ・アルブと対戦した。
ルックンブンミーはMMA3勝1敗ながら、立ち技の戦績は凄まじい。2018年のIFMA世界大会でタイ代表として金メダルを獲得。プロムエタイ187勝13敗、2015,2017,2018 IMFA世界王者、2016IFMA 世界選手権準優勝、2014 S1王者、2016 SE Asian Games優勝、2016 Muay Siam Isaanタイトル獲得、2010 Assawindam Stadim王者、2008 東タイ地区王者と豊富な経歴がプロフィール欄を埋め尽くす。
2012年には日本で強豪キックボクサーの神村エリカと対戦。当時16歳のルックンブンミーは3RにKO負けを喫したものの、首相撲からのヒザで神村を大いに苦しめ、何より体幹の強い神村を何度も首相撲でコカしていた。
2018年1月にInvicta FCでプロMMAデビューし、ムエタイとMMAの融合を見せていたルックンブンミーは、立ち技選手の多いAKA所属のメリッサ・ウォンを首相撲からのヒザでダウンを奪い、ムエタイのコカしで何度もウォンを倒している。
現在はタイガームエタイ所属で、寝技の習得にも励み、2018年8月の「PANCRASE298」では華DATEと対戦し、得意の首相撲からの崩しでテイクダウンを奪い、強烈なヒジ打ちで華を切り裂き、TKO勝利。村田夏南子が出場した2019年6月のInvictaでも2勝目を挙げている。
対する29歳のアルブは2015年4月にUFCデビュー。UFC最初の3戦はいずれも長い間隔が空いており、MMA3勝1敗でUFC2勝1敗。前戦は2019年2月にエミリー・ホワイトマイアにリアネイキドチョークで一本負けしている。
▼女子ストロー級 5分3R〇ローマ・ルックンブンミー(タイ)[判定2-1]※30-27×2,28-29×アレクサンドラ・アルブ(ロシア)
ルックンブンミーは、これまでアトム級で戦ってきたが、UFCにはアトム級がなく、ストロー級に階級を上げてのオクタゴンデビュー。
1R、対峙すると一回り大きなアルブ。ともにオーソドックス構え。右ミドルから入るルックンブンミーに詰めるアルブだが、首相撲からヒジはルックンブンミー! アルブもワンツーから左ミドルを放つ。かわすルックンブンミーは右前蹴り! 左釣り手で首投げを狙うアルブにルックンブンミーは右で差して左ヒザ! さらに首相撲で一回り大きなアルブをこかす!
アルブの左ローに右ストレートを合わせるルックンブンミー! 詰めるアブルに右手は首後ろに、右ヒザを腿にあてて、ヒザを突くルックンブンミー。片足になりながらも倒されずヒザを突く。
2R、ワンツーで前に出るアルブ。距離を保つルックンブンミー。アルブは引き込みから足関節に。しかしルックンブンミーはすぐにヒザを抜き、尻を蹴って背中を見せて立つと正対。スタンドで右前蹴り、左ローを当てるルックンブンミー。さらに右ロー! 詰めるアルブに今度はボディロックからこかし、サッカーキックに行きそうになるが止める。
ワンツーの右を当てるアルブ! ダブルレッグに入るルックンブンミー。首相撲に移行するとヒジを狙い、さらにこかし。グラウンドに深追いはしないルックンブンミーに立つアルブは詰めるが再び右で肩を抱きにいくルックンブンミーは半身のアルブに首相撲ヒザ。
3R、詰めるアルブに首相撲はルックンブンミー。突き放すアルブは二段蹴りもかわすルックンブンミーは右前蹴り、さらに金網に詰めて離れ際に左右のヒジ! 圧力で前に出るアルブだが、首相撲で体を入れ替え、右ヒジを当てるルックンブンミー! さらに右ロー2発。首相撲に対応できないアルブ。ルックンブンミーはさらにハンドルを回すようにムエタイのこかし! 首相撲ヒザを突く。高い前蹴りをアゴに突くルックンブンミー。さらにヒザに前蹴り。
クリンチでスタンドサイドに突くルックンブンミーにアルブはカニ挟みでテイクダウン! しかしルックンブンミーも足をガードに戻したところで試合終了。
判定は首相撲ヒザ、ヒジを当て、さらに再三こかしたルックンブンミーが2-1勝利。タイ人初のUFCファイターとしてオクタゴンで初白星を飾った。
ムエタイ出身の女子強豪MMAファイターとしては、8月の「RIZIN.18」で浜崎朱加と名勝負を展開したアム・ザ・ロケットことスワナン・ブンソーンも活躍中で、UFCデビューしたルックンブンミーの唯一の敗戦は2018年11月のアム戦での一本負けとなっている。
「世界に首相撲の技術を見せたい」と試合前に語っていたルックンブンミーは、その宣言どおり、ムエタイの組みの技術が“何でもあり”に近いMMAのなかでも生きることを証明してみせた。
一階級上でUFCデビュー戦を勝利したルックンブンミーは「本当に嬉しい。でも、自分のパフォーマンスに関してはあまり納得していない。ちょっとスローだったし、オクタゴンでこうありたいと思っていたほどアクティブじゃなかった。次の試合はもっとフィットネスをやっていくつもり。UFCでシックスパックのない女子ファイターは私だけだから! UFCに来られて本当に嬉しい。対戦相手は素晴らしかったし、彼女には感謝と祝福を伝えたい。彼女には本当に感銘を受けたわ。次の試合はもっと頑張りたい」と語っている。
男子選手では、ONE王者となったデェダムロン・ソー・アミュアイシルチョークなど、すでにMMAで活躍しているムエタイファイターは少なくないが、女子で本場タイからMMAに転向し、実績を挙げている選手はまだ多くない。
ローマ・ルックンブンミー、アム・ザ・ロケット、そしてMMAとムエタイとキックの三冠を目指すスタンプ・フェアテックスなど、ムエタイ女子ファイターによるMMAの挑戦に注目だ。