ボクシングで世界3階級制覇した前WBC、IBFバンタム級統一王者にして、無敗の現WBA世界スーパーバンタム級1位の中谷潤人(27=M・T)が25日、都内で行われたコンディショニングブランド「TENTIAL(テンシャル)」の会見に出席。同社とのコンディショニングサポート契約を締結したことを発表した。
同社では、メジャーリーガーの今永昇太投手(カブス)や、バドミントン女子でパリ五輪ダブルス銅メダルの志田千陽(再春館製薬所)、卓球女子で同代表の平野美宇(木下グループ)らとコンディショニングサポート契約を結んでおり、ボクサーとの契約は初。
3年前から同ブランドのリカバリーウエア『BAKUNE』を愛用していたという中谷は、「試合前に毎回ロサンゼルスで合宿するのですが、絶対バックにBAKUNEを入れて持って行かせてもらって、合宿中、夜寝るのは大体7時間から8時間ぐらい寝るのと、プラスで昼寝を1時間ぐらいと、結構睡眠をとることが多いので、そういったところで助かっている思いがあります。少しのストレスが気になってくるとパフォーマンスに影響してくるので、すごく重宝させてもらっています。やっぱり(起きて)フレッシュな状態で練習した方が、より脳への刺激が良いですし、コンタクトスポーツなので脳へのダメージも多くあったりする中で、睡眠はすごく大切にしている分野。そういったところをしっかりサポートいただけるのは、とても未来が明るいなっていう気持ちになります」と、TENTIALのポテンシャルに期待を寄せた。
同社の中西裕太郎CEOは、「創業以来、アスリートをどうサポートできるかを常に考えてきた。今回こうした新しい取り組みができることをとても楽しみにしています」と中谷との契約を歓迎。自身もサバットの日本代表として活躍する舟山健太CROも「トップにふさわしい選手とご一緒できて光栄。これからがスタートだと思っています」と、さらなる活躍に向けてサポートしていきたいとした。
減量期のコンディション作りは「より繊細になって、自分との対話が増えてくる」という中谷のコンディショニングのバロメーターは「ストレッチ」。「練習前後のストレッチで、自分の状態を確認しています」という。
次戦は、12月27日にサウジアラビア・リヤドのムハマド・アブド・アリーナで開催される『RING5~ナイト・オブ・ザ・サムライ』で、WBC世界スーパーバンタム級8位のセバスチャン・エルナンデス(メキシコ)と対戦する。
122ポンド(スーパーバンタム級のリミット=55.34kg)の肉体作りに力を注いでいる中谷は、3カ月後のエルナンデス戦に向けて、現在は64.5kgであることを明かし、「しっかり大きくなって、ここから55.3kまで約10kg弱、また減量も頑張りたい」と、バンタム級の53.5kgからの階級転向を語る。
現在、WBA・WBC・IBF・WBOの同級王座すべてを井上尚弥(大橋)が独占しているため、現時点で、この階級で世界を目指すことは、井上に挑むことを意味する。
【写真】12月にリヤドで井上尚弥と“共演”する中谷。試合に向け再びロサンゼルスでのファイトキァンプに向かう。中谷を10代から見るトレーナーのルディ・エルナンデスは、UFCのブランドン・ロイバルも担当する名伯楽だ。
リヤドでは、その井上がWBC世界同級1位アラン・ピカソ(メキシコ)と対戦するため、初めて同じ大会で試合をすることになるが、中谷は、「そこらへんはあまり気にしてないです。色々な方の目があると思いますし、そういった中で僕のボクシングを世界中で見てもらえるよう仕上げていきたい。自分がやるべきことはあると思うので、それに集中していけば、おのずと結果はついてくる。そこまでの過程を大切にしながら頑張っていきたい」と語る。
井上、中谷それぞれが勝利すれば、26年5月に両者の対戦が実現する見通しだ。
「一つ大きな目標としては、パウンドフォーバウンドで1位になること、来年5月に井上(尚弥)選手と、というのはある程度想定されているので、そこに向けてよりテンシャルさんのサポートをいただきながら強くなっていきたい」と意欲を語った。
また、自らが王座を返上したWBC世界バンタム級で、同級1位の那須川天心(帝拳)と同級2位井上拓真(大橋)が王座決定戦を行うことについては、「すごく良いカード、バンタム級も引き続き日本人選手がひしめく階級なので、面白い試合が多くなってくるんじゃないかなと思います」と、注目しているとした。
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サバットが靴を履いて戦う理由は?──ワールドカップ日本代表・舟山健太に聞く
中谷潤人とコンディショニングサポート契約を結んだ「TENTIAL」で、今回のプロジェクトを推し進めた舟山健太CROは、サバットの男子56kg級や60kg級で日本代表として活躍しているアスリートだ。
世界選手権で2019年に銀メダル、14、17、23年に銅メダルに輝き、3年ごとに開催されるワールドコンバットゲームズの23年リヤド大会で銅メダル。24年6月のアジア選手権では4連勝で優勝した。25年10月4日(日本時間5日)にオーストリアで開催のワールドカップでは、優勝を目指している。
