2025年8月16日(日本時間17日)米国イリノイ州シカゴのユナイテッド・センターで開催される『UFC 319: Du Plessis vs. Chimaev』(U-NEXT配信)にて、UFC世界ミドル級王者のドリカス・デュ・プレシ(南アフリカ)と、同級3位ハムザト・チマエフ(アラブ首長国連邦)による、「UFC世界ミドル級選手権試合」(5分5R)が行われる。
▼UFC世界ミドル級選手権試合 5分5Rドリカス・デュ・プレシ(南アフリカ)王者・23勝2敗(UFC9勝0敗)※UFC9連勝中ハムザト・チマエフ(アラブ首長国連邦)挑戦者・14勝0敗(UFC8勝0敗)※UFC8連勝中
(C)Zuffa LLC/UFC
“DDP”こと王者ドリカス・デュ・プレシは、UFC9勝0敗でオクタゴンで無敗の王者。5歳で柔道、12歳でレスリング、14歳の時にキックボクシングを始め、2013年に19歳でプロMMAデビュー。2018年4月にKSWウェルター級王座を獲得。
2020年10月にUFCデビュー、オクタゴン7戦目の2024年1月、UFC 297のUFC世界ミドル級タイトルマッチで王者ショーン・ストリックランドに挑戦し、5Rスプリット判定勝ち。南アフリカ人史上初となるUFC世界王者に輝いた。2024年8月に、元王者のイズラエル・アデサニヤを4R リアネイキドチョークに極めて初防衛。25年2月の前戦でストリックランドとの再戦に臨み、判定3-0で勝利。2度目の王座防衛に成功している。
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対する挑戦者・チマエフは、5歳からレスリングを始め、10代でロシアジュニア選手権で銅メダルを獲得。18歳の時にスウェーデンへ移住し、2015年、16年の86kg級、18年の92kg級と3度フリースタイルレスリングのスウェーデン選手権で優勝を果たす。その後は柔道やコンバット・サンボにも取り組んだ。
2018年5月、24歳でプロMMAデビュー。Brave CFなどで6戦6勝(全フィニッシュ)の戦績をあげて、2020年、コロナ禍で行われたUFCアブダビ大会ミドル級でオクタゴンデビュー。わずか10日後にウェルター級で2戦目を1R TKO勝ち。2020年9月にミドル級でジェラルド・マーシャートを17秒 KO。22年4月にギルバート・バーンズとのウェルター級戦で判定勝ち。
22年9月のネイト・ディアス戦で体重超過し、代わりのケビン・ホランドと180ポンド契約で一本勝ちすると、以降はミドル級に上げて、23年10月にパウロ・コスタの代役のカマル・ウスマンにマジョリティ判定勝ち。前戦は24年10月のロバート・ウィテカー戦で、アゴ上からのフェイスクランクで一本勝ち。今回のDDP戦で初王座挑戦となる。
組み技出身ながら、キックボクシングではWAKOのK-1ルールで南アフリカ人初の世界王者にもなっているDDP。ミドル級随一のケージレスリングを軸にパウンド以外にも右ストレート、右アッパーでのKO記録も持つチマエフ。初メインにして、3度目の5R戦だが、4R以降に持ち込まれたことはない。バーンズ、ウスマンとの3R判定では後半に追い上げられており、長期戦になった場合は王者が有利か。そのためにはDDPも序盤をサバイブする必要がある。
しかし、王者DDPは「最初のゴングから最後のゴングまで全開で行って、どっちが先に折れるか見ようじゃないか」と語った。U-NEXTから届いた会見での質疑応答は以下の通りだ。
ドリカス・ デュ・プレシ(ミドル級王者)「俺は『あいつの試合』をしに行くんじゃない。『ドリカスの試合』をする」
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──ビッグマッチで、ファイトウィークはすでに大盛り上がりです。ホテルのロビーで相手のハムザト・チマエフ(ミドル級3位)と顔を合わせたそうですが、あのやり取りから得たものはありましたか?
