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インタビュー

【RIZIN】征矢貴、フライ級GPを語る「ガジャマトフは感情が全く読めなかった」「扇久保さんが勝つには──」

2025/08/25 17:08
 2025年7月27日、さいたまスーパーアリーナで開催された『超RIZIN.4 真夏の喧嘩祭り』RIZIN WORLD GP 2025 フライ級(57.0kg)トーナメント 1回戦でアリベク・ガジャマトフ(ダゲスタン)と大激闘を繰り広げた征矢貴(THE BLACKBELT JAPAN)が8月24日、『RIZIN甲子園 2025』にゲスト来場。  ガジャマトフとの死闘で感じた強さと課題、同門の先輩の扇久保博正とガジャマトフの展望、フライ級GPリザーブマッチ、そして今後について、本誌に語った。 ガジャマトフは1分間のインターバルでの回復力がかなり高い ──『RIZIN甲子園』東日本大会いかがでしたか。1Rのなかテイクダウンディフェンス、立ち上がりなどが年々レベルアップしているように感じます。 「去年も見ましたが、やはり年々レベルが高くなってますよね。みんな何でもできるようになっています」 ──征矢選手自身は、1カ月前のRIZINフライ級GP1回戦で、アリベク・ガジャマトフ選手との試合でした。3Rに渡る激闘でしたが、ダメージはいかがですか。 「今までKO負けっていうのは初めてじゃないんですけど、今回初めて2週間から3週間ぐらいこう……眩暈みたいな症状や、軽い頭痛があったりとかしたので、前回の試合はかなり激闘だったなと、自分でも思います」 ──その症状が2、3週間続くのは心配ですね。では、本格的な練習はまだ再開されていないと。 「そうですね。フィジカルトレーニングだったりはしてるんですけど、実戦的なスパーリングはまだやってないですね」 ──大会前から優勝候補の一角とされたガジャマトフ選手との試合。先制のテイクダウントライから組みを散らして近い距離でのボクシング勝負を挑み、激闘に持ち込みましたが、最終的には正面突破された、と感じました。実際に戦ってみていかがでしたか。 「実際そうですね。ガジャマトフと向かい合って完全に……あの力強さっていうのは、やっぱり日本人選手には無いものだなというのを感じました。フィジカルだけじゃなく、その回復力も。1分間のインターバルでの回復力はかなり高いんじゃないかと思います。ただ、各ラウンド、1R、2R、3Rと分けると、ラウンドの後半は動きが序盤より落ちてくるかなっていうのは、振り返ってみて思いましたね」 ──ラウンド後半に息遣いの荒さを感じていたと。征矢選手としては、後半勝負ということも考えていたのですか。 「そうですね。まあ戦ってみないとそれも分からないことなんですけど、2Rの後半でかなり相手がバテているのが分かったんで、勝負を仕掛けようと思ってました」 ──そのフィジカルや回復力もさることながら打撃も強打ながら大振りではなく、厄介でしたね。 「やはりアマチュアで彼は、120戦以上、散打の打撃競技をやってるっていうのも聞いていたんで、打撃の技術勝負をしたら僕がやっぱり不利なんじゃないかなと思ったのもあって、タックルを混ぜて組みを意識させてっていうのはあったんです。コンパクトな打撃っていうのは一応想像通りではあったんですけど、実際向かい合ってみて、最後の左フックは見えなかったんです」 ──試合後のインタビューで、「負けていると思って3R、最後倒しに行こうと思って強引に距離を詰めたときにもらってしまった」と語っていましたが、ガードはしていましたよね。 「あの左フックが横から振ってくるっていうよりは、斜め前から飛んでくるようなフックだったんです。ガードの内側を突かれました」 ──なるほど。フックでもストレートとの中間のような軌道だったと。負けている、と感じた試合展開のなかで、近い距離で勝負に行ったのは、間違いではないように思います。実際、手数を増やすことで圧をかけていました。それをガジャマトフは打ち抜いた。 「打撃に関しては一番感じたのは彼、もちろん攻撃力も強いんですけど、ディフェンスが非常に上手で、右のガードは一切下がらないですし、左手もずっと前に出して距離を潰されないようにやってたんで、そのあたりも上手かったですね」 ──あの前手はやはりやり辛かったですか。 「あれはかなり、やっぱり前に出たい選手にとってはやり辛いので。そこが徹底してましたね。だから、唯一当たったパンチがアッパーとか。そういうパンチでした」 [nextpage] このスタイルで行くならば、強化しないといけないことが明確に ──征矢選手が踏み込んだからこそ当てた打撃でしたね。あの1回戦を経て、総選挙で準決勝のカードが決まりました。あの投票システムをどのように見ていましたか。 「あの選挙で『見たい対戦カード』を投票ってっていうのが当日分かったじゃないですか。