(C)Kenta Funayama
サバットといえば、古くはアーネスト・ホーストやジェラルド・ゴルドー、元UFC&Bellatorのシーク・コンゴやクリスチャン・ムプンボらが戦い、現UFC世界女子フライ級王者のヴァレンティーナ・シェフチェンコも試合を行っているフランス式キックボクシング。
9月7日の『K-1 WORLD MAX 2025 -70㎏世界最強決定トーナメント開幕戦』では、アルビオン・モリーナを1R TKOに下し、準々決勝に進出した、サバット世界選手権-75kg王者のアルフォセヌー・カマラ(セネガル/Emergence Le Havre)の活躍が記憶に新しい。
そのサバットで日本代表として戦う舟山は、幼少期から大学までサッカーを続け、東京大大学院薬学系研究科の修士課程で脳科学の研究に没頭するなか、研究室の先輩に誘われてフィットネスクラスに通い始めたという。
そこに、Japan Savate Clubの代表かつ日本代表チームの選手兼コーチ兼監督でもある窪田隆一氏がいた。そこでサバットに触れ、練習や試合を重ねるなかで、2014年のローマでの世界選手権に日本代表として出場。初出場で銅メダルを獲得した。
サバットは、「グローブ」と足に履いている「シューズ」のみを使って攻撃や防御をすることが有効となる。この二つの部位以外を使った防御や攻撃は有効とカウントされず、ヒザ蹴り、スネを当てるようなキックや、スネを使った防御(カット)は禁止となる。
そんなサバットを舟山は、「K1ルールに近い」という。クリンチや首相撲が禁じられたサバットでは、いかにグローブとシューズを相手に当てるかを競い合う。しかし、地面に対して垂直な軌道をとるような蹴り(サッカーボールを蹴るような蹴り上げや踵落とし)は禁止となり、フェッテと呼ばれる回し蹴り、「軸足をしっかり回転させ、その力が運動連鎖によって伝わり腰が回転し、回転の遠心力がパワーとなって蹴りだすキック」が有効とされる。
その難しさや魅力を舟山は、「格闘技において重要な距離感や、多彩なフットワークを駆使した攻防」にあるという。
「前述のルールの通り、スネを当てることが禁止でシューズで蹴らなければいけない分、キックの飛距離が長くなり、立ち位置が遠くなります。また、相手のローキックやミドルキックをスネでカットすることも禁止されているため、ディフェンスとしては足でカットしたりブロッキングするのではなく、『避ける』ことがベースとなるため、少し間合いを遠めに設定する必要があります。そこでいかに蹴りやパンチを当てるのか、その技術の多彩なところや的確性、攻防がより必要とされることがすごく面白いところなんです」
キックボクシングやMMAでいえば、カーフキックなどももらわずに自身は長い距離から当てる。そのために、絶えずステップを踏んで角度をつけて、距離をコントロールする。その動きは激しく、1R2分の間、フットワークを使って常に動き回るため、スタミナの差が顕著にでやすいという。
しかし、なぜ靴を履き、スネでカットをしないルールになったのか。それは、サバットが、「男性が外出する際の装いを想定した護身術」として生まれたことに起因するという。
「柔道が着衣を想定しているように、路上で靴を履いていない人はいない。靴先に刃物を仕込んで攻撃するストリートファイターもいるなかで、基本、蹴りをもらってはダメ。スネでブロックしても刃物で切られてしまう。だから当てられないように避けるのだ、と聞いています」と舟山は説明する。
そのサバットのワールドカップで優勝を目指すために減量中の舟山は、コンディショニングを自社製品を使って整えているという。
「もともと自分は製薬会社出身なんですが、人の健康に関わる仕事をやっていく中で、病気になってから治して健康に戻すよりも、病気になる前に予防することが、とても重要じゃないかと思い、この会社に入りました。普段、自分がアスリートで、試合に向かうコンディショニングされた時の自分のポテンシャルが、それができていないときと、同じ人間でも全然違うことを実感しています。それをより多くの人に感じてもらいたいなと思っています」
中谷の新たな挑戦のサポートとともに、自身も世界の舞台でいかにポテンシャルを発揮するか。オーストリアでのワールドカップは来週、開幕する。
◆舟山健太2024年: サバット世界選手権 アソー(ライトコンタクト部門)男子-60キロ級 銅メダル2024年: サバットアジア選手権 アソー(ライトコンタクト部門)男子-60キロ級 優勝 2023年:World Combat Games サバット アソー(ライトコンタクト部門)男子-60キロ級 銅メダル 2023年:サバット世界選手権 コンバ(フルコンタクト部門)男子-56キロ級 銅メダル2019年:サバット世界選手権 コンバ(フルコンタクト部門)男子-56キロ級 準優勝 2017年:サバット世界選手権 コンバ(フルコンタクト部門)男子-56キロ級 銅メダル 2014年:サバット世界選手権 アソー(ライトコンタクト部門)男子-60キロ級 銅メダル