「見たろ? あいつ身長2メートル40センチはある……ゴジラかと思ったよ。冗談だって(笑)。すごく礼儀正しかったし、前から言ってるけど相手が礼儀正しいなら俺も試合前は礼儀正しくする。変な茶番はなさそうだな。何より、相手が万全って確認できたのが良かった。彼は本当に体を仕上げられるのかって声は周りにあったけど、俺は気にしてなかった。俺は完成されたファイターだし、この試合がデカいのは“世界で一番強い2人”がぶつかるからだ。ケガとかでその2人が同時に揃わないことも多いし、ときにはお互いがやりたがらないこともある。でも俺は世界一と戦いたい。今回はそれが実現する。あと2日、計量が残ってるけど、全部うまくいってる。ファンが望んだ俺対ハムザト・チマエフ。俺もワクワクしてるよ」
──チマエフは一気に距離を詰める強烈な打撃と、深いテイクダウンを仕掛けてきます。彼の出足を鈍らせるのは簡単じゃないと予想されます。あなたも序盤から踏み込んで、むしろその局面を受けて立つくらいの心構えが必要になりますか?
「多くのファイターが犯す過ちが、“タックルに気をつけろ、組みに来るぞ”って守ることばかり考えて、何もしないまま結局テイクダウンされる。戦いに行けよ、って話だ。あいつがレスリングが強いのは分かってるし、グラウンドも上手い。だけどそれがゲームだろ? もし相手がイズラエル・アデサニヤ(ミドル級4位)だったら、座り込んで“どうぞ打ってください”なんてするか? しないだろ。戦うんだよ。今回も同じだ。
あいつは必ずタックルに来る。たぶん俺を倒すこともあるだろう。でも俺だってテイクダウンを仕掛けるし、たぶん倒せる。打撃もやる、俺も当てるし、あいつも当ててくるだろう。そんなの怖くない。試合はそういうもんだ。重要なのは“その後に何をするか”。チマエフが得意な形は全部分かってるし、キャンプではレスリングとグラップリングを完璧に仕上げた。でも俺は“あいつの試合”をしに行くんじゃない。“ドリカスの試合”をする。つまり、王者としての戦い方を見せるってことだ」
──受け身に回るのではなく、DDPから仕掛けていくと。1R目の主導権はどちらが握りそうでしょうか。
「どうなるかはゴングが鳴ってからの話だ。ただ、あいつはロバート・ウィテカー(ミドル級8位)と5Rの試合が組まれた時も、別に戦い方を変えなかった。つまり、5Rを計算に入れて慎重に……なんてタイプじゃないってこと。5Rは長い。俺はあのしんどい領域に入るのは怖くないし、全力で消耗した状態でも戦い続けられる。何度もやってきただろ。最初のゴングから最後のゴングまで全開で行って、どっちが先に折れるか見ようじゃないか」
──ここまでとてもリスペクトフルな一週間ですが、記者会見ではどうでしょう。もし相手が少し無礼な態度に出たら、やり返すネタはありますか?
「さあな、様子を見よう。ああいうのを“用意してくる”って思ってる人が多いけど、俺は仕込めないタイプなんだ。焚き火を囲んだときの軽口――その場のノリだから面白いのであって、決め打ちはサムい。だからその瞬間に感じたことを、そのまま言うだけ。今のところ、それを出す必要はなさそうだし、純粋に試合の話で十分だと思う。すでに十分盛り上がってるし、わざわざ“偽物の因縁”なんて要らない。……でも、相手がその気なら、やり返すだけさ」
──この試合の盛り上がりは、直近の何戦かとも少し違う空気を感じます。ショーン・ ストリックランド(ミドル級2位)戦では言葉の応酬が激しく、イズラエル・ アデサニヤとは火花を散らしつつ最後は握手もあった。今回はとても純粋に“競技的”です。どちらのビルドアップが好みですか?
「どっちでも構わない。よく“怒りは力になるか”って聞かれるけど、俺は怒らない。個人的な感情は一切ない。ただのビジネスだ。相手が世界一の嫌な奴でも、最高にナイスガイでも、オクタゴンではぶっ倒しに行く――それだけ。ストリックランドやアデサニヤとやったときみたいにやり合う時もあれば、ロバート・ ウィテカー(ミドル級8位)やダレン・ティルのときみたいに何の遺恨もない時もある。どっちでも試合になれば同じだ。試合当日にオクタゴンへ入る俺は、今ここで話してる俺とは別人になる」
──ところでインスタで「Kham-Sit※」というキャプションと共に、縄で狼を散歩させている動画を投稿していました。あれは誰の発案ですか?