あの瞬間に、自分は扇久保(博正)さんいけるなと思ったんですね。“誰を落とすか”という話じゃなくて、“見たいカード”ってなると、やっぱり『ガジャマトフvs.扇久保』が一番、誰もが見たいっていう試合になるだろうなと。それで“あっ、これは扇久保さん大丈夫だろう”と。それでおのずとカードも決まるんで、あのシステムはすごく斬新ですが、納得いくものだったと思います」 ──THE BLACKBELT JAPAN同門のお二人には本誌で対談もしていただきましたが、実際に手を合わせたガジャマトフ選手と扇久保選手との試合、どのように予想されますか。 「そうですね……僕が予想するのは、ガジャマトフ選手は扇久保選手のテイクダウンを警戒して、そんなにラウンドの序盤からガンガン攻めてこないんじゃないかなって。扇久保さんも打撃をもらわないで、遠い距離で蹴りを打つ動きが得意なので、ラウンドの序盤は結構見合う展開になるかもしれないなと」 ──扇久保選手にも左右の蹴りがありますね。特にオーソからの左の蹴りが。 「はい、その蹴りも駆使して中盤から後半で扇久保さんがテイクダウンを混ぜて戦って、もし1Rが取れなくても、2、3Rで扇久保さんがしっかりテイクダウンを取って、トータルで扇久保さんが判定で勝つんじゃないかなと思います」 ──そこにいかにハメるか。しかし、征矢選手のボディロックをウィザーで耐え逆にトップを奪った、あのテイクダウンディフェンスも強いガジャマトフ選手をいかに崩すか。 「たしかにテイクダウンディフェンスはめちゃめちゃ反応が速いですね。でもそこは一つ、反応レベルが速いっていうのは、強さでもあるし、フェイントにかかりやすいっていうことかもしれないんで、それもMMAとしてどう戦うか。  それと、ガジャマトフの強さはさきほど言ったことにも繋がりますが──僕は結構、試合中に相手の顔を見ていて、目とかを見ていて、一瞬弱気になった瞬間とか、攻めに転じたりっていう瞬間を、試合中すごく意識してるんです。その点で、彼はすごくポーカーフェイスで感情が全く読めなくて。疲れ方で荒い息はしてるけども、動くきはあまり変わらないみたいな、そういう選手はあまり見たことなくて。そこは強みかなと思いますね」 ──そんな難敵を扇久保選手がどう崩す感じか、楽しみです。そして、征矢選手の今後ですが、あらためて7月のガジャマトフ戦はタフでした。今後に向けてダメージを抜きつつ、ただ、ひとつ気になるのは、フライ級GPでリザーブマッチになった伊藤裕樹選手の対戦相手が「1回戦の覇者から選ばれる」というアナウンスです。もしや、そこも狙っていたりもしますか。 「それはオファーを来てから考えようかなと思ってます。ただ、今は自分がやれることはやってるので、それはもう、その時の流れに任せるしかないですよね」 ──やれるところから練習を再開している状況ですね。 「はい。もちろん焦っていま、打撃のスパーとかしてもマイナスでしかないんで」 ──ジョン・ドッドソンに勝利し、ガジャマトフという強豪と3R 競り合った。手応えとともに、修正して次に向かうことになりそうでしょうか。 「そうですね。課題がかなり明確に見えた試合でもありますし、試合後のダメージとか考えても、やはりディフェンス面を重視しないといけない。長く格闘技を──このスタイルで行くならば、そこを強化しないと続けられないなと思いましたし、かなり負けて学ぶことが多かったので、次戦では、自分自身すごくパワーアップして臨めるんじゃないかなと思ってます」 ──復帰戦も楽しみにしています。ありがとうございました。 [nextpage] 扇久保「準決勝はガジャマトフとやろうと決めて練習してきた」、ガジャマトフ「私が出る試合は全てフィニッシュで決めたい」  2025年8月19日、『RIZIN WORLD GP 2025 FLY WEIGHT TOURNAMENT 2nd ROUND総選挙』(フライ級GP総選挙)が開催された。  9月28日(日)愛知・IGアリーナ『RIZIN.51』にて行われる「RIZIN WORLD GP 2025 フライ級(57.0kg)トーナメント準決勝」進出者4名を決めるためのもの。  そこでトップ当選を果たした「扇久保博正vs.アリベク・ガジャマトフ」は何を語っていたか。下記にあらためて紹介したい。 (総選挙前の演説) ◆扇久保博正「強さを求め、強い選手と戦いたくて格闘技を続けてきた」 「私、扇久保博正は20年間この格闘技をやってきました。強さを求め、強いやつと戦って勝ちたくてこの格闘技を続けてきました。私は現UFCチャンピオンのあのパントージャ選手にも勝っております。フライ級トーナメントで私が優勝してベルトを取ったら、たくさんの強豪外国人を呼んでいただいて、私に当てていただいて全員に勝って、日本のRIZINの強さを証明していきたいとそういうふうに思っております。  先ほども言いましたが、強さを求め、強い選手と戦いたくて格闘技を続けてきました。