2019年11月1日(現地時間・日本時間2日)米国カンザスシティで開催される「Invicta FC38」にて、村田夏南子(フリー)が、現在空位となっているInvicta FC世界ストロー級タイトルマッチに臨む。
村田は中学まで柔道で国際大会で優勝するなど活躍。高校ではレスリングに転向し、2011年ブカレスト世界ジュニア選手権55kg級で優勝。同年12月の全日本選手権では吉田沙保里に敗れたものの、第一ピリオドにおいて2ポイントを奪うなど健闘。2012年12月の吉田が欠場した全日本選手権では初優勝を果たしている。
バックボーンの柔道、レスリングを活かし、2016年4月の「RIZIN.1」でMMAプロデビュー。持前の組み力に極めの強さも加わり、これまでMMA10勝1敗。2019年6月には、Invicta FCデビュー戦に臨み、MMA7勝2敗だったリアーナ・ピロシンを相手に1R、リアネイキドチョークで一本勝ちを収めている。
今回のストロー級王座戦の対戦相手は米国出身のエミリー・ドゥコッティ。これまでMMA8勝5敗の戦績で、過去にはBellatorで適正階級より一つ上のフライ級で村田の練習仲間でもあるイリマレイ・マクファーレンとタイトルマッチを経験している強豪だ(※5R マクファーレンが腕ひしぎ三角固めで一本勝ち)。
2020年、東京オリンピックが迫るなか、レスリングのライバルたちより一足早く、村田がInvicta FCで自身初となる王座戴冠となるか。これまで北米の同団体でベルトを巻いたのは、元Invicta FC世界アトム級王者にして現RIZIN女子スーパーアトム級王者の浜崎朱加のみ。村田は浜崎に続いて快挙を成し遂げられるか。米国カリフィルニアのコンバット・スポーツ・アカデミーで調整に励む村田にインタビューした。
──いよいよ11月1日「Invicta FC38」でInvicta FC世界ストロー級タイトルマッチが近づいてきました。Invicta2戦目にしてタイトルマッチに臨むことになった心境を教えてください。
「タイトルマッチとか意識することなく、試合に向けて体力、技術、心、すべてを準備してます。ただそれに勝ったらベルトがついてくるだけだと思っています」
──現在の練習状況を教えてください。コンバット・スポーツ・アカデミーでは、1日にどのような練習を誰と行っていますか。キリアンコーチの教えは村田選手にとって、どんな部分がいいですか?
「打撃、レスリング、MMA、グラップリング、それぞれの専任コーチに教わっています。キリアンコーチは私のレスリングに合った打撃を教えてくれます」
──米国での練習のいい点と、もし困る点があれば両方、教えてください。
「いいところはキリアンコーチに打撃を教えてもらえることです。困るところは……身体のケアが自分でやるストレッチとかでは間に合わなくなることです」
──前戦では、序盤、リアーナ・ピロジンを背負いで投げるもバックに回られチョークを狙われました。あのとき落ち着いて正対した村田選手でしたが、どんなことを考えていましたか。
「まず、セコンドに入ってくれた山崎剛コーチの声が聞こえました。Me,Weでバックチョークのディフェンスの練習をしていたので、山崎コーチの声が聞こえてからは身体が自然に動きました」──その後、ケージレスリングでピロジンの両足を束ね、立ち際を崩してピロジンを亀の状態にさせるるなど、ケージ際での動きが際立っていました。これまでのピュアレスリングとケージレスリングが融合しているように感じます。ケージレスリングでの進化の手応えをどのように感じていますか。
「日本にいるときからずっとケージ際の攻防は意識してやってきました。ケージでスパーリングする度にキリアンコーチから『ユーズ・ザ・ケージ!』とゲキを飛ばされます。米国でもケージ際の攻防にも力入れてるので試合見てくれたらわかると思います」
──前戦のフィニッシュでは、バックからピロジンの左手首を内側からリストコントロールし、掴んだ手首を手前に引き寄せ、左足をその上からフックしピロジンの左腕を縛った上でチョークを極めにいき、タップを奪いました。得意とするがぶりだけではなく、手足が決して長くはない村田選手が自らバックについてのチョークでの一本勝ちしたことに驚きました。柔術の練習での進化について、どのように感じていますか。
「私も驚きました(笑)。ただ、相手からタップを奪う技は増えてきています」
──今回の対戦相手のエミリー・ドゥコッティは現在2連勝中です。印象を教えてください。
「私の親友のイリマと二回も試合を行い、タイトルマッチもしているオールラウンダーの強い選手です」
──Bellator世界女子フライ級王者イリマレイ・マクファーレンと交流があるのですか?
「イリマのジムへ練習に行ったのは2016年ですが、そのときイリマの家に泊めてもらいトレーニングへ一緒に行ってました。グラウンドもスタンドも上手で、私はそのときMMAを始めて間もない頃で分からないことをいろいろ教えてもらいました。ファイターとして優れているのはもちろんですが、普段の生活でもすごく優しいベリーナイスな人です」
──なるほど。そのマクファーレンとも対戦し、タイトルマッチでは5Rまで戦ったドゥコッティは、オーソドックス構えから少し距離が遠く、左右の出入りは速く、ローキックも速くて強いです。組みたい村田選手としても打撃で向き合うことから始まりますが、フェイントなども含めどのようにスタンドを戦いますか。また、現在の打撃の向上具合をご自身ではどのように感じていますか。
「たしかに相手は打撃に自信を持ってくると思います。ただ、私も打撃に力入れてるので試合見てくれたらわかると思います」
──Bellatorで王者イリマレイ・マクファーレンを相手にフライ級でタイトルマッチも戦っているドゥコッティと対戦することを、村田選手はどのように位置づけて、あるいはどのような意味を感じて戦いますか。
「どのような意味も感じてません。ただ闘うだけです」
──ドゥコッティとの試合内容で、村田選手の世界の位置も見えてくるような試合だと思います。現在、RIZINがBellatorとの対抗戦を控えていますが、村田選手もその中に入って戦いたいという気持ちもありますか。
「今は目の前の試合のことしか考えられないので、その先の試合のことはまだ考えられません」
──前戦の勝利後のインタビューでは「Invictaに出られるのは嬉しいことですが、その理由は、世界一への階段だと思っています」と語っていました。それはInvictaのベルトを巻いて、世界へ。UFCあるいはBellatorの世界王者に挑戦し勝つことが、目標ということでよろしいでしょうか。
「はい、目指すところはそうですが、まずは目の前の試合に一つずつ勝っていかないとなので」
──ところで、サクマシン=カナコマシンのレスリングポーズが、米国の子供たちには、お化けのポーズと勘違いされている感があります。そのことを村田選手はどのように対処していますか。
「自由の国です。なんでもありです(笑)」
──最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
「Invicta 2戦目、毎日の練習の成果を出してしっかり勝ちます。日本からの応援よろしくお願いします!」