「USN Nutritionっていうアフリカ最大級のサプリブランドの企画だよ。あれは本物の狼だ。“合成がショボい”って言われたけど、編集じゃない。本当にジムに狼を連れてきたんだ。思ったより大人しくて、最高の撮影になったよ」
※"Kham-Sit"は「Calm, sit(落ち着け、座れ)」と、対戦相手ハムザト(Khamzat)の名前をかけたキャッチ。
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アンデウソン・シウバはGOATだ。でも同時に時代も見ないといけない
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──王者として防衛を重ねると、すぐに階級転向の話が出がちですが、いまミドル級は活況です。ライニアー・ デ・リダー(ミドル級5位・元ONE王者)、アンソニー・ ヘルナンデス(ミドル級7位)が大きな勝利を挙げ、ナッソージン・ イマボフ(ミドル級1位)対カイオ・ ボハーリョ(ミドル級6位)も控えています。いまの“王者から見たミドル級”戦線をどう捉えていますか?
「世界王者でいるには最高の時期だよ。動きが多いし、面白い奴らが揃ってる。トップに名乗りを上げてるやつが何人もいて、次の挑戦者を誰にするか、すぐに決まるだろう。少なくとも頭に浮かぶのは4人。誰が来ても構わないし、近いうちに彼らの間で自然と序列がつくはずだ。ワクワクしてるよ」
──直近のミドル級のパフォーマンスで、最も印象に残ったのは誰ですか?
「アンソニー・ヘルナンデスだな。直近のロマン・ドリッゼ(ミドル級11位)戦は本当に見事だった。それと、ライニアー・デ・リダーとロバート・ウィテカーの試合――あれはデリダーにとって大きなテストだったけど、すごく接戦だった。判定が怪しいって言う人もいれば、正しかったって言う人もいる。俺はどっちにも異論はない。そういう試合だよ。でも、やっぱり一番はヘルナンデスだ。ドリッゼは(当時)トップ10にいたはずだけど、その相手にあそこまでやってのけたのは誰もいない。ドリッゼはナッソージン・イマボフともやってるし、ビッグネームと戦ってきた。それでもあれだけの内容を見せたのは超インパクトがあった。もちろん、イマボフとカイオ・ボハーリョも、とんでもない勢いで勝ち続けてる。正直、ランキング9位相手に良い試合を見せるのと、2位や3位相手にするのとでは話が違うってのも分かる」
──ここ数試合は会場やカードの厚み的に地味な位置のときもありましたが、今回はアメリカ、しかもビッグイベント。王者として、このスポットライトをどう受け止めていますか?
「どこで防衛しようが、俺のホームじゃないなら関係ないさ。むしろ世界を回れるのが最高なんだ。オーストラリアも大好きだし、カナダも素晴らしかった。俺の地元じゃ雪はあまり見ないから新鮮だったね。で、今はアメリカ。最初の4戦はアブダビ、その後はラスベガスで続けて戦ってきた。シカゴも本当に美しい街だ。試合後は少し滞在して、ちゃんと満喫するつもりだよ。ファイトウィーク含めて3週間いるけど、まだ堪能できてないからね。試合をするうえで、アンダーカードの厚みとかは気にしたことがない。俺は自分の試合をやるだけ。見てくれる人に、払った分だけの価値を必ず渡す。それが俺のやり方だ」
──PPV(ペイパービュー)や放映のフォーマットも変化しつつあります(※26年からのパラマウント+配信はPPV無し)。今回のような大型イベントを経て、その仕組みが変わる可能性については?
「数年前まではPPVがすべてだった。アメリカ市場はPPVの中心だし、だからこそマンチェスターで開催する時も、アメリカ時間に合わせてとんでもない時間にメインが始まったりする。理屈は分かる。でも、今の流れだと“スペインでやる”“南アフリカでやる”って話も現実味を帯びる。PPVだけが軸じゃなくなれば、世界のどこでも現地時間の午後3時から夜10時みたいな、普通の時間帯でイベントを組める。南アフリカで深夜1時開始、朝7時終了なんて馬鹿げたタイムテーブルじゃなくて済む、ってことだ。これは大きな変化になり得るし、俺はワクワクしてる。UFCの収益が増えれば、俺たちファイターの取り分も増えるはずだしな」
──クリス・ワイドマンがあなたを大絶賛していて、「この試合に勝てば、史上3番目のミドル級王者に入る。上から見ると、イズラエル・アデサニヤとアンデウソン・シウバに次ぐ存在で、自分より上だ」とまで言っていました。あなたはその評価を妥当だと思いますか?