なので、準決勝はなるべくガジャマドフ選手と戦わせてください。よろしくお願いいたします。私からは以上になります」 ◆アリベク・ガジャマトフ「私にとっては、総選挙は何日にもわたる犠牲を伴うもの」 「日本のファンの皆さん。今日はこの場に私を迎えてくださり本当にありがとうございます。まずはこのような大きなチャンスを与えてくださったRIIZNの皆様、そして私を温かく迎えてくださったファンの皆さんに心から感謝いたします。私の生まれた村には人生の選択肢やチャンスといったものがほとんどありません。そんな場所で生まれ育った私に、RIZINが声をかけてくれたこと、手を差し伸べてくれたことは私だけでなく、故郷の仲間全員にとっての希望となっています。  投票に入る前に、なぜ私が今日ここに来たのかお話させてください。私はRIZINが今取り組んでいることが、格闘技の歴史において前例のない挑戦であり、また非常に革新的な一歩だと理解しています。ここにいる他の選手たちにとっては、この場はほんの数時間のプロフェッショナルとして立ち振る舞う時間なのかもしれません。しかし、私にとっては、これは何日にもわたる犠牲を伴うものです。  私は今回、一人で日本にやってきました。日本を行き来するだけで70時間以上かかりますし、時差に慣れて本格的なトレーニングを再開するまでに数日はかかってしまいます。前回の減量も非常に過酷だったんですけれども、今回もまた同じような厳しさが待っていると覚悟しています。つまり、私はおよそ10日間、トレーニングと体作りの期間を失うことになるのです。それでも私はここに来ました。自分の覚悟を示すために今ここにいます。  私にはこのグランプリに出場する明確な理由があります。それは自分の人生を変えるということです。何も持たずに育った少年にとって、これは人生を変える大きなチャンスであり、またそのための大切なお金でもあります。だからこそ、私はこのグランプリで必ず勝ちたい。その勝利をもっともエキサイティングな形でつかみ取りたいと強く願っています。今日この場にいる皆さんに自分の言葉で直接お伝えしたかったのは、この想いです。どうか皆さん、人生を変える力を、そのチャンスを私に与えてください。どうぞ応援よろしくお願いいたします」 (総選挙後、「最も見たいカード」に選ばれ) ――扇久保選手、「塩漬け」と言われながらトップ当選になったのはどんなところが決め手になった思いますか? 扇久保 僕は強さを求めてずっと格闘家として生きてきたので、そこが皆さんに伝わったのかなと、そういう風に思います。 ――これまでの蓄積・実績が認められたとの想いが強いですか? 扇久保 そういう気持ちも強いですし、次の相手ガジャマトフという本当に強い選手なので、強さをまた証明したいと思っています。 ――ガジャマトフ選手、扇久保選手から指名を受けたことと、“塩漬けにする”と言われたことについてどう思いますか? ガジャマトフ 扇久保選手が非常に強い選手というのはよく知っていますし、前回凄い試合を見せてくれたと思っています。ただ、今回は私が前回と同じように素晴らしい見ごたえのある試合にしたいと思っていますし、私が出る試合は全てフィニッシュで決めたいと思っています。今回もその意気込みで向かいたいと思います。 ──(別室にて)総選挙、一抜けでした。 扇久保 本当にありがとうございます。本当に吐きそうでした。“心臓が口から出る”と、そういう感じでした。試合より緊張しました。本当に良かったです。 ──選ばれる自信は? 扇久保 自信は正直半々でしたね。試合の時は自分を信じればいいんですけれども、今回ばかりは自分をどれだけ信じてもどうしようもないので天に任せるというか。それだけでした。 ──事前の人気アンケートでは危なかったです。 扇久保 最下位だったのでけっこう落ち込みました。ヤバいかなと思って。(選挙演説の動画は)伊藤くんが一人で頑張ってくれてたので、これは俺もやらないとダメだと思ってやりました。こういうような選挙が決まったからには、やれることはやろうと思ってやりました。 ──対戦相手に決まったガジャマトフについて。 扇久保 “強い”ってその一点で今日の選挙の前に思っていたんですけれど、彼の演説を聞いて僕も胸にグッとくるものがあったので。彼は物凄いハングリーで絶対に僕のことを仕留めに来ると思うので、そんな選手と戦えるのは最高ですね。それを僕が最後に勝って叫びたいです。次、準決勝はガジャマトフとやろうとずっと練習もそのつもりで試合終わってからやってきたので。認められたというか、決まってよかったなって感じです。 ──あらためて準決勝に向けて意気込みを。 扇久保 強さを求めて戦ってきたので、強い外国人の選手、日本人も強い選手いますけれど、強い選手を倒してRIZINの強さを証明すると、そう思っています。
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