MMA
インタビュー

【RIZIN】鈴木千裕──野生と人間のあいだで「最も大事なのはハングリー精神」「普段は人間特有の知恵を使おうかな」、フェザー級海外勢、気になる復帰戦も語る。

2025/08/24 22:08
 元RIZINフェザー級王者の鈴木千裕が24日、『RIZIN甲子園2025』のゲストとして来場。怪我からの復帰、今後について語った。  5カ月間で3連戦。負傷も抱えるなかで強豪たちと拳を交えてきた“天下無双の稲妻ボーイ”は、「熊で言うと冬眠ですよ、今蓄えてる感じです」と現状を語る。  何を蓄電しているのか。それは野生のハングリー精神と、人の叡知だという。 「次の試合で最も大事なものは“ハングリー精神”だと思っています。やっぱり試合をやりすぎると、どこかその緊張感が薄れるっていうか……デビュー戦のあの緊張感とかって、あれはもうデビュー戦以降、二度と味わえない感覚ですよね。もちろんスポーツなんですけど、やっぱり格闘技っていうのは、古代からあるように、レフェリーを抜いたら殺し合いじゃないですか。その根本的な“殺り合い”っていうのを改めて高めていかないと。試合を流れ作業で惰性でやるのではなく、一試合の価値を高めていきたい。  これまでは、これまでなりのコンディションと心構えを作ってやってるんですけど、いざ冷静に時間を空けると、これまで常に100%でやってるつもりでも、やっぱり身体は自然と本能的に慣れに徹しちゃうんで。そういう面も含めて、緊張感を持ってやらなきゃなって。デビュー時にいい方向だったリスクが、悪い方向に行ってるなと思って」と、試合に向かうハングリー精神が必要だとした。 「いまは、心身ともにそのいい緊張感も集中力も作る時間がある、仲間がいるんで」という鈴木は、野生の復活とともに“知恵”も使っていきたいという。 「正直、試合が決まれば練習のボリュームも上がるんです。もちろん試合が決まらなくてもやってるんですけど、強度的には今、スパーリングをやってもしょうがないんで、ちょっと発想っていうか、頭の考え方を変えられる期間というか、ものの捉え方とか。そういうものを結構、今意識してますね。  どういうことかというと、例えば自分を第三者の目で見て、どういうふうにやればよりベストな戦いができるのかなとか」と、自分自身を俯瞰した目で研究して、戦い方を検証しているという。 「それに、食事面に関しても、栄養学の知恵があるので、そろそろその知恵をガチで使っていこうかなと。自炊含めてガラッと変えて、身体についてのこと──食べるものや、サプリメントとか、練習環境とか発想とか浴びる情報とか、そういうのも含めて、せっかく時間があるんで、全部見直してみようかなと思って。今情報入れてる最中ですね」  幼い頃から料理が好きで、調理専門学校で3年間学び、さらに2年間にわたって栄養士の勉強に取り組み、資格も持っている。5月に26歳になった。その知識をようやく活用する時期が来た、と語る。 「“何でも食うやつが強い”のはもちろんそうだと思ってたんですけど、20を過ぎると、そう言ってばかりではいかない面が出てくる。そろそろ知恵を使っていかないと、長く強く試合ができなくなる。短命だったらそれでもいいかもしれないけど、僕は強く長くこの格闘技界で戦うつもりなんで、試合は“野生チック”ですけど、普段は人間特有の知恵を使おうかなって」と、野生と人を行き来しつつ、ファイターとしての強さも獲得したいとした。  試合への飢えはあるが、「ちょっと発想を変える時間が改めて必要。25歳までは無理をする。25歳以降は、100%、確実に勝てるような準備をちゃんとしたいっていうのにシフトしてる。たぶん、次の試合はまあ100°くらい変わるんじゃないですか。180°ではなく(笑)、ちょっと余力を残して」 [nextpage] 日本人が対外国人ってなった時、身体感覚でカルチャーショックを受けている  わずか5カ月の間に、クレベル・コイケ、カルシャガ・ダウトベックと強豪と対し、5月、朝倉未来に徹底研究され、攻略された。 「そういう時もある。それを自分で上手く噛み砕いて、自分のスタイルを貫き通すだけ。前回の状況で試合に負けたからといって、自分の個性を殺すつもりはないんで。自分のやりたいように好きな通りやれば、この次、いい方向に行くと思っています。それは見えてるんで、その出力を出すタイミングを見ている。そろそろフルで行こうかなっていう時期を見てるんで」  9月28日の名古屋大会では、フェザー級タイトルマッチとして、かつて自身が巻いたベルトをラジャブアリ・シェイドゥラエフ(キルギス)が王者として防衛に臨む。挑戦者は、修斗王者のSASUKEを初回KOに下したビクター・コレスニック(ロシア)だ。これら海外勢の台頭を、どうとらえているか。 「それはもうみんな思ってる通り、一番厄介ですよね。日本と海外のファイトスタイルとかリズムとかが全部違う。日本人が対外国人ってなった時のその身体感覚でカルチャーショックっていうか、“何、このフィジカル。何、このリズム、何この間合い”みたいに受ける。日本のベーシックに無いものを持ってるから驚かされますし、自分だったら、と考えると──いかに“ブン殴って終わらせるか”です。日本人ファイターでいる限り、海外勢と立ち合わなきゃいけないし、そのプライド持ってやらなきゃいけないんで」と、立ち向かうつもりだ。  しかし、現状すぐには復帰はできない。焦りはないか、と聞くと、「特に無いですね。自分の現状を受け入れるだけなんで。僕が現段階で試合をしていないなか、どうこう言っても流れは変わらない。だから僕が“よし、試合できます。今、フェザー級どうなってますか? よし、ここでやりますよ!”っていう状況になれば。いまは流れにも任せるしかない」とした。  見据えるのは年末年始だ。 「大晦日、年明け狙っているんでそこに向けて動いています。それまでは必要なものをやる」  ストライカー対策が構築されたいま、新たな武器を引き出しに加えることで、自身の武器をより強力なものにするつもりだ。 「相手に同じことをしてやりますよ。打撃の練習しときなお前、って。こっちはグラップリングの練習しとくぞっていう。100%、後手に回るわけじゃない。僕ら(ストライカー)には僕らの武器があって、相手は相手の武器があって、それはお互い様じゃないですか。その武器を活かすために、MMAとして強さを増す。いい時もあれば悪い時もある。次、どうするかだと思うんで、そこは期待していただきたいです。手応え? もちろん、強くならなきゃいけないんで」
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