「タイトル防衛数という観点なら、そういう見方もあると思う。クリスは本当に素晴らしいし、俺は大ファンだ。ただ、アンデウソン・シウバは俺にとってGOATだ。ヒーローだったからな。でも同時に“時代”も見ないといけない。彼らが防衛を重ねた時代は、対戦相手が副業を持ってたような時代なのか、今みたいにフルタイムのトップファイター相手なのか。競技の成熟度も違う。どっちが上だ下だを言うつもりはないが、今の時代で同じ数の防衛を積むのは簡単じゃない。俺が“史上最高”とか“史上最高のミドル級”と呼ばれるには、まだ道のりはある。ただ、この試合に勝てば、かなり近づくはずだ」
──この試合については皆が持論を語っていますが、実際に何が起きるかはケージが閉まるまで誰にも分かりません。チマエフはあなたにとって“高いハードル”になるという声も多い。もし理想的な形で彼に勝ったら、“P4P(パウンド・フォー・パウンド)1位もあり得る”という意見も出ています。
「チマエフがとんでもなく強いのは、その通りだし、俺も分かってる。でも、俺がここまで倒してきた相手も同じように“高いハードル”だった。ロバート・ウィテカーなんて、王者以外には10年以上やられてなかった。次はショーン・ストリックランドで、そいつは直前にMMA史上最強の一人といわれるイズラエル・アデサニヤを倒して王者になっていた。そして、アデサニヤ本人とも戦った。今度はチマエフ。で、彼の先にもまた“高いハードル”って言われるやつが出てくる。それが“ベスト同士が戦う”ってことだ。だけど、試合が終わったらみんなこう言うはずだ――『またやりやがった。ドリカスはまたやった。もう疑わない』ってな。だけど、この流れは延々と繰り返されるんだ」
──この結果次第で……という話の続きですが、ハムザト・ チマエフは「勝てば10月にアブダビでやりたい」と話す一方で、もし上手くいかなかった場合は活動が鈍るのでは、という見方もあります。仮に彼が負けたら、次はどうなると思いますか?
「非常にいい質問だ。まず“10月に”って話は――あり得ないね。この試合が終わったら、彼は一度立ち止まって、自分はどうMMAに向き合うかを見つめ直す時期になると思う。彼の通帳を見たことがないから本当かどうかは知らないけど、本人は“金は山ほどある”って言ってるから困ってはない。そして“必ず王者になる”と確信してる。でも、今回は王者になることはない。俺はキャリアで負けを味わったことがある。あれは最悪だ。本当にキツい。でも、そこで人間性が問われる。彼がそこからどう立ち上がるか、興味深く見させてもらう」
──あなたはここまでずっとハイペースで戦い、メインイベントや5Rの経験も豊富です。その点で、彼に対してアドバンテージがあると感じますか?
「100%あると思ってる。世界トップのミドル級相手に、5Rを見据えて準備して実際に戦うって経験はデカい。同じジムに通い続けるみたいに、試合に慣れるほど新しいことも試せるし、リスクも取れる。ただ、彼みたいなタイプは休んでてもいきなり出てきて“ずっと試合してたのか?”ってくらい仕上げてくることがあるから、彼にとって試合の“慣れ”はあまり重要じゃないかもしれない」
──あなたはナッソージン・イマボフにあまり関心がないように見えます。注目度がそれほど高くないからでしょうか?
「いや、次の相手じゃないからだよ。彼はカイオ・ボハーリョとやるはずだ。『ハムザト・チマエフ(ミドル級3位)より先にタイトルショットをやるべきだ』って主張する人もいるが、正直それは馬鹿げてると思う。誤解しないでほしい、イマボフは素晴らしいファイターだ。イズラエル・アデサニヤ(ミドル級4位)との試合でも良かったし、強い一撃も当てた。ここ数戦は安定してきた。ただ“ナンバー1コンテンダー”かといえば、まだだ。ランキングは持っていても、次の挑戦者ってわけじゃない。だから今の段階で彼について語るのは意味がない、そういう姿勢なんだ。もしボハーリョに勝てば、その時は話が変わるだろうけど、決めるのは俺じゃない。俺は“次に来る最強の相手”と戦うだけだ」
──デレク・ブランソンとの試合はまだ2年前の話で、1R目はレスリングとグラップリングでかなり攻め込まれました。あの試合を振り返って、何が変わったと思いますか?“より強いレスラーのチマエフ相手なら、もっと厳しくなるのでは”という見方もあります。「ブランソンのセコンドは最後にタオルを投げ込んだだろ。今回も1Rを取られたっていいよ、代わりに相手のセコンドからタオルを受け取ってやる。――それが答えだ」
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ゲームプランは重要だが、試合は常に変わる。ビデオテープでは見えないものがケージの中に入って初めて見える。だから適応し続ける
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──今回、あなたはアンダードッグという見立てもあります。気になりますか?
「全然気にならない。タイトル絡みの試合は、俺はだいたいアンダードッグだった気がするし、自分の試合に賭けることもない。オッズがどうだろうと、俺のやることは変わらない。強いて言えば、家族や友人は“アンダードッグの方が配当がいい”って喜ぶかもな」
──あなたがタイトルマッチを戦ってからの成長は目を見張るものがあります。もしデビュー戦の自分に声をかけられるとしたら、どんな励ましの言葉を送りますか?
「全部、今と同じようにやれ。何も変えるな」
──シカゴの街も満喫しているようですね。ここまでの感想は?
「もう3週間いるよ。南アフリカとの時差が7時間あって、睡眠のリズムを完璧に戻すのに1週間は欲しい。試合が近づくと、睡眠、食事、サプリ、部屋、スケジュール、練習場所――すべてを完璧に揃えたいタイプなんだ。だから開催地にはできるだけ早く入る。シカゴは最高だ。文化もいいし、減量でまだ我慢しているけど飯も美味そうだ。みんな温かく迎えてくれる。カブス、ベアーズ、ブラックホークスの試合も見に行ったし、ブルズの本拠地ユナイテッド・センターも歩いた。建築も美しくて、今まで行った街の中でも屈指に好きだね。試合後は少し残って、しっかり堪能するつもりだ」
──シカゴの名物はまだ試せていないと言っていましたが、試合後に一番楽しみにしている食べ物は?
「まずはマヨネーズを一本くれりゃそれでいい(笑)。なんでも食うよ。ディープディッシュ(=シカゴ発祥の分厚いピザ)は賛否両論だな。ある人は“クソみたいなラザニア”って言ってたし、別の人は“絶対食べろ、最高だ”って。自分で確かめるさ。見た目は最高だし、腹いっぱい食うつもりだ。シカゴのビール? まだ分からないけど、試合後に確かめる。手羽先は限界まで食う。あとアメリカに言いたい。お前らが作った最高のスナックは『チーズイット』だ。箱でいくぞ(笑)」
──ファンはあなたのスタイルを“型破り”だと言います。直感とゲームプラン、どっちの比重が大きいでしょうか?
「いい質問だ。トップレベルではゲームプランが超重要だ。みんな強くて、打たれ強くて、打撃が上手い。テイクダウンもサブミッションも、攻撃も防御もどっちもできるやつがゴロゴロいる。だから競技は“エデュケーテッド・ブロウラー(教養ある殴り合い)”に回帰してる感じがある。テクニカルなテイクダウンをさばけて、極めも狙えて、打撃もやれる──その上で“どれだけ受けて、どれだけ返せるか”。俺のスタイルはそこで進化した。相手に圧をかけて、その瞬間に必要な技を出す。もちろんゲームプランは持って出るけど、試合中は常に変わる。相手の動きは読み切れないし、ビデオテープでは見えないものがケージの中に入って初めて見える。だから適応し続ける。……“型破り”でも、有効なんだ」
──次の言葉を完成させてください。“Don’t blink because…”(瞬きするな、なぜなら…)
「PPV代を無駄にするからだ(笑)。どんなフィニッシュになるかの予想は出せないけど、みんなが想像してる通り、ヒリヒリした試合になると思う。グラウンドに持ち込んで極める? それが決まったら最高だし、誰かさんは大金を手にするだろうな。もっと言えば、グラップラー同士の試合って、逆にスタンドでやり合うことも多い。どこで勝負が決まるか、そこが面白い。寝技オンリーでもいい、組みの攻防だけでもいい、オクタゴンど真ん中で殴り合いでもいい。どんな形でも、なんの準備でもできてる」
──あなたのファイトスタイルについて、いろんな表現がありますが、これまで聞いた中で一番好きなのは?
「“ワールド・チャンピオン